ガンダムブレイカー・シンフォニーRe:BREAK   作:さくらおにぎり

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22話 真の優しさは

 渓谷の谷間を、濛々と砂煙を巻き上げながら悠々と前進する機影アリ。

 

 一見するそれは雄々しくも優雅な、白鳥(スワン)のような機体。

 

 しかしその実態は、人類人口の1/4を焼き払った厄祭の大量殺戮兵器――の、内のひとつ、MA・『ハシュマル』

 

 自機の足元に、夥しい数の子機――『プルーマ』を随伴させたそれは、親鳥の腹下に寄り集まる雛鳥達のように微笑ましいもの……に、見えなくもない。

 ――尤もその雛鳥達は、人間やその人間が操る兵器を見かけた瞬間はしゃぎまわって集り(ころし)に来るのだが。

 

 そんなとてつもなく恐ろしい親子連れの上から、ドガァンッ!!と爆発が発生した。

 一度だけではない、何発もの爆発が崖を切り崩し、切り崩した岩肌は瓦礫のシャワーとなってハシュマルとプルーマ達に降り注ぐ。

 ハシュマル本体は装甲の頑強さもあって意に介さずに進んでいるが、足元にいたプルーマ達はそうもいかず、瓦礫に押し潰されて破壊されたり、機体を損壊させて動けなくなったりと、てんやわんやの様相だ。

 

「よぉし、行くぞアサナギ!」

 

「はいっ!」

 

 その崖上から、ケイスケのジムカラミティと、マユのガンダムファラリアルが姿を覗かせると、ジムカラミティは大型ビームキャノンと腹部のメガ粒子砲で地表を薙ぎ払い、ガンダムファラリアルはガンビットを展開しつつもビームアルケビュースを構え、多数のビームを以てプルーマ達を次々に撃破していく。

 残念ながらプルーマを撃破しても、撃墜スコアは加算されない。

 

 崖上からの砲撃に対し、ハシュマルは足を止めて頭部を開くと、その口蓋に光を迸らせ、極彩色の破壊光線――ビームを吐き出した。

 ナノラミネートアーマーならば有効打足りえないが、ジムカラミティにもガンダムファラリアルにとっても、脅威そのものだ、ケイスケとマユはすぐに崖上から機体を引っ込めてビームをやり過ごす。

 

 そうしてビームが止んだ頃を見計らってその場を移動し、ハシュマルを誘き寄せるように砲撃しつつ、プルーマの数も減らしていく。

 

 ハシュマルはハシュマルで、二機を追い掛けながらも射程に入るなりビーム砲を発射して逃げられる、と言うことを何度も繰り返している。

 

 ケイスケとマユが近付かずに遠距離から砲撃を繰り返しているのは、機体の武装関係上、強固なナノラミネートアーマーに守られたハシュマルを倒すのは難しいためであり、そのハシュマル撃破に当たって弊害となるプルーマの殲滅に力を注いでいる――謂わば、本命を活かすための露払い。

 

 この先に、リョウマのオリジネイトガンダム、イツキのドラゴニックガンダム、トウカのガンダムグレモリータナトスが待ち構えてくれており、ハシュマルを撃破するのは三人の役目だ。

 

 

 

 午前の部では十分なポイントを稼げなかったので、この午後の部で必死に巻き返しを狙う、俺達チーム・ビルドシンフォニー。

 しかし必死の巻き返しを狙っているのは他のチームも同様で、幾度化の乱戦の連戦を繰り返したところで、プルーマを引き連れたハシュマルが、渓谷の谷間を闊歩しているのを発見したので、これを撃破することで逆転を狙おう、と言うことで、まずはケイスケ先輩とマユちゃんが先行してハシュマルを牽制しつつプルーマの数を減らし、その後で俺、イツキ、ミカゲさんの三人でハシュマルと正面から立ち合うと言う作戦だ。

 

「――来たか」

 

 爆音と振動、そして濛々と立ち上る砂煙に合わせ、センサーが敵機の接近を伝えてくる。

 

 最初に土煙から飛び出してきたのは、後退しながら砲撃を繰り返すジムカラミティとファラリアル。

 

 先行していた二人は確かにハシュマルの足を遅らせ、プルーマの数を減らして見せた。

 

「ケイスケ先輩!」

 

「おーし、頼むぞ!」

 

「あとはお願いね!」

 

 俺が呼び掛けると、ジムカラミティとファラリアルはすぐに後方の崖上を陣取る。あの二人は、ハシュマルが瀕死のところを狙ってくる乱入者の排除をお願いしてもらう算段だ。

 午前の部のゲルズゲーも、あと一歩ってところで横取りされたからな、その対策だ。

 

 その様子を見送って、気を引き締め直す。

 

 ここからは、俺達三人の出番だ。

 

「よーっし、やってやんよ!」

 

 イツキのドラゴニックはツインビームトライデントを抜いて、ブンブンと振り回して見せる。

 

「サイキ先輩とアサナギさんが必死に子機の数を減らしてくれたんだから、それに応えなければね」

 

 ミカゲさんのグレモリータナトスも、タナトスサイズを構え直している。

 

「行くぞ」

 

 俺のオリジネイトも、両腕にヒートブレードを構える。

 

 ゆらりと土煙から姿を現すハシュマルと、それに続きプルーマも次々に飛び出してくる。

 大分数を減らされ、しかも戦闘中のため再生産することは不可能のはずだが、よほどの数を引き連れていたのか、その勢いはまだまだ衰えたようには見えない。

 

「牽制する」

 

 両腕のヒートブレードのビームガンを連射し、最前列のプルーマの群れを撃ち抜いていく。

 すると射程に入ったか、ハシュマルは頭部を開き、おぞましい咆哮を上げながらビームを吐き出してくるが、グレモリータナトスは敢えて前に出て、そのビームに対して真正面から突っ込む。

 もちろん、ナノラミネートコートの恩恵のおかげで、撃破されることもなく、グレモリータナトスは悠々と前進している。

 親機はやらせんと数体のプルーマがグレモリータナトスに飛び掛かってくるが、

 

「でえぇぃッ!」

 

 グレモリータナトスはタナトスサイズを振るい、プルーマ数体を纏めて薙ぎ払う。

 ミカゲさんが切り開いた穴に突っ込むのが、俺とイツキの役目だ。

 

「行くぜリョー!」

 

「応っ!」

 

 いざ、突撃!

 

「おりゃおりゃおりゃおりゃおりゃぁっ!」

 

 縦横無尽にツインビームトライデントを振るい、雲霞のごとく迫りくるプルーマの群れを蹴散らしていくドラゴニック。

 俺のオリジネイトもヒートブレードを振るいながらビームガンを撃ち込んでプルーマをふっ飛ばしていく。

 

 が、不意に風切り音を立てながらハシュマルの尻尾――テイルブレードがすっ飛んで来たので、これはヒートブレードで弾き返して。

 

「そこね」

 

 隙を見つけたグレモリータナトスが、スラスターウイングを翻して急速接近してタナトスサイズを振り下ろせば、ハシュマルの前腕フレーム、そのパーツの繋ぎ目部分を狙った一撃は、原作よりも数段強化を受けているだろうそれを叩き斬ってみせた。

 

 前腕を斬り落とされてバランスを崩すハシュマル。

 グレモリータナトスはそこで深追いせずに一度飛び下がり、寄って集ってきたプルーマの群れをタナトスサイズで斬り捨てていく。

 

「ミカゲちゃんナーイスッ!」

 

 バランスを崩したハシュマルに、ドラゴニックはバックパックから左のドラゴンハングを放ち、ハシュマルの側頭部を殴り付け、インパクトした部分を凹ませる。

 

 しかしすぐに立ち直ったハシュマルは歪に凹んだ頭部装甲を無理矢理開いて、ビーム砲を発射、照射したまま俺達を薙ぎ払おうと振り回してくる。

 その拍子に何体かのプルーマが巻き添えを喰らって消滅している。無茶苦茶だな、おい……

 

 敵味方関係無くドガドガ撃ちまくってくるカラミティガンダムの様相を見たアスランの気持ちがよく分かった瞬間だが、それも一瞬、びゅごーびゅごーとギロチンバーストを連発してくるハシュマルに、迂闊には近付けない。

 

 そこへ、大口径の砲弾がハシュマルの横腹に突き刺さり、炸裂。

 回り込んでいたケイスケ先輩のジムカラミティの、ハイパーバズーカによる砲撃だ。

 ジムカラミティを睨みつけるように頭部を向けるハシュマルだが、ジムカラミティはすぐに崖上に引っ込む。

 ついでとばかり、逆の崖上からはファラリアルのビームアルケビュースがプルーマの数も減らしてくれる。ありがてぇありがてぇ。

 ハシュマルの注意が崖上へ向いている内に、オリジネイトを加速させ、ハシュマルの懐へ飛び込む。

 襲い来るテイルブレードは慌てずに弾き返しつつ、数を減らされたプルーマは頭部バルカンであしらって、ヒートブレードでハシュマルの装甲を焼き斬っていく。

 そうしている内にも、ドラゴニックとグレモリータナトスはハシュマルの左前腕クロー内部から放つ運動エネルギー弾を躱して、

 

「こいつでっ!」

 

 ドラゴニックの放つ二頭のドラゴンハングが、ハシュマルの機首の"首筋"を捉え、喰らい付いたそこへ頭部バルカンを撃ち込む。

 

「そろそろ堕ちなさい」

 

 瞬間、銀色の三日月を描くようなグレモリータナトスの一閃が、ハシュマルの大きく広がったバインダーを真っ二つに斬り裂く。

 

 大きくバランスを崩すハシュマル。

 その隙を見逃す俺ではない、右のヒートブレードをハシュマルの土手っ腹に突き込んでアウェイし、

 

「バズーカの大盤振る舞いだ、残さず食え」

 

 温存していたハイパーバズーカを取り出し、連射して全弾叩き込み、ジムカラミティからのハイパーバズーカも続く。

 

 バズーカ弾の炸裂の連発に蹈鞴を踏むハシュマル。

 

 プルーマの群れはファラリアルのガンビットによって駆除が進んでいる。

 

 ギヂギヂギヂギヂと軋轢音を立てながら、ドラゴニックのドラゴンハングがハシュマルの首筋に食い込み始め――しかしハシュマルも諦めが悪く、刃毀れしたテイルブレードを振るって、ドラゴンハングのアームブロックを斬り裂いてしまう。

 

「あっ、くそっ!」

 

 その拍子に弾き飛ばされてしまうドラゴニック。

 が、それはこっちの想定範囲だ。

 

 損傷して傷付いたハシュマルの首筋に、もう片方、左手のヒートブレードを勢いよくぶち込んだ。

 ビーム砲のジェネレーターを破壊したか、ハシュマルの頭部が大爆発し――ここまで重なったダメージがついに功を奏し、その白い巨躯がガクンと倒れ炎上、残った僅かのプルーマも電源を切られたように停止していく。

 

 ハシュマル、撃墜。

 

 大型ユニット撃破により、俺に50機分の撃墜スコアが加算され、さらに撃墜されてもポイントが減らなくなるボーナスが追加される。

 

「よーしよし、よくやったなリョウマ」

 

 ケイスケ先輩のジムカラミティがホバー機動で駆け寄って来る。

 

「これだけスコアを稼げば、なんと決勝戦に進めそうですかね」

 

 午前の部と午後の部の間のインターバルで周囲の話に耳を傾けてみれば、大型ユニットの討伐を狙って全滅したり、命からがら逃げ切ったので手出しを控えていると言う内容がちょくちょく聞こえてくる辺り、他のチームはあまり大型ユニットの討伐には積極的では無いらしい。

 なので、通常の撃墜スコアでもそれなりに稼いだ上から大型ユニット討伐のボーナスポイントも追加すれば、勝ち残れる可能性はより高まる。

 

「けど、まだ油断は出来ないわ。補給したらすぐにもう少しでもスコアを稼いでおきましょう」

 

 ミカゲさんも言っている通り、残り時間も僅かだが、念の為もう少しでも撃墜スコアを稼いでおきたいところだ。

 

 ……そう言えば、チユキちゃん達やシオン達は勝ち残れているだろうか。

 

 同盟を結んでいたチユキちゃん達ワイルドビーツとは、午後の部の開始と共に別々の地点でスタートしてしまったため、動向は把握出来ていない。

 

 シオン達も同じだが……昼休みの時に、彼らブラウシュヴェルトに話しかけても、みんな意気消沈していた。

 その時にシオンは「たった二機に全滅させられた」と悔しげに唸っていた。

 相手は何だったのかと訊いてみれば、どちらも"陰りを帯びたようなカラーリングの"『ガンダムAGE-2』と『大喬ガンダムアルテミー』だそうだ。

 陰りを帯びたようなカラーリング……もしかすると、あのアルトロンとデュナメスとは、同じチームなのかもしれない。

 シオン達も後半からの巻き返しを狙うつもりだとは言っていたが……午前の部のスコアを丸ごと失ってしまったとなればかなり厳しいだろう。

 

 まぁ、ここで俺がそれを気にしても結果は変わらない、早いところ補給したら、ダメ押しで撃墜スコアを稼がなくてはな。

 

「よっし、そんじゃ早く補給ポイントに急ごーぜ!」

 

 イツキのドラゴニックが、真っ先に補給ポイントのある方向へ飛んでいく。

 その後を追うように、ミカゲさんのグレモリータナトスと、ケイスケ先輩のジムカラミティ、そして俺のオリジネイトも……と思ったのだが、

 マユちゃんのファラリアルだけ、挙動が見られない。さっきのやり取りにも混ざってなかったし……どうしたんだろう。

 

「アサナギさん?」

 

「…………えっ?あっ、何かな?オウサカくん」

 

「今から補給しに行くって話、聞いてたか?」

 

「ご、ごめんなさい、聞いてなかったです……」

 

「まぁ、とにかく補給しに行くか」

 

 オリジネイトを飛行させ、ファラリアルも続いてくれる。

 

 その道中。そっとファラリアルの肩にマニピュレーターを置いて、マユちゃんに接触通信。

 

「何か、考え事か?」

 

「え?」

 

「いや、何か考え事をしていたから、反応が鈍かったのかなと」

 

「………………」

 

 沈黙が続く。

 

「その、ね……わたし、このチームの役に立ってるのかなって」

 

 沈黙の後、マユちゃんから自信の無さげな声が届く。

 

 あぁ〜そうきたか、なるほどねぇ〜…… 

 

 過去の異世界転生でも、"自己肯定力"の弱い人は何人存在していた。

 そう言う人は、理屈で説明してもなかなか納得してくれないものだ。

 さて、どう言ったものかな……

 

「どうしてそう思ったんだ?」

 

 まずはその理由を訊いてみよう。

 

「うーん……昨日と今日のバトルで、みんなの中で私が一番スコアを稼げてなかったから、もしかして、足手まといになってるのかなって」

 

 撃墜スコアの伸びの悪さを気にしていたのか。

 

「サイキ先輩は、指揮官として指示を出しながら、自分も積極的に攻撃してるし……」

 

 それは機体特性の問題でもあると思うけどなぁ。

 ファラリアルは射撃寄りの高機動タイプで、ジムカラミティはバランスの取れた砲撃タイプだし、いくらファラリアルにビットがあるからと言っても、正面火力ならジムカラミティの方が上だし。

 

「なぁアサナギさん。小難しいことをごちゃごちゃ言っても伝わらないから、ハッキリ言うぞ。俺達はアサナギさん無しじゃ今日まで戦えなかったし、春の地区大会でも優勝を逃していた」

 

 マユちゃんに何か言われる前に遮って畳み掛ける。

 

「アサナギさんはバトルの時、後方援護なんてめんどくさいからって手を抜いていたのか?」

 

「そ、そんなこと、」

 

「無いだろ?みんな同じだよ、自分の役割を果たそうと必死だ。もちろん俺もな」

 

「オウサカくんも……?」

 

「あぁ。アサナギさんの援護に助けてもらってばかりで、ちゃんと戦えているのかどうか不安になった回数なんてもう忘れたぞ」

 

 本当は、マユちゃんの援護があるから思い切り戦えるんだけど。

 

「イツキなんか、アサナギさんが援護してやらないと突っ込んですーぐやられるぞ?」

 

 これは俺の主観から見た忌憚の無い意見だ。

 イツキも多分俺と同じだ、マユちゃんになら背中を預けてもいいから、思い切り突っ込んで行くんだ。

 

「ケイスケ先輩だって、一人で俺とイツキとミカゲさんの三人を同時に援護するのは無理だし、ミカゲさんだってアサナギさんがいてくれたから、初めてでもグレモリーをちゃんと完成させられたんだ」

 

「……………」

 

「な?足手まといどころか、アサナギさんがいてくれなきゃダメなんだよ、このチーム」

 

 冗談めかしつつ、存在肯定。

 すると、

 

「……ありがとう、オウサカくん」

 

 不意に、アサナギさんから感謝された。

 

「オウサカくんにそう言ってもらえて、なんだかすごく気が楽になった」

 

 安心してくれたなら何よりだよ、ホッ。

 

「ん、どういたしまして」

 

 これでこの問題はおしまい、と思ったら、

 

「あ、あのね、オウサカくん」

 

「ん?」

 

 まだなんかあるのか。

 

「…………あれ?」

 

「どうした?」

 

 不自然に間が置かれた。

 

「あ……えっと……ごめんなさい、なんでもないの」

 

「……なんでも無いなら、いいけど」

 

 っと、そろそろ補給ポイントだ。

 

 

 

 リョウマとの通信を終えたマユは、自機のガンダムファラリアルの、胸部のシェルユニットに目を凝らす。

 そこに小さく薄っすらと『銀色のヘックス状のものが浮かんでいた』

 

「(ただの処理落ちかな……)」

 

 そうだと決め付けて、それ以上気にすることは無かった。

 

 

 

 

 補給を終えたらすぐに他のチームとの乱戦に突入し、少しでも撃墜スコアを稼ぐ。最後の追い込みだ。

 

 程なくして、バトル終了のブザーが鳴り響いた。

 

『はーい!これにて、二日目午後の部も終了でーす!皆さん、お疲れ様でしたー!』

 

 終了と同時にナナちゃんのアナウンスが流れ、会場のスポットライトとギャラリーの注目が彼女に向けられる。

 

『ではでは!明日午前に行われます、決勝戦への切符を手にした4チームを、今ここで発表いたしまーす!』

 

 おっ、ここで決勝進出チームが発表されるのか。

 ゴジョウイン先輩達のチーム・セイントエスパーダは、まぁ確実に残ってくるだろう。

 そこに俺達チーム・ビルドシンフォニーや、ワイルドビーツ、ブラウシュヴェルトも滑り込めているかどうか……

 

 ジャラララララ……とドラムロールが流れ、

 

 ジャンッ!!と同時に、大型モニターに4チームの名前が並ぶ。

 

 

 

 ・フォルテA

 

 ・フォルテB

 

 ・セイントエスパーダ

 

 ・ビルドシンフォニー

 

 

 

 セイントエスパーダと……ビルドシンフォニー!

 ヨシッ!勝ち残った!

 ワイルドビーツとブラウシュヴェルトは残念ながら勝ち抜け無かったようだが……

 

 同名にA、Bと別けられたチーム……恐らくは同盟チームのようだな。

 

『ハイ!というわけで、チーム・フォルテA・Bと、チーム・セイントエスパーダ、チーム・ビルドシンフォニーの4チームに決定しました!勝ち残った4チームに皆さん、拍手をお願いしまーす!』

 

 ナナちゃんの司会進行により、会場に拍手が響き渡る。

 

「よっしゃ!なんとか勝ち残れたな!」

 

 ケイスケ先輩はぱんっと手を鳴らしてガッツポーズ。

 

「やったなリョー!」

 

 イツキも嬉しそうに喜んでいるが……前の地区大会みたいに遠慮なく背中を叩いたりしない辺りに、俺に対する態度が変わっているな。

 

「ふぅ、一時はどうなることかと思ったわね」

 

 ミカゲさんも勝ち残れたことに安堵している。

 マユちゃんはというと。

 

「勝ち残れた……!」

 

「アサナギさんのおかげでもあるし、俺達みんなのおかげでもある。そう言うことだよ」

 

「そっか……えへへ」

 

 良かった、「自分は足手まといかもしれない」なんて不安は、完全にでは無いだろうが、少しは払拭出来たようだ。

 

「オウサカせんぱーい!」

 

 すると、チユキちゃんが駆け寄って来た。

 

「決勝進出おめでとうございまっす!ウチらも決勝で先輩達と戦いたかったっすけど、こればっかりはしょーがない!明日はめいっぱい先輩達を応援するっす!」

 

「ありがとう。ならその応援を裏切らないように頑張らないとな」

 

 チユキちゃんから激励を受け、入れ替わるようにシオンもやって来た。

 

「決勝進出、おめっとさん。あんたとは、決勝でケリを着けたかったんだがなあ」

 

「それはまた次の機会に、だな」

 

 まぁ、バトルするだけならいつでも出来るけど。

 すると、不意にシオンの顔が険しくなり、筐体が並ぶその一角を見やる。

 その視線の先を追うと――

 

 ナカツ・チサさんと目が合い……すぐに逸らされた。

 

「……チーム・フォルテ。あいつらだよ」

 

「彼女達がそうなのか」

 

 アルトロンとデュナメス、そしてAGE-2と大喬ガンダムアルテミー。

 

 シオンですら全く相手にならなかったほどだ、A級揃いのセイントエスパーダの面々と同じか、それ以上の実力があると見てもいいだろう。

 

「ただ単に強いだけじゃあない、あいつらからは……得体の知れない"狂気"を感じたんだ」

 

「狂気?」

 

「何を言ってるのか分からねえとは思うが、俺は確かにそう感じて、先輩達のこともバカにされて、頭がどうにかなりそうだった……ガチ勢だとか効率厨だとか、そんなチャチなもんじゃあ、断じてねえ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……」

 

「ふむ……」

 

 理性では分からない、"第六感"のようなものか。

 

「とにかく、あいつらは尋常じゃあなく強え。気い引き締めてかかってくれよ」

 

「仇は取る、なんて殊勝なことは言わないが、全力で行くだけだ」

 

 ここまで来たからには、優勝狙っていくぜ。

 

『決勝戦は、明日の午前10時から開始です!それでは皆さん!また明日ー!』

 

 ナナちゃんの司会進行により、二日目のバトルは締め括られた。

 

 

 

 さて、一日目と同じく、ここからは自由時間だ。

 

 自由時間……だが、明日の勝利のためにやらなければならないことが出来たので、まずはゴジョウイン先輩とコンタクトを取るべく、RINEの無料通話を繋ぐ。

 少し間を置いてから、通話に応じてくれた。

 

『もしもし、オウサカか?』

 

「そうです、オウサカです。……あぁ、そうそう、決勝戦進出、おめでとうございます」

 

『君達もだろう?おめでとう。それで、おめでとうを言いたくて電話したわけではあるまい?』

 

「はい。ゴジョウイン先輩、今から時間はありますか?出来れば、チーム全員揃ってる方が望ましいんですけど」

 

『む?少し待ってくれ……』

 

 一旦通話が途切れるが、小さくゴジョウイン先輩の声が聴こえているので、シノミヤ先輩にアサクラ先輩、アンリ嬢、ヤコさんもそこにいるのだろう。

 ややあって、

 

『時間はあるが、私達を集める目的を教えてほしい』

 

「率直に言うと、明日の決勝戦に関するブリーフィングです。俺達ビルドシンフォニーと、先輩達セイントエスパーダで、同盟を組んでくれませんか?」

 

『ふむ……』

 

 また少し間を置いてから。

 

『ブリーフィングの場所はどこだ?』

 

「俺達の部屋で行うつもりです。選手村の前で、一旦待ち合わせと言うことで」

 

『了解した、すぐに行く』

 

「ありがとうございます。では、また後で」

 

 ゴジョウイン先輩との通話を終えて、すぐに会場から選手村へ戻る。

 

 

 

 選手村の前でゴジョウイン先輩達セイントエスパーダと合流したら、ぞろぞろと一部屋――女子三人が使っている部屋(四人用)へ移動する。

 

 女性陣から優先的に座り、俺とケイスケ先輩、アサクラ先輩は立ったままブリーフィングに参加する。

 

「それで、オウサカくん。あなた達ビルドシンフォニーと、私達セイントエスパーダで同盟を結びたいと言う、その心は?」

 

 開幕、シノミヤ先輩が同盟について問い掛けてくるので、こちらの思惑を素直に明かす。また、チームのみんなには事前に同盟許可を得ている。

 

「俺達以外に勝ち残って来たのは、チーム・フォルテのA、Bの両チーム。この2チームは恐らく同盟を結んでいるはずです。なのでここは三つ巴の乱戦になるよりも、こちらも同盟を組んでことに当たる方が、勝率は上がります」

 

 スマホの検索で今大会のホームページを開き、決勝戦まで勝ち登ってきた4チームの名前が表示される画面まで持ってくる。

 

「そして、チーム・フォルテの合計10機の内、4機は何を使ってくるのかの予測は出来ます」

 

「手狭で悪いが、この動画を見てくれ」

 

 続いてケイスケ先輩が予め用意してくれていた、アルトロンとデュナメスとの交戦動画と、シオン達から提供してもらった、AGE-2と大喬ガンダムアルテミーとの交戦動画を視聴してもらう。

 

 俺達が直接交戦していない、AGE-2と大喬ガンダムアルテミーの方の動画を見ても、この二機も相当な手練れだ。前者は消耗していたとは言え二対一で圧倒、後者はエース級であるシオンを圧倒。

 

「単騎で複数を圧倒可能な戦闘力か。同数同士で正面からぶつかれば、厳しい戦いを強いられるだろうな」

 

 セイントエスパーダの"黒一点"であるアサクラ先輩は、想定し得るケースを既にいくつも頭に浮かべているようだ。

 

「ですが、同盟を組むとしてもこちらは俄仕込み、あちらは最初から2チームで戦う構えでしょう」

 

 アンリ嬢の言う通り、同名のA、Bチームで別けている辺り、チーム全員で連携する構えも万全と見てもいいだろう。

 

「何か、具体的な作戦があるの?」

 

 そこにシノミヤ先輩が、作戦があるのかを訊いてきた。

 

 パンフレットを大きく広げ、それを便宜的なフィールドとして、その上にそれぞれのガンプラを置くように言うと、みんながそれぞれのガンプラを置いてくれる。……って、ヤコさんのザクシュヴァルツクーゲル、実物は重すぎて自立できないのか、アクションベースに接続した状態で乗せてきたんだが。

 

 ・オリジネイトガンダム

 

 ・ガンダムファラリアル

 

 ・ドラゴニックガンダム

 

 ・ガンダムグレモリータナトス

 

 ・ジムカラミティ

 

 ・ゼイドラ・スタイン

 

 ・フルコマンドガンダムMK-II

 

 ・ザクシュヴァルツクーゲル

 

 ・ガンダムグシオンタンザナイト

 

 ・べギルエリス

 

 の、計10機だ。

 

「作戦と言っても、複雑な合図やプランは却って混乱を招くだけなので、至ってシンプルです」

 

 ちょっと動かしますよ、と一言断ってから、みんなのガンプラを壊さないようにひょいひょいと動かしていく。

 

「チームを二分化し、半分を陽動役とします。陽動役が囮として突出し、敵チームが固まってきたところを、残り半分の別働隊が強襲役その背後を突き、各個撃破……」

 

 ようは、同数同士を正面からぶつけても不利なら、『ぶつけ方を工夫すればいい』のだ。

 

 陽動役と強襲役を分けると、このような形となる。

 

 

 

 陽動チーム

 

 ・オリジネイトガンダム

 

 ・ドラゴニックガンダム

 

 ・ガンダムグレモリータナトス

 

 ・ガンダムグシオンタンザナイト

 

 ・べギルエリス

 

 

 

 強襲チーム

 

 ・ガンダムファラリアル

 

 ・ジムカラミティ

 

 ・ゼイドラ・スタイン

 

 ・フルコマンドガンダムMK-II

 

 ・ザクシュヴァルツクーゲル

 

 

 

「この時、強襲チームの五人は、相手チームにこちらの動向を気取られないように慎重に、フィールドアウトギリギリを迂回してください」

 

「だがオウサカ、それよりも陽動チームの方に問題があるだろう」

 

 ゴジョウイン先輩がそこを指摘してくる。

 

「総合戦力は向こうの方が上と見てもいいなら、相手は多少の囮など気にせずに平押しに攻め込んで来るかもしれん」

 

 こっちの思惑などガン無視で、「罠なら罠ごと噛み砕く」と言う、CGS参番組みたいな戦法を取ってくるケースもある――強襲役が背後に回り込んでいる間に陽動役が倒されては意味が無いぞと、ゴジョウイン先輩は言う。

 

「それは承知の上です。けれど、陽動と強襲、どちらかに比重が傾いても、この作戦は成功しません」

 

 陽動チームが先に倒されても意味はないし、強襲チームが攻め時を見誤っても意味はない。

 

「あたしはそのー……作戦とかよく分かんねーけど、身体張れって言うなら任せろ!」

 

 作戦の本質も分かってないのにどこからその自信が出てくるんだよイツキェ……

 けどまぁ、陽動チームの役目はまさに『身体を張ること』だ。

 

「わ、わたしも、オウサカくんのことなら信じるからっ……」

 

 マユちゃんは作戦内容もちゃんと理解出来てるだろうけど、俺が立てた作戦だからって無闇に信じるのはちょっとなぁ……

 

「相手は格上、こちらは俄仕込み。無理に足並みを揃えようとするよりは、現実的ね。些か希望的観測が強い分、確実性には欠けるけど」

 

 忌憚の無い言葉で作戦に同意してくれるのはミカゲさん。敵の攻撃に耐えられる装甲を持っているから、彼女には陽動チームに入れたところもある。

 

「俺としても、この作戦に文句はねぇな」

 

 ケイスケ先輩の同意も得られたところで、ビルドシンフォニー全員が了承。

 残るはセイントエスパーダの面々だが……

 

「良いだろう、この作戦に乗ってやろう」とゴジョウイン先輩。

 

「まぁ、こうでもしないと勝ち目は無さそうね」とシノミヤ先輩。

 

「乗りかかった船だ、どこまでも付き合うとしよう」とアサクラ先輩。

 

「了承致しました」とアンリ嬢。

 

 ……おや?一番作戦会議に乗り気そうなヤコさんが、何故か一度も話に混ざっていない、と言うかさっきからずっと何か考え込んでいる。

 

「ヤコさん?話、聞いてました?」

 

「………あぁ、聞いているよ。恋人へのプレゼントガンプラは、全身をゴールドに塗装して、鳥の羽根状のスラスターウイングを搭載した、ライジングフリーダムにしよう、と言う話だったな?」

 

 全然聞いてねぇ。ってかなんだその、"鳥になりそうな"フリーダムは。

 

 作戦概要を最初から滾々と説明し直して。

 

「うむ、分かった」

 

 とだけ言って、また何か考え込んでしまった。

 

「えっと……大丈夫なんですか?」

 

『夜半の蒼月(ルナティクス・ブルー)』も飲まずに先程からずーっと考え込んでいる。

 

「心配ない。ようは時間差の挟撃作戦だろう、理解している」

 

「なら、いいんですけど」

 

「以上か?なら私は帰るぞ」

 

 それだけ言って、ヤコさんは部屋を出て行ってしまった。

 

「今日のヤコさん、いつも以上に変ね……」

 

 シノミヤ先輩は訝しげに、ヤコさんの去ったドアを見やる。

 しかしすぐにドアが開けられ、

 

「皆さんお疲れ様でーす!決勝戦進出おめでとうございますと言うことで、わたしから差し入……」

 

 ヤコさんと入れ替わるように、アイドル衣装のナナちゃんが入って来た。

 

「あ、あれ?なに、この空気……?」

 

「……ホシカワは気にしなくていい」

 

 ビニール袋をいくつか手にしたナナちゃんに、ゴジョウイン先輩が遮った。

 ナナちゃんが差し入れに持ってきてくれたのは、缶ジュースだったので、ありがたくいただきました。

 

 

 

 

 

 作戦会議も終わったあとは自由時間を過ごし、今夜は早く寝ようと言うことで、早めに床についていたのだが。

 

「…………」

 

 なんか眠れん。

 何だかんだ言って、明日に緊張しているのかもしれん。

 隣のベッドのケイスケ先輩はぐーすかぴーと寝ているのに。

 気晴らしにテキトーに館内でもブラつこうかと思った時、

 

 突如、RINEの通知が鳴った。

 

 こんな時間に誰だろうと思って、充電していたスマホを取ると、

 

 マユ:まだ起きてる?

 

 マユちゃんからのメッセだった。

 彼女も眠れないのだろうか。

 

 リョウマ:起きてる、何故か眠れない

 

 マユ:ちょっとだけ、外で話さない?

 

 リョウマ:よしきた

 

 マユ:じゃぁ、エントランスで落ち合おっか

 

 

 

 リクエスト通りエントランスまで降りると、パジャマに上着を羽織ったマユちゃんが既に待ってくれていた。

 

「お待たせ」

 

「もしかして、わたしがRINE送ったから起きちゃったり?」

 

「いや、眠れなかったのは本当だ」

 

「そ、そっか」

 

 いつになくマユちゃんが緊張している、どうしたんだろう。

 

「と、とりあえず外、行こっか」

 

 自販機で飲み物を買ってから正面玄関を出て、腰を下ろせそうな場所まで移動して。

 

 あー、今夜も熱帯夜だなぁ。

 

「それで、どうしたんだ?」

 

「え……?」

 

「俺と何か話したくて、呼んだんだろ?だから何かなーと」

 

「あ、うん……」

 

 緊張しているみたいなので、焦らずに待つ。幸いにも時間はあるからな。

 

「その……オウサカくんが創響学園に転入してきてから、もう三ヶ月くらい経つんだよね」

 

「もう三ヶ月か。思えばあっという間だな」

 

 あの馬の骨とバトルしてたのがずっと昔のようだ。

 

「うん、まだ三ヶ月だけど……今日まで色々あったなって」

 

 色々……色々あったな。

 

 

 

 転入前夜にマユちゃんを人知れず助けて。

 

 転入したその日にいきなりマユちゃんと、イツキと再会(厳密には異なる)して、馬の骨とバトルして。

 

 馬の骨倒したからってゴジョウイン先輩とバトルすることになって。

 

 ミカゲさんをスカウトしたと思ったらチユキちゃんがお礼参りに来たり。

 

 そんなミカゲさんが実は美少女だったことに驚いたり。

 

 疑似覚醒システムなるものが出回っていたり。

 

 地区大会を順調に勝ち進んで、シオン達ブラウシュヴェルトと激闘を繰り広げたり。

 

 ナナちゃんの手助けをしたと思ったらいつの間にか学生会の非公式役員になってたり。

 

 学生会メンバーと遊びに行ったりもしたっけ。

 

 オープンクラス個人戦の部でアサクラ先輩と戦って、†ゼロ・マスター†なる謎のロボットと戦ったし。

 

 マユちゃんとデートして、『恋人』の正位置を引いたり。

 

 クルージングパーティーで、アンリ嬢やヤコさんとも戦ったり。

 

 ……ナカツ・チサさん達は一体何を考えてこの全国大会に参加しているのだろう?

 

 ミカゲさんのグレモリーの強化を手伝ったり。

 

 イツキと夏祭りデートして、本当のことを話したり。

 

 そうして全国大会を今日まで勝ち抜いて。

 

 

 

「あの……ね、オウサカくん」

 

「ん?」

 

「聞いて、ほしいことがあるの」

 

「うん」

 

 ……あれ、もしかして?

 

 

 

「わたし、オウサカくんのことが好き、好きなの……っ」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 絞り出すように発されたその声は震えていて、でもそれは確かに俺に伝わった。

 

「でもっ……わたしなんかが告白したら、オウサカくんが困ると思って、せめてこの大会が終わってからって思ってた、けど……もたもたしてたら、他の誰かにオウサカくんを取られちゃうって思ってっ、気が付いたらスマホに手が伸びてて、オウサカくんにメッセ送ってて……あ、あれ、わたし、何言って……」

 

「…………なんてこったい」

 

 あー……マジかぁ、マユちゃんに先手を取られたか。

 

「そう言うのは、男の方からしなきゃって思ってたんだよな」

 

「え?え……そ、それ、ど、どう言う……?」

 

 ま、いいや。遅かれ早かれの違いだ。

 だったらいっそ今言ってしまおうか。

 

 

 

「俺も、アサナギさんのことが好きだ」

 

 

 

「え……えぇっ、えぇぇぇぇぇっ!?」

 

 正直な気持ちを伝えたら驚かれた、解せぬ。

 

「……そんなに驚くことか?」

 

「えっ、いやっ、だって、オウサカくん、そんな素振り一度も……!?」

 

 大変混乱しているのか、ぐるぐる目になって慌てているマユちゃん。かわいい。

 

「好きだって自覚があったのは、つい最近になってからだ。この大会が終わって、落ち着いてから俺の方から告白しようって思ってたんだが……まさか先手を打たれるとは、思わなんだ」

 

「………………ほ、ほんとに、わたしでいいの……?」

 

 両想いだって分かってるのに、どうしてそんなに不安がるんだか。

 

「だってわたし、イツキみたいに明るくないし、ミカゲさんみたいに綺麗じゃないし、ゴジョウイン先輩ほど強くないし、シノミヤ先輩ほど賢くないし、ホシカワさんみたいにかわいくもない、よ……?」

 

「あーもう、この際だから言うぞ。今すぐここでアサナギさんを押し倒してキスしたいくらい好きだ」

 

「ちょっ、ちょっ……オ、オウサカ、く……っ!?」

 

 マユちゃんの顔が凄い勢いで真っ赤になってる。かわいい。

 

「アサナギさんでいいんじゃない、アサナギさんじゃなきゃ嫌なんだ」

 

 しっかりとマユちゃんと目を合わせて、キスしそうな勢いで顔を近付けて。

 

「ちゃんと見ろ、アサナギさん。これが、冗談やふざけで告白するような奴の顔か?」

 

「っっっっっ……」

 

 マユちゃんは小さく首を横に振る。よし。

 

「好きだ、アサナギさん。俺と、付き合ってください」

 

 心から心への、ストレート。

 

「ふ……ふつつ、かもですが……よ、よろしく、お願い、しま、す……っ」

 

 想いは、通じ合った。

 

 

 

 この日この時、俺とマユちゃんは恋人同士になった――。

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