ガンダムブレイカー・シンフォニーRe:BREAK   作:さくらおにぎり

21 / 26
21話 悪夢の予兆

 リョウマ達ビルドシンフォニーと、チユキ達ワイルドビーツの同盟チームが、ゲルズゲーを撃破寸前のところを、『陰りのある色味をしたガンダムデュナメスとアルトロンガンダム』に横取りされた時を同じくして。

 

 シオン達ブラウシュヴェルトも、幾度かの遭遇戦を繰り返し、大型MA『シャンブロ』を発見、交戦したものの、あまりの装甲の硬さを前に、さすがに自分達だけでこいつを討伐するのは不可能だと即断、幸いにも大した被害を出すことも無く逃げ切ることが出来たところだった。

 

「ふーーーーー……先輩方、生きてます?」

 

 シオンは安堵に一息つきつつ、イフリート・ラピートは三節棍をランドセルに納めながら、命からがら逃げてきたガンダムMK-II、ウイングガンダムゼロ、エールストライクガンダム、ガンダムヴィダールを見やる。

 

「あぁ、なんとかな……」

 

「くそ、無駄に消耗しただけだった」

 

 せっかく大型ユニットを発見したと言うのに、倒せないままに逃げることなって、シオンの先輩達は悔しげに悪態をついている。

 

「まあまあ、誰も墜されなかっただけマシと思いましょうや。下手すりゃあポイントすっからかんになるとこでしたし」

 

 シオン自身、この撤退はやむを得ないものだったと割り切っている。

 フィールド各地にいる大型ユニットは、もっと大人数で攻めなければ勝てないのだと、分かっただけでも収穫と言えよう。

 

「シオンの言う通りだな、まずは補給して体勢を整えよう」

 

 ガンダムMK-IIから発される提案に、残る全員が頷く。

 

 さてそれでは補給ポイントを探そうかとした、その時、イフリート・ラピートのモノアイが鋭く輝いた。

 

「いや、それよりお客さんですよ」

 

 敵機の接近を察し、素早く各々のライフルをその方向に向けた。

 

 崖の向こう側から現れたのは、"陰りのある色味をした"『ガンダムAGE-2 ノーマル』と、『大喬ガンダムアルテミー』の二機。

 

「二機だけ?」

 

「油断するなよ、こっちは消耗してるんだ。慌てずに……」

 

 すると、ガンダムAGE-2は即座にハイパードッズライフルを発射、螺旋状のビームを放つ。

 素早く散開して躱すが、その隙をつくかのように大喬ガンダムアルテミーが手にした琴――『三色響弦』に内蔵されたガトリングガンを撃ちまくり、避けきれなかったガンダムMK-IIを撃ち抜いて撃破してしまった。

 

「クソォー!」

 

 ガンダムMK-II、撃墜。

 

「よくも!」

 

「援護してくれ、接近する!」

 

 バーストサーベルを抜いたガンダムヴィダールは、大喬ガンダムアルテミーに肉迫しようとするが、

 

「ダメだ!迂闊に近付いちゃあやべえです!」

 

 シオンは制止を呼び掛けながら、ガンダムAGE-2に向けてライフルカノンを連射するが、ガンダムAGE-2は肩の四枚のウイングを跳ね上げてふわりと舞うように回避しつつ――大喬ガンダムアルテミーを狙うガンダムヴィダールにロックオンし、ハイパードッズライフルを発射。

 その射線は大喬ガンダムアルテミーを巻き込む位置にあったが、大喬ガンダムアルテミーはハイパードッズライフルからのビームに撃ち抜かれる寸前に飛び退き――飛び退いたことによってDODS効果を帯びたビームは、ガンダムヴィダールの装甲をナノラミネートアーマーごと容易くえぐり抜いた。

 

「な、なんだと……!?」

 

 ガンダムヴィダール、撃墜。

 

「こ、こいつら……!」

 

 ウイングガンダムゼロとエールストライクガンダムは、それぞれバスターライフルとビームライフルを構えたままたじろいでいる。

 

 あの二機、間違いなく強い。

 リョウマのオリジネイトガンダムと同じか、それ以上か。

 

 しかしこのままでは全滅、ここまで稼いだポイントがゼロになってしまう。

 そうなってしまえば、明日の決勝戦に勝ち残るのが非常に困難になってしまう。

 

 即決、シオンはウェポンセレクターを回し、イフリート・ラピートの左マニピュレーターにラピートブレードを抜かせた。

 

「二人とも、ここは撤退してください。俺が奴らを足止めします」

 

「バカ言うなシオン!ここまでやられて、黙ってられ……」

 

「目先の敵に囚われんなって言ってんです!ポイントをキープすりゃあ決勝戦に進めんだからっ、ここで全滅したら全部パアだ!」

 

 途中から敬語すら捨てるシオンの語気に、ウイングガンダムゼロは怯み、エールストライクガンダムはウイングガンダムゼロの肩を掴む。

 

「逃げるぞ……!」

 

「……クソッ!」

 

 ウイングガンダムゼロはネオバード形態に変形し、その上にエールストライクガンダムが乗り込んで、その場を離脱していく。

 それを見送ったシオンは、ガンダムAGE-2と大喬ガンダムアルテミーを睨み直す。

 すると、ガンダムAGE-2からオープン回線で声が届く。

 

『あなたは……そう、『原作』とは違うオリキャラね』

 

「なんだと?」

 

 原作?オリキャラ?なんの話だとシオンは、警戒しながらも相手の声に耳を傾ける。

 続けて、大喬ガンダムアルテミーからも。

 

『……うん、あなたは"いらない"ね。わたし達の邪魔になるから』

 

 その声色には、暖かみなど欠片も感じられない。

 まるで、いるものといらないものを――ゴミを分別するような。

 

「……さっきから、なあに訳分かんねえ言ってんだ、あんたらは!」

 

 そんな無機質な声におぞましささえ覚えたシオンは、腹の底で這い上がる恐怖を誤魔化すように歯を軋ませ、操縦桿を押し出してイフリート・ラピートを加速させる。

 ライフルカノンと左腕の三連ガトリング砲を連射しながら接近を試みる。

 

 銃弾と砲弾に対して、ガンダムAGE-2と大喬ガンダムアルテミーはふわりと回避し、ガンダムAGE-2はストライダーフォームへ変形し、イフリート・ラピートを無視するように、先程撤退したウイングガンダムゼロとエールストライクガンダムを追った。

 

「なっ、待てよこのっ……」

 

 三連ガトリング砲をガンダムAGE-2に向けるものの、既にその機影ら遠く、射程から離れてしまっていた。

 加えてその意識の隙を突くように大喬ガンダムアルテミーは三色響弦のガトリング砲を引っ込ませ、代わりに斧刃を引き出してイフリート・ラピートに斬り掛かってきた。

 

「ぐっ……!」

 

 咄嗟にラピートブレードで三色響弦を受けるが、SDガンダムのそれとは思えないほどの重い一撃は、ラピートブレードの刀身に亀裂を走らせた。

 

 シオンは操縦桿をバッと引き下げ、イフリート・ラピートをバックステップさせて距離を取りつつラピートブレードを捨てつつライフルカノンも納め、三節棍を抜いた。

 

「あんたと遊んでる暇は無い、さっさと終わらせる!」

 

 三節棍を勢いよく回転させ、踏み込みと共に鞭のように振り抜く。

 大喬ガンダムアルテミーはその場から飛び退き、空を切った三節棍は地面を穿つ。

 

「ちいっ!」

 

 地面に打ち付けた三節棍を引き戻し、今度は双剣のように構え直して左右から連撃を仕掛ける。

 しかし大喬ガンダムアルテミーはこれにも即応し、回避と三色響弦の斧刃による防御で、的確に三節棍の打撃を捌いていく。

 コールドクナイを投擲しての変則技も絡めるものの、これも躱されてしまい、

 

 シオンのコンソールに、ウイングガンダムゼロとエールストライクガンダムの撃墜が通知される。

 

「っ、ちくしょうッ!」

 

 敵を足止めするはずが、逆に敵に足止めされてしまった。

 その事実に逆上しかけるシオンだが、辛うじて思い留まり、ならばせめてこいつを倒して雪辱を果たすまで、と大喬ガンダムアルテミーに猛攻をかけるが、

 

『こんなものなんだ。あなた達じゃ、リョウくんの足元にも及ばないね』

 

 それら猛攻をものともしない大喬ガンダムアルテミーから、まるで淡々と事実を告げるようにシオンと、彼の先輩達を嘲る声。

 

「ふっ……ざけるなぁぁぁぁぁ!」

 

 何なんだこいつは、人を馬鹿にして、その上からオウサカ・リョウマのことを知った風なことを!とシオンは怒りに声を荒げる。

 

 決して髪のことで無ければ、単に自分のことを馬鹿にされただけなら、シオンもこうは怒らなかっただろう。

 だが、未熟ながらも自分と共に戦おうと、そのための努力も惜しまない先輩達を馬鹿にされることだけは我慢ならなかった。

 

 その怒りに呼応するがごとく、イフリート・ラピートはモノアイを強く輝かせ、三節棍を大喬ガンダムアルテミーに叩き込まんとさらなる猛攻を掛け――

 

 背後からのDODS効果を帯びたビームに右腕を肩から抉り飛ばされた。

 先輩達を仕留めて反転してきた、ストライダーフォームのガンダムAGE-2の、ハイパードッズライフルによるものだ。

 右腕を奪われた拍子に三節棍も取り零してしまう。

 

「っ……せめててめえだけはァ!」

 

 残されたコールドクナイを左マニピュレーターに抜いて、大喬ガンダムアルテミーに斬り掛かるが、大喬ガンダムアルテミーは三色響弦からガトリング砲を引き出し、連射する。

 何十発と襲い来る砲弾に装甲を穿たれながらも、イフリート・ラピートはコールドクナイを突き立てようとして、

 

 ズヴァゥッ、と『イフリート・ラピートの胸部からビーム刃が生えてきた』

 

 それは、MS形態へ変形したガンダムAGE-2のビームサーベルを背後から刺されたのだと、シオンが理解するのは一瞬で、

 

「ちく、しょう」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 イフリート・ラピートのモノアイが弱々しく点滅し――沈黙した。

 

 イフリート・ラピート、撃墜。

 

『オウサカくんは?』

 

『リョウくんの方には、コノミちゃんとリン先輩が向かったよ』

 

『あの二人なら大丈夫ね。私達は他にポイントを稼いでいるチームを減らしておきましょう』

 

『うん。ビルドシンフォニーには、必ず勝ち残ってもらわないとね』

 

 

 

 

 

 陰りのある色味をした、デュナメスとアルトロンの二機。

 

 射撃機と格闘機の正反対コンビ、メリハリのある連携を仕掛けてくるだろう。

 

「なめんじゃねーぞこらぁ!」

 

 イツキのドラゴニックが、ツインビームトライデントをぶん回しながらデュナメスへ突撃するが、デュナメスは飛び下がり、入れ替わるようにアルトロンも同じくツインビームトライデントを抜いて、打ち付け合う。

 

「だぁっ!でぇいっ!どりゃぁっ!」

 

 一撃、二撃、三撃とツインビームトライデントを振るうドラゴニックに対して、相手のアルトロンは全て後出しで弾き返していく。

 

『随分単調な攻撃だね、目をつぶってもいいくらいだよ』

 

「んだと、ぐわっ!」

 

 挑発に乗りかけて挙動が乱れたドラゴニックの腹に、アルトロンの回し蹴りが炸裂し、ドラゴニックは派手に吹っ飛ばされる。

 

「リョウマとタツナミはアルトロンに張り付け!ミカゲはデュナメス、あっちのスナイパーだ!アサナギはリョウマとタツナミの援護!」

 

「「「了解!」」」

 

「うぐぐっ……了解!」

 

 さすがはケイスケ先輩、急変したこの状況でもすぐに指示を飛ばして、自分もデュナメスに狙撃をさせないように、ジムカラミティのシールドビームガンで牽制している。

 

「チユも援護するっす!みんなは一旦補給して、すぐに来てっす!」

 

 チユキちゃんは、消耗しているチームメンバーを先に一度補給に向かわせ、自分は俺達の援護をすると言う。ありがたい。

 

「ごめんっ、すぐ戻るから!」

 

 ガイアとガンダンクはその場で反転し、補給ポイントがあるだろう方向へ駆けていく。

 

 それでも戦力比は6対2だ、小細工無しの平押しにすれば、こちらが有利、と言いたいが……あのデュナメスとアルトロンの二機の戦闘力は未知数、少なくともイツキのドラゴニックを簡単にあしらうくらいには、ファイターの実力もガンプラの性能も高い。

 

 油断も隙もねーな、これまでにない強敵か。

 

「射撃重視のガンプラなら……!」

 

 ケイスケ先輩の指示に従い、デュナメスへ接近を試みるミカゲさんのグレモリータナトス。

 幸いにも、グレモリータナトスのナノラミネートコートなら、デュナメスの武装に対して大きなダメージは受けないはずだ。

 

 天敵はアルトロンのドラゴンハング。

 同じガンダニュウム合金すら粉々に噛み砕く破壊力も冗談じゃ済まんが、それよりも危険なのが火炎放射の方だ。

 もし火炎放射を直撃したらナノラミネートが剥げるだけで済めばいいが、下手すりゃそのままフレームごとコクピットが消し炭、即死判定だろう。

 

 故に、アルトロンをグレモリータナトスに近付けてはならない。

 すかさずマユちゃんに通信回線を開き、

 

「アサナギさん、グレモリーにアルトロンとの相性は最悪だ、絶対に向こうにいかせるな!チユキちゃんはデュナメスの方を頼むぞ!」

 

「分かった!」

 

「りょーかいっす!」

 

 俺とイツキ、マユちゃんの三人でアルトロンを足止めしている間に、ナノラミネートアーマー持ち二機とジムカラミティの援護射撃でデュナメスを倒してくれれば最上。

 

 だがそう上手くはいかない、断言してもいい。

 

 俺の長年の異世界転生で染み付いた"勘"だが……一度事が悪くなると畳み掛けるように不運が続くことは往々にして起こり得る。

 そして、その"勘"はほとんど外れたことはない。

 "勘"が働いたその時、理性や理屈を優先した場合に限って最悪の事態を招く。

 

 神の視点(メタ発言)でものを言うなら『物語を盛り上げるためのアクシデント』だ。それを本能的に感じ取っていると言ってもいい。

 

「ガンビット!」

 

 ファラリアルのビットステイヴが自機の周囲に展開され、フルバーストのようにビームを広範囲に一斉射撃。

 

『いや、それくらいはね』

 

 全身を撃ち抜くだろうそれに対してアルトロンは僅かに挙動すると、それだけで11基のビットステイヴによるフルバーストの隙間をすり抜けた。

 

「避け……っ!?」

 

「いいや、十分だ!」

 

 大技を放ってもノーダメージで躱されてしまったことに動揺しかけるマユちゃんのフォローも兼ねて、オリジネイトを加速させてアルトロンへ距離を詰め、バルカンとビームピストル二丁拳銃による手数重視で撃ちまくる。

 

『ふぅん……』

 

 抑揚の無い気怠げな声だが、その挙動は恐ろしく素早い、多数のビーム弾に対して、アルトロンは手にしたツインビームトライデントをプロペラのごとく回転させて、即席のビームシールドのように弾き返していく。

 だが問題ない、このままアルトロンを釘付けにしておけば、

 

「やりやがったな、こんの野郎!」

 

 起き上がってきたイツキのドラゴニックが、再びアルトロンへ肉迫、アルトロンの左側へ回り込んで、ドラゴンハングを放つ。

 対するアルトロンも左のドラゴンハングを伸ばし、ドラゴニックのドラゴンハングを弾き返す。

 

「狙い撃つ!」

 

 その隙に上空からアルトロンの真上あたりへ上昇していたファラリアルがビームアルケビュースを構え、狙い撃ちにするのに合わせて、俺もツインビームトライデントの防御範囲外へビームピストルを撃ち込む。

 

 オリジネイト、ドラゴニック、ファラリアルの三段攻撃に、アルトロンはビームアルケビュースを躱すようにその場から飛び退く。

 

 こちらもゲルズゲー討伐の際に消耗している、短期決戦を望みたいところだが、数的優位はこちらにある。

 慌てずに確実に敵を倒すことが最小限の消耗と、最速撃破に繋がるのだ。

 

 

 

 

 

 一方、ケイスケ、トウカ、チユキの三人はガンダムデュナメスの方に攻撃を開始していた。

 

「こいつを喰らえ!」

 

 大型ビームキャノンとハイパーバズーカを同時に発射するジムカラミティ。

 一対の高出力ビームと砲弾は、ブレることなくガンダムデュナメスへ殺到するが、対するガンダムデュナメスは両肩のGNフルシールドを前面に展開し――全て無傷で跳ね返してしまった。

 

「無傷だとぉ……!?」

 

 戦艦の主砲並みの破壊力と言う自負はケイスケにもあったが、それも悠々と無傷で防がれると、目を疑いたくなる。

 

『なに驚いてるんです?何のためにデュナメスのフルシールドがあると思ってるんですか』

 

 ガンダムデュナメスはフルシールドの一部を展開、その隙間からGNビームピストルの銃口を覗かせると、次々にビーム弾を連射する。

 

「ちぃっ」

 

 ジムカラミティはホバー機動でこれを躱しつつもシールドビームガンを撃ち返し、

 

「だからって絶対無敵ってわけじゃねーっす!」

 

 GNビームピストルのビーム弾を掻い潜る、チユキのガンダムフラウロスベスティア。

 地面に稲妻を描くような鋭い機動でマシンガンを撃ちまくりながらも、接近戦を仕掛ける。

 ガンダムデュナメスにも近接武装としてGNビームサーベルは備えられているが、それはあくまでも近付かれた際の自衛のためのものだ。

 

「こちらも仕掛けるわ」

 

 その一方で、トウカのガンダムグレモリータナトスはスラスターウイングを翻し、ガンダムデュナメスのGNフルシールドの防御範囲外――真上から腕部機関砲を連射して牽制する。

 さすがにGNフルシールドの防御範囲外は狙われたくないようで、ガンダムデュナメスはガンダムグレモリータナトスから離れるように移動していく。

 

「もらったっす!」

 

 ガンダムフラウロスベスティアへの注意が逸れたと見て、チユキは操縦桿を押し出して加速、機首に備え付けたダブルブレードでガンダムデュナメスに斬り掛かる。

 射撃が通じないGNフルシールドも、近接格闘ならば。

 

 瞬間、ダブルブレードとGNフルシールドが衝突し――あっけなくダブルブレードの方が弾き返された。

 

「んなっ!?」

 

『はい、リアクションありがとうございまーす』

 

 これも無傷で防がれるとは思っていなかったチユキは動揺に操縦桿を止めてしまい、ガンダムデュナメスのフロントスカートが展開し、その中からGNミサイルが放たれていることへの反応が遅れてしまった。

 しかしミサイルならば、焼夷弾やフレア弾でも無い限り、ナノラミネートアーマーなら大きなダメージにはならない、せいぜい吹っ飛ばされるくらいだと、チユキは高を括りながらもGNミサイルを受け――

 

 瞬間、ガンダムフラウロスベスティアの装甲が『内側から破裂した』。

 

「うそっ、なんでっ……!?」

 

 吹き飛ばされて地面に叩き付けられるガンダムフラウロスベスティア。

 GNミサイルが着弾した部位の装甲は丸ごと破壊され、着弾部位付近のフレームも破壊されており、ガンダムフラウロスベスティアはもはや戦えるような状態ではない。

 

 これは、チユキのガンダム作品への知識が浅いことも、要因の一つだった。

 

 GNミサイルとは本来、『着弾した目標の装甲に食い込み、内部に圧縮した粒子を送り込んで中から破裂させる形で破壊する』仕組みであり、いくら衝撃やビームに強いナノラミネートと言えど、しょせんは塗膜に過ぎず、その塗膜の隙間に圧縮粒子が流れ込み、『塗膜の下の装甲に炸裂した』のだ。

 

 もしもこれがPS装甲であれば、装甲内部に圧縮粒子が流れ込んでも、『装甲そのものの強度が上がっている』ため、内部で炸裂しても大したダメージにはならなかった(代わりにエネルギーを大幅に食われるため、PSダウンする恐れはある)かもしれない。

 

 ガンダムフラウロスベスティアがGNミサイルで戦闘不能になってしまった、その理由に気付いたケイスケは泡を食ってトウカに忠告する。

 恐らくは、ナノラミネートコートでも同じことが言えるだろう。

 

「そうかっ。ミカゲ!奴のミサイルに気を付けろ!まだ両膝にもミサイルが仕込まれてるぞ!」

 

 可能であれば両脚装甲にダメージを与えてGNミサイルを誤爆させられれば、とジムカラミティはガンダムデュナメスの脚部を狙って砲撃を行うが、ガンダムデュナメスは挙動を変えて回避したり、GNフルシールドで受けたりして、脚部を守ってくる。

 

「っ、了解です!」

 

 皮肉にも、チユキのガンダムフラウロスベスティアがGNミサイルを受けたことでその脅威を知ることが出来たトウカは、ガンダムデュナメスの両膝――正面からの突撃を避け、上からの接近を試みる。

 ダブルブレードですらGNフルシールドの前では無力だったのだ、恐らくはタナトスサイズの質量を持ってしても破れまい。

 破れるとすれば……

 

『グレモリーですか、デュナメスじゃ相手するのめんどくさいですねぇ』

 

 ガンダムデュナメスはGNビームピストルを両脚のホルダーに納め、肩部に懸架したGNスナイパーライフルを持ち直し、上から迫るガンダムグレモリータナトスに向けて、放つ。

 

 ビームならばナノラミネートコートで受けられる、とトウカはこのまま距離を詰めようとして、

 ビームを受けた途端、ガクンとガンダムグレモリータナトスの挙動が傾いた。

 

「っ?」

 

 いかにビームの出力が強かろうと、これまでにビームを受けて体勢が崩れるようなことは無かった。

 不意にトウカのコンソールから、ガンダムグレモリータナトスの右腕のフレームが過負荷によって『注意』のイエローランプをがなり立てる。

 

「装甲の隙間……いえ、『フレームそのものを狙った』と言うの?」

 

 確かにフレームにまでナノラミネートの恩恵は得られないとは言え、そのナノラミネートアーマーに覆われた装甲と装甲の僅かな繋ぎ目部分であるフレームに、ましてや機動戦闘中に正確な射撃を撃ち込むなど、『不可能ではないが、あまりにも非現実的』だ。

 

 無論、フレーム自体もそう容易く壊れるものではないが、『摩耗しやすくされてしまった』ことに変わりはない。

 

「……装甲にダメージが無いなら!」

 

 この際、多少の無理は押し通す。

 トウカは操縦桿を勢いよく押し出してガンダムグレモリータナトスを加速させ、ガンダムデュナメスへ肉迫する。

 

『おやや、そう来ました?』

 

 するとガンダムデュナメスは両膝の装甲を展開し、その内側にあるGNミサイルの弾頭を覗かせる。

 

「ミサイルッ」

 

 これを喰らうわけにはいかない、とトウカは操縦桿を強引に捻り倒して、ガンダムグレモリータナトスをガンダムデュナメスの正面から逸らす。

 が、

 

『なーんちゃって』

 

 カシャン、とガンダムデュナメスは両膝のGNミサイルを撃たずにハッチを閉じた。 

 

「撃たない!?」

 

『警戒されてるのに撃つわけないじゃないですか』

 

 ガンダムデュナメスはすぐさまGNスナイパーライフルを構え直し、ほとんど狙いを付けないまま、機を窺っていたジムカラミティに向けて発射した。

 

「なにっ!?」

 

 ロックされていなかったはず、とケイスケはほぼ咄嗟でジムカラミティを挙動させ、バイタルパートへの直撃を防ごうとするが、右腕を肩から撃ち抜かれてしまう。

 

「クソッ、やるじゃねぇの!」

 

 すぐさま大型ビームキャノンで反撃するも、これはGNフルシールドでやはり防がれてしまう。

 

「馬鹿にして……!」

 

 トウカは一度イニシアティブを取り直してから、ガンダムグレモリータナトスの腕部機関砲で再度牽制、もう一度接近を試みる。

 

 アルトロンガンダムを相手取っている三人も苦戦している。

 早く向こうの援護にも向かいたいが、目の前のガンダムデュナメスはそれを許してはくれないだろう。

 再出撃と補給を終えたワイルドビーツの面々の加勢を待つために堪えるしかない。

 

 想像以上の強敵に必死に食い下がるべく、トウカとケイスケは死力を尽くさんとする。

 

 

 

 

 

 また別の渓谷地帯では。

 

 シオン達チーム・ブラウシュヴェルトが討伐を断念したシャンブロと戦っている者達がいた。

 

 チーム名『セイントエスパーダ』

 

 シャンブロの拡散メガ粒子砲と、それらを反射するリフレクタービットによる縦横無尽の弾幕を掻い潜るのは、アサクラ・ハルヤのベギルエリス。

 弾幕を凌ぎ、抜き放ったビームサーベルでリフレクタービットを叩き斬っていく。

 

 ベギルエリスがリフレクタービットを破壊していくのを尻目に、レイセン・アンリのガンダムグシオンタンザナイトは、シャンブロへ肉迫する。

 シャンブロはガンダムグシオンタンザナイトを捕らえようとクローアームを伸ばすが、手にしていた狼牙棒――ランヤーパンの一撃で砕かれてしまう。

 

 リフレクタービットの数を減らされたところに、シノミヤ・トモエのフルコマンドガンダムMK-IIと、ツキノミヤ・ヤコのザクシュヴァルツクーゲルによる無数のミサイルと砲弾がシャンブロの装甲と拡散メガ粒子砲の砲口に降り注ぐ。

 

 次々に攻撃手段を潰されていくシャンブロは、機首を展開し、大型メガ粒子砲を放とうとするが、その開かれた砲門の中に飛び込む機影がひとつ。

 ゴジョウイン・アマネのゼイドラ・スタインだ。

 ゼイドラ・スタインはメガ粒子が集束しつつあるそこへ飛び込むと、ゼイドライフルと左のマニピュレーターのビームバルカンを連射、発射を阻害する。

 

 結果、シャンブロの大型メガ粒子砲は暴発して大爆発。

 

 いよいよ何も出来なくなったシャンブロのエングレービング――バイタルパートに、アンリのガンダムグシオンタンザナイトが突撃、その勢いのままランヤーパンをぶち込み、引き抜くと、穴が開いたそこへガトリングガンを撃ち込む。

 

 コクピットブロックを散々に破壊されたシャンブロは各部を爆発させ、ついに沈黙した。

 

 シャンブロ、撃墜。

 

「シャンブロの撃破を確認しました」

 

 撃破したアンリには50機分の撃墜スコアに加えて、撃破されてもスコアが減らなくなるボーナスが付与される。

 

「よくやってくれた、アンリ」

 

 アンリの功績を褒め称えるヤコは、バトル中にも関わらず夜半の蒼月をぐびぐびと飲んでいる。

 彼女曰く、「この間は夜半の蒼月を持っていなかったから負けたのだ」と得意げなドヤ顔で言い切っていた。医務室で三日三晩昏々と眠り続けていた者とは思えない開き直りっぷりだ。

 

「ヤコさん、またそんなの飲んで……いい加減、死にますよ?」

 

 トモエは何一つ反省も後悔もしていないヤコに、「身体に障りますよ」を通り越して「死にますよ」と忠告している。

 

「俺もさっきから思っていたのだが……それは本当にコーラなのか?」

 

 実はハルヤも、ヤコに「まぁまぁとりあえず一杯」と勧められて夜半の蒼月を飲んだ瞬間吹き出して激しく咳き込んだ身だ。

 

「無駄だ、アサクラ。ヤコに関しては何を言っても反省せん。死んでも治らん病気のようなものだ」

 

 アマネですら匙を投げる始末である。

 

「ははははは、アマネは辛辣だな」

 

 けらけらと笑うヤコだが、次の瞬間には。

 

「……アンリ」

 

 低く神妙な声でアンリを呼ぶと。

 

「はい。今日の午後の部の終わりには報告が上がるかと」

 

「そうか」

 

 それだけを確認し合う。

 

「なんの話だ?」

 

 何を確認し合ったのかとハルヤが口を挟む。

 話していいのかとアンリとヤコはモニター越しにアイコンタクトし、頷き合う。

 

「なぁアサクラよ。君は、量子論についての知識はあるか?」

 

「量子論?トランザムライザーの量子化のことか?」

 

「一応、『それも内容に含まれてなくも無い』が。そうだな、乙女ゲー……いや、『ルートの分岐によってエンディングが変わるゲーム』などはやったことはあるか?」

 

「うむ……」

 

 一体何を話しているのかと疑問に思いつつも、ハルヤは是正する。

 

「そう。例えば、本来であれば死ぬはずだった人物が生き残ることで、『原作』の展開とは異なるストーリー……それは分かるな?」

 

 長い前置きを置くヤコに、トモエも口を挟む。

 

「ヤコさん?端から聞く分には私もなんの話かわかりませんけど……」

 

「黙って聞け、トモエ。……なら、劇場版の00(ダブルオー)は観たことがあるか?」

 

「劇場で3回、ブルーレイとDVDで10回以上、テレビ放映で1回観ている。もちろん、録画してダビングもしている」

 

「うむ、ガノタの鑑だな。なら、ELS(エルス)の正体が何なのかを知っている前提で話すぞ。……あぁそうそう、私が今から話すことは、映画『劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-』の重大なネタバレを含むから、まだそれ観てないよって読者さんは閲覧注意だぞ☆」

 

 何いってんだこのキツネさん。

 

 

 

 

 

 俺とマユちゃん、イツキの三人は、依然としてアルトロンガンダムとの戦闘を続けていた。

 が、こちらがいくら攻め立てても、アルトロンガンダムには一向に攻撃が当たらない。

 

 このアルトロンガンダム、挙動開始のタイミングがとにかく早いのだ。

 

 俺やマユちゃんがライフルによる射撃を行おうと銃口を向けたその瞬間には回避行動を取って射線から逃れてしまうし、イツキのドラゴニックがツインビームトライデントやドラゴンハングを用いた格闘戦を仕掛けても、全て見てから防がれている。

 

 ……まるで、後出しジャンケンだな。

 そう言えば、記憶の片隅にこうしてアルトロンガンダムを相手にして、一方的に負けたことがあるような……いやいや、今はバトルに集中しよう。

 

「なめんなぁぁぁぁぁっ!」

 

 さっきから攻撃らしい攻撃が一切通じていないことに痺れを切らしたイツキは、激しくツインビームトライデントを振り回してアルトロンガンダムに肉迫するが、

 

『はいそこ』

 

 上段から振り抜かれるツインビームトライデントに対し、アルトロンガンダムは見向きもせずに左のドラゴンハングを伸ばすと、ツインビームトライデントの柄に咬み付き――そのまま咬み砕いた。

 

「本命はこっちだ!」

 

 しかしイツキはそこで動きを止めず、間髪入れずにドラゴニックのドラゴンハングを放ち、逆にアルトロンガンダムのドラゴンハングに喰らい付いた。

 

『おっと』

 

「今だマユッ、撃てぇ!」

 

 ドラゴンハングに咬み付かれてその場から離脱出来ないアルトロンガンダムを撃てと叫ぶイツキ。

 

「うんっ!」

 

 マユちゃんのファラリアルは素早くビームアルケビュースを構えて、その銃口の先をアルトロンガンダムのボディにピタリと向け、俺もそれに合わせるように、オリジネイトのビームライフルのフォアグリップを握って精密射撃の構えを取る。

 

 これなら逃れられまい……!

 

『別に問題ないけどね』

 

 トリガーを引き絞る寸前、アルトロンガンダムは左のドラゴンハングをアームブロックから切り離してしまい、その場から飛び退いた。

 

「えっ」

 

「うそっ!?」

 

「マジか」

 

 イツキ、マユちゃん、俺の順に思わず口走ってしまった。

 

 ドラゴニックの拘束を逃れたアルトロンガンダムは、ビームライフルとビームアルケビュースの射撃をひらりと躱し――と同時にツインビームトライデントを回転させるように投げ付けた。

 

 その狙いは――ファラリアル!

 

「あっ……!?」

 

 ツインビームトライデントにビームアルケビュースを斬り裂かれ、そのままファラリアルのボディに突き刺さってしまった。

 が、シェルユニットが甚大なダメージを受けただけで、辛うじて撃墜には至らない。

 

 追撃はさせん、俺はオリジネイトを前進させてファラリアルを守ろうとするが、その横合いからビームが連射されてきた。

 

「すみませんっ、待たせました!」

 

 ワイルドビーツのガイアが四足歩行形態でビーム突撃砲を放ちながらやって来る。

 やっと来てくれたか!

 

『うん、こんなものだね』

 

 何かを確かめたかのようにアルトロンガンダムが是正すると、突然明後日の方向に向かって飛び去ってしまった。

 

「ちっ……!」

 

 舌打ちしつつも、オリジネイトのビームライフルを飛び去っていくアルトロンガンダムに向けて放つが、その距離は既に遠く、外れてしまった。

 

「マユ!大丈夫か!?」

 

 イツキは、シェルユニットにツインビームトライデントが突き刺さってしまったファラリアルに近付く。

 

「わ、わたしなら大丈夫だよ」

 

 ファラリアルは突き刺さったツインビームトライデントを引き抜いて捨てる。

 だが……

 

「あのアルトロンガンダムは、何が目的だったんだ?」

 

 俺達三人の誰も撃破していないし、飛び去った方向から見ても、デュナメスと合流する素振りも見せない。

 

 その後ろ姿が見えなくなるまで見送っていると、それに続くようにデュナメスもアルトロンガンダムの向かった方向へ飛び去っていった。

 

「デュナメスも?でも、ケイスケ先輩もミカゲちゃんもやられてねーぞ?」

 

 不思議に思ったイツキは、ドラゴニックの頭部をケイスケ先輩とミカゲさんが戦っていた方向に向ければ。

 

「おーぅ、そっちも生きてるみてぇだな」

 

 右腕を失ったジムカラミティが左腕をひらひらと振り、

 

「くっそー……チユ、なんの役にも立てなくてすいませんっす……」

 

「気にすること無いわ、お互い様よ」

 

 グレモリータナトスが、フレームごと半壊したフラウロスベスティアを支え起こしている。

 同じく合流した、ワイルドビーツのマグアナックやドム・トローペン、ガンタンクも周囲を警戒してくれている。

 

 結局、ゲルズゲー討伐のスコアはあの二機に横取りされ、時間を無駄にしただけで、午前の部終了のブザーが鳴り響いた。

 

 

 

 

 

(劇場版ガンダム00のネタバレあります、ご注意ください)

 

 

 

 

 

 

 午前の部終了の直前、ヤコはハルヤに静かに語り始めた。

 

 

 

 ――ELSは種の存続のために、外宇宙からワームホールを通って、あらゆる存在との共存に失敗しながらA.D.歴の地球圏に現れた。

 

 つまり、ELSは地球人類との接触を試みる前に、ありとあらゆる宇宙に現れていたと言うわけだ。

 昨今流行りの言い方に合わせるなら、"異世界転生"を何度も繰り返していたと言うことだな。

 

 と言うことは、刹那達A.D.歴に生きる人類とは"別の人類"との共存が行われていた可能性もある。

 あくまでも可能性があると言うだけで、確証はゼロだが。

 

 例えば……宇宙世紀や、A.C.(アフターコロニー)、C.E.(コズミック・イラ)、P.D.(ポストディザスター)の世界にも、もしかしたらELSが現れていたかもしれない。

 

 そこで話は少し変わるが、Gガンダムの世界――F.C.(フューチャーセンチュリー)で、ウルベ・イシカワが『デビルガンダムコロニー』を用いて、全世界に宣戦布告した時、各国のガンダム達が一丸となって戦った、ガンダム連合。

 

 原作アニメでは、ゴッドガンダム大勝利!希望の未来へ、レディー・ゴー!で締めくくられたが。

 

 IF(もしも)……ガンダム連合とデビルガンダム、どちらも『地球を守る』という"強い意志"に誘われて、

 

 

 

 

 

「――別の宇宙からELSが乱入して来たら、どうなる?」

 

 

 

 

 

 ヤコのその問い掛けに、ハルヤはGガンダムのストーリーの根幹を為すテクノハザード――DG細胞と、ELSの性質の両方を頭に思い浮かべ、さらにはネット上の二次創作小説や掲示板を読むことで培った、クロスオーバー、あるいはスパロボ的解釈を掛け合わせていく。

 

「………………まず、大量のELSがデビルガンダムとの接触を図るべく、デビルコロニーへ侵食を開始。これに対してデビルガンダムはELSにDG細胞を植え付けて自身の制御下に置こうとする。するとELSはデビルガンダムと共生関係になることがこの世界の共存方法であると学習、次々にデビルガンダムとの共生・癒着を始める。そうしてELSとの共生関係を得て、より強大になったデビルガンダム――ELSデビルガンダムは、ガンダム連合を呑み込むだろう」

 

「ふむ、素晴らしい解釈だ。まさに私が思っていた通りのことを挙げてくれた」

 

 満足気に頷くヤコ。

 しかし、それを横から聞いていたトモエは。

 

「……"デビルガンダム大勝利"でGガンダムが締め括られた、『その後』はどうなるのかを、訊いても?」

 

「そこから先は私の憶測の域を出ないが……ELSとデビルガンダムは"対話"を行い、地球の自然再生こそがデビルガンダムの意志であると理解し合い、まずは地球再生を完了させるだろう。で、己が役目を終えたデビルガンダムが、今度はELSの望みを聞くだろう。既に両者は共生関係――Win-Winを築いているからな」

 

 するとどうなるか。

 

「ELSはデビルガンダムとの共生だけに留まらず、未来世紀からまた別の宇宙へ往くと?」

 

 そこへアンリが推測を口にする。

 

「ELSは元々母星の消滅から逃れ、種の存続を目指す存在だからな。デビルガンダムとの共生だけでは生き長らえることは出来ても、その数は増えない。ではどうすれいいか?簡単だ、デビルガンダムと言う最強最悪の暴力装置を以て、他の宇宙を支配すればいい」

 

「…………ヤコ、まさか本当に?」

 

 アマネも、ヤコが昨日に会場地下で"ナニか"を見たのかは聞かされている。

 そして、それがヤコとアマネが考え得る限りの――とてつもなくおぞましいことであることも。

 

「あくまで、私の憶測と勘だ。全くの的外れである可能性も無きにしもあらずだが……私の勘だと、この事態を静観するのは危険だと告げている」

 

 ピコンピコン、とヤコの狐耳状のアホ毛が揺れ動く。だからどうなってんだその黒髪。

 

 不意に、午前の部の終了のブザーが鳴り響いた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。