ガンダムブレイカー・シンフォニーRe:BREAK 作:さくらおにぎり
創響学園 学生会室。
広々とした部屋に、見苦しくない程度の調度品が飾られたその空間の、マボガニーのデスクの椅子に腰掛ける女子生徒――学生会長は、役員の生徒の報告を聞いて、疑問に目を細めた。
「あの
凛とした佇まいに、琴を奏でたような声に、役員の生徒は声を上擦らせながら答える。
「はい。ガンプラバトル部部長のサイキ先輩が、審判として立ち会っていたことから、間違いありません」
同じくその報告を横から聞いていた副会長――こちらも女子生徒は、愉快そうに微笑する。
「学生会の方からそろそろお咎めの一つでも……と思っていたけれど、ちょうどいいタイミングでお灸を据えられたようね」
「転入生……というと。確か二年の、オウサカ・リョウマという男子だったか」
学生会長は転入生の学年と名前を確かめる。
最近に追記された学生名簿に、『
「堕ちるところまで堕ちたとは言え、まさかこの学園でウマノに勝てるビルダーが他にいたとはな」
「気になっちゃう?」
副会長が横から名簿を覗いてくる。
「気になる、か……そうだな」
「あらあら、アマネにもついに春が来たのかしら?」
「茶化すなトモエ」
学生会長は名簿を閉じると、報告に来た役員の生徒に向き直る。
「それで、他には?」
「はい。負けた条件として、二年のアサナギ・マユさん、タツナミ・イツキさんの両名には、自分から話しかけない、必要以上に近付かない。とのことです」
この結果に、副会長は当然とでも言うように苦笑する。
「ウマノくんはガンプラバトルで幅を利かせていた面もあるから、ぽっと出の転入生に負けたとなれば、鼻っ柱も真っ二つにされて、随分肩身の狭い思いをすることになるでしょうね。まぁ自業自得だけど」
「だが、おかげでイエローカードを切る手間が省けた。その意味では、このオウサカ・リョウマには感謝すべきだな」
それに、と学生会長の視線がガラス張りの戸棚に向けられる。
「……久々に、面白いガンプラバトルが出来そうだ」
その中に、美しいホワイトグレーのガンプラが静かに鎮座していた――。
仮入部から正式に入部届を提出して、晴れてガンプラバトル部の仲間入りだ。
現在、ガンプラバトル部に所属しているのは、俺とマユちゃん、イツキ、ケイスケ先輩(彼とは下の名前で呼び合うことにした)の実質四人だけ。(馬の骨は今のところノーカン)
実際のところは、今年の新一年生が何人か入部していたのだが、例によって例のごとく馬の骨が先輩風を吹かし、それに嫌気が差してやめていったらしい。
あの馬の骨ホント余計なことしかしてねぇな!?
いもしない人間のことを悪く言っても詮無きことだ。
で、当面の問題は何かと言えば、
「多分、ウマノの奴は遠からず退部するだろうな」
俺が正式にガンプラバトル部に入部したその日の放課後、ケイスケ先輩はそう言った。
その懸念の意味に最初に気付いたのはマユちゃんだ。
「待ってくださいサイキ先輩。ウマノ先輩が退部したら、わたし達は……」
「そうだ。この場にいる四人だけになる。つまり、今まで少なくとも結果を残していたウマノの活躍も見込めなくなる。このままじゃ、本当に同好会になるってわけだ」
ケイスケ先輩は事実を淡々と告げる。
「えぇっ、ヤバくないですかそれ!」
事の重大さに気付いたイツキが声を上げる。
「せっかくリョーが入ってくれたのに、これじゃリョーがガンプラバトル部を潰したみたいに……!」
そうなんだよなぁ。
結果を残していた馬の骨を追い立てたのは俺だ。
馬の骨の今後の活躍を期待されていたから、ガンプラバトル部は今までギリギリのラインで"お目溢し"をしてもらっていたのだ。
それを俺が台無しにした今、ガンプラバトル部は何の結果も期待出来ない、学園からすればただの金食い虫なわけだ。
「あぁ、確かにヤバい。だが、まだ廃部が決まったわけじゃない」
そこでケイスケ先輩は、机の引き出しから一枚のチラシを取り出した。
「地区大会。全国大会に比べれば小規模だけど、トロフィーのひとつでも持ち帰れれば、『ウマノ・ホネオがいなくても俺達はやれる』って言い訳も出来る」
なるほど、何でもいいからとりあえず目に見える戦果を挙げろってね。
それで地区大会の開催はいつ……一週間後か。
……ん?おい、これまさか?
「ケイスケ先輩。これ、バトル形式が『5on5』ってなってますけど。ウマノ先輩が退部する前提だとしたら、出場出来ませんよね?」
「そう、そこが一番の問題だ……」
フー、とケイスケ先輩は大きな、幸せが逃げそうなくらい溜息をついた。
「地区大会まであと十日。数合わせでもなんでもいいから後一人部員を見つけて、その上で地区大会に優勝出来るくらいにまで強くなる。そうじゃなきゃ創響学園ガンプラバトル部はもれなく廃部だ」
「「「!!」」」
俺、マユちゃん、イツキの三人に戦慄が走る。
――最後の異世界転生生活は、早くも波乱に呑まれつつあった。
部員を後一人どうするって言われてもな。
俺は昨日に転校してきたばっかりで、友達らしいのはここの部員三人だけである。
やめていった一年生らももう違う部に入っているだろうし、今からどこかに入部しようなんて志そうとしている人など、そうそういるもんじゃない。
さて、どうするかね。
……馬の骨を拉致って、徹底的に"調教"して俺の言うこと以外聞けなくしてやってもいいかもなぁ。
っと、それは無し寄りの無し無し。そういうのが罷り通るのは異世界だけだ。
『あれ?オウサカくーん、どうしたのー?』
『おーいリョー、早く来いよー!』
おっと、オープン回線でマユちゃんとイツキが呼んでいる。
とりあえず今は、バトルだな。
「あぁ、悪い悪い。オウサカ・リョウマ、オリジネイトガンダム、行きます!」
オリジネイトがゲートから飛び立つ。
今回のフィールドは、『ビクトリア基地』
A.C.(アフターコロニー)の戦場になった場所のひとつだ。
コントローラーの調整はちゃんと終えてるからな、もう慌てて戦闘中に書き換えるなんてことはしなくてもいい。
ビクトリア基地のアスファルトに着地すると、兵士の宿舎の方から飛び出してくる機影が二つ。
一つはトリコロールカラーの、どこか女性的なフォルムを持つガンダム、『ガンダムエアリアル』。
もう一つは同じくトリコロールカラーだが、古代中国の戦士を思わせる外観に、右腕には龍の頭に似た武装を備えたガンダム、『シェンロンガンダム』だ。
見たところ、エアリアルがマユちゃんで、シェンロンがイツキってところかな。
『マユ、援護頼むぜ!』
開幕、背部からビームの長刀『ビームグレイブ』を抜き放ち、ブンブン振り回しながら迫るシェンロン。
『当たらなくても牽制になれば……!』
その後ろから、エアリアルがビームライフルで牽制射撃を行ってくる。
……そう、俺は今、マユちゃんとイツキの二人を同時に相手取っているのだ。
俺、まだバトル通算二回目なんですけど!?
初心者一人相手に経験者二人とかキツくないですかね!?
なんて泣き言は表に出さずに、エアリアルからのビーム射撃を躱しつつ、ウェポンセレクターから60mmバルカンを選択し、オリジネイトの頭部のこめかみ辺りから銃弾を速射、シェンロンを牽制する。
『そんなん当たるか!』
イツキのシェンロンはヒョイヒョイと飛び回ってバルカンの銃弾を躱しつつさらに接近してくる。
うむ、さすがはガンダム05、素早いな。
過去の異世界転生で、
いや、ガンダニュウム合金の強度とか頭おかしいわ。
だって、ドーバーガンを何発も直撃させてようやく小破するかどうかってレベルなんだもん、レッド1(ヒイロ・ユイ)はどうやってリーオーのビームサーベルでビルゴをバッサバッサ倒してたんだか。
まぁ、トーラスのビームライフル一丁だけでガンダニュウム並みに堅いネオ・チタニュウムで出来たサーペントを何十機も無力化してたプリベンター・ファイヤー(ルクレツィア・ノイン)はそれ以上に頭おかしい人だったけど。
あの世界じゃ俺は名もなきモブ兵士の一人だったから、ガンダムには勝てなかったよ。
……とまぁ、思い出語りはこの辺にしてと。
俺もオリジネイトの左マニピュレーターにビームサーベルを抜き放って、シェンロンのビームグレイブと打ち合う。
『とりゃりゃりゃりゃりゃー!』
振り下ろし、目にも止まらぬ二連突き、大きく踏み込みながら薙ぎ払い。
うーん、さすがに真っ向からの格闘戦はシェンロンの方に分があるか。
機体性能だけではない、イツキの思い切りの良い連撃も侮れないな、彼女には白兵戦のセンスがあるのかもしれない。
ビームグレイブの一撃をビームサーベルで受け、弾き返して、即座にシェンロンの腹部を蹴り飛ばす。
その横合いからマユちゃんのエアリアルがビームライフルを撃ち込んで来たので、素早くオリジネイトを回避させて、エアリアルへ接近する。
『ガンビット!』
すると、エアリアルのシールド『エスカッシャン』がプラットフォームから個々に分離すると、それぞれが意志を持ったかのように動き出し、縦横無尽にビームを放ってくる。
たかがビットだけど、これがバカにならない。
想像してみてくれよ、(七割まで出力を落とした)ビーム一発一発がディランザの重装甲を簡単に細切れにするくらい強いんだぞ?
――そう言えばA.S.の世界に異世界転生した時も、エアリアルの"中"には本当に意志が宿ってるとか、
ペイル社のゴルネリ四姉妹(で、合ってたっけ?)をハメて、"廃棄処分"寸前だった
今度、アニメの『水星の魔女』を観て勉強し直しておこう。俺が生きてきた異世界と、アニメとでは大きく異なる点もあるだろうし。
そうそう、このビットステイヴが放つビームの雨を、デミトレーナーで避けるのは本当にムリゲーだった。
しかも、遠近からビットステイヴがビームを撃ち込んでくる合間にもエアリアル本体のビームライフルも虎視眈々と狙ってきている。
イツキとは逆、マユちゃんは射撃のセンスがある。
ビームライフルじゃなくて、スナイパーライフルのような長射程の武装を使った方が強いかもな。
四方八方からのビームを掻い潜りーの、隙が見えたら一気に加速して肉迫!
エアリアルもビームライフルのバレルからビームブレイドを発振させて応戦してくる。
打ち付け合うピンクと青のサーベル。
長々と鍔迫り合いしてたらビットステイヴやシェンロンが後ろから来るので、エアリアルのビームブレイドを弾き返し、ショルダータックルで吹き飛ばす。
『喰らえ!』
すると背後から迫ってきていたイツキのシェンロンが、ドラゴンハングを伸ばしてきている。
なので、俺は敢えてオリジネイトをシェンロンに向かって前進させ――寸前で機体を屈ませて、ドラゴンハングの真下を潜り抜ける。
『んなっ!?』
ドラゴンハングは確かに脅威だ。まともに咬み付かれたら、オリジネイトの装甲なんぞ簡単に粉砕、もしくはゼロ距離の火炎放射で一瞬で焼き払われるだろう。
だが、ドラゴンハングの伸ばされた"首"は無防備だ。
懐に潜り込んでしまえば、ビームグレイブもそのリーチの長さが却って仇になる。
「そこは、バルカンも織り交ぜて牽制しておくべきだぞ、イツキ」
がら空きのシェンロンの脇腹へ、ビームライフルのゼロ距離射撃。
バイタルパートへの直撃に、撃墜判定を受けたシェンロンは崩れ落ちる。
『あーくそっ、ごめんマユ!』
シェンロンガンダム、撃破。
『ガンビットが通じないなら……ビットオンフォーム!』
すると、ビットステイヴの群れが今度はエアリアル本体とビームライフルのバレルに接続される。
――あの形態になると、火力と機動力が上がる。
とは言っても、出力はダリルバルデには及ばないし、機動性や飛行力もファラクトの方が上、総合力で見てもようやくミカエリスを少し上回るくらいか?
エアリアルって革新的ではあるけど、あくまでも既存技術の延長線に過ぎないし、どうしても器用貧乏感が否めないんだよなぁ……
スピードアップしたエアリアルが、ビットステイヴの接続によって高出力化したビームライフルを連射してくるものの、慌てずにオリジネイトに回避運動をさせる。
正確な射撃だな、それ故に避けやすい。ってどこぞの青い巨星も言っていた通りだ。
マユちゃんの射撃は正確なんだけど正直過ぎるんだよな。
連射されるビームを最低限のモーションで躱しつつ、一息にエアリアルに再接近。
ビットオンフォーム時のビームライフルは、ビームブレイドを使うことが出来ないのは知っている。
『っ!』
エアリアルは慌てて左マニピュレーターにバックパックのビームサーベルへ伸ばそうとするが、そこでそれは悪手だ。
背中へ手を伸ばす瞬間、懐がガラ空きになってしまう。
そこを文字通りビームサーベルで突く。
バイタルパートを貫かれ、エアリアルは小爆発と共に崩れ落ちた。
ガンダムエアリアル、撃破。
『Battle ended!!』
リザルト画面を見流しつつ、オリジネイトをスキャナーから回収していると、
「おぅ、お疲れさん。やっぱリョウマ一人でも余裕だったな」
観戦していたケイスケ先輩がそう声を掛けてきた。
彼の手元には、『ジム・キャノンII』のパーツの他、バズーカなども見える辺り、地区大会に向けた砲撃戦仕様の機体を作ってるらしい。
「で、お前から見ても、二人はどうよ?」
「そうですね……イツキは接近戦に強く、アサナギさんは逆に射撃戦に強い。この二人が互いの役割をより理解して、連携を密にして来られたら、厳しかったかもしれません」
俺なりの忌憚のない意見だ。
あの二人が単体ずつなら、(今のところ)あの馬の骨に劣っているかもしれないが、逆に自身の得意な土俵に引き摺り込めれば、勝てる可能性が高まるというわけだ。
「なるほどな。聞いたか二人とも、リョウマのお眼鏡にかなったぞ」
ふとケイスケ先輩は、俺の向かい側で悔しがったり落ち込んでいたりする二人に呼び掛ける。
「とりあえずはリョーに認めてもらえたってとこか……でも、こんくらいであたしは諦めねーぞ。地区大会までに絶対一回はリョーに勝ってやるからな」
ふんすふんすとやる気を見せるイツキ。
「わたしはまだちょっと自信無いけど……イツキが頑張るなら、わたしもっ」
少し弱気ながらも、マユちゃんもやる気を見せている。
やる気があるのはいいことだ。
それから、下校時間が近くなるまでは何度かバトルを行ったところで、今日の活動はここまでだ。
最後に、ケイスケ先輩の言葉で締め括りだ。
「地区大会に出場するには、最低でも後一人部員を確保しなきゃならねぇ。俺の方でもアテはあるから、ダメ元で頼んでみるけど、期待はすんなよ?各人で、積極的に部員確保に動いてくれ。以上、解散!」
「「「お疲れ様でしたー!」」」
各々の荷物を担いで、部室を出る。
「マユー、帰りに"ダヤマ電機"寄らねー?あたし、買いたいもんあるんだけど」
「いいよイツキ。オウサカくんは?」
イツキがマユちゃんを、ダヤマ電機なる場所――家電製品店か?――に行こうぜと誘っていると、マユちゃんからも誘ってきた。
「あぁ、いいよ」
この町の地理に関してはまだ詳しくないからな、二人に同行するついでに、ダヤマ電機周辺の町並みを覚えておこう。
「寄り道すんなとは言わねぇけど、なるべく早く帰るんだぞー?」
ケイスケ先輩はジム・キャノンⅡのパーツを持ち帰っている辺り、自宅に帰ってからも手を付けるようだ。
ふーむ、俺もオリジネイトに何か手を加えるべきかな?
イツキがダヤマ電機とやらに何の買い物をしに行くかは分からないが、そのついでにホビーのコーナーにも寄らせてもらおう。というか、二人ともそこが目当てかもしれないな。
校門前でケイスケ先輩と別れて、俺、マユちゃん、イツキの三人はそのまま繁華街の方へ向かう。
ケータイのコーナーや、美容に関連したコーナーを一通り見て回ったところで、ホビーのガンプラ売り場へ。どうやらイツキの来店目的は、最初からここだったらしい。
「イツキは何を買うの?」
「んー、改造のパーツとか色々。今日、リョーとバトルしててさ、これじゃ絶対勝てねーじゃん、って思って、さっきから色々改造案が浮かんでるんだよ。で、実物を見てどうしよっかなーって」
ほうほう、イツキは既に改造のプランがいくつか浮かんでいると。
「マユはエアリアルをどうするかとか、考えてんの?」
「うーん……同じGUND-ARMのファラクトとかシュバルゼッテとかをミキシングして、強化出来ないかなって考えてはいるんだけど……」
ふむふむ、マユちゃんは同じ系列のキットとミキシング……Mixing?あぁ、混ぜ合わせて作るってことか。
しかし、こうして見るとガンプラってものすごい種類があるのな。
――ん?なんかこう、品揃えがどうのこうのって不満が無かったっけ……これも存在しない記憶か?
まぁいいか、誰かの身体に憑依するタイプの異世界転移だとよくあることだ、気にしないでおこう。
それよりも、オリジネイトをどう改造するか……いや、さらにそれよりもだな。
"俺"、実はプラモデルを作ったことが無いのである。
当然と言えば当然なのだが、剣と魔法のハイファンタジー世界にはプラスチックモデルなんてものはない。木製や紙製の船や城の模型なら存在するけど、あれはそもそも『組み立てて楽しむもの』でない、完成品の状態で売られているものが大半だ。
ガンダム世界に転生した時も、基本的に戦ってばっかりだったから、プラモデルなんて触る暇もない。
「俺はどうするかな……」
ぼんやりそう呟きつつ、とりあえずHGのコーナーを見て回る。
ぶっちゃけるとあのオリジネイト、元々の完成度が素人目に見ても高いから、下手に手を加えると却って性能が下がる可能性も否めない。
まずは俺自身がガンプラ作りを上手くならなければならないってことだな。
よし、この『ジム』を買おう。安いし作りやすそうだし。
それにしてもRGM-79か、懐かしいなぁ……
――こいつでジオン脅威のMAどもをバッサバッサと薙ぎ払った、あの地獄の一年戦争が、まるで遥か昔のことのようだ。……実際、俺の中では1000年以上の時が経っているんだけど。
「オウサカくんは……ジム?」
ジムのパッケージを手にしていた俺の様子を、マユちゃんが横合いから覗いてくる。
「オリジネイトは出来るだけ今の状態を維持しておきたいから、このジムをテストベッドにして改造してみるよ」
下手にオリジネイトを改造しようとして、いざ地区大会の日がやって来たらバラバラになってました、では話にならないので、どういった改造プランとするかの組み立てを、ジムで行うのだ。
つまり俺の中では、最初からこのジムは捨て石にして、地区大会は今のオリジネイトで勝ち抜こうと思っている。
首尾よくオリジネイトを改造可能な状況が作れれば、それも行うつもりではあるが。
「そうなんだ。ジムは簡単なキットだから、参考になるよね」
マユちゃんはニコニコしてて楽しそうだ。
イツキが買うものを決めたところで、俺もそれに着いていってお会計を済ませる。
ダヤマ電機を出る頃には、辺りはもうけっこう暗い。時刻は19時くらいだろうか。
三人並んで歩き、途中でマユちゃんと別れる。
「それじゃぁまた明日ね、イツキ、オウサカくん」
「うん、また明日」
「じゃーなー、マユ」
マユちゃんと別れた後は、イツキとふたりで帰る。
小学四年の頃までは同じ学校に通っていたから当然と言えば当然か、イツキとはお互いに自宅が近いのだ。
「うーん、部員を後一人なぁ……」
イツキが難しそうな顔をして悩んでいる。
「イツキの友達から誘えそうな人はいないのか?」
数日同じクラスメートとして過ごして分かったが、少し異性に対して苦手意識のあるマユちゃんとは反対に、イツキは気さくで男勝りな性格で、男女別け隔てなく接し、おまけに顔やスタイルもいいため、男子の友達も多いが、それよりも女子から好かれる。
暇してそうな奴が一人か二人くらいいそうなものだが、
「いやー、あたしが誘えそうな友達はみんな部活やってるし。リョーは……転入してきたばっかりだもんなぁ」
そう。俺はまだイツキとマユちゃんくらいしか友達らしい友達がいない。
イツキですら誘えそうな人がいないとなると、ケイスケ先輩のアテを頼りにするしかないかもしれない。
「そうか……」
「あーぁ、その辺にリョーくらいガンプラバトルが強くて性格もいい奴、転がってないかなー」
人を石ころみたいに言うな。ほんとにいたらびっくりするわ。
うだうだとしょーもないことを話しつつも、そろそろイツキの家が近くなってきた。
「んじゃ、また明日なーリョー」
「じゃぁな、イツキ」
互いに手を振り合って、俺も自宅への帰路を取る。
今日の晩飯は何作ろっかなー。
たかが後一人、されど後一人。
いざこうなると、なかなか見つからないものである。
俺も、とりあえず自分のクラスメート達に挨拶代わりに片っ端から声を掛けてみたが、大抵はもう既に他の部に入っているか、家庭の事情やアルバイトに忙しかったり、そもそもガンプラに興味が無いと言う人ばかりだ。
今日のところは、何の成果も挙げられませんでした!ということですごすごとガンプラバトル部の活動に勤しむとしよう。
イツキとマユちゃんは昨日にダヤマ電機で購入したものを使って、改造パーツの作成やらなんやらしてるし、ケイスケ先輩もジム・キャノンⅡの改造に忙しいようだし……俺はどうしようかな?
昨日に買ったジムは昨夜にとりあえず作ってみてそのまま部屋のデスクの上に転がってるし、ソロプレイでもして練習しよう。
というわけで、筐体を立ち上げてミッションモードを選択しようとしたところで、コンコンと部室のドアがノックされる。
「はいよ、どなたですかいっと……」
あーらよっと、と席から立ってケイスケ先輩がドアを開けると。
「失礼する」
「お忙しいところにごめんなさいね、サイキくん」
二人組の女子生徒が入って来た。
片方は黒髪ロングが素晴らしい美人さんと、もう片方も赤茶髪のセミロングを揺らした美人さん。
……この学園の美少女偏差値高過ぎませんか?女優目指してる人がこの学園に来たらあまりのレベルの違いに涙流して絶望しそう。
「ん?ゴジョウイン会長に、シノミヤ副会長じゃないか。……まさか、ウマノの奴がまたなんかやらかしたか?」
ふむふむ、この美人双璧は学生会長と副会長か。
馬の骨がなんかやらかしたから、そのお咎め……いや、まさかいきなり廃部の決定を言い渡しに来たとか?
「いえいえ、そうではないのよ。本来なら、そのウマノくんにそろそろお咎めのひとつでも……と思っていたのだけど、そこの彼のおかげで必要無くなっちゃったから」
シノミヤ副会長が、「そこの彼」と言って俺に視線を向けてきたので、手を止めて話に混ざるとしよう。
「俺のことですか?」
「そうそう、あなたとは初対面だったわね。私は『シノミヤ・トモエ』。この学園の学生会の副会長をさせていただいているわ」
「最近に転入してきました、二年のオウサカ・リョウマです。まぁ確かにあの馬のほn……ウマノ先輩にはガンプラバトルには勝ちましたが」
すると、ゴジョウイン会長の方も俺に視線を向けた。
「やはり本当だったか。君が、あのウマノをいとも容易く倒したというのは」
あの、って言う辺りあの馬の骨、やっぱりそこそこ有名だったんだろうか。全然そんな人には見えないし見えなかったし見ようとも思わないけど。
「いいだろう。オウサカ・リョウマ、君にガンプラバトルを申し込む」
「へ?」
えっ、何この急展開。
というかこのゴジョウイン会長、ガンプラバトルしてる人なの?
「実はね、オウサカくんがウマノくんを打ち負かしたって聞いてからというもの、アマネは興味津々なのよ」
「は、はぁ……」
なんであの馬の骨を倒しただけで、この美人会長に目を付けられるんですかね、やっぱりこの世界ご都合主義過ぎんだろ!?
俺が困惑してる間にも、ゴジョウイン会長はしれっと筐体を立ち上げてセッティングしてらっしゃる。
「それで、俺にはこれから『ゴジョウイン・アマネ』会長とバトルをしてほしいと」
「そうなの。美人のお姉さんのお願いだと思って、ね♪」
茶目っ気たっぷりにウインクしてくれるシノミヤ副会長。
普通の男子ならコロッとオチたかもしれないが、しかし俺は騙されないぞ。
「えーっと……俺が負けたら退学になるとか、これはそういうアレですか?」
「……いや、さすがにそんな世紀末なことはしないわよ?ペナルティとかは無いから、アマネのわがままに付き合ってあげて、ってこと」
「あ、良かった。ならいいですよ」
ペナルティ無しなら安いもんだよ、負けたら死ぬとか異世界では普通にあるから。
「ふふっ、ありがとう。あと、ひとつ言っておくと……アマネは、『
「トモエ、余計なことを言うな」
ぴしゃりとゴジョウイン会長からのお言葉。
うん、そんな感じはしてたよ。なんかもう、気配というかプレッシャーが馬の骨と比較できんレベル――戦場のど真ん中で、エースパイロットの乗った高性能機と遭遇した時のソレに近い。
つまりこのゴジョウイン会長、ガンプラバトルに限ってかもしれないが、"本物のエース"だ。……生まれた時代が時代なら、若くして佐官クラスになった超エリート士官だったかもしれないと思うくらいには。
俺の尻目で、マユちゃんとイツキがなんかあわあわしてるけど、気にすることも無いだろう。
ただひとつ言いたいことがあるとすれば――俺、まだガンプラバトルをするのこれで三回目なんですけどー!?
実戦二回目で、
ランダムフィールドセレクトは、『サイド6外宙域』
ここは確か……コンスコンがリック・ドム12機を引っ提げてきたけど、『あまりにも相手が悪過ぎた』戦場だな。
南極条約やら何やらに色々と抵触するという前提を抜きにして言えば、ここでホワイトベース隊を壊滅させるには千載一遇の好機だったのだ。
ただ、『あまりにも相手が悪過ぎた』の一言に尽きる。
戦闘単位やキルレシオをMS換算で考えれば、『単騎でMS九機を一方的に撃墜する』など"本来なら"有り得ないことだし、自軍戦力の逐次投入という戦術における愚を犯さず、手数の多さによる短期決戦を即断即決した点においては、コンスコンはむしろ有能だろう。
本当にしつこく言うが、『あまりにも相手が悪過ぎた』としか言いようがない。
それはさておき……宇宙でのバトルか。
下方向へのベクトルを気にしないでいいぶん、宇宙の方が楽といえば楽なんだよなぁ。
ローディングとコンディションのオールグリーンを確認してから、音声入力。
「オウサカ・リョウマ、オリジネイトガンダム、行きます!」
ゲートから勢いよく発進!
背景にコロニーやホワイトベース、チベなんかも見える辺り、なかなか凝ったホログラムだな。
っと、索敵索敵……シンプルな宇宙ステージっぽいから、障害物とかは無いはず。
すると、2時方向に感あり。
遥か彼方から、宇宙を切り裂くかのような白い機影が見えた。
あれは……『
いや、それにしてやけに生物的な外観だし、スラスターの光も蒼炎のそれじゃなくて、紫色をした昆虫の翅のようで……
えーっと、ザンスカールのMSだったっけ?あー、マニピュレーターの形状が左右対称だから違うな。
モニターが捉えた機体名は――『ゼイドラ・スタイン』
ゼイドラ……あぁ思い出した!A.G.(アドバンスド・ジェネレーション)のヴェイガンのMSだ!
あの世界への異世界転生は一度しか無かったから、すっかり忘れとったわ。
『君のその実力、私に見せてみろ』
不意にオープン回線にて、ゴジョウイン会長の試すような声が届く。
まだガンプラバトルにおける宇宙戦闘には慣れてないからさぁ、
「お手柔らかにお願いしますよ、ゴジョウイン会長」
『行くぞ』
……聞いてないですねちくしょう。
とかなんとか言ってる内にも、ゼイドラ・スタインは右腕に保持したビームライフル――『ゼイドライフル』を連射してくる。
慌てずに回避……三発に一発くらいの割合で予測射撃で回避先にビームを"置く"のやめてくれませんかね!?今装甲の先っちょ部分掠めたんだが!
「くっ……!」
こっちも頭部バルカンとビームライフルを伴射して反撃するけど、ゼイドラ・スタインの機動性も高いわ、ゴジョウイン会長の反応速度も早いわでまるで当たらねぇ。
予測射撃する先すら読んで回避取ってるなこの人……「戦いとは常に二手三手先を考えて行うものだ」ってどこぞのマザコンシスコンロリコン変態仮面も言ってた通りのことを実践してるってのか。
戦場なんて水物、二手三手先を考えることは出来ても、0.5秒後には誰か死んだか、それとも自分が死んでるか分からないものだぞ。
60mmの銃弾とメガ粒子を掻い潜って、ゼイドラ・スタインが左腕に尾部の実体剣――『ゼイドラソード』を抜いて一気に迫ってくるのを目視、即座にウェポンセレクターからビームサーベルを選択し、向こうと同じく左マニピュレーターにビームサーベルを抜き放ち様に、ゼイドラソードに打ち込む。
一撃、二撃と弾き返し合い――ここで後手に回らず反撃に出る!
すかさずビームライフルをガンマンの早撃ちのごとく構え撃つが、ゼイドラ・スタインはその場で上昇して回避、同時に胸部のクリアグリーンのパーツが輝きを増す。
確かあれってメガ粒子砲、っていうかビームバスターってジェネレーター直結型の内蔵火器だったはず……急速回避。
0.5秒の瞬間、オリジネイトがいた空間を、ビームバスターの激しい閃光が通過していった。
あんなもんシールドで受けたりしたら、そのまま貫通されて一発アウトだ。
『やるな』
「ゴジョウイン会長こそ……」
言葉を交わしている内にも、ゼイドラ・スタインはゼイドライフルをリアスカート部に納めて、空いた右マニピュレーターの掌部のビームバルカンの銃口からビームサーベルを発振させて斬り掛かってくる。
そうそう、ヴェイガン系の機体って、掌にビームバルカン兼ビームサーベルを装備してるんだったよな。
ゼイドラソードとビームサーベルの二刀流には、こっちもビームサーベルを両手に持っての二刀流で対抗する。
一撃、二撃、三撃、四撃、五撃と斬り結びながらも、ヒットアンドアウェイとそれに対する肉迫が繰り出される。
やはり、強い……!
リョウマのオリジネイトガンダムと、アマネのゼイドラ・スタインが、サイド6の
「オウサカくん、あのゴジョウイン会長と互角に渡り合ってる……!」
マユは感嘆を口にする。
『
「やっぱリョーはすげーぜ!」
イツキも、アマネがガンプラバトルにおける一角の人物であることは知っている。
それほどの実力を持つアマネに、喰らいついているリョウマの実力もまたそれに比例していると言っていいだろう。
二年生二人がリョウマの実力を称えている一方で、ケイスケとトモエの三年生二人はというと。
「サイキくんから見て、このバトルはどう見えるかしら?」
ふと、トモエがケイスケの意見を募る。
「そうだな……確かに互角だけど、リョウマの防戦状態が長く続いている。攻めに転じようにも、ゴジョウイン会長の攻撃が激しい。今はリョウマも対応出来てっけど、……長くは、保たねぇかもな」
ケイスケの言う通り、ゼイドラ・スタインの攻撃に対して、オリジネイトガンダムが後出しで対応している、という状態が続いているが、オリジネイトガンダムの損傷が僅かながら重なりつつある。
「この膠着状態が続くようなら、いずれジリ貧でリョウマが負ける」
彼の見立て通りの結果となるか、あるいは。
ゼイドラ・スタインの右マニピュレーターからビームバルカンが連射される。
こう迎撃されると直進は出来ず、迂回してビームバルカンのビーム弾を躱しながら接近せざるを得ないが、迂回している内にゼイドラ・スタインが逆サイドから回り込んでゼイドラソードで斬り掛かってくる。
ってか……マジで洒落にならんレベルで強いぞこの人!?
こっちが接近したいタイミングで上手く対応されるし、こっちが近付かれたくないタイミングで待ってましたとばかり斬り込んでくるし……まずい、相手のペースに乗せられているな。
地形を利用しようにもこのステージには何もないし、後ろに下がってイニシアティブを取り直そうにも、向こうの方が速い。
タイム連打も……これポーズ画面とか出来ないから意味が無い。
なんか違うゲームのことが思い浮かんだけど、それどころじゃねぇ!
……あれ、この状況割りと詰んでないか?
『隙あり!』
意識を別のことに割いた瞬間、ゼイドラ・スタインのゼイドラソードが一閃、オリジネイトの左腕を斬り飛ばされてしまった。
「しまっ……!」
『もらったぞ!』
すかさずバイタルパートに突き出されるゼイドラソード。
――これしかない!
俺は咄嗟に操縦桿を捻り、上体を左上へズラす。
直後、突き出されたゼイドラソードの刃が、オリジネイトのボディの右脇腹を斬り裂き抉る。
だがそれだけだ、撃墜には至っていない。
すぐに右の脇を締めて、ゼイドラソードごとゼイドラ・スタインの左腕を右脇の下に挟み込む。
『むっ?』
これでこいつの動きは封じられた。
さぁ、ここからは肉弾戦だ。
「喰らえ!」
ゼイドラ・スタインの頭部――コクピットを頭突き、からのゼロ距離でバルカンの撃ちまくr
『くっ!?なめる、なッ!』
しかし、ゴジョウイン会長の次の手も早い、ゼイドラ・スタインの右マニピュレーターにオリジネイトの頭部を掴まれ、ゼロ距離でビームサーベルを発振、頭部を破壊されてしまった。
ガンダムファイトならこれで俺の負けだが、これはガンプラバトルだ、まだ負けてはいない!
右脇を緩めてゼイドラ・スタインへの拘束を緩め――同時にリアスカートのハイパーバズーカを懸架するラックを切り離し――てその場でスピンするようにゼイドラ・スタインとの間合いを取って、
「そらよっ!」
ラックから切り離したハイパーバズーカを蹴り飛ばす。
ゼイドラ・スタインは当然、ゼイドラソードでハイパーバズーカを斬り捨て――一発も撃っていないロケット弾が引火して、大爆発を起こす。
『チィッ!?』
直撃ではないが、ロケット弾の爆風に巻き込まれれば、それなりのダメージと、爆風によって体勢が崩れるはずだ。
ロケット弾の爆煙の中へ突っ込む!
煙を突き抜けた先は――ゼイドラ・スタインの頭部。
そこへビームサーベルを突き立てて頭部のコクピットを破壊すれば――
瞬間、画面が真っ白になったと思ったら真っ暗になり、【LOSE】の赤文字が横切った。
オリジネイトガンダム、撃破。
え?……あぁ、今のは胸部のビームバスターにやられたのか。
勝ちに焦って、敵の状態を見過ごすとは、俺も鈍ったか……?
『Battle ended!!』
「フゥッ、フゥッ……久しぶりに、肝が冷えたな……」
ホログラムが消失すると、対面していたゴジョウイン会長は少し息が荒くなっていた。紅潮した頬に小刻みな吐息……美人がそれをすると艶かしくて大変理性に悪いです。
「お疲れ様でした。シノミヤ副会長が言っていた通り、強いですね」
しれっと意識を切り替える。
負けたものはしゃーない、死ななかっただけ遥かにマシだ。
「こちらこそ……いいバトルだった、ありがとう」
ゴジョウイン会長が手を差し出してきたので、俺もそれに応じて握手する。
背も高くて凛々しい人だけど、女の子の手って感じだ。ガッチリ握られたけど。
「ウマノの代わりに君がいれば、地区大会も勝ち抜けるだろう」
「あまり買い被られても困りますが……やるからには全力を尽くします」
「ふふっ、いい返事だ。活躍を期待しているぞ」
やだ、イケメンだわこの人……
「アマネ、オウサカくん、お疲れ様ー」
「お疲れ。いやー、すげぇバトルだった。久々にいいもの見れたわ」
「すみませんケイスケ先輩、負けました」
出来れば勝ちたかったけど、ダメでした。サーセン。
「いやいや、ゴジョウイン会長相手にあそこまで食い下がれる奴はそうそういねぇって。実質、引き分けみたいなもんだろ」
引き分けと言ってくれるけど、最後の最後でビームバスターの存在が頭から抜け落ちていたのは俺のミスだ。
うーん、勝てたはずの勝負で勝機を逃してしまったな、悔しい。
「それじゃぁアマネ、そろそろ学生会室に戻りましょうか」
「うむ。忙しいところに押しかけさせてくれて感謝する。では、また」
一礼してから、ゴジョウイン会長とシノミヤ副会長は部室を後にしていく。
学生会の双璧が退室した後、マユちゃんとイツキが気遣わしげに声を掛けてきた。
「オウサカくん、お疲れさま」
「うーん、さすがのリョーも会長には勝てなかったかー……」
そりゃガンプラバトル通算三回目の男が、いきなり全国レベルの人に勝てたらご都合主義過ぎるだろうよ。
「負けて悔しいのは悔しい。でも、全国にはゴジョウイン会長みたいなのがゴロゴロいるわけだ。今回のバトルは、全国のレベルの高さを知る、いい機会だったよ」
強がりじゃないぞ、異世界転生だからって簡単に無双させてくれると思ったら大間違いだと、自戒することが出来た。
「リョーは前向きだなー……よしっ、あたしも頑張るぜ!」
「わたしも頑張らないと!」
俺のバトルを観たおかげか、二人のやる気が出たようだ。
「ところでケイスケ先輩、部員のアテの方はどうでした?」
「あー……今のゴジョウイン会長がそのアテだったんだが、今朝に頼み込んでも、断られちまってな」
ケイスケ先輩が言うには、ゴジョウイン会長は学生会の業務だけでなく、父が創響学園の理事長で、その理事長補佐の仕事も兼ねているとのことで、一学生でありながら相当に多忙を極めているらしい。
その上でプロのビルダーとしても活躍を期待されていると。
極めつけはゴジョウイン会長がかなりの美少女であることだ、天から一物も二物も与えられる人って本当にいるようだ。
ケイスケ先輩は、地区大会の前後だけでも入部してくれないかと頼み込んだが、それも出来ないとのことだ。仕方ないね。
「まぁ、結局は草の根から頑張れってことですね」
地区大会まであと八日。
なんとかしないとなぁ……