ガンダムブレイカー・シンフォニーRe:BREAK 作:さくらおにぎり
初日のバトルを終えてからは、会場周辺の露店を巡ったり、物販コーナーでお土産や会場限定品など買い込んでいく、出場選手やギャラリー達。
俺達チーム・ビルドシンフォニーも例外ではなく、お金を使うかどうかはともかく、露店や物販コーナーを見て回っていた。
イツキは露店のジャンクフードをたくさん買い込んでいるが、そんなに食べて夕飯は食べられるんだろうか。
「ミカゲちゃんも一緒なら良かったんだけどなー」
綿飴を頬張るイツキは、この場にいないミカゲさんのことを挙げた。
そう、ミカゲさんは「少し疲れたから、先に選手村に戻るわ」と言っていたので、俺達とは別行動だ。
無理に付き合わせて体調を崩されても困るので、先に帰ってもらっているが。
「イツキ……そんなに食べて、夕飯はどうするの」
マユちゃんは、さっきから色々食べまくってるイツキに、若干顔を引き攣らせている。
「へーきへーき、おやつと晩飯は別腹だし!」
なんだその、『甘いものは別腹』の派生形みたいなものは。
「明日になったら腹壊してバトル出来ません、なんてのはやめてくれよ?」
ケイスケ先輩も呆れている。ほんまそれな。
「ケイスケ先輩、このあとは、18時に入浴、19時に夕飯でしたっけ」
俺はこのあとの予定を先輩に確認する。
「おぅ。買いたいものがあるんなら、今のうちに買っとけよ」
そうだなぁ、思い出に会場限定ガンプラのひとつでも買っておこうかな?
その一方、先に選手村に戻ると言っていたトウカは、何故か学園の制服に着替え、髪を結って瓶底眼鏡をかけた、『地味子ちゃんモード』になって、選手権大会の会場に向かっていた。
実のところトウカは、この大会開催の数日前に、トモエと連絡を取り合い、ある事を確認していた。
それは、この全国大会、そのものについてだ。
ケイスケは、チーム・ビルドシンフォニーの参加については、"特別枠"をアマネからいただいたと言っていたが、そのアマネはあくまでも中継。
アマネを介しての確認だが、トモエが言うには、
「本来こう言う大会は、遅くても半年くらい前には告知が為されているはずなのだけど、ほぼ一週間前になって突然情報が開示され、アマネも企業越しに特別招待枠を貰ったとしか言ってない……不自然と言えば不自然ね」
とのこと。
告知が遅れたしてはあまりにも遅すぎる。
まるでその場の思い付きのように開催が予告された大会。
加えて、招待枠が与えられるケースも不明。
チーム・ビルドシンフォニーは、レイセングループやツキノミヤ財閥にその実力を認められたから、と言う理由があるのでまだ分からないでもないが、チユキ達や、シオン達チーム・ブラウシュヴェルトもこの大会に参加している。
特別招待枠なのかは不明、では正規の招待枠についても調べても何の情報も上がっていない。
特別招待枠に選ばれた選手チームだけが参加出来る仕様なのかもしれないが、そうだとしても通達はもっと早くされてしかるべきだろう。
だが、突然の大会開催にも関わらずスポンサーを集められたのは、主催者の手腕が見事だったと言うべきなのか、あるいは……
トウカ自身も、調べられるものは出来る限り調べぬいたが、公開されているのものに準じたそれしか見つからなかった。
「(何かは知らないけれど、主催者は何かを隠している)」
確定では無いが、限りなく黒に近いグレーだと、トウカはそう読み取っていた。
故にこうして『選手としては別人のミカゲ・トウカ』として、会場を探ろうとしているのだ。
万が一警備員や大会関係者に見つかって咎められても、「友達とはぐれて迷子になってしまったんです」と下手に出ていれば、ましてや『ミカゲ・トウカ選手』とは別の人なので、外に道案内されて追い出されはするだろうが、出場資格を取り上げられることも無いだろう、と保険をかけている。
まさかミカゲ・トウカと言う美少女が、こんな地味娘ちゃんと同一人物ではあるまい……と言うのは、既に普段の学園生活で証明されている。
そんなわけで、バトルも終わって人気も疎らになった会場に進入するトウカ(地味子ちゃんモード)。
念には念を入れて、スマートフォンの位置情報アプリも起動させて、いかにも『道に迷っている』風な様子を見せておく。
観客が出入り出来るような場所ではなく、非常階段を下へ下へ降りていく。
こういったスタジアムに何かを隠すとしたら、地下だろう。
関係者以外立ち入り禁止のタグの付いたチェーンを乗り越え、さらに下へ。
ここまで来たらもう誤魔化せないだろう、とトウカはスマートフォンをサイレントモードに切り替え、懐にしまう。
階段の最下層まで降りると、スタッフオンリーのドアが。
ドアノブを捻ってみて、開いていることを確かめると、そっと開けて、隙間から中を窺う……
電灯を切っているのか、中は真っ暗だ。
トウカは意を決してドアの中へ踏み込――
「そこで何をしている」
「……ッ!?」
見つかった。
トウカはバッと振り返ると――
そこにいたのは、ツキノミヤ・ヤコその人だった。
「君は確か……ビルドシンフォニーの、ミカゲ・トウカ?いや、ん?はて、見間違いか勘違いか?」
ヤコは訝しげに目を細めながら、トウカに歩み寄ってくる。
恐らく地味子ちゃんモードの時のトウカを見ていないので、ハッキリ分からないのだろう。
トウカはこの瞬間、思考を回転させていた。
ヤコは、"どっち"の人間なのか。
素直に自分が『ビルドシンフォニーのミカゲ・トウカ』であることを明かすべきか、あくまでも別人を装うべきか。
「まぁ、君が誰かはよしとしようか。……わざわざ関係者以外立ち入り禁止区域に踏み込んでいるんだ、何が目的だ?」
ゆらり、ゆらり、とヤコの髪が、妖狐の九尾のように逆立つ。どうなってんだその黒髪。
落ち着け、相手に呑まれるな、とトウカは平静さを保って応じる。
「……ここであったことを、他言無用にすると約束してくれるのなら、話します」
「良かろう。言質は君に取らせておくとしよう」
言質を取らせても良い、と言うことは、ヤコは疚しいことをしようとしているわけではないのか。
とは言え言質は言質だ、トウカは結っていた髪を下ろし、瓶底眼鏡を外してみせた。
「ふむ、やはりビルドシンフォニーのミカゲだったか」
「ツキノミヤさん、あなたはこの大会に不自然な点は感じませんか?」
「不自然な点。そうだな、私が分かるとするならば、この大会は『疑似覚醒システムを乱用され過ぎている』と言ったところか。」
その言葉に、トウカ(美少女モード)も思い当たる節があった。
ビルドシンフォニーの周りだけでも、初日の午前と午後を合わせて、疑似覚醒システムを使っていたビルダーは多く存在した。
恐らくはヤコ達のチームでも似たようなことがあったのだろう。
「私が思うに……この大会では、疑似覚醒システムを使っても反則にならないのだろうな」
「反則行為を、主催側が黙認していると?」
「大会のパンフレットのルールブックには、疑似覚醒システムについては何も言及されていなかった辺り、つまりはそう言うことなのだろうさ。……反吐が出るな」
ルール違反はしていない、そう言い切れるわけだと、ヤコは吐き捨てた。
「過去の公式大会でも、疑似覚醒システムの使用が確認された時点で反則負けは決まっていたが……今回は、放任主義か?」
「そこからして怪しさしかありませんね」
ますますもって今大会は何かおかしい、とトウカは警戒を強める。
「私はこの大会が何かおかしいと感じ、会場地下に何か隠されているのでは、と思ってここへ来ました」
「なるほど。そう言うことなら、君はここで回れ右をすべきだな」
「どうしてですか?」
「私なら万が一不都合なことが起きても、財閥の権力で揉み消すことも出来るが……君はそう言うわけにはいかないだろう?」
いざとなれば財閥の権力で有耶無耶にしてしまうという、あまりにもあんまりな力業で誤魔化すと言うヤコに、トウカは呆れて絶句する。
「ツキノミヤさんもただではすまないのでは?」
「権力とは、使わなければ意味のないものだからな」
ふふん、とドヤ顔をキメてみせるヤコ。
「まぁ、君よりは私の方がダメージが少なくて済むという話だ。……それに、こう言う華やかな舞台の"裏側"は、"大人"の仕事だしな」
「(どう見ても小学生なのにどうやって大人って言い張るのかしら)」
「ははははは、心の声が聞こえたぞ小娘ぇ。なに、疑似覚醒システムを使用するようなつまらん雑魚どもは、ツキノミヤとゴジョウイン、レイセンの御三家の方から運営に圧力をかけて廃除してやるとするさ」
「は、はぁ……」
結局、トウカはヤコに押し返されるような形でその場からすごすごと去り、選手村へ戻って行った。
それを見送ったヤコは、スタッフオンリーのドアに向き直り、堂々と踏み入った。
床や壁には、緑色のケーブルのようなものが歪に並び、所々に鈍色の塊がケーブルから生えている。
さらに目を凝らして見れば、それは鈍色の山のようなナニか。
そこに、
『ゴッドガンダムの頭部が埋まっていた』
それだけではない、ガンダムマックスターのグラブ、ドラゴンガンダムの腕の右のドラゴンクロー、ガンダムローズのケープ状の装甲、ボルトガンダムの左脚……さらには、νガンダムのフィンファンネルや、ウイングガンダムゼロのツインバスターライフル、ストライクフリーダムガンダムの翼、ダブルオークアンタの折れたGNソードビット、ガンダムAGE-FXのコアファイターの一部、ガンダムフレームらしきパーツ、GUND-ARMのシェルユニットに似た何か……
ヤコにとってはどれもこれも見覚えのあり過ぎるものが、鈍色の山に埋まって固められていた。
「これは一体……」
そう呟いた瞬間、暗がりの中で何かが光った。
ガンダムタイプのツインアイに似た、目のような赤い光が灯ると、ヤコのいる方向に向き直り、
『ニチャァ』と嗤った。
「!!」
瞬間、悪寒が背筋を駆け抜けたヤコは地面を蹴って背後へ駆け出し、開け放っていたスタッフオンリーのドアへ飛び込み、慌ててドアを押し閉めた。
ズンッズンッズンッ、と、何かがぶつかってドアを変形させて、そこで止まった。
安堵するにはまだ早い、とヤコはすぐに階段を駆け上がって地上へ逃げ出した。
「(どうやら私は、"見てはいけないもの"を見てしまったようだな……さて、どうしたものか)」
二日目の時間だオラァ!!
今日もギャラリーはほぼ満席、冷房をガンガン効かせた会場の中、ナナちゃんがスポットライトを浴びる。
『はーい皆さん!おはようございまーす!!ガンプラバトル選手権全国大会も、二日目に突入しました!全体の司会進行は、昨日に引き続きわたくし、ホシカワ・ナナが務めさせていただきまーす!』
うおぉぉぉぉぉ!!とやはり男性客らが湧く。
『ですが!バトルの前に皆さんにお知らせしなければならないことがあります、あてんしょんぷりーず!』
ナナちゃんのアテンションプリーズに合わせて、天井から伸びてきた大型モニターが映し出される。
『昨日のバトルにて、疑似覚醒システムと言うインチキチートを用いた選手が多数確認されたため、バトルのログを確認した上で、不正行為を行った選手は、全員失格と言うことになりました!』
モニターに映し出されるのは、宙域やコロニーの内外、月面などで、機体を発光させるガンプラ達。
――後にミカゲさんから聞いた話だと、疑似覚醒システムの使用禁止はルールブックに記載されてないことをコレ幸いとばかりにわざと曲解した連中は、ゴジョウイン家、ツキノミヤ財閥、レイセングループの御三家の娘達による要望(と言うよりは経済的圧力、もはや強権執行に近い)により、不正行為を行ったファイターはいかなる理由があっても失格扱いとなり、二日目以降の大会参加が不可能になったと言う。ざまぁ・もう遅い。
『ですがその結果、大会に参加する選手が大幅に減ってしまい、これではせっかくの撃墜スコア制度が活かせません!なんてこったい!』
全体のおよそ1/3、つまり七十人近い選手が失格となってしまったらしい。やっぱりインチキチートに頼るような奴はダメだ、使えないな。
『なので、大会運営による協議の結果、ルール自体に変更はありませんが、バトル開始から一定時間が経つと、NPCの大型MAや大型MSが乱入してきます!当然、大型NPCに撃破されても撃墜スコアは失われてしまいますが……なんとなんと!大型NPCを撃破した選手にはボーナスとして、50機分の撃墜スコアに加えて、"撃墜されてもスコアが減らなくなる"ようになります!これは美味しい!美味しすぎますよ!』
ソシャゲで言うところの"レイドボス"ってことか。
しかも、大型NPC撃破のボーナスは、撃墜されても減らなくなるようになるとな。
つまり、丸々50機分のスコアは必ず加算されるため、明日の決勝戦に選ばれやすくなるわけだ。
なるほど、これは多くの選手が大型NPCを撃破しようと我先に殺到しそうだが……そう甘くは無いだろう。
『しかぁし!大型NPCはいずれも桁外れに強く設定されていますので、迂闊に近付くと一瞬で倒されて、撃墜スコアを奪われてしまいます!大型NPC撃破に挑む際は、くれぐれもご注意を!』
そりゃー簡単に倒せるわけないわな。
ルール説明も終わったところで。
『それでは!ガンプラファイト、レディー・ゴーゥッ!!』
ナナちゃんがびしすと決めポーズをキメる。
……その際に、『ぷるるんっ』と彼女の大型胸部装甲が震えたのは、見なかったことにしたい。
さぁ、筐体のマッチングも完了したところで出撃だ。
「オウサカ・リョウマ、オリジネイトガンダム、行きます!」
「アサナギ・マユ、ガンダムファラリアル、決心解放(フィックスリリース)!」
「タツナミ・イツキ、ドラゴニックガンダム、行っくぞー!」
「ミカゲ・トウカ、ガンダムグレモリータナトス、行くわ」
「サイキ・ケイスケ、ジムカラミティ!チーム・ビルドシンフォニー、出るぞ!」
出撃完了。
俺達のチームの初期地点は荒野。
「よーし、全員聞こえてるな」
ズシィン、とジムカラミティを着地完了させたケイスケ先輩は、早速通信を繋ぐ。
「基本は地上戦用のフォーメーションで行く。さっきの司会進行説明にもあった、大型NPCの強さがどのくらいか分からねぇが、可能なら撃破も積極的に狙っていくぞ」
「「「「了解!」」」」
可能なら、とケイスケ先輩は言うが……いやまぁ、不可能なレベルでは無いだろう、仮にも公式がゲームバランスを調整してるんだし。
ただ死ぬほど難しい、難易度ルナティック級かもしれないが。
さてさて、それじゃぁ進撃開始と行こうか!
「っと、早速お出ましだぞ」
荒野を走る死神の列になろうかと思った時、早くもケイスケ先輩が敵機の反応を捉えた。
前方より、砂煙を蹴立ててながら真っ直ぐこちらに向かってくる数が五機。
正面から堂々と来るか、なかなかいい度胸をしたチームらしい。
「まずは牽制でも喰らっとけ!」
最後方を陣取るジムカラミティから、開幕の狼煙たるビームキャノンを発射。
二筋の高エネルギーは砂煙を切り裂き吹き飛ばし、その中から現れたのは。
『アレ?オウサカ先輩のガンダム……?』
「む?」
なんだか見覚えのある緋色のガンダムフラウロス……フラウロスベスティア?
「チユキちゃんじゃないか」
向こうがピタッと止まったので、こちらも動きを止めれば、マユちゃん達もその場で止まる。
すると一歩遅れて、フラウロスベスティアの後ろからも、四足歩行形態のガイアガンダムや、ガンタンク、マグアナック、ドム・トローペンと言った、悪路や不整地での走破性、適応力に優れた機体達がぞろぞろとやって来る。
『チユッキー、その人らって先輩さん?』
ガイアがフラウロスベスティアの隣につく。チユッキーって呼ばれてるのか。かわいい。
『そうっすそうっす』
向き直って。
『オウサカ先輩、ここで会ったのもなんかの縁ってことで、ウチらのチームと一緒に戦いませんか?』
「ふむ」
チユキちゃんのチーム……『ワイルドビーツ』って言うのか。野生の鼓動……なんかカッコいい。
「ケイスケ先輩、チユキちゃん達が一緒に戦いませんかって言ってますけど、どうします?」
リーダーかつ司令塔はケイスケ先輩だ、彼の判断に任せられる。
「あぁ、いいぜ。一応、アサナギ、タツナミ、ミカゲにも訊いとくぞ、構わねぇか?」
女子三人にも意見を訊いて、
「いいですよ」とマユちゃん。
「チユキちゃんなら頼るになるな!」とイツキ。
「問題ありません」とミカゲさん。
女子三人の確認も終えたので、
「よし、それじゃぁビルドシンフォニーとワイルドビーツは、これより同盟だな」
『あざーーーーーっす!!』
ビルドシンフォニーとワイルドビーツの識別を味方同士に切り替えて、バトル再開だ。
ビルドシンフォニーと、ワイルドビーツの両チームが同盟を組んで行動を共にするようになった、その光景を、遥か遠くから見ている者がいた。
そこにいたのは、GNスナイパーライフルを頭部のガンカメラに通している、"陰りのある色をしたガンダムデュナメス"と、その隣に立つ、同じく"陰りのある色をしたアルトロンガンダム"。
二機とも、影を落としたような、ワントーン暗いカラーリングをしている。
『ありゃりゃ、なんかよそのチームと同盟組んじゃいましたね?』
ガンダムデュナメスを操るのは、橙色の髪をサイドテールにした美少女。
『数が増えたところで今更。どのみち、大型NPCのエサになるだけだよ』
アルトロンガンダムを操るのは、艷やかな長い黒髪の美少女。
『どうします?』
『別に急がなくていいよ。予定通り、大型NPCの乱入に合わせて動こうか』
それに、とアルトロンガンダムのツインアイが静かに明滅する。
『昨日に"ネズミ"が一匹紛れ込もうとしていたし、少しは……ね』
『りょーかいでーす』
ガンダムデュナメスとアルトロンガンダムの二機は、積極的に動くことも無く、チーム・ビルドシンフォニーの動向を追う。
ハッキリ言うと、この広大な荒野と、チユキちゃん達ワイルドビーツの面々の相性は抜群だ。
意外にも素早いガンタンクが、動き回りながら長距離砲撃で先制攻撃を仕掛け、汎用タイプのマグアナックとドム・トローペンが中距離から援護射撃しつつ、フラウロスベスティアとガイアの前衛二機が斬り込んで敵陣を突き破っていく……と言うのが彼女らの黄金パターンであり、撃墜スコアの伸びは俺達よりもちょっと早い。
「ひゃっほー!圧倒的じゃないすか、ウチらのチームはー!」
四足歩行形態のダブルブレードで、すれ違いざまにグフカスタムを斬り裂いて撃破していくチユキちゃんが、なんかキシリアに射殺される三分前のギレン総帥みたいなことを言い出している。
「はー、絶好調だな、ウマノの妹は」
次々に撃墜スコアを重ねているフラウロスベスティアを見やりながらも、ケイスケ先輩のジムカラミティはビームキャノンで、上空を飛行していたジャスティスガンダムをファトゥム-00ごと撃ち落としている。
「最初からあんなに飛ばして、最後まで集中力が保つのかしら」
ミカゲさんのグレモリータナトスは、サーペントの腹部にタナトスサイズの柄尻を突き込み、怯んだところを蹴り倒してコクピットを潰している。えげつねーな。
「まぁ、MAを相手に尻込みするよりは気合がある方が良いんじゃないか?」
かく言う俺のオリジネイトも、ビームライフルでジェットストライカー装備のウィンダムやらオーバーフラッグやらを撃ち落としているわけだが。
「MAは桁外れに強いってホシカワさんは言ってたけど、勝てるかな……」
マユちゃんはちょっと不安げだ。どのくらい強いのか分からんと警戒したくなる気持ちも分かるよ。
「大丈夫大丈夫!あたしらなら余ゆっ……とぉっ!?」
反対にイツキは楽観的だな……余裕とか言ってる間にもジム改に押されてるじゃないか。ビームサーベルを掠めたけど、すぐに反撃して撃破した。
とまぁ、ビルドシンフォニーとワイルドビーツの同盟チームは順調に撃墜スコアを稼いでいたわけだが……
突如、コンソールを『⚠WARNING!⚠』と言う赤い表示が横切った。
「っと……どうやらレイドボスのお出ましかな?」
ピタリとその場にいたガンプラ達の動きが止まり――
上空から降ってくる、巨躯。
荒れ地を踏み砕きながら現れたのは、蜘蛛のような多脚に、その上半身は改造されたストライクダガーのようなその姿は、
「ゲルズゲー……いやいや、なんか原作よりデカくねぇか?」
ケイスケ先輩が機体名を挙げてくれたように、それはC.E.の地球連合軍のMA、ゲルズゲーだ。
が、問題はその大きさだった。
「なんて大きさ……元の三倍以上はある……!?」
マユちゃんがそう言ったように、このゲルズゲー、明らかにデカいのだ。
上半身ユニットのストライクダガーが、Ξガンダムやオデュッセウスガンダムのような30m級MSくらいあり、それに比例するように下半身の六脚もクソデカい。
するとゲルズゲーは各部センサーを妖しく輝かせて周囲を睥睨し――次の瞬間には、ビームライフルや脚先のビーム砲や背部の滑腔砲を撃ちまくり始めた。
サイズがサイズなせいか、ビームや砲弾の威力もまさに段違いだ、荒野の荒れ地を容易く吹き飛ばし、運悪く狙われたガンプラは一発アウト、即死していく。
「懐に飛び込めばいい……っていうほど、簡単じゃ無さそうね」
無差別に放たれる砲撃を躱しながら、ミカゲさんはゲルズゲーを分析している。
ゲルズゲーと言えば、射撃のほとんどを無効化してしまう、陽電子リフレクター『シュナイドシュッツ』が厄介な奴だったはずだ。
アスランのセイバーが懐に飛び込んで両腕ぶった斬ってみせたように、接近戦に持ち込めれば……と言いたいところだが、迂闊に近付いたらあのデカ長い脚に蹴っ飛ばされるだろう。
ガルナハンのローエングリンゲートを始めとする"拠点防衛"を主任務とするとは言え、そこはC.E.の機動兵器、あぁ見えて意外と身軽なMAなんだよ、アイツ。
別の世界線だと、ビームサーベルでリフレクターを突破出来ないばかりか、リフレクターに触れた瞬間弾き返される上に装甲をズタズタにされるとか言う、「お前ほんとにゲルズゲーかよ」と言いたくなるような機体がいたり、さらに別の世界線だと、上半身ユニットがアカツキ、背部がレジェンドガンダムのドラグーンプラットフォー厶に換装され、なおかつ全身にヤタノカガミコーティングが施された『アカツゲー』とか言うトンデモ極まりない機体もいたが……
「遠くからチマチマ撃ったって埒が明かねーんだ、行くぞリョー!」
イツキのドラゴニックが先陣を切って見せ、ゲルズゲーへ接近を試みる。
俺もビームライフルを納めて、背部からビームピストルと連結したヒートブレードを両手に抜いて、ドラゴニックの後に続く。
「チユも行くっすよー!」
その反対サイドからは、チユキちゃんのフラウロスベスティアも砂煙を蹴立てながらゲルズゲーへ迫る。
「撃ちまくれ!奴の注意をこっちに向けさせろ!」
ジムカラミティがビームキャノンとハイパーバズーカでゲルズゲーに砲撃をおこなうが、ゲルズゲーは両肩ユニットからリフレクターを展開、高出力のビームもバズーカの砲弾も掻き消してしまう。
が、それはケイスケ先輩も承知の上だろう、彼の目的はあくまでも『ゲルズゲーの注意を分散させること』だからだ。
「撃て撃てー!」
ガンタンクの120mmキャノンが、ドム・トローペンのラケーテンバズが火を吹き、ゲルズゲーのリフレクターに次々に炸裂していく。
そうすることで、俺とイツキ、チユキちゃんの三人はゲルズゲーの足元に近付いていくが、ゲルズゲーもそこまで迂闊ではない、砲撃を行う後衛に向けて反撃しつつも、足元にいる俺達に脚先のビーム砲や、本体からのビームライフルが迎え撃ってくる。
イツキのドラゴニックはビームを躱しつつも、
「喰らえ!」
バックパックから右のドラゴンハングを放ち、ゲルズゲーの左前脚装甲を捉える。
が、ドラゴンハングは装甲を咬み砕こうとするものの、ガリガリガリガリと火花を上げるばかり。
それどころか、ゲルズゲーは勢いよく左前脚を地面に叩き込み、咬み付いているドラゴンハングを踏み潰してしまった。
「きっ、効いてねーのかよ!?」
慌てて右のドラゴンハングのアームブロックを切り離すイツキ。
「効いてないわけじゃないようだが、相当"堅い"らしいな」
見ればゲルズゲーの左前脚は確かにダメージが入っているような損傷が見られるものの、それでも破壊するにはもう何発も直撃を叩き込まないとならないようだ。
リフレクターで射撃はほぼ無効化、近付いて殴っても簡単には倒せない、か。これはかなりの強敵になりそうだ。他のエリアでも似たようなレイドボスに出会して阿鼻叫喚の嵐になっているだろう。
「どりゃぁーっ!」
その隙をつくように、チユキちゃんのフラウロスベスティアが飛び掛かり、右後ろ脚の関節部に向けて腕部クローを叩き込むが、甲高い音と火花を散らすばかりで、ゲルズゲーの関節を浅く削るだけだ。
「かっっったぁ……!?」
関節部もなかなか堅牢なようで、装甲よりはダメージは通っているようだが、それでも破壊するには時間がかかりそうだ。
ゲルズゲーは取り付いているフラウロスベスティアを蹴り飛ばそうとするが、素早く間合いから飛び下がったフラウロスベスティアは、反撃にマシンガンを撃ち込む。
そうすることでゲルズゲーの注意が、フラウロスベスティアに向けられ、俺はその背後を突くように接近、下へ飛び込む。
「はっ!」
ヒートブレードを振り上げ、ゲルズゲーの下腹部に赤熱化した刃が叩き込まれるがしかし、イツキやチユキちゃんと同じく、僅かに装甲を削るだけ。
だがこれは想定済みだ、ヒートブレードで装甲を削りながらもビームガンのゼロ距離射撃を敢行する。
しかしゲルズゲーに大きなダメージを与えている実感は無い。
それどころかゲルズゲーは展開していたリフレクターを一時解除、ククン、と膝を曲げると、大ジャンプし――オリジネイトを押し潰そうと自由落下してくる。
「避けろ!」
イツキとチユキちゃんに注意を呼び掛け、バックホバーでその場からオリジネイトを急速離脱させ――次の瞬間にはゲルズゲーの巨体が地面に叩き込まれ、僅かながらもショックウェーブが発生する。
シールドを構えて防御の姿勢を取り、ショックウェーブと砕けた地面の破片から機体を守る。
ショックウェーブですらビリビリと大気が震えるのが分かる。あれに巻き込まれたら、例えPS装甲でも一瞬でイオク・クジャンだ。
うーん、これはキツイな。ナナちゃんの説明も強ち誇大主張では無かったと言うわけか。
「バリアが消えた今なら!」
そこへ、機を窺っていたミカゲさんのグレモリータナトスが、ゲルズゲーの斜め上から飛び掛かる。
ゲルズゲーもビームライフルとイーゲルシュテルンで迎え撃つが、ナノラミネートコートに弾かれていく……が、その威力の前には全くの無傷とはいかないのか、ナノラミネートコートの塗膜が見る内に傷付いていく。
「そのバリアの発生器を、潰す!」
タナトスサイズをスピアーモードに変形させ、全身ごとゲルズゲーの右肩、リフレクターの発生器にピンポイントで突っ込ませた。
装甲にもリフレクターにも守られていない発生器は、タナトスサイズの一撃によって破損し、爆発を起こした。
爆風に吹き飛ばされるグレモリータナトスだが、ゲルズゲーの右肩のリフレクター発生器から黒煙を上げている。破壊出来たようだ。
「おぉっ、ミカゲがやってくれたぞ!俺達も続け!」
ミカゲさんの身体を張ったファインプレーを見て、ケイスケ先輩が戦意を高めんと声を上げる。
するとゲルズゲーは左肩のリフレクターを展開するが、やはり片方だけでは防御範囲が足りないのか、機体の左半分しかリフレクターを展開出来ないでいる。
「半分だけでもリフレクターが消えたなら!」
マユちゃんのファラリアルはエスカッシャンを分離、11基のガンビットを射出すると、ゲルズゲーの右半分に回り込ませ、一斉にビームを浴びせつける。
それらは決してゲルズゲーの装甲に対して有効打を与えていると言えるものではないが、僅かでもダメージを与え、何よりもゲルズゲーの注意がそちらへ向けられる。
「私らも続くよ!」
マグアナックもビームライフルを撃ちまくり、四足歩行形態のガイアもゲルズゲーの右半分に回り込みながら、高エネルギービームライフルと背部のビーム突撃砲、さらにはCIWSを撃ちまくる。
さすが、チユキちゃんが選んだ(と思う)チームメイトだ、変化する状況に対して柔軟に即応しているな。
リフレクターを失った側からの集中攻撃を嫌うように、ゲルズゲーは自身の火力を右側へ集中させる。
そうすれば、今度は足元にいる俺達への注意が疎かになる。
俺はオリジネイトを加速させてゲルズゲーの背面に回り込み、注意深く奴の各部を確かめ――
「――そこ!」
サイドスカートのレールガンを跳ね上げ、発射。
放たれた一対の電磁加速弾は、ゲルズゲーに突き刺さり――ドカンと爆発する。
装甲を撃ち抜いて内部で炸裂したのではなく、奴のメインスラスター部をピンポイントで射撃したのだ。
先程のミカゲさんのファインプレーを見て、『装甲を破壊出来ないならそれ以外から壊していけばいい』と思い付き、多くの機体の弱点であろう推進機器を狙おうと考えた。
暴れ回る奴の矢面に立ちながらそれを為すのは困難だが、マユちゃん達がゲルズゲーに懸命に射撃を敢行し、注意が俺から外れてくれている今ならイケると判断し、見事成功だ。
メインスラスターを破壊され、まともな機動が出来なくなってフラフラと蹌踉めくゲルズゲー。
「行けるぞ!このまま押し込め!」
さらに苛烈に砲撃を叩き込むケイスケ先輩。
けれどゲルズゲーも悪足掻きのつもりなのか、ビームライフル、ビーム砲、滑腔砲を形振り構わず撃ちまくっている。
流れ弾が、ワイルドビーツのガンタンクとマグアナックに当たり、撃墜されてしまうが、ここで攻めの手を緩めるわけにはいかない。
だが、押し込むには後一手足りない。
俺もゲルズゲーの関節部をしつこく狙ってヒートブレードを叩き込むが、蹴り飛ばされてしまう。
「くそっ……!」
振動するモニター、吹き飛ばされる先は岩肌だ、このままでは激突する。
急いで姿勢制御しなくてはと焦るが、
「オウサカ先輩!」
岩肌に激突する寸前に、チユキちゃんのフラウロスベスティアがMS形態になって割り込み、受け止めてくれる。ありがてえありがてえ。
「すまん、チユキちゃん」
「先輩、チユの背中に乗ってくださいっす!」
チユキちゃんに!乗る!?(過剰反応)
……いやいや、分かってますよ。チユキちゃんに馬乗りになってアンなコトやコンなコトをスるんじゃなくて、フラウロスベスティアにオリジネイトを乗せてくれってことやろ?分かってる分かってる(分かってない)。
「よし、頼むぞ!」
「りょーかいっす!」
フラウロスベスティアはすぐさま四足歩行形態に変形し、その背中に馬乗りの形で乗り込む。
MS一機乗せてもその機動性と運動性に低下は見られず、勢いよく大地を駆けるフラウロスベスティア。
フラウロスベスティアがマシンガンを撃ちまくるのに合わせて、俺のオリジネイトも温存していたハイパーバズーカを連続で発射する。
マシンガンの銃弾とハイパーバズーカの弾頭がゲルズゲーの右前脚に炸裂し――ここまで与えたダメージがようやく実り、ゲルズゲーの右前脚が吹き飛んだ。
バランスを崩すゲルズゲー、しかし本体のビームライフルが俺とチユキちゃんを狙う。
「チユを舐めるなっすゥゥゥゥゥッ!!」
するとチユキちゃんはさらにフラウロスベスティアを加速させ、連射されるビームライフルと、さらに滑腔砲の砲弾を掻い潜って猛迫、ついにゲルズゲーの懐近くにまで踏み込んだ。
「オウサカ先輩、今っす!」
「よぉしっ!」
チユキちゃんの合図に合わせ、フラウロスベスティアの背中からオリジネイトをジャンプさせ、ビームサーベルを抜き放つ。
同時にフラウロスベスティアも飛び上がり、ゲルズゲーの本体へ突撃、損傷していた右腕をすれ違いざまにヒートブレードで斬り落としてみせる。
「これで仕留める!」
ゲルズゲーも確か、ザムザザーと同じく、機長、砲撃手、操縦手の三人体制で制御されているはずだ。
そして、三人体制による制御となれば、ストライクダガーのコクピットブロックに、三人が納まるスペースは無い。
よって、コクピットがあるとすれば……ここだ!
一直線へ突撃、ストライクダガーと下半身を繋ぐそこへビームサーベルを勢いよく突き込む!
ビーム刃は深々とゲルズゲーの腹部に突き刺さり――まだ仕留められないのか!?
「なら、この間合いでビームピストルを……!」
と、背部からビームピストルを抜こうとして、突如明後日の方向からビームが放たれ――ほとんど損傷していないはずの左腕ごと――ゲルズゲーを貫通した。
「なに……?」
爆発の連鎖に巻き込まれる前にオリジネイトを飛び下がらせ、大破していくゲルズゲーを見やる。
ゲルズゲー、撃墜。
「やったな、リョー!」
イツキが喜々とした声を上げるが、
「いや……今のは俺じゃない」
「え?」
何故なら、俺の撃墜スコアは加算されていない。
と言うことは、先程のビームを撃った奴が、ゲルズゲーを仕留めたことになったのか?
「俺らが必死こいて倒そうとしたってのに、どこのどいつだ!?」
ケイスケ先輩は声に怒気を込めて、そのビームの方向にジムカラミティのメインカメラを向ける。
ちょうどそこ――崖の上に立つのは、GNスナイパーライフルを冓構えた、ガンダムデュナメスと、その隣に立つアルトロンガンダムの姿がそこにあった。
『はーい、皆さんご苦労さまでーす』
『キミ達が頑張ってくれたおかげで、随分楽に倒せたよ。ありがとうね』
あの二機……俺達がゲルズゲーを撃破するその寸前を狙っていたのか!?
「お前らか!せっかくあたしらが倒そうとしたゲルズゲーを!」
イツキもその存在に気付き、肩をいがらせる。
『別に弱ったところを狙ってはいけないなんてルールは無いでしょ?』
『強いて言うんなら、あたしらの存在に気付かなかった方が悪いですよねー』
すると、その陰りのある色味をしたデュナメスとアルトロンは崖の上から飛び降りてきた。
戦うつもりか……!