ガンダムブレイカー・シンフォニーRe:BREAK   作:さくらおにぎり

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11話 オールラウンダーVSオールラウンダー

 ちょっとした一悶着がありつつも昼食を終えれば、早速午後の部……つまりは決勝トーナメントだ。

 

 ギャラリーも観客席に着き直したところで、大々的に発表されるトーナメント表。

 

 ふむ……ちょうど、ゴジョウイン先輩とは決勝に、先程のアサクラ先輩とは準決勝で当たる組み合わせだな。

 

 そして俺は第一試合からスタートだ、このあとすぐに準備しなければ。

 

 ……ん?

 なんかトーナメント表の名前に一つだけ違和感が。

 

『Zero master』

 

 ゼロマスター?

 

 †ゼロ・マスター†か。

 

 本名ではないのは分かるし、恐らくは通り名か渾名だろうが……他にもうちょっと無かったのか、この†ゼロ・マスター†は厨学生なのだろうか。

 中学生でも厨学生でもなんでもいいが、決勝トーナメントまで勝ち上がって来ている以上、それ相応の実力はあるのだろう。

 まぁ、予選で勝ったとしても準決勝でゴジョウイン先輩と当たるのでご愁傷様ですとしか言えないのだが。

 

「準決勝でアサクラと当たるようだな、オウサカ」

 

 隣りにいたゴジョウイン先輩もトーナメント表を確認してそう言った。

 

「決勝でゴジョウイン先輩と当たるなんて、ドラマチックですね」

 

「つまり……私と君は、運命の赤い糸で結ばれていた、ということになるな」

 

 済まし顔でそんなことを言っちゃうゴジョウイン先輩。

 運命の赤い糸って……ちょっと意識しちゃったじゃないか。

 

「詩的な表現ですね」

 

「ふふっ……では、その運命の赤い糸が切れないように、私も勝ち抜くとしようか」

 

 やだ、この人ステキ過ぎる。

 

 よし、俺もバトルに備えて準備するとしよう。

 

「頑張ってね、オウサカくん」

 

「リョーなら余裕っしょ!」

 

「健闘を祈るわ」

 

「ま、気負わずに行ってこい」

 

 マユちゃん、イツキ、ミカゲさん、ケイスケ先輩から見送りの言葉をいただく。

 

「んじゃ、行ってきます」

 

 行ってきまーす。

 

 

 

 決勝トーナメント第一試合。

 

 さてさて俺の相手は……浅黒い肌に、筋骨隆々とした肉体に、筋肉を見せつけるように両腕を露出させ、フィンガーレスグローブにマントを翻す男。世紀末な世界に登場する人かな?

 

 ランダムフィールドセレクトは『フォン・ブラウン』

 

 宇宙世紀における月面都市、その周辺だ。

 U.C.(ユニバーサル・センチュリー)0083なら、アルビオン隊とケリィ・レズナーのヴァル・ヴァロとの戦闘になり、0087ならティターンズのコロニー落とし『アポロ作戦』の標的になった場所だな。

 

 月面戦闘は初めてじゃないが、地球のおよそ1/6の重力下だ、地味に下方向へベクトルを引っ張られるので、スラスターを使ったジャンプなどは注意して調節しなければ。

 

 さぁ出撃だ。

 

「オウサカ・リョウマ、オリジネイトガンダム、行きます!」

 

 

 

 フォン・ブラウン市の宇宙港から発進した俺。

 月面の重力感覚は久し振りだな。

 

 さて、相手は……と思ったら、フォン・ブラウンの制宙圏内の外から結構な出力のビームが飛んで来たので素早く躱す。

 んー、今のは宇宙世紀系のビームか?メガ粒子のパルス形状を見ても、かなりの大出力タイプのようだが。

 向こうの射程はかなり長いが、ビームが放たれた方向を見やれば、月面の陰からターコイズグリーンの姿が見えた。

 

 アレは……ネオ・ジオンの『ドーベン・ウルフ』か。

 胴体部の連装メガ粒子砲にビームライフルを連結させている辺り、さっきのビームはメガランチャーによるそれだな。

 

『そこォ!』

 

 互いに捕捉し合うなり、ドーベン・ウルフは再びメガランチャーを放ち、薙ぎ払うように照射してくる。

 とは言え距離は開いているので問題なく躱し――って危ねーな!回避先にインコムのビームが置かれてたぞ!?

 一発目は陽動……というか、メガランチャーの存在を見せつけて、脅威のメガランチャーを回避して安心したところを本命のインコムを回り込ませて被弾させる算段か。

 

 なるほど、世紀末な見た目とは反してなかなかトリッキーな男でもあるようだ。

 

『生意気ィ!』

 

 メガランチャーとインコムの合せ技を避けられてか、ドーベン・ウルフの攻撃が本格化してきた。

 背部からミサイルをばら撒き、連装メガ粒子砲から切り離したビームライフルに加えて、背部バインダーのビームキャノンを連射してくる。

 弾幕目的の砲撃に見えるが、めっちゃ正確な射撃だわ、さすがの俺もちょっと集中しないと避けきれない。

 

 ミサイルとビームを掻い潜りつつ、こちらもビームライフルを撃ち返し、一射、二射、三射、インコム二つと右ビームキャノンを破壊する

 

『チッ……なめるなよ、小僧が!』

 

 ドーベン・ウルフはビームライフルを納め、両腕にビームサーベルを抜き放ちつつ、連装メガ粒子砲を拡散させるように発射、すぐに距離を詰めながらも、ビームサーベルを持ったまま両腕を切り離して斬り掛かってくる。

 

 拡散ビームを躱しつつーの、どうしても回避できないのはシールドで受けーの、ビームライフルを納めてこちらもビームサーベルを二刀流で抜き放ちーの、

 

「はっ!」

 

 必殺、砂岩(サンドロック)二刀流!

 

 上段から『()』の記号を描くような流麗な太刀筋で、ドーベン・ウルフの有線ビームハンドを斬り捨てる。

 

 ガンダム04(サンドロック)のパイロットの『カトル・ラバーバ・ウィナー』が、サンドロックの二刀のヒートショーテルで何でもかんでもブッピガンブッピガン言わせながら斬り裂いていたけど、サンクキングダム仕様のトーラスに乗っていた時も、ビームサーベルで同じことやってたなぁ。

 

『なんの光!?』

 

 なんの光って……あんたの両腕が爆散した光だよ。もしくは俺のビームサーベルの太刀筋か?

 

 これでドーベン・ウルフの両腕は封じたとは言えまだ楽観視は出来ない、奴の両腕の内部にはさらに隠し腕ビームサーベルが控えているし、本体の火力もまだまだ有り余っている。

 とは言え、

 

「ここで墜とす!」

 

 なんの光かと動揺している今が好機だ、一気にオリジネイトを加速させて接近戦に持ち込む。

 

『えぇぃっ、墜ちろォ!』

 

 動揺していたのも一瞬、ドーベン・ウルフはすぐに後退しつつ、再び連装メガ粒子砲とビームキャノン、さらには頭部のバルカンも撃ちまくってくる。

 ビームは躱しつつ、バルカンの銃弾は装甲で受けて、肉迫。

 ドーベン・ウルフはすぐさま隠し腕のビームサーベルで斬り払おうとするが、それは読めているんだよ。

 急制動をかけて隠し腕ビームサーベルを空振りさせたところを、こちらのビームサーベルで反撃、両肩を斬り落として、両脇からビームサーベルを挟み込むように振るう。

 

『バカな……こんな子どもに、敗れるというのか……!?』

 

 ドーベン・ウルフの胴体を両断、爆散させる。

 

 ドーベン・ウルフ、撃墜。

 

『Battle ended!!』

 

 

 

 決着と同時に沸き上がる歓声。

 ふぅ、さすがにちょっと手こずったぜ。

 手こずったが勝ちは勝ちだ、一度観客席に戻って、第三試合――ゴジョウイン先輩の試合を観戦しながら休憩しよう。

 

 ちなみに、第二試合と第四試合は、第二バトルブースで行われるそうだが、第二試合の勝者はアサクラ先輩になるだろう。

 

 俺が観客席に戻って来た時には、既にゴジョウイン先輩が席を立っていた。

 

「まずは予選突破だな、オウサカ」

 

「ゴジョウイン先輩も、勝ち抜いてきてくださいね」

 

「もちろんだ」

 

 颯爽と第三試合に赴くゴジョウイン先輩の黒髪ロングを見送る。

 

 というわけで、ゴジョウイン先輩が立ったことで空いた席に座ると、ちょうどシノミヤ先輩とナナちゃんとの間に挟まる形になった。

 ……百合の間に挟まろうと思ったわけじゃないぞ?

 

「オウサカセンパイ、お疲れ様です♪」

 

「さすがはオウサカくんね」

 

 先後輩の女子二人から手放しに褒められる。よせやい照れるじゃねぇか。

 

「準決勝で当たるのは、多分あのアサクラ先輩になりそうですね」

 

 シノミヤ先輩に向けてそう零す。

 

「そうね、恐らくそうなると思うわ」

 

 それとだけど、とシノミヤ先輩は続ける。

 

「アマネは、アサクラくんのことを「些事に振り回されているだけの男」と言っていたけど、それでも実力の下地は確かにあるし、この一年でそれにも磨きが掛かっている。特に今回は、打倒アマネを目標に掲げているくらいだもの、オウサカくんにとっては、かなりの強敵になることは間違いないわ」

 

 だろうな。

 些事に振り回されていると言うが、逆に言えば些事に振り回されてもなお、それほどの実力を持っているということでもあるんだ。

 

「そうですね。それに、あのガンプラ……べギルエリスの機体特性を客観的に見ても、"単純に強い機体"。隙の突けない、地道な鎬の削り合いになりそうです」

 

 加えて、あのアサクラ先輩からは、直感ではあるが何か"執念"のようなものを感じられた。

 人の執念は、時に常識を逸脱した行動すら行わせる。

 最後の最後でどんでん返しを喰らうことのないよう、向こうのありとあらゆる勝ち目や勝ち筋を潰していかねば。

 

「でもでも、オウサカセンパイならきっと勝てます!だから、頑張ってください!」

 

 ナナちゃんも応援してくれているんだ、カッコ悪いところは見せたくないな。

 

「あぁ。……っと、そろそろ第三試合が始まるな」

 

 

 

 決勝トーナメント第三試合。

 

 ゴジョウイン先輩の相手は、赤く癖っ毛のある男だが……なんとなくアホの子っぽい匂いがするのは何故だろうか?

 

「よっしゃー!見ていてください大佐ァ!」

 

 ……うむ、やっぱりアホの子だったわ。あと、多分なんか不死身かもしれない。

 観客席の反対側から「准将だ!何度間違えれば気が済む!」という女性の怒鳴り声が聞こえてきた。階級間違えるとか大変失礼だぞ。

 

 ランダムフィールドセレクトは『ゲンガナム』

 

 ここは確か、正歴の月の都市で、黒歴史と称した、宇宙世紀や未来世紀、A.C.(アフターコロニー)、A.W.(アフターウォー)の戦いの記録が納められていた場所だな。

 市街地だって言うのに、空気を読まないメタボケーキマン……スエッソン・ステロのマヒロー部隊と交戦したっけな。

 

 

 

「ゴジョウイン・アマネ、ゼイドラ・スタイン、出るぞ」

 

 悠々堂々と出撃するアマネのゼイドラ・スタイン。

 

 対する相手のガンプラは『GN-X(ジンクス)』のそれだが、カラーリングはAEUイナクト(デモカラー)のそれに塗装されている。

 

『イィーヤッホォーーーーーゥッ!大佐のキッスはいただきだぁー!!』

 

 ジンクスはGNビームライフルを連射しながら猛然とゼイドラ・スタインに襲い掛かるが、アマネは慌てずに回避しつつ、ゼイドライフルを撃ち返す。

 互いのライフルから放たれるビー厶が交錯すること十数秒、双方決め手を与えられない膠着状態に縺れ込む。

 

『どこの学生か知らねぇが、このスペシャルで2000回のエース様の前に立つんだ、タダで済むわけねぇよなぁ!?』

 

 するとジンクスの方から膠着を破り、左マニュピレーターにGNビームサーベルを抜き放って迫りくる。

 ゼイドラ・スタインも左マニュピレーターのビームバルカンの砲口からビームサーベルを発振させ、真っ向から迎え撃つ。

 

 ビームサーベル同士の衝突と干渉が繰り返される中。

 

『ガンプラの性能が同じなら、スペシャルで2000回の俺様が、負けるわけねぇんだよォ!』

 

 GNビームサーベルを振るうと見せかけて、回し蹴りを放つジンクス。

 これに対してゼイドラ・スタインは、素早くゼイドライフルを手放し、右の脇を閉めるようにして防御の構えを取り、ジンクスの回し蹴りを弾き返し、間髪なくゼイドラソードを抜刀、ジンクスを斬り裂こうとするが、ギリギリのところで躱されたのか、ジンクスのGNビームサーベルを持った左のマニュピレーターを斬り飛ばすだけに留まる。

 

『……テメェ!分かってねぇだろ!?俺は!』

 

 ジンクスは即座にGNビームライフルを発射するが、

 

『スペシャルで!』

 

 ゼイドラ・スタインはくるりとその場で回転するように粒子ビームをやり過ごしつつゼイドラソードを一閃、ジンクスの右腕を斬り飛ばし、

 

『2000回で!』

 

 返す刀でもう一閃、ジンクスのボディを斬り裂こうとするが、ジンクスは左腕のGNビームシールドで防ぐ……が、ゼイドラソードの破壊力はビームシールドごと腕を粉砕し、

 

『模擬戦なんだよォ!』

 

 ジンクスの体勢が崩れたところを踏みつけるようにして地面に縫い付け、首関節にゼイドラソードの切っ先を突き付ける。

 

「スペシャルで2000回も模擬戦に勝ったところで、それで勝負に勝てるかはまた別の話だがな?」

 

『――大佐のキッスはお預けかぁー!!』

 

 ジンクス、リタイア。

 

『Battle ended!!』

 

 

 

 ゴジョウイン先輩が見事アホの子を降し、予選を突破。

 

 まぁこれは予定調和なので良しとしよう。

 

 同じ頃合いに第二ブースの方で第四試合も終わった頃だ。

 

 勝ち残ったのは、

 

 

 

 ・オウサカ・リョウマ

 

 ・アサクラ・ハルヤ

 

 

 

 ・ゴジョウイン・アマネ

 

 ・ゼロ・マスター

 

 

 

 の四名だ。ってかあの†ゼロ・マスター†が勝ち残ったのか。

 どちらにせよゴジョウイン先輩と当たるので、俺にはあまり関係ないが。

 

 さて準決勝だ。きっちり勝ち抜いて、ゴジョウイン先輩と決勝で戦わないとな。

 

『ただいまより、決勝トーナメント準決勝第一試合を開始致します。オウサカ選手、アサクラ選手の両名は、出撃準備をお願いします』

 

 アナウンスが流れ、まずは俺とアサクラ先輩とのバトルだ。

 

「あのアサクラって先輩、けっこう強そうだけど……でも、リョーなら楽勝だろ?」

 

 席を立とうとした時、イツキが声を掛けてくれた。

 

「楽勝……とはいかないだろうが、全力を以て当たらないと負ける相手に変わりはない」

 

 オリジネイトもべギルエリスも、同じくバランスタイプの機体だろうが、総合性能なら負けてないはず。

 ならば勝敗を分つ条件は、99%の実力と、1%の運だ。

 

 俺とアサクラ先輩とでは、確かにガンプラバトルの経験値量が違うだろう。

 何せ俺はガンプラバトルを始めてまだ一ヶ月少し、素人(トーシロ)のペーペーもいいところだ。

 それに対するアサクラ先輩は、いつからガンプラバトルに手を付けていたかは知らないが、少なくとも高校入学から逆算した、三年の重みがあるだろう。

 

 だが、俺には他のビルダーに無いものがある……というか、(この世界の基準で考えれば)普通なら絶対に有り得ないものを備えてしまっている――チートスキルのようなもの。

 

 それは、過去の異世界転生で培った『本物のMS戦技術』だ。

 

 遊びでもアニメでもない、難易度ルナティックすら生温い、負け=死 の中で磨き上げて研ぎ澄ませた、戦いの才覚(センス)

 それとついでに、死の0.1歩手前で踏み止まれる、強運。

 

 正直、これが無ければ地区大会優勝どころか、あの馬の骨にすら負けていた可能性極大である。

 

 ……厳密に言えばスキルとかではなく、半強制的な『経験値の持ち越し』みたいなものだ。

 

 まぁ表面から見ただけ――それこそ俺が「俺は過去の異世界転生でMS戦を経験してます」って公言しない限り――では誰にも分からない(と言うか俺の口から言っても誰も信じないだろう)から、「なんかおかしくね?」と疑われることはまず無いので、ありがたくこの恩恵に預かるまでだが。

 

「リョーは真面目だなー。でも、負けんな、よっ!」

 

 ベチン、と背中を叩かれる。いてぇ。

 

「背中叩くなよ。……行ってくる」

 

 よし、イツキに気合入れてもらったし、これで勝つる。

 

 

 

 ランダムフィールドセレクトは『タイガーバウム』を選択。

 

 ここあれやん、ドスケベエロオヤジ――スタンパ・ハロイの面白MS博物館コロニーじゃん。

 あの時はジュドーとイーノが女装してて笑ったなー。

 しかも、そのスタンパの好みがまさかの変装したハマーンっていうな。

 

 MS戦として考えるなら、市街地での戦闘になりそうだな。

 

「オウサカ・リョウマ、オリジネイトガンダム、行きます!」

 

『アサクラ・ハルヤ、べギルエリス、出るぞ!』

 

 

 

 タイガーバウムのコロニー内部へと進入、市街地へ着地。

 

 周囲には、スタンパの趣味なのかか知らんけど、和風な装飾が装備が施された水陸両用MS達がそこかしこに並んでいる。

 見ているだけで変な笑いが込み上げて来そうな光景だが、笑っている場合ではない。

 

 すぐ正面から堂々と、アサクラ先輩のべギルエリスが向かって来ている。

 

白の戦乙女(ホワイト・ヴァルキュリア)が決勝で待っているのでな、決めさせてもらう!』

 

 言うや否や、ビームライフルとビームキャノンを交互に発射してくる。

 

「ゴジョウイン先輩とのデートは俺の方が先約ですから、ここは譲ってくれると嬉しいんですがね!」

 

 放たれるビームを躱しつつ、こっちもビームライフルを撃ち返す。

 

『なら、横紙破りをすれば済む話だ!』

 

 そんな堂々と横紙破りをするって宣言するか、ある意味すげぇな。

 だが、横紙破りなんてそんな筋の通らないことを押し通させるほど、このオウサカ・リョウマ、甘くは無いのだよ。

 

 ビームライフル同士の応酬が続いたと思えば、べギルエリスは左腕のシールドからビームサーベルを発振させて距離を詰めて来るので、こちらも左マニュピレーターにビームサーベルを抜き放って対抗だ。

 

 衝突、メガ粒子とパーメット粒子のビーム刃が干渉し合い、スパークを撒き散らす。

 

 弾き返し、一撃、二撃とビームサーベルが交錯し、べギルエリスがゼロ距離からビームキャノンを撃とうとしてきたが、それよりも先にこっちの右肩のショルダータックルで弾き飛ばす。

 

『チッ!』

 

 ビームキャノンは明後日の方向へ放たれ、すぐさま追撃にビームライフルを撃つものの、べギルエリスは地面を蹴ってサイドステップしてビームを躱し、そのままバックホバー、一旦イニシアティブを取り直す。

 

「下がってくれるなら!」

 

 今度はこちらからアプローチだ、左マニュピレーターのビームサーベルを一度ランドセルに納めると、そのままハイパーバズーカを取り出し、回り込むように迂回しながらビームライフルとハイパーバズーカを交互に発射、合間にバルカンの速射を織り交ぜて射撃戦に持ち込む。

 

 向こうもビームライフルとビームキャノンで応酬し、互いの火線が交錯する。

 

『……思ったりより手強い。あの白の戦乙女(ホワイト・ヴァルキュリア)が認めるだけはあるということか』

 

「そいつはどーも……」

 

 さて……どうやってこの隙のない強敵を攻略すべきか。

 

 

 

 オリジネイトガンダムとべギルエリス。

 互いに性能バランスの取れた万能型である両機の戦いは、端から見ている分には地味で膠着しているように見える。

 

「膠着しているわね」

 

 トウカは、射撃には射撃、格闘には格闘、という正面衝突の繰り返しを繰り広げる両機を見て、そう零す。

 

「膠着もあるだろうが……どっちかっつーと、ありゃぁお互い様子見だな」

 

 ケイスケは、トウカの「膠着している」と言う言葉を補足した。

 

「様子見、ですか?」

 

 そのように見えるというケイスケに、マユは疑問符を浮かべる。

 

「あのべギルエリス、際立った特徴がねぇだろ?だから、弱点らしい弱点も見当たらない。強いて言うんなら、コクピット周りが少し脆いかどうか、だろうな」

 

 原典の『水星の魔女』においても、ミカエリスは他社の第五世代機(ダリルバルデなど)とは異なり、コクピットのキャノピーが剥き出しになっているという点がある。

 これは恐らく、アスティカシア学園の"決闘"上において『ブレードアンテナを破壊することで決着する』というルールに則ったものだろう。

 実際、決闘内のレギュレーションとして、決闘に参戦する機体は、コクピット周りにはロックオン出来ないセーフティが掛けられているため、そう言う意味では、バイタルパート(狙われない部位)に当たる装甲を取り外して軽量化すると言うメリットはある。

 

 尤もこれは、アスティカシア学園の決闘内での事であり、ガンプラバトルにおいては、心臓部が無防備など自殺行為に等しい(決闘においても流れ弾の被弾や障害物との衝突などでもバイタルパートを損傷させる可能性は十分有り得るので、コクピットを保護しないこと自体がそもそも自殺行為だが)。

 故にだろう、べギルエリスは原典のミカエリスと比べても、コクピット周りを覆うように増加装甲が施されている。

 増加したものとは言え、簡単に壊れるように作られてはいないだろうが、ケイスケが言うところの「強いて言えば」他の部位よりも装甲強度が弱いかもしれない。

 

「いいじゃないすか」

 

 イツキの視線は、オリジネイトガンダムに注がれたままだ。

 

「ただ単純に、強い方が勝つってことっしょ?シンプルで分かりやすいし!」

 

 けれどその瞳は、リョウマの勝利を何一つ疑っていない。

 

 

 

 射撃と射撃、格闘と格闘……

 まるで、ジャンケンの"あいこでしょ"が続くような戦いだ。

 まぁ、こっちとしては隙を窺っているから積極的に攻勢を掛けていないだけだが……それは向こうも同じのようだな。

 

 互いに隙を見せるのを窺っているのなら……『敢えて隙を見せて誘い込む』までだ。

 

 コロニー内の川の近くに追い込まれるように後退しつつ、背後に川があることに気付いてないフリをする。

 ビームライフルとビームキャノンを回避し、イニシアティブを取ろうとして、左脚を川へ踏み外して見せる。

 

「うわ、しまった」

 

『迂闊だな、もらったぞ!』

 

 すると俺の誘い通り、左脚を踏み外してなんとか踏ん張ろうとしているところへ、べギルエリスがビームライフルを納め、バックパックからビームサーベルを抜き放つと同時に距離を詰めて来る。

 

 かかった。

 

 右のビームサーベルを振り抜いてくるべギルエリス。

 この体勢から……左脚のバーニアをフルスロットルで点火!

 

 アンバランスなバーニア制御によって、オリジネイトが宙を舞いながら姿勢が崩れてしまうが問題ない。

 

『なんとっ!?』

 

 川の手前でビームサーベルを空振りしたべギルエリスへ、ビームライフルを放つ。

 だが、不安定な姿勢のままの射撃では軸がブレてしまったか、ビームはべギルエリスのボディではなく、左肩の装甲を吹き飛ばしただけだった。

 

 ……そうか、あの肩部はP.D.(ポストディザスター)のガンダムフレームみたいに、フレームと装甲がそれぞれ別々に分割されているのか。

 その気になれば、破損した装甲を自らパージすることさえ出来るだろう。

 

「外したか……っ」

 

『誘い込みとは、小賢しい真似を……!』

 

 べギルエリスが構え直すのを見ながらバーニア制御を整えつつ着地して、と。

 

 本当なら今のでバトルが決まっていたかもしれない、絶好のタイミングだった……決め手をひとつ、自ら潰してしまったのだ。

 

 相手を出し抜くための奇策珍策もこの一手だけではないが、そう何度も出せる手ではない。さっきの踏み外しもフリだと見抜かれている以上、同じ手は二度も通用すまい。

 

 こうなると再び隙の探り合いだ、さてどうしたもんかね……

 

 しかしべギルエリスはビームサーベル二刀流のまま急速接近してくる。

 あくまで格闘戦がお望みか。

 ならばこちらも二刀流で対抗だ、ハイパーバズーカを捨てて、ビームライフルを納め、ビームサーベルを二本とも抜き放つ。

 

『おぉぉぉぉぉッ!』

 

 アサクラ先輩の裂帛と共に、べギルエリスのビームサーベル二刀流の乱舞が襲いかかる。

 

 斬り弾き、躱し、斬り弾き、躱し、斬り弾き、躱し……演武のような斬り合いだが、こちとら必死である。

 

 つーかこの人、ビームサーベルの当て方がすげぇ上手いんだよ。

 

 右のビームサーベルはマニュピレーターに握っているから、ハンドスナップを効かせた"打ち込む"ような斬撃で、左のビームサーベルはシールド内蔵型だから、徒手空拳の延長のような斬撃。

 

 単なる二刀流による手数頼みの攻撃ではない、両方の特性を理解した千変万化の斬舞は、少しずつ、しかし確実にオリジネイトの装甲を焼傷を刻み付けていく。

 だが、それと同じくらい俺の攻撃もべギルエリスを損傷させている。

 一進一退、と言えば聞こえは良いが……『先に一退しているのは俺の方だ』。

 つまり、後出しからの切り返しでなんとか対応しているわけだが、一手打ち間違えたら途端に劣勢になるだろう、綱渡りだ。

 

 ……どれ、ここらでひとつ心理戦でも仕掛けてみるか。

 

「――随分と情熱的ですね!そんなにゴジョウイン先輩のことが好きですか!」

 

『バトルの最中に何を!』

 

 とか言いつつも攻撃の手を止めないアサクラ先輩。

 向こうからすれば、俺が苦し紛れなことをしているに過ぎないとでも思っているだろうが構わん、これで反撃の糸口のひとつでも掴めれば儲けものである。

 

「ゴジョウイン先輩が相手にしたいのは俺で!ゴジョウイン先輩の相手をしたいのがアサクラ先輩!こうして見ると面白い三角関係だとは思いませんか!」

 

『戯言を!』

 

「そう!戯言ですよ!」

 

 振り降ろされる右のビームサーベルに対して、ハイキックで腕を蹴り飛ばす。

 そこをビームサーベルで突こうとするが、左腕のビームサーベルで防がれ、鍔迫り合いへ。

 

「そう言えばあなたが以前に所属していたチーム、ゴジョウイン先輩のチームに負けたそうですね!それも、チームメイトがボカをやらかしたから負けたのに、それを全部あなたのせいにしたとか!」

 

『だから……なんだと言う!』

 

 鍔迫り合いを弾き返され、互いに一歩引き、睨み合う。

 おや、俺に喋らせていいのかな?なら遠慮なく心理戦で攻めさせてもらおうか。

 

「自分の弱さすら認められないような雑魚(ザコ)の"戯言"に聞く耳を持つ必要など無いでしょう!それなのにあなたは自分に責任を感じて、転校までした!それってつまり、『そんな雑魚に負けた』んですよ、あなたは!」

 

『ッ……!?』

 

 お、息遣いが動揺した。

 それならもう一ダメ押しだ。

 

「ガンプラバトルですらない、ただの"戯言"に!なるほど、ゴジョウイン先輩があなたのことを『些事に振り回されているだけの男』と評するのも頷ける!」

 

『貴様ァッ!!』

 

 怒りのあまり、べギルエリスが仕掛けてきた。

 迷いなく急所へ突き出されるビームサーベルを弾き返し、返す刀の左腕のシールドのビームサーベルは機体を捻らせて躱す。

 挙動が感情的になって来たな。

 だが、まだだ。

 もっと決定的な隙を見せるまでは防戦しつつレスバだ。

 

「戯言などに負けて!些事に振り回されているばかり!そんな今のあなたを見て、今のチームメイトはどう思っているんでしょうねぇ!」

 

『貴様が!貴様ごときに!何が分かる!』

 

 ブンブンブンブンと激しく両のビームサーベルを振り回しながら肉迫してくるべギルエリス。

 

 もっとだ、もっと、もっと来い!

 

「はぁん?分かるわけ無いでしょう!雑魚に(こうべ)を垂れる理由も!些事に振り回される意味も!そんな"小さい"男に、俺が負ける理屈もね!」

 

 受け身に徹している内に、ビームサーベルの打ち込みに乱れが出てきた。

 

 よぉし、今が好機だ。

 

 怒りに任せた右のビームサーベルの一撃を受け流して空振りさせ、ヤクザキックで蹴っ飛ばす。

 

『チィッ!?』

 

 蹴っ飛ばされて体勢が崩れたところに一気に攻めかかる。

 はい、ここからは俺のターンです。

 

「いやはや!準決勝の相手があなたで良かった!こんなくだらない言葉の応酬で簡単に崩れる相手、他にいませんし!おかげで楽に勝てそうだ!」

 

 右から左から、ビームサーベルのラッシュ!ラッシュ!!ラッシュ!!!

 

『グッ……なめるなァッ!!』

 

 左右のビームサーベル同士が打ち付けられ、力比べに縺れ込む。

 

『昔の俺にとっては、ただ楽しんで想いを形にして、偶に戦って勝つ、それで良かった!けど今は!俺の強さを!揺るぎない実力を示すために俺はガンプラで戦い続ける!今度こそ、誰からも見捨てられないために!!』

 

「……それが本音でしたか」

 

 ズンッ、と互いに踏ん張り合い、脚部がコロニーのアスファルトに沈み込む。

 だが、単純な出力やパワーならオリジネイトの方が上のようだ、ジリジリとべギルエリスを押し込んでいく。

 

『パワー負けしているか……!』

 

「誰からも見捨てられないために、と言いましたか。『自惚れるのも大概にした方がいいですよ』、アサクラ先輩」

 

『なに……自惚れだと!?』

 

 強引に弾き返したべギルエリスは、飛び下がって二刀のビームサーベルを構え直す。

 こちらもビームサーベル二刀流を崩さずにジリジリと。

 

「一度や二度の敗北がなんです、戦争やってんじゃないんですから、負けたって死ぬわけでもなし、何度だってやり直せる」

 

『だが……』

 

「だがもヒートダガーもスローターダガーもないです。ンなこと気にしてたら、こんな"遊び"やってられませんよ」

 

『"遊び"……』

 

「"遊び"だからこそ本気になれる……それはそうとして。けど、だからと言って『人生を左右されろ』とは誰も言っていないでしょう?」

 

 真っ直ぐにオリジネイトを加速させ、ビームサーベルを振るう。

 べギルエリスも右のビームサーベルを寝かせるように構え、受け止める。

 

「たかが"遊び"に、人生まで左右されちゃたまりませんよ。況してや、人間関係も」

 

 鍔迫り合い、即座にべギルエリスは左腕シールドのビームサーベルを振り上げてくるが、それよりも先にこちらも左マニュピレーターのビームサーベルで押さえ込む。

 

「遊びでやってんだから、そんな"しょーもない"都合を持ち込むなって言ってるんです、よ!」

 

 受け流し、返す刀の回し蹴りハイキックでべギルエリスの頭部を蹴り飛ばす。――ブレードアンテナが半ばから折れたが、これは決闘ではないガンプラバトルなので、まだ俺の勝ちではない。

 

『……それは、すまなかった』

 

 すると、べギルエリスは一度飛び下がった。が、ここは追撃しない。

 

『俺は、囚われていたのだな。恥や外聞を気にするあまり、ガンプラバトルが何なのかを、理解していなかった』

 

「ちょっと見失っていただけですよ、気にしないでください」

 

『そうか……ではオウサカ・リョウマ、改めてこのアサクラ・ハルヤと戦ってもらおう』

 

 っと……べギルエリスの挙動に強張りが消えた。

 ここからがクライマックスだな。

 

「もちろんです」

 

『ならば、行くぞ!』

 

 ドンッ、とべギルエリスが加速、真っ直ぐに向かって来る。

 

 

 

 一撃、二撃、三撃、四撃、五撃……勢いが強い、こちらからも攻めないと当たり負ける!

 

 

 

 斬り結び、弾き返し、逆手に構えた左のビームサーベルでべギルエリスの胴体を斬り付けるが、

 

「浅いかっ」

 

 コクピットには届かない、増加装甲の厚さに遮られたか。

 

『させんっ!』

 

 するとべギルエリスは右脚を振り上げてオリジネイトの左腕を蹴り飛ばし……てない、捕まえられた!?

 そうか、あのフットはベギルシリーズ特有の鉤爪状の脚部、あれで量産型ルブリスやザウォートの装甲を捩じ切っていたっけな……

 ってことは、

 

 ギチギチギチギチと嫌な軋轢音の直後、オリジネイトの左腕が半ばから挟み潰された。

 

「――だからどうしたァ!」

 

 たかが左腕が無くなっただけだ、あのアムロ・レイは片腕とメインカメラが吹っ飛んでもなお戦い続けられるんだ、これくらい!

 

 反撃に振るったビームサーベルで、べギルエリスの左腕を斬り落とす、これでおあいこだ。

 

『チイィッ!』

 

 双方、残った右のビームサーベルで斬り合う。

 

 まだビームライフルもビームキャノンも健在だと言うのに、やけにビームサーベルによる格闘戦にこだわるな。

 

 俺との正面勝負がお望み?

 

 いや違う、恐らくアサクラ先輩の狙いは……

 

 何十合と打ち合った斬り合い。

 それは、オリジネイトの一閃がべギルエリスのビームサーベルを弾き飛ばしたことで終わりを告げる、が、

 

『もらったぞ!』

 

 

【挿絵表示】

 

 

 ビームサーベルで打ち負ける、『俺が勝ったと確信しかける』、その瞬間を狙っていた!

 オリジネイトがビームサーベル振り切った時には既に、べギルエリスのバックパックのビームキャノンの砲口が、オリジネイトのボディへ向けられていた。

 回避は不可能。

 

「ッ――」

 

 俺はほぼ咄嗟――賭けに出て、『左脚のバランサーを切った』。

 途端、膝カックンをされたようにオリジネイトが若干左寄りの前のめりに倒れ――刹那、ビームキャノンのビームが放たれ、――姿勢が低くなったことで、オリジネイトのボディではなく、頭部を撃ち抜いた。

 

『なんっ……!?』

 

 ――賭けに、勝った!

 

「俺の、勝ちです……ッ!!」

 

 迷いなくビームサーベルを突き出せば、その切っ先はべギルエリスのコクピットを確かに貫いてみせた。

 

『負けた、か……』

 

 制御を失ったべギルエリスは、ガクリと力無く前のめりに倒れた。

 

 べギルエリス、撃墜。

 

『Battle ended!!』

 

 

 

 瞬間、会場に爆発的な歓声が轟いた。

 

 ふぅ、なんとか勝てたぜ。

 正直、途中でレスバ挟んで無かったら負けてたかも。

 読み込ませていたオリジネイトを回収したところで、アサクラ先輩が目の前に立っていた。

 

 お?なんだ?バーチャファイトからリアルファイトに派生か?俺は別にバーチャルでもリアルでもどっちでもえぇんやで。

 

「良いバトルだった、ありがとう」

 

 と、思ったら握手を求められた。

 

「こちらこそ、ありがとうございました」

 

 握手には握手で返す。

 万国共通の礼儀だ。

 

「俺は、己の弱さを認めようとしていなかった。君とここで当たっていなければ、俺はまた同じ過ちを繰り還すところだった」

 

「あぁ、フル・フロンタルも言っていましたね。「過ちを気に病むことはない。ただ認めて次への糧にすれば良い。それが大人の特権だ」って。俺達はまだ子どもですけど」

 

「ふっ……だが、いずれ大人になるのなら、過ちを認める練習くらいは必要だろうな」

 

 握手の手を離して。

 

「今回は君に譲る。だが、俺はいつか、白の戦乙女(ホワイト・ヴァルキュリア)を倒してみせよう」

 

「あなたなら出来ますよ。人は、やろうと思えばどこまでも賢くて強くなれるし、どこまでも愚かで弱くもなれますから」

 

「後半部分が不吉だな……否定出来んのが何とも言えん」

 

 おっと、過去の異世界転生で"人の愚かさ"を何度も見てきた俺の悪い癖だな。

 

「では、いずれまた会おう」

 

 互いに会釈しあって、さいなら。

 

 さて、ゴジョウイン先輩も勝ち進んできているだろうし、俺もみんなの元へ戻るとしよう。

 

 

 

 観客席に戻ったら、最初にマユちゃんが出迎えてくれた。

 

「オウサカくん、お疲れさま。さっきのバトル、すごかったね」

 

「あぁ、想像してたよりずっと強かった」

 

 でも、とアサクラ先輩が去って行った方へ目を向ける。

 

「次会った時には、さらに強くなってるだろうなぁ」

 

 自分の殻を破ったというか、己を縛る鎖を引きちぎったと言うべきか。

 何にせよ、あの人にとって俺とのバトルは、変わるきっかけになった一戦になるだろう。

 

「おー!リョーおかえり!」

 

「お疲れさま」

 

「いいバトルだった、よくやったぞリョウマ」

 

 イツキ、ミカゲさん、ケイスケ先輩も、俺を労ったり称えてくれたりしてくれる、へへっ。

 

 さっきの昼休憩の時に勝ったスポドリを飲みつつ、一息。ふぅ。

 

「次はいよいよ、ゴジョウイン先輩との決勝だね」

 

 席を空けてくれたマユちゃんが、その隣に座る。

 

「ん、この間戦った時は負けたが、今日こそは勝ってみせる」

 

 あの時はまだ通算三回目のバトルだったからな。

 だが今の俺は違う、地区大会を勝ち抜き、こうして決勝まで勝ち抜いてきた自負と、それに比例する実力もある。

 

 それでも死力を尽くして勝てるかどうかだが、まぁなんとかなるやろ。

 

 って余裕ぶっこいてるフリをしていたら、

 

「センパイ!オウサカセンパイ!大変です!」

 

 隣のブースで、シノミヤ先輩と一緒にいたはずのナナちゃんが駆け寄って来た。

 

「大変?どうしたんだ、ナナちゃん」

 

 

 

「ゴジョウイン先輩が、負けちゃったんです!」

 

 

 

「「「「「!?」」」」」 

 

 ゴジョウイン・アマネが負けた。

 

 その事実に、俺達は驚愕するしかなかった。

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