ガンダムブレイカー・シンフォニーRe:BREAK   作:さくらおにぎり

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25話 消 え な い で

 デビルガンダムが動き出したんだと叫ぶゴジョウイン先輩。

 

 当然、俺達はなんのことだかサッパリである。

 

 ともかく逃げろと言うので、バトルシミュレーターからガンプラを回収しようとするのだが、

 

 地鳴りは次第に大きくなり――コンクリートの床から巨大な何かが飛び出し、這い出てくる。

 

「いかんっ、このままでは会場が倒壊する恐れがあるぞ!」

 

 ヤコさんが危険を喚起し、それを聞いて真っ先にシノミヤ先輩が動き、司会進行役を務めていたナナちゃんの元へ駆け寄る。

 

「あっ、トモエセンパイ!何なんですかこれ!?」

 

「ナナちゃん!今すぐ観客の皆さんを避難するように呼び掛けて!お願い!」

 

「へっ、あっ、は、はいぃっ!」

 

 シノミヤ先輩の剣幕に気圧されながらも、ナナちゃんはマイクをオンにして、音量を上げ、深呼吸を置いてから。

 

『会場の皆様!非常事態が発生しました!直ちに会場の外へ避難してください!繰り返します!』

 

 非常事態、会場の外へ避難、と言うナナちゃんの切迫した声と、地鳴りと共に現れるナニかの存在に、観客達は次々に席を立って我先に会場の外へ逃げるように避難していく。

 

『会場スタッフの方々は避難誘導をお願いします!観客の皆様も、慌てずに並んで進んでください!』

 

 なおも止まらない地鳴り――やがて地下から現れたナニかの全貌が明らかになる。

 

 ガンダムタイプの上半身は蛇腹状の胴体に繋がれ、その下半身は、『巨大なガンダムフェイス』になっており、さらにその下は昆虫のような六本足が生え、全身各所にフジツボのような突起物を生やしたその"ガンダム"は。

 

 

 

「デビル、ガンダム」

 

 

 

 F.C.における、最強最悪のガンダム――『本物のデビルガンダム』が、現れた。

 

 

 

 俺達がデビルガンダムの出現に大なり小なり驚いている中、対戦相手だったナカツさん達は一切動揺していない。

 

「……まさか、本当に最後の手段に出なくちゃいけないなんて、思ってなかったよ」

 

 見ればナカツさんの首の左半分は、銀色のヘックス状物資――DG細胞が浮かんでいる。

 ナカツさんだけではない、他のファイター達も皆同じように、身体のどこかしらがDG細胞に侵されている。

 

「ナカツさん……あんた、いや……あんた達は、一体何者だ?」

 

 DG細胞に侵されていると言うことは、まさか彼女らはこのデビルガンダムに……

 そこへ、AGE-2のファイターだった亜麻色のロングヘアの美少女――確か、シミズ・ミヤビと言っていたか――が、一歩前に出て、俺の問い掛けに答える。

 

「私達は、『ガンダムブレイカー・シンフォニー』……その"原作"の登場人物よ」

 

 それを聞いて理解できたのは、俺と、恐らくはイツキだけだろう。

 

「"原作"を壊された私達は、ずっとずっと『止まった時の中』にいた。いくら願っても動かない時の中、私達はずっと待っていたの。オウサカくんのことを」

 

 けど、と声のトーンがひどく冷たくなった。

 

「あなたはオウサカくんだけど、オウサカくんじゃない。私達が知っていた、オウサカ・リョウマくんでは無くなっていた。それを知った時、私達は絶望した。もう私達は、ずっとこのままなのだと。そんな時に、"彼ら"――ELSが現れたの」

 

「ELS、だと……?」

 

 ELS……確かA.D.の地球外生命体で、母星の消滅によって種の存亡の危機に晒され、種の存続を求めていた存在だった。地球人との接触を"侵略"と判断した人類の攻撃を"コミュニケーション"だと認識して反撃、人類滅亡の手前で、刹那・F・セイエイがダブルオークアンタにて対話を行い、ELSが(恐らくは刹那にとっての)平和の象徴と言える花を見せたことで、対話は成功……と言う流れだったはず。

 が、何故この世界にELSが存在しているんだ?

 

「ELSは、私達の絶望に応えてくれた。――数多の"刻"を喰らってきたデビルガンダムと、共生関係を築いていた彼らと」

 

 ・・・デビルガンダムとELSが共生関係ィ?

 何それ、過去の異世界転生でもそんな時間軸聞いたこと無いんだが??

 それに、数多の"刻"を喰らって来たって、どういうことだ?

 

「やはりそうだったのか……」

 

 そこに、ゴジョウイン先輩が神妙に頷く。

 

「やはりって……まさか、ゴジョウイン先輩はこの事を知っていたんですか?」

 

「私はヤコの報告を聞き齧ったことを自分なりに解釈しただけだが……デビルガンダムかどうかの確証は無かったが、会場地下に何かが潜んでいることは知っていたさ」

 

 どうやらヤコさんが主導になって、会場地下――デビルガンダムのことを探っていたらしい。マジかよ。

 

「……それで?貴様らはこのデビルガンダムを使って、何をするつもりだ?」

 

 するとヤコさんは、髪を妖狐の九尾のごとく逆立てて、ゆらりゆらりと揺らす。この人ほんとに妖狐だろ、別の世界線だったらどっかの国の女帝になってたかもしれん。

 それに対する答えは、キマリスのファイターらしい理知的そうな青年が答えた。

 

「答えは単純だよ。そこの、オウサカ・リョウマの記憶を取り戻した後は、デビルガンダムがこの世界を"喰らい"、もう一度、俺様達の"原作"のストーリーを『最初からやり直す』のさ」

 

 おいおい、世界を"喰らう"って……なんかとんでもないこと言い出したぞ。

 

「君がガンプラバトルに負けて傷心のところを、チサちゃんに慰めてもらい、こちら側に引き込むつもりだったけど……思いの外厄介な奴だったよ、君は」

 

「! そうか、あのオープンクラスの大会にいた†ゼロ・マスター†は……」

 

 察しとった俺を肯定するように、キマリスのファイターは頷いた。

 

「その通り。君を負かすために、デビルガンダムが作ったアンドロイドだよ。ただ、シュバルツ・ブルーダーほどの完成度は無かったけどね」

 

 全てに合点が入った。

 あの†ゼロ・マスター†の狙いは高名なファイターではなく、最初から俺だったのか。

 

「と言うことは、疑似覚醒システムを世に跋扈させていたのは、お前達だったのか……?」

 

 アサクラ先輩が、キマリスのファイターを睨む。そう言えばこの人、疑似覚醒システムに対して過剰に反応する人だったな。

 

「疑似覚醒システムに関して言えば、あくまでも俺様達がシステムを使用する上で、そのデータ取りのために流布していたに過ぎないね。まぁ、使うだけで簡単に強くなれるなんて馬鹿げた謳い文句に騙された奴らが、喜んで使ってくれたから良しとしよう」

 

「ふざけんな!疑似覚醒システムのせいで、この大会だってめちゃくちゃになったんだぞ!」

 

 イツキが肩をいがらせて怒る。

 初日に疑似覚醒システムの使用者が多数発覚し、それらが失格になり、ファイターが激減してしまったから、二日目は方針を変える必要があったわけだが……

 しかしイツキの怒りはさらりと流されて、再びナカツさんが口を開く。

 

「だけど、あなた達はわたし達の計画の尽くを邪魔してきた。だから――もうこれしか手は無い」

 

 すると――デビルガンダムは機体の各部からテンタクラーロッドを伸ばし、ナカツさんを、チーム・フォルテのファイター達を次々に捕らえると、自身の中に取り込んでいく。

 

「っ、まさか俺達もコイツの仲間入りにしようってのか!?」

 

 ケイスケ先輩が身構えるが……デビルガンダムのテンタクラーロッドは、俺達を襲わずに収納されていく。

 

 そして、デビルガンダムのツインアイが妖しく輝き、俺達を見下ろすと。

 

『・・・状況確認。プランEX01を発動』

 

 男にも女にも、子供にも老人にも聞こえる声。混ざりすぎた声はいっそ不協和音だ。

 

「デ、デビルガンダムが、喋った……!?」

 

 マユが驚愕に目を見開く。

 俺は敢えて一歩前に出て、デビルガンダムと向き合う。

 

 ……よく見るとこのデビルガンダム、俺が過去の異世界転生で見知った姿とは違う。

 ELSと共生関係を築いているとシミズさんが言っていたように、ところどころが金属的な銀色に染まり、さらにはνガンダムの頭部らしきものや、ありとあらゆる様々なモビルスーツの特徴が、奴の全身に埋められている。

 まるで、デビルガンダムが他の世界のガンダム達と戦い、それらを喰らって来たかのような……

 

「……間違いない。奴は既に未来世紀と言う枠組みから離れ、いくつもの宇宙を喰らってきた、正真正銘本物の"バケモノ"だな」

 

 ヤコさんがそう告げた。

 未来世紀と言う枠組みから離れた――と言うことは、どこかの時間軸で、デビルガンダムがガンダム連合を降し、デビルガンダム大勝利!絶望の未来へレディー、ゴー!と言う結末――その、成れの果てか?

 

『・・・プランEX01の発動を確認。・・・これより、"ガンプラバトル"を開始する』

 

「……ガンプラバトルだと?」

 

 なんかいきなりデビルガンダムからガンプラバトルを申し込まれたんだけど、こう言う場合どうしたらいいんですかね?

 

『・・・肯定。ガンプラバトルによる交信を行うことが、この世界の対話であると認識済み』

 

「いやいやっ、ガンプラバトルなんてしてる場合じゃないでしょ!?皆さんも早く逃げないと!」

 

 ナナちゃんが切羽詰まって避難を促すが、

 

 

 

「いけません」

 

 

 

 ふと、やけに通りの良い声がその場を支配した。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 そこへ現れたのは、金髪金眼をした、小学生くらいの女の子だった。

 

「ガンプラバトルと言う枠組みに収まっている今だからこそ、アレはここで完全に破壊しなければなりません」

 

 つかつかと靴を鳴らしながら、デビルガンダムを前にしても平然としているこの子は一体……いや、ちょっと待て?

 

「その声。その神性。何よりこのアホの娘っぽさは……」

 

「こら!誰がアホの娘ですか!」

 

 プンスカ怒る女の子だが、もしや……

 

「まさか……女 神 様 !?」

 

 俺がこの女の子を「女神様」と呼んだことで、アンリ嬢以外の全員が驚愕する。

 

「久しぶりですね、リョウマくん。ですが、今は感動の再会を喜んでいる場合ではありません」

 

 女神様?は毅然としてデビルガンダムに向き直る。

 

「あのデビルガンダムは、ELSと共に数多の"刻"を喰らってきた成れの果てです。このまま放置すれば、この世界はデビルガンダムによって使役されたELSによって侵食され、全てが喰らい尽くされてしまうでしょう」

 

「なんだそりゃぁ……!?」

 

 それを聞いてケイスケ先輩が目を見開く。

 ホンマかいな、そんなトンデモ展開を信じられるのは異世界転生者ぐらいだぞ女神様。そう言うからにはマジなんだろうけど。

 

 ナカツさん達め、余計な置き土産をしよってからに。

 

「ですが、打てる手はあります。――ガンプラを使ってデビルガンダムの体内に侵入し、コアを破壊するのです」

 

「あの……ガンプラを使うって、どうやってですか……?」

 

 恐る恐るマユが挙手する。

 ガンプラバトルはあくまでもデータシミュレーター上でのバーチャルバトルだ。

 故に、どうやってデビルガンダムとか言う眼の前の現実にいるバケモノを破壊するのかと言えば。

 

「そのために、異世界転生を司る女神たる私が、肉体を以てここにいるのです」

 

 女神様はパチン、とフィンガースナップを打ち鳴らすと、辺り一帯がGN粒子に似た光子(フォトン)に満ち溢れ、ストップしていたはずのガンプラバトルシミュレーターが次々に再起動していく。

 

「これは……?」

 

 未知の光子に、ミカゲさんは瞬きを繰り返す。

 

「――プラネットコーティング。別の世界線における"ガンプラバトル"の技術で、『実際にガンプラを動かしてバトルする』ための技術です」

 

 女神様が言うところによると、「ガンプラバトルのVRMMOが主流の時代の中における"一世代前のガンプラバトル"システム」であり、『GPデュエル』と言う名称らしい。

 ガンプラを実際に動かしてバトルする……仕組みはよく分からんが、俺達が普段しているシミュレータ上におけるガンプラバトルよりはリアルに近いのだろうか?

 

「シミュレーターにプラネットコーティングのデータを強制的に上書きさせました。これを使い、デビルガンダムとの"ガンプラバトル"に勝ち、奴を完全に破壊するのです」

 

「………女神様、と言ったか?貴女が何者かは後で問わせてもらうが……今は貴女のその力を使わせていただこう」

 

 すると、ゴジョウイン先輩が率先して筐体に近付き、ゼイドラ・スタインを設置、読み込ませると、一人でにゼイドラ・スタインの首が挙動し、頭部スリットのセンサーラインがピピピピピッと輝く。

 

「すげー!?ほんとに動いた!?」

 

 イツキも女神様の言う事に半信半疑だったようだが、こうしてガンプラが実際に動くのを目の当たりにして、驚きながらも納得したようだ。

 が、ひとつ懸念がある。

 

「女神様。実際にガンプラを動かすと言うことは……バトル中に被弾したら、『ガンプラそのものが壊れる』ってことですか?」

 

 俺の問い掛けに、女神様は頷いた。

 

「そうなります。別の世界線なら、壊れないダメージレベルもありますが、デビルガンダムを破壊する以上はやむを得ません」

 

 つまり、デビルガンダムを破壊可能なダメージを逆にこっちが受けることもあるわけか。

 せっかく丹精込めて作ったガンプラが壊れる、か。想像するだけでもショック受けそうだな……

 

「なら話は決まったな、戦う覚悟がある者だけが続け」

 

「ここが危険であることに変わりません。避難を優先すべき方は直ちに避難を」

 

 ゴジョウイン先輩に続いてヤコさんとアンリ嬢が、ザクシュヴァルツクーゲルとガンダムグシオンタンザナイトを筐体に読み込ませる。

 

「なんだかよく分かんねーけど、あたしはやるぞ!」

 

「("悪魔の正位置"って、あの巨大なガンダムのことだったのね)私も続かせてもらうわ。手数はひとつでも多い方がいいでしょう」

 

 イツキと(なにか言いたげな)ミカゲさんも、

 

「世界がダメになるかならないかだ、やってみる価値はある!」

 

 アサクラ先輩もべギルエリスを取り出して、

 

「みんな張り切ってるわね……ナナちゃん、あなたは早く逃げなさい」

 

「ご冗談を!わたしだってやる時はやりますよー!」

 

 シノミヤ先輩とナナちゃん、

 

「ここで俺だけ逃げるとかカッコ悪過ぎな」

 

 やれやれと苦笑しながらケイスケ先輩も。

 

「リョウマくん」

 

 迷いのない目を向けてくるマユ。

 ……今世くらいは命懸けのドンパチとは無縁でいたかったけどなぁ。

 

「やるぞ、みんな!!」

 

「「「「「「「「「「おぉー!!」」」」」」」」」」

 

 

 

 ガンプラを筐体に読み込ませるとスキャニングされ、プラネットコーティングが施されていく。

 

「オリジネイトガンダム!」

 

「ガンダムファラリアル!」

 

「ドラゴニックガンダム!」

 

「ガンダムグレモリータナトス」

 

「ジムカラミティ!」

 

「ゼイドラ・スタイン!」

 

「フルコマンドガンダムMK-II!」

 

「ティエレンパイタォ!」

 

「ザクシュヴァルツクーゲル!」

 

「ガンダムグシオンタンザナイト」

 

「べギルエリス!」

 

 全員の出撃準備を確認してから、

 

「行くぞ!!」

 

 

 

 ビルドシンフォニーとセイントエスパーダ+ナナちゃんの合計十一機が出撃し、真っ直ぐにデビルガンダムへ立ち向かう。

 

 セコンドのように、女神様は俺のすぐ傍につく。

 

「デビルガンダムのコアはコクピットの中心部にあります。まずは奴の外装甲に穴を穿ち、内部へ突入するのです」

 

「了解、と言いたいところですが……」

 

 すぐにレーダーが、無数の敵対反応を示す。

 

 デビルガンダムの各部からゾロゾロと出撃してきたのは、ELSに侵食されたかのような銀色のデスアーミー――『ELSデスアーミー』とでも言うべきか。

 

「まずはザコをぶつけてくるってか、まさに最終決戦って感じだな!」

 

 開幕一番、ケイスケ先輩のジムカラミティが先制のフルバーストを放ち、何十機ものELSデスアーミーを薙ぎ払う。

 それを皮切りに、ELSデスアーミーの群れも金棒型ビームライフルを片手に遠慮なくぶっ放してくる。

 

「全機傾注、私がヤツの土手っ腹に風穴ブチ開ける。指定ポイントまで私を援護しろ」

 

 するとヤコさんからの広域通信と、モニター端に特定のポイント―デビルガンダムの懐を示すビーコンが発される。

 デビルガンダムの内部への突入口をこじ開けるようだが……まぁいい、リクエストにお応えするとしよう。

 

「了解した、突破口を開く!」

 

 ゴジョウイン先輩のゼイドラ・スタインがビームバスターを照射、射線上のELSデスアーミーの群れを一息に薙ぎ払う。

 が、すぐに次々に他のELSデスアーミーがその道を塞ごうとしてくるので、

 

「纏めていただきよ♪」

 

「わたしだって!」

 

 群がってきたそこを、シノミヤ先輩のフルコマンドガンダムMK-IIのミサイルとガトリングが降り注ぎ、その撃ち漏らしをナナちゃんのティエレンパイタォのビームライフルが確実に仕留めていく。

 

「感謝する……行く!」

 

「援護するぞ、後ろは気にするな!」

 

 再び空白の一本道が出来たところを、ザクシュヴァルツクーゲルが駆け抜け、その護衛にアサクラ先輩のべギルエリスが追従する。

 

 その反対サイドでは、ミカゲさんのグレモリータナトスが敵陣深くへ突入し、四方八方からELSデスアーミーの集中砲火を受けるが、ナノラミネートコートがその全てを無傷で弾き返していく。

 

「この程度の火力なら問題ないわ」

 

 ELSデスアーミーの注意がミカゲさんに集中してきたところへ、

 

「おらおらおらぁーっ!!」

 

 イツキのドラゴニックがツインビームトライデントを振り回しながら吶喊、次々にELSデスアーミーを薙ぎ払い、

 

「敵の数が多いですね。スラスターが保てば良いのですが」

 

 ガトリングガンを斉射してイツキを援護する、アンリ嬢のグシオンタンザナイト。

 

「わたしも……!」

 

 マユのファラリアルもビームアルケビュースを構えようとするが、それは制止させる。

 

「俺と一緒に内部に突入するまで、マユはちょっと温存しててくれ」

 

「あっ、うん!」

 

 中はどうなっているか分からんので、同行してもらうマユには出来るだけ温存しておいてほしい。

 かくいう俺は、まずはハイバーバズーカとレールガン、グレネードランチャーと言った実弾で砲撃を行い、ビームガンとビームライフルは温存だ。

 

 さて、そろそろヤコさんが指定ポイントに到着する頃合いだが……

 

 すると、ザクシュヴァルツクーゲルはザクバズーカを一丁担ぐと、デビルガンダムの真下へロックオンし、

 

「一発限りの大サービスだ、遠慮なく受け取っておきたまえよ」

 

 迷わずに、発射。

 

 しかしザクバズーカ単発でデビルガンダムに風穴を穿つにはあまりにも不足……と思いきや、

 

 着弾と同時に、デビルガンダムを呑み込むほどのとてつもない大爆発――まさか、核弾頭か!?いや、確か南極条約以前のザクバズーカは核弾頭の発射も念頭に置かれていたし、何ら不思議でもないか。

 

 爆煙が晴れたそこには、ちょうどデビルガンダムの下腹部――胴体の巨大なガンダムヘッドになんとかガンプラが入れそうな穴が穿たれている。

 

『・・・被弾。戦術核によるものと断定。戦闘継続に支障なし。攻撃を再開する』

 

 ダメージは入ったようだが、そこまで大したものでもないと言うものか。

 

「よし、私はこのままデスアーミーどもを蹴散らす。行け、オウサカ!」

 

「はい!行くぞマユ!」

 

「うんっ!」

 

 ヤコさんが持てる火力を駆使してELSデスアーミーを薙ぎ払っていくのを尻目に、俺とマユ(とついでに女神様)はデビルガンダムの体内へ突入していく――

 

 

 

 

 

 リョウマとマユ、女神様の三人がデビルガンダムの内部へ突入してから。

 

 当初こそ優勢を保っていたファイター達であったが、彼らは機体のエネルギーや弾薬の他に体力や集中力を徐々に失っていく。

 対してELSデスアーミーはデビルガンダム本体から無限に増殖し、なおかつELSデスアーミーは恐らく無人機であり、生身の人間と違って減るものがない。

 その対比は、時間の経過と共に反比例し、ファイター達が劣勢になりつつあった。

 

 トモエに追従して援護していたナナのティエレンパイタォだったが、波状に攻め寄せるELSデスアーミー攻撃に孤立させられてしまい、

 

「キャアァッ!?」

 

 振り抜かれた金棒に左肩のパイタォシールドを殴り飛ばされ、ジョイントが根本からへし折れる。

 

「ナナちゃっ、ぁぐっ!?」

 

 急いでナナと合流しようとするトモエだが、それを阻止するようにELSデスアーミーが一斉にビームライフルを撃ち込み、フルコマンドガンダムMK-IIを被弾させる。

 

「クソッ、キリがねぇ!」

 

 ビームキャノンでまた新たに現れたELSデスアーミーを薙ぎ払うケイスケだが、薙ぎ払って撃墜した端からまたELSデスアーミーの群れがわらわらと飛んでくる。

 

「チッ、このままでは……!」

 

 ハルヤのべギルエリスも孤軍奮闘しているが、なおもELSデスアーミーの群れが団子状になって突撃してくる。

 

 そこへ、全く見当違いの方向からビームや実弾の一斉射撃が放たれ、ELSデスアーミーの群れを排除していく。

 

「なんだ?」

 

 アマネのゼイドラ・スタインの頭部がそちらへ向けられると、

 

「よお!俺達も混ぜてもらおうじゃあないか!」

 

 シオンのイフリート・ラピートが単騎で突出しては、ELSデスアーミーをラピートブレードで斬り捨てていく。

 

「俺達にも、世界を救わせろ!」

 

 エゥーゴカラーのガンダムMK-IIを中心に、ウイングガンダムゼロ、エールストライクガンダム、ガンダムヴィダール――チーム・ブラウシュヴェルトが連携を取り合って掩護射撃を敢行していく。

 

「及ばずながら、ウチらも加勢するっすよ!突撃ー!」

 

「突撃ー!!」

 

 さらには、ガンダムフラウロスベスティア、ガイアガンダム、マグアナック、ガンキャノン、リックドムII――チユキ達チーム・ワイルドビーツまでもが現れ、ELSデスアーミーの大軍の横腹に喰らいついていく。

 

「ありがたい援軍です」

 

 歓喜することもなく、アンリはガンダムグシオンタンザナイトのランヤーパンを振り回し、ELSデスアーミーを数機まとめて粉砕していく。

 

 ドラゴニックガンダムとガンダムグレモリータナトスは背中合わせに立ち回っている。

 

「オウサカくんとアサナギさんは大丈夫かしら……」

 

 不安げに呟くトウカに、

 

「なに弱気になってんだミカゲちゃん!あの二人ならぜってー負けねーし!」

 

 イツキは奮い立たせるように声を張り上げる。

 しかし、

 

「(あんま長くは保たないのは嘘じゃねーしな……急いでくれよ、リョー、マユ)」

 

 消耗を重ねるに連れて膨らむ戦況の不安は、イツキも同感だった。

 

 

 

 

 

 デビルガンダムの内部へ進入した俺(と女神様)とマユ。

 内部のELSデスアーミーを蹴散らしつつ、デビルガンダムのコクピットを目指して突き進む。

 

 やがて、ポッカリと開けた空間に出る。

 その空間の中央には、テンタクラーロッドに覆われた繭のようなものがぶら下がっている。どうやらここがコクピットのようだな。

 

『・・・コクピット内に敵機の侵入を確認。ガンプラバトル継続、『ダークネスガンダム』、出撃』

 

 すると不意にデビルガンダムの無機質なボイスが響き――テンタクラーロッドの繭がベリベリと破られ、その中からガンプラが這い出てきた。

 

 一見するとデビルガンダムの最終形態だが、色合いはより禍々しいものに変えられ、肩からは銀翼、背部のガンダムヘッドカバーには龍尾が生えており、まるで邪龍のようだ。

 

 機体銘――ダークネスガンダム。

 

「リョウマくん……」

 

「あぁ、行くぞマユ。ガンプラバトルって言うのはどう言うものか、今こそこいつに見せてやろう」

 

 オリジネイトがビームライフルを、ファラリアルがビームアルケビュースの銃口をそれぞれダークネスガンダムへ向ける。

 

 それを示威行為と見たか、ダークネスガンダムは胸部に妖光を迸らせ――メガデビルフラッシュだ!

 

 オリジネイトとファラリアルは瞬時に左右へ散開、一拍の後に、凄まじい荷電粒子が放たれる。

 

「マユ!援護を頼む!」

 

「うん!」

 

 ビームライフルを納めてビームサーベルを抜刀、左マニピュレーターはヒートブレードを抜いて、ビームガンを撃ちながらデビルガンダムへ接近、その後ろからはファラリアルがビームアルケビュースを放ち、ダークネスガンダムの頭部へ放たれ――その寸前に、見えない障壁にビームを弾き返される。

 

「デビルガンダムが、Iフィールドを!?」

 

「分かっただけでも収穫だ!」

 

 中距離以上からのビーム射撃は通らない、と言う情報が確実に分かったのだ、決して無駄ではない。

 オリジネイトの接近に合わせて、ダークネスガンダムは肩部のテンタクラーロッドから無数のビーム弾をばら撒いてくる。そうそう、こいつは拡散ビーム砲もあるんだっけな!

 躱して、躱して、ビームサーベルで弾いて、狙いはコクピットへのピンポイント攻撃――

 と思っていたが、突然ダークネスガンダムは袖口からビームソードを抜き放ち、迎え撃ってきた!?

 

「チッ!?」

 

 振り抜かれる紫色のビームソードに、咄嗟にビームサーベルで受けるが、サーベルのパワーが違い過ぎる、強引に弾き返されてしまった。

 クソッ、懐に近付いたらビームソードか、思ったより厄介な相手打な。

 姿勢制御しようとしたら、追い打ちに奴の頭部からバルカンの銃弾が襲い掛かってくるのでこれも回避。このバルカン、モビルファイターであるガンダムシュピーゲルに明確なダメージを与え、大破させるほど強いからな、油断してたら一瞬で蜂の巣だ。各部のアポジモーターを駆使してバルカンを躱しーの。

 

「ガンビット、サーベルモード!」

 

 ファラリアルのエスカッシャンが分離、一部のガンビットが連結したまま放たれ、ビームサーベルを発振させてダークネスガンダムへ突撃、ビームソードの届かない部位を斬り刻んでいく。

 

「ナイスだマユ!」

 

 ダークネスガンダムの注意がマユに向けられるのを見て、ウェポンセレクターを回転させてレールガンをダブルセレクト、ガンビットのビームサーベルが与えた損傷部位に撃ち込み、

 

「こいつも持ってけ!」

 

 さらに右腕のグレネードランチャーも発射、ダークネスガンダムの左腕に炸裂させると、その拍子にビームソードを取りこぼした。いいぞ、攻撃手段をひとつ潰した。

 これでグレネードランチャーもレールガンも打ち止めだ、両方とも切り離す。

 

『・・・損傷拡大。目標を"危険"と判断。ただちに排除する』

 

 すると、ダークネスガンダムの紅いツインアイが妖しく発光し、ビームソードを失った左マニピュレーターに禍々しい紫色の光を纏わせると、

 

「リョウマくん、気を付けて!」

 

 不意に女神様からの鋭い声。なんかやばいのが来るのか!?

 

『・・・ダークネスフィンガー』

 

 それは物理的な闇の波動となって放たれる――狙いはファラリアル!

 

「ッ、避けろマユッ!!」

 

 コクピットの床をえぐり飛ばすような一撃に、マユはすぐにファラリアルを上昇させて回避しようとするが、あまりの破壊力は避け切ることが出来ず、ファラリアルの両脚とビームアルケビュースが破壊されてしまった。

 

「きゃあぁぁぁっ!?」

 

「マユッ!?」

 

 そのままファラリアルを壁際まで吹き飛ばし、コクピットの隔壁にめり込んでしまう。

 追い詰めるように、ダークネスガンダムは動けないファラリアルにメガデビルフラッシュを放とうと胸部にエネルギーを集束している。

 

「させるかッ!」

 

 オリジネイトの頭部バルカンを乱射しつつ、ビームライフル、ヒートブレードのビームガンを撃ちまくる。バルカン以外はIフィールドに弾かれてしまうが、ダークネスガンダムの注意をこちらに向けさせることが出来た。

 薙ぎ払うように放たれるメガデビルフラッシュに、操縦桿を捻って躱すものの、シールドの表面が焼け爛れ、左のヒートブレードとビームピストルが破壊され――背部ユニットとシールドをパージ、誘爆を防ぐ。

 

 ……このまま戦っても勝てる道筋が見えない。

 

 敵の力は未知数で、しかもこの程度では無いはずだ。

 ダークネスガンダムとオリジネイトの性能差が大きいのも要因のひとつだろう、もちろんそれだけではないが。

 

 ドモンならたとえこんな状況でも「今俺のこの掌が爆熱するのは、愛するレインを守るため!頼むゴッドガンダム!俺に力を貸してくれ!」と気合でなんとかするんだろうけど、オリジネイトはモビルファイターでは無いしなぁ……

 

 ……いや、俺にもいるじゃないか、『俺に力を貸してくれる存在』が、ちょうど今ここに。

 

「女神様」

 

 傍らにいる女神様に目を向ける。

 

 

 

「俺に、『チートスキル』を与えてください」

 

 

 

「ッ、リョウマくん!?」

 

 女神様が信じられないような顔をするが関係ない。

 

「不可能では無いはずです」

 

「正気ですか!?今のあなたは、チートスキルに対応した肉体では無いのですよ!?そんなことをしたら……」

 

「奴を倒すにはそれしかありません。大丈夫、『覚悟は出来ています』」

 

 数巡の末、女神様は。

 

「………………"代償"はあまりにも大きいものですよ、『覚悟してください』」

 

 承認。

 

 女神様は両手を組み、祈りを捧げるように神言(みこと)を謳う。

 

 やがて――心臓を蟲に喰われるような苦痛が俺を襲う。

 

「ぐっ、ぎっ……」

 

 くそっ、けっこうキツイなこれ……普段の異世界転生ならチートスキルを使うくらい訳無かったけど、この世界の肉体ではそうもいかないか……!

 

 チートスキルなんて当たり前にあるみたいに言うが、こんなものは"呪い"みたいなものだ。

 いつ暴走して制御できなくなるか分からんようなものなんか持っていたくない、と思うのは俺自身がチートスキルの存在を当たり前に感じているせいか。

 

 だが、俺の"中"に絶大なる力の源が宿るのを感じる――肉体から暴れ飛び出しそうになる神気を歯を食いしばって抑え込み、自身の魂に同着させる。

 

「いっぺんに全てのチートスキルは解放出来ません。解放したチートスキルから随時あなたに送信しますが、その都度に激しい苦痛が伴います。やめるなら、今の内ですよ?」

 

「問題ない……ありがとうございます……ッ!」

 

 さぁ反撃開始だ、覚悟しやがれダークネスガンダム。

 

「行くぞ、オリジネイトォッ!!」

 

 チートスキル――『鬼神化』、発動!

 

 攻撃力と敏捷性を倍加する代わりに防御力を激減!

 

 操縦桿を押し出せば、オリジネイトのツインアイが真っ赤に発光し、何かが爆発したような轟音と共に加速、一瞬でダークネスガンダムの懐まで飛び込み、

 

「ヴオォォォォォッ!!」

 

 残されたもう片方のヒートブレードとビームサーベルによる乱舞を叩き込む!

 

『・・・!?異常な攻撃性と凶暴性を確認、危険危険危険!排除する!』

 

 すぐさまビームソードを振り下ろそうとするダークネスガンダムだが、視えている。

 

『鬼神化』、解除。

 

 チートスキル――『巌窟王』、発動!

 

 敏捷性を半減する代わりに防御力と膂力を倍加!

 

 これで奴のビームソードを、こちらのビームサーベルで押し返し、鍔迫り合い―奴のビームソードごとダークネスガンダムの右手首を斬り落とす!

 

『・・・計測不能なパワーを確認、不明不明不明……排除!排除!排除!』

 

『巌窟王』、解除。

 

 一度イニシアティブを取り直し、次に女神様から解放されるチートスキルによる魂の蝕みに耐える。

 

 すると距離を置いたのを良いことに、ダークネスガンダムは肩部拡散ビーム砲とバルカンを乱射してくる。

 

 チートスキル――『水鏡の盾』、発動!

 

 五秒間だけ全ての遠距離攻撃をそのまま跳ね返す!

 

 オリジネイトに撃ち込まれるビーム弾と銃弾がそのままダークネスガンダムに蜻蛉返りして殺到し、奴の全身が穴だらけになっていく。

 

『・・・不可解な攻撃の反射を確認、原因不明原因不明原因不明!?』

 

『水鏡の盾』、消失。

 

 再度、『鬼神化』を発動!

 

 及び、チートスキル『激昂会心』を発動!

 

 与えた攻撃回数に応じてクリティカル率が段階的に上昇する!

 

「ア゙ァァァァァッ!!」

 

 急速接近、ヒートブレードとビームサーベルの乱舞で奴の装甲を斬り刻み、クリティカルヒットを連発させていく。

 

 ……が、一手足りない。

 

 もう一押し、何か要る。

 だが、さっきからチートスキルを出したり引っ込めたりしてるせいで、もう俺の身体も限界だ……

 そうこうしている内にも奴はDG細胞によって機体を修復しつつある。

 もう一度『鬼神化』を発動すれば、もう身体は保たないだろう、次で決めるしかない。

 

『鬼神化』、発……

 

「リョウマくんっ!」

 

 不意に、動けないファラリアルからマユの声が届く。

 

「ビット達、オリジネイトを守って!」

 

 すると、ファラリアルのビットステイヴ達がオリジネイトを取り囲むと、オリジネイト各部のハードポイントにビットステイヴが装着されていく。

 ……なるほど、ビットオンフォームか!

 

「わたしに出来るのはここまで……お願い、リョウマくん!」

 

「あぁ……任せろ!」

 

 ビットステイヴが全身に装着されたことで、機体出力も高まっており、何よりもマユの想いもある――これで行ける!!

 

 

 

「ガ ン ダ ム ッ !!」

 

 

 

 操縦桿を押し出せば、バーニアとビットステイヴの軌跡が鮮やかな蒼光を放ち、オリジネイトへと纏われる。

 

 接近、肉迫――狙いは、ダークネスガンダムのコクピット部。

 

『・・・・・・!?!?!?!?!?』

 

 怯え、竦むダークネスガンダム。逃がしはしない。

 ビームサーベルもヒートブレードも要らない――この拳こそが最大にして最高、最強の一撃!

 

 

 

 

 

「――『天翔蒼空撃拳(アマカケルソラノコブシ)』!!」

 

 

 

 

 

 一撃、一劇、一激、一檄、一戟。

 

 

 

 蒼の拳はダークネスガンダムを貫き――神性すら纏ったその一撃は、本体たるデビルガンダムすらも貫き――

 

『・・・グワアァァァァァァァァァァ!!!!!?????』

 

 悪魔の断末魔が響き――デビルガンダムが銀色の粉吹雪となって散り消えていく。

 

 

 

「終わった、のか……?」

 

 満身創痍のゼイドラ・スタインを支えていたアマネは、その光景――銀色の粉吹雪の中から拳を突き上げる、オリジネイトガンダムの姿を見た。

 

「なんて……神々しい……」

 

 その蒼聖なる輝きに、トウカは思わず見惚れる。

 

 同時に、女神が散布していたプラネットコーティングが解除され、 ガンプラ達は各々の手元へ戻っていく。

 

「よくやったな、リョウマ」

 

 ケイスケは、リョウマの奮闘を喜び、深く頷く。

 

「リョー!やるじゃん!」

 

 イツキも手放しに喜ぶ。

 

 

 

「やったね、リョウマ、く、ん……?」

 

 マユは笑顔と共に俺に駆け寄って来る。

 が……

 

「な、なに?どうして、リョウマくんが、半透明になってるの……?」

 

「ごめんな、マユ。付き合い始めてまだ一日も経ってないのに、もう別れなきゃいけないみたいだ」

 

「別れなきゃ、いけない……?え?なに、それ……どういう、こと……?」

 

 マユは震えると目と声で俺を見つめる。

 

「この大会が終わったらちゃんと話そうと思ってたんだけど……俺は、普通の人間じゃない、異世界転生者なんだ」

 

「………………?????」

 

「さっきのデビルガンダムとの戦いで、俺は女神様にチートスキルを使えるようにお願いした……"ルール違反"をしたんだ」

 

 それはつまり、

 

 

 

 

 

「その代償は、"反則負け"……『俺がこの世界から消える』ことなんだ」

 

 

 

 

 

「………………なん、で」

 

 マユの瞳から、ボロボロと熱いモノが流れる。

 

「なんでリョウマくんが消えなきゃいけないの!?リョウマくんは必死に戦って!デビルガンダムを倒した!だったら……だったら最後は、ハッピーエンドでしょぉ!?」

 

「この世界がアニメだったらハッピーエンドだったんだけどな……残念だけど、『アニメじゃない』」

 

 こればっかりは、俺じゃどうしようもない。

 

「…………けんなよ、ふざけんなよ、リョーォッ!!」

 

 不意に、イツキが声を荒げて俺を掴もうとするけど、その手は俺をすり抜けてしまう。

 

「ッ……!?嘘だろ……冗談だろ!?嘘つくなよ!あたし言っただろ!?マユを幸せにしてやれよって言ったじゃねーか!こンの嘘つきぃ!」

 

 握り拳で、俺の顔を殴ろうとしても、全部空振りする。

 

「悪い、イツキ。面倒事を全部押し付けるけど、"俺"のこと、みんなに話してくれ」

 

「やなこった!なんであたしがそんなこと話さなきゃなんねーんだ!ちくしょう……ちくしょうっ、ちくしょうッ!!」

 

 イツキは膝を着いて会場の床を何度も殴る。

 

「いや、だよ……そんなの、いやだよぉ……っ!」

 

 マユは涙に顔をぐしゃぐしゃにして、俺に詰め寄る。

 

「こんなに好きにさせておいてっ、わたし……どうしたらいいの……?」

 

 やめてくれ、そんな顔、見たくないのに。

 

 ふと、視界がブレ始める。あぁ……そろそろ限界か。

 

「……リョウマくん」

 

 俺の隣りにいた女神様が、目を伏せる。

 

「ごめんなさい女神様。俺は、ここまでみたいです。今まで永い間、ありがとうございました」

 

 これから俺の魂は崩壊し、アカシックレコードのどこかに安置されるだろう……

 

「やめ、て……やめて……好きなの……わたしは、リョウマくんが……大好きなの……っ、お願い……連れて行かないで……ッ!」

 

 必死に俺に手を伸ばそうとするマユ。

 

「マユ……俺のことなら忘れていいから、大丈夫だから、だからっ……幸せに……なっ ……っ」

 

 ……

 

 

 

 

 

「………………リョウマ、くん?」

 

 光と共に、リョウマは消えた。

 もう、彼の気配はどこにもない。

 彼のガンプラである、オリジネイトガンダムすら。

 

「こんな……こんなのって……」

 

 マユは、女神様の肩を掴み、揺らした。

 

「あなたっ、女神様なんでしょ!?リョウマくんを甦らせるくらい出来るでしょ!?」

 

「いいえ、出来ません。彼の魂は既に崩壊が始まっ……」

 

「やってよ!リョウマくん一人くらいっ、甦らせてよぉっ!」

 

 必死に、すがるように女神様に詰め寄るマユ。

 それに対する女神様は、ただ首を横に振るだけ。

 

「異世界転生の女神様って何なの!?どうしてこんな時だけ役に立たないの!?」

 

 女神様はマユの手を振り払い、

 

「ごめんなさい」

 

 とだけ告げて、消えてしまった。

 

「どう、して……どう……して……っ」

 

 残されたマユは、その場でへたり込んでしまう。

 

 

 

 

 

「――嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」




 今回登場のガンプラ『ダークネスガンダム』の画像や詳細設定はこちらです(ガンスタグラムへのジャンプです)

 https://gumpla.jp/old/2069824

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