ガンダムブレイカー・シンフォニーRe:BREAK 作:さくらおにぎり
マユちゃん、イツキ、ミカゲさんとの三人と一緒にガンダムベースでお買い物したりバトルしたりした、その週明け月曜日。
さてさて、残るところあと六日。
今週日曜日に開催される地区大会で、目に見える結果を出してみせなければ、ガンプラバトル部は廃部になるかもしれない。
だが慌てたところで何にもならん、幸いにも頭数は揃って出場は出来るのだから、あとはガンプラバトルにおける腕前や、チームの連携力を高めていくだけだ。
イツキのシェンロンや、ケイスケ先輩のジム・キャノンIIも完成間近、明日明後日にも本格的な練習が始まるだろう。
道は開けた、あとは進むだけだ。
その一分後に突然黒服達が現れて銃撃され、ケイスケ先輩が撃たれて「だからよ……止まるんじゃねぇぞ……」なことにならなければいいのだが。
もしそんなことが起きたら、マユちゃんのファラリアルが「や め な さい!!」とマニピュレーターを振り下ろして黒服達をプチっと潰し、美味しそうなトマトケチャップ()を作ってくれるだろう。
いかん危ない危ない……考えがちょっと過激になっちゃった。
そんなわけで、我々創響学園ガンプラバトル部は今日も今日とて楽しく粛々と活動していたのだが……
「おーっす、今帰ったぞー」
ガラガラとスライドドアを開けて、部長会から帰ってきたケイスケ先輩。
「あ、おかえりなさい、サイキ先輩」
「お疲れさまでーっす!」
「……お疲れさまです」
マユちゃん、イツキ、ミカゲさん(地味子ちゃんモード)が順に応じる。
そして、
「どもっす、サイキセンパイ!」
チユキちゃんまでもがガンプラバトル部の部室に居座っているのである。
「お、ウマノの妹さんか。今日はどうした、またリョウマに喧嘩でも売りに来たか?」
「失礼な!今日は普通にお邪魔しに来ただけっすよ!」
よその中学生が高校の部活動にしれっと混じっているのもどうかと思うんだが……この分だと、チユキちゃんはこれからも頻繁にここに遊びに来るかもしれないな。
「まぁ、ガンプラバトル部の部長として、ダメとは言わねぇけど、先生方に見つかって怒られても自己責任だからな?」
「はーい」
黙認。
もしチユキちゃんのことで咎められたとしても、注意ぐらいで済むだろう。
「お疲れさまですケイスケ先輩。早かったですね?」
「まぁ、部長会って言っても大したこと話すわけでもねぇし、今のガンプラバトル部は特に注目されるようなこともしてねぇしな」
気楽なもんだよ、とケイスケ先輩は部室を見渡す。
「アサナギにタツナミ、ミカゲ、チユキちゃん……いやー、それぞれタイプの異なる美少女が揃ってて、いい目の保養になるなぁ」
「おいみんな気を付けろ、ケイスケ先輩が野獣の目になっているぞ」
「待て待て待て、冗談だって。むさ苦しい男だけよりは、女の子もいた方が華があっていいのは本当だけどな」
まぁそれはさておきだ、とケイスケ先輩は手を鳴らして注目させる。
「いよいよ、地区大会も目前に迫ってきているわけだが、俺達は今、一番重要なことを忘れていた」
「一番重要なこと、ですか?」
マユちゃんがオウム返しに訊き返す。
「え?ミカゲちゃんが入ったから人数は揃ってるし、一昨日ガンプラ作ったし、なんも問題無くないすか?」
イツキも心当たりが無いのか、小首をかしげる。
「……本当に重要なことなら、部室に来てすぐに伝えるべきでは?」
ミカゲさんも『地味子ちゃんモード』のため、声のトーンを落として応じる。
「そこまで深刻な問題じゃねぇんだけど、チームとしては大事なことなんだよ」
「あー、そう言えばウチ、チーム名とか決まって無かったですね。その話ですか?」
俺は何の気無しにそう言ったのだが、
「……お前な、そこは分かってても言わないのがお約束な」
本当にその通りだったのか、ケイスケ先輩は肩を落として項垂れた。マジかよ。
「ったく、リョウマがネタバレしてくれやがったせいで全部台無しだ……はいはい、そんじゃ今からチーム名決めんぞー」
急にやる気が無くなったな、ケイスケ先輩……
とりあえずみんなでテーブルを囲んで、チーム名会議。
「チーム名、かぁ……どうしよっか」
マユちゃんが真面目な思案顔で考える。美少女はどんな顔しててもかわいいなぁ。
「えー?ウチの学園の運動部ってどんなチーム名してたっけ?」
イツキは既存の名前から流用するつもりらしいが、俺も知らないぞ、何せまだ転校してきて一週間しか経ってないんだから。
「……確か、サッカー部なら『創響ライオンズ』って名前だったけど、よその部と同じだとややこしくないかしら」
けれどミカゲさんが冷静に切り捨てる。まぁ確かにライオンズって一括りにされてサッカー部と間違えられても困るしな。
「チユは正式な部員じゃないんで、チユが決めるのも……」
チユキちゃんはあくまでもお客さんだ、部外者が旗の名前を決めるわけにはいかないだろう。
うーん……過去の異世界転生における、魔法学園の対抗試合戦の時も、チーム名とか決めてたよな。でもアレって造語が多いから、現代日本で見たら「どゆこと?」ってなりそうだし……無難に考えるか。
「んーじゃ、せめてキーワードから決めようぜ?ゴージャスとか、ジャスティスとか」
おいケイスケ先輩、なんだその、"カビ臭い"ネーミングは。
「ウチは貧乏だし、ゴージャスじゃないよなー」
速攻でイツキが難を示した。
「ジャスティスは、ジャスティスガンダムと被りますよね?」
マユちゃんも続く。
「おぉぅ……ド正論過ぎて文句も言えねぇ……」
敢え無く撃沈するケイスケ先輩。
ウチは創響学園だから、創、響……"創る"と"響く"か。
……安直過ぎるか?いや、とりあえずこれを挙げてみるか。
「創り響き合う……『ビルドシンフォニー』」
「創り響き合う?オウサカくん、学園名から取ったの?」
「安直過ぎるとは思ったんだが、俺はこれがいいと思う。アサナギさんはどうだ?」
「ビルドシンフォニー……うんっ、いいと思う」
よし、マユちゃんから一票入りましたよ。
「あたしも一賛成だ!」
間髪なくイツキからも一票。
「……悪くないと思うわ」
うむ、ミカゲさんも一票。
「チユも一票入れますよ!」
有効かどうかは微妙だがチユキちゃんも一票。
「よし、賛成多数で可決だな。俺達は、『チーム・ビルドシンフォニー』だ!」
最後にケイスケ先輩が締めてくれた。
「んじゃ、このチーム名で地区大会に出場登録すっから、ちょっくら行ってくるわ」
そう言って、ケイスケ先輩は部室を出た。
部長会に行ったりチーム登録に行ったり忙しい人だな、ガンプラの完成は間に合うんだろうか?
「ビルドシンフォニーか……へへっ、なんか響きもカッコいいし、いいチーム名考えたよな、リョー」
チーム名が決まってか、イツキは嬉しそうにはにかむ。なんだよかわいいなちくしょう。
「学園の名前を英読みにして繋げただけだって、そんな小難しいことを考えて思い付いたんじゃない」
「変に難しくないからいいんだろー?」
まぁ確かに、やたらと長いと覚えてもらいにくいって言うのもあるんだけどさ。
「……喜んでいるところ申し訳ないけど。タツナミさん、あなたのガンプラは完成したの?」
ふとミカゲさんが、俺も気にしていたことを訊ねてくれた。
「おぅよ!昨日、ちょうど完成したんだぜ!おかげで寝不足だけどなー……」
「だから今日はずっと授業中に船漕いでたんだね?」
マユちゃんがツッコミを入れた。
そう言えばイツキ、今日は頭がフラフラしてるなーって思ってたが、あれ寝そうになってたのか。
「今夜はちゃんと寝るんだぞ、イツキ」
「分かってるってば。ふぁふ……」
言ってるそばから欠伸してらっしゃる。
ちょっと待ってろよー、とイツキは鞄からケースを取り出してみせる。
「こいつがあたしのガンプラ、『ドラゴニックガンダム』だ」
ケースの中から現れて、机の上に立つのは、濃淡二色の赤色が映えるカラーリング。
代名詞とも言えるドラゴンハングは腕部からバックパックに移され、形状も大きく変わっている。
具体的に言うと、アルトロンガンダム【EW】のドラゴンハングを背負っている形だ。
アルトロンガンダムとしての面影は残しつつも、どこかネオチャイナ系の意匠も見られる。
だからネーミングも『〇〇シェンロンガンダム』や『シェンロンガンダム〇〇』じゃない、オリジナルの機体名にしたのか。
「すごい、これもう全く別のガンプラだね」
マユちゃんが真っ先にそう評する。
「へへーん、だろだろ?パーツも色々組み替えてさ、バランスを取るのも大変だったんだよ」
確かに、脚部の形状はX100系――ストライクやデュエル、バスターの―フレームのそれに酷似しているし、腕部はガンダムフレームのパーツも使っているな。
「それで、早速試運転か?」
「うーん、そうしようと思ったんだけどなー……」
すると、イツキは眠そうに目を擦る。本当に眠そうだな。
「……タツナミさん、少しでもいいから仮眠取ったら?」
それを見兼ねたのか、ミカゲさんが助け舟を出した。
「あー、うん、ちょっと寝よっかな。30分くらい経ったら起こしてー……」
そう言ってイツキは、椅子に座ってテーブルに上体を俯せると、
「くー……すー……くー……」
即座に寝息を立て始めた。どこぞの射的と家出が得意なメガネ少年もびっくりな早さだ。
「え、もう寝ちゃったの?っていうか、熟睡してない?」
イツキの寝付きの早さに、マユちゃんが驚愕している。
「このまま下校時間まで寝かせといてやろうか」
下手な短時間で起こしても、却って身体が鈍くなるだけだ。
よって、このまま部活終了まで寝かせることにして、俺は上着を脱いで、それをイツキの肩に掛けてやる。
ケイスケ先輩にはRINEで、『イツキが寝ているので、帰ってくる時は気を付けてください』と伝えておく。
さて、今日はバトルじゃなくて製作に費やすとしよう。
「ん……く、あぁ〜〜〜〜〜……っと」
17時半頃になって、イツキはようやく起きてきた。
「おはよう、イツキ」
「あー……リョー?今、何時……?」
「17時半だな」
「えっ、一時間も寝てた!?なんだよー、30分くらいで起こしてって言っただろー?」
ブーたれるイツキに、マユちゃんが苦笑しながら答えてくれた。
「だってイツキ、すごい気持ち良さそうに寝てたから、起こすのもなんだかなぁって」
「……おかげで私も、アサナギさんにスミ入れと艶消し処理を教えてもらえたわ」
マユちゃんの隣の席から、ミカゲさんも頷いている。
彼女のグレモリーは、アサナギさんのレクチャーによって、艶消しクリアーとスミ入れをされて、より完成度が増している。
ちなみにチユキちゃんは、遅くまでいさせるわけにはいかないので、17時なった辺りで帰らせている。
「おぅ、ようやく起きたな」
少し前に部室に帰ってきたケイスケ先輩も呆れている。
「タツナミも起きたところで、今日は解散だな」
「あー……もしかして、あたし待ちでした?」
「そゆこった。んじゃみんな、今日もお疲れさん」
お疲れ様でしたー。
ケイスケ先輩とミカゲさんとは校門前で別れ、マユちゃんとイツキとの三人で途中まで一緒に下校だ。
いつもの地点でマユちゃんと別れるのだが、今日は少しだけ違った。
「わたし、この後で商店街の方に寄るところがあるから、今日はここで」
今日のマユちゃんは寄り道の予定があるそうだ。
「そっか。んじゃ、また明日なー」
「アサナギさん、また明日」
「うん、ばいばい」
互いに軽く手を振り合って、最後にイツキと二人で。
そうしてしばらく歩いていたら、
「あっ」
ふと、何かを思い出したのかイツキが足を止めた。
「そーいや昨夜使い切った塗料があったから、買い足そうと思ってたの忘れてた……リョー、今からダヤマ電機だ!」
「突然急にどうした。っていうか、今日は早く帰って寝るんじゃなかったのか」
というか、さっき寝てたからそれで忘れてたのか。
「パッと買うだけだって。ほら行こーぜ!」
イツキに手を引かれて進路変更、そのままダヤマ電機へ向かうことに。やれやれだぜ。
ダヤマ電機に到着し、他のコーナーには脇目も振らずにホビーコーナーへ直行。
イツキがお目当ての塗料を手に取って、早いところレジに向かおうとしたのだが、
「んん?なぁリョー、あれってシノミヤ副会長じゃね?」
「シノミヤ副会長?」
不意にイツキが明後日の方向に目を向けたので、そちらへ倣ってみると。
ケータイのコーナーの付近に、確かにシノミヤ副会長がいるが、なんか困ってそうな様子が。
そして、それと対するのは三名ほどの、チンチンピラピラしたバカチンがいる。
うむ、さすが
「副会長って美人だもんなー、あんな風に絡まれるのも無理もないか」
「学園でも色々苦労してそうだな」
イツキは苦笑しているものの、こんな店内で堂々とヤろうってのか、いい度胸してんなー、あのトリオ。
あ、その内の一人が距離を詰め始めた。
「お、おい、あれちょっとしつこくね?」
周りの従業員の方々は見て見ぬふりをしてるし……俺の『困っている人をほっとけない病』が再発症してしまうじゃないか。
仕方ない、ここはしれっと行くとしよう。
のっそりのんびりと歩み寄って、
「グッドイブニングこんばんは、シノミヤ副会長。お買い物ですか?」
アイアム通りすがりの転生者です。キリッ。
「あら……オウサカくん?」
「あ?誰お前」
その場の四人の視線が俺に向けられますけど、その内の三人はスルッとスルーです、アウトオブ眼中。
「今日も学生会の業務ですか?こんな時間までお疲れさまです」
俺と親しげな仲を見せるフリをしてください、と目線で訴えると、すぐに応じてくれた。
「えぇ、そうよ。学生会室の備品の買い出しに出ていたところなの。これからまた学園に戻るんだけど、荷物持ちしてくれるかしら?美人の先輩からの、お・ね・が・い♡」
ばちこん、とウインクまでしてきた。
あざとい!演技とは言え、なんちゅーあざとさだこの人!?
「ははっ、シノミヤ副会長のお願いじゃ、断れないですねぇ」
さぁさぁ、「こいつら付き合ってんじゃね?」って勘違いしろ、そしてどこかへ失せろ可及的速やかに。
「おいてめぇ、何さっきから無視してんだ、あぁ?」
……そうは問屋が降ろさないかー。
「え?……あぁ、すみません副会長、先客でしたか?」
驚いたようにバカチントリオに振り返って見せて、すぐにシノミヤ副会長に視線を戻す。
「彼らはお客様じゃないわ。それに全然私の好みじゃないもの。私の好みは……そう!オウサカくんのような優しい人よ」
オゥッフ……演技でもそのお言葉は嬉しいけど、この状況じゃ奴らの下半身(意味深)を逆撫でするようなものです。
「ということであなた達、私にはお付きのナイト様がいるので、ご用はありません。補導される前に、早くお家に帰りなさい」
早くお家に帰りなさいとか、完全に小学生低学年扱いである。
「こんのアマッ、黙って聞いてりゃ調子に乗んなやぁ!」
あーもー、すぐ暴力でお話しようとするのは、『ざまぁ・もう遅い』される婚約破棄者のすることだぞぅ?
とりあえずシノミヤ副会長に手を出そうとしてる奴をインターセプトし……
と、思ったらその手を何者かが止めた。
「何 を し て い る」
暴力の拳を取り押さえていたのは、黒髪ロングの美しい学生会長、ゴジョウイン会長だった。
「何すんだこ……いぎっ!?」
ゴジョウイン会長の手が、バカチンの手首を握り締めているだけだが、相当な握力が加えられているのだろう。
「貴様、今私の大事な副会長に何をしようとした?今すぐ答えるならそちらの学校経由で親御さんに苦情の電話一本くらいで済ませてやらんでもない」
「ごっ、がっぁ!お、お、折れるっ、折れるぅっ!?」
「答えんと言うならそれでもいいぞ?喧嘩でもなんでも買ってやろう」
アハハwアハハハハハwww
ざまぁwwwもうwおwそwいwww
心の中では草を生やしつつ、とりあえず調停者を気取っておこう。
「会長会長、その辺にしときましょうよ。店の中で騒ぎになったらまずいですし」
「うむ、君の言う通りだな。全く、手首を掴まれたぐらいで泣き喚くなどだらしない」
ピーピー喚いてるバカチンをぽいっと放ってやるゴジョウイン会長。
「いやー、アマネの握力おばけは相変わらずね。リンゴどころか、そろそろカボチャくらい割れるんじゃない?」
「トモエ、余計なことを言うな」
カボチャ割れる握力ってすげぇっすね?プロレスラーかな?
「け、喧嘩でもなんでもいいんだな?なら、ガンプラバトルでケリつけてやろうじゃねぇか!」
「「「は?」」」
バカチンがワケワカメなことを言い出したので、思わず俺とシノミヤ副会長とゴジョウイン会長の声がシンクロしちまった。
「て、てめぇがさっき言ったんだろ、怪力女!喧嘩でもなんでもかっ、買ってやろうってな!」
この状況で強気に出れるとか、マジでいい度胸してるわ、地味に称賛に値する。声上擦ってるけど。
「……ハァ、素直に普通の喧嘩にした方がまだ勝ち目はあったろうに」
頭が痛い、とでも言うようにゴジョウイン会長は右手で額を押さえる。
「すまんトモエ、少しだけ待っていてくれ。すぐに"処理"する」
あぁ、この人にとってこの程度のバカチンとのバトルは、『ガンプラバトルですらない』のか。
だがまぁ乗りかかった船だ、首を突っ込んだ以上は最後まで付き合うとしよう。
「さすがに三対一じゃフェアじゃないでしょう、俺も加勢しますよ。イツキはどうだ?」
事の推移を見ていたイツキにも声を掛けてやる。
「ぅえ?あたしも?」
「ほら、ちょうどいい"初陣"だろ?」
初陣、と聞いて合点の入ったイツキは、ニッと力強い笑みを見せてくれた。
というわけで、このお店のバトルブースを使ってガンプラバトルだ。
バトル形式は3on3の殲滅戦。
俺はオリジネイト、ゴジョウイン会長はゼイドラ・スタイン、そしてイツキは先程に見せたドラゴニックだ。
ランダムフィールドセレクトは『ケネディポート』
ここは確か……エゥーゴが戦力の一部を宇宙へ打ち上げるためのシャトルを発進させようとしたところで、連邦軍のブラン・ブルタークが襲撃を掛けてくるんだったな。
ロベルト中尉……あの人の戦死は本当に残念だった。
海に囲まれた港に、聳え立つシャトルが障害物になるフィールドになるようだな。
出撃スタンバイ。
「オウサカ・リョウマ、オリジネイトガンダム、行きます!」
「ゴジョウイン・アマネ、ゼイドラ・スタイン、出るぞ」
「タツナミ・イツキ、ドラゴニックガンダム、行っくぞー!」
アウドムラから出撃ということは、エゥーゴサイドだな。
ここから、スードリから発進してくるバカチントリオのガンプラを迎え撃つ、と。
着陸して間もなく、前方から敵対反応が急速に近付く。
えーと、何々……エゥーゴカラーの『ガンダムMK-II』に、『ダブルオーライザー』に、『フォースインパルスガンダム』だな。
エゥーゴカラーのガンダムMK-IIがシャトルを攻める側か、皮肉を感じざるを得ないな。
と、言うか……なんか完成度が妙に高いな?
「あれは……全員
ふと、ゴジョウイン会長がそう口にした。
りあるぐれーど?
あぁ、ガンプラのスケールの話か。
ニュアンスを聞くところ、同じ1/144スケールでも色々と違うみたいだな。
「何が相手でも関係ないですって!会長とリョーとあたし、この三人なら無敵だー!」
そう言うなり、イツキのドラゴニックは三叉のビームの双頭槍『ツインビームトライデント』を抜き放って、ガンダムMK-IIへ挑みかかる。
「あ、こらイツキ、一人で突っ込むな!すみません会長、彼女の援護に回ります」
ウチの相方がすいません。
「構わない、好きにやってくれ」
ゴジョウイン会長も特に気にすることもなく、ゼイドラ・スタインを加速させてダブルオーライザーへ向かう。
となると、俺の相手はフォースインパルスか。
向こうの三機も、一斉にビームライフルやらソードライフルを連射してくるが、牽制射撃だ、そう当たりはすまい。
ロックオンマーカーをフォースインパルスに照準、こちらもビームライフルで応戦する。
……ん?ゴジョウイン会長のゼイドラ・スタイン、なんか動きが妙だな。
右腕が動いてないというか、機体の挙動が左に傾いているというか。
まさか?
「ゴジョウイン会長?まさかと思いますが、
「あぁ、その通りだ」
ゴジョウイン会長は敢えて向こうにも聞こえるようにオープン回線で応じてきた。
「向こうの一人、「右手を痛めているから負けた」と言い訳をする可能性がある。ならばこちらも右手を使わずに戦ってやれば対等だろう」
機体の右半分を動かさずともダブルオーライザーを圧倒しているのはさすがと言うべきなのか。
「私のことは心配するな、そちらの相手に集中してくれ」
左マニピュレーターにゼイドラソードを抜き、GNソードIIIを弾き返した拍子にそれを破壊しているので、こちらの援護は必要無さそうだ。
「了解しました」
『よそ見してんじゃねぇ!』
おっと、フォースインパルスがビームライフルを納めて、フォースシルエットからビームサーベルを抜いて接近してきた。
はいはいっと、こちらもビームサーベルで格闘戦に……してやるもんかよ。
フォースインパルスがビームサーベルを振り上げた瞬間に、操縦桿を押し上げてオリジネイトを急加速させ、シールドからタックルを仕掛けて弾き返す。
そこですぐに反撃せずに、回り込んで背後からビームライフル射撃、奴の機動力の要であるフォースシルエットを撃ち抜いて破壊する。
本物のインパルスなら、シルエット装備を失っても、何なら五体が無くなっても、コアスプレンダーさえ生きていればすぐに母艦のミネルバから新しい装備が射出されて換装、そのまま継戦可能だが、残念ながらこれはガンプラバトルだ、途中で装備を換えるということは、少なくともこのルールのバトルなら出来ない。
さて、フォースシルエットを破壊してただのインパルスになったので、慌てずにサクッと倒すとしよう。
イツキの方は……
「おりゃおりゃおりゃぁー!!」
ドラゴニックはツインビームトライデントを振り回して、ガンダムMK-IIに果敢に攻め立てている。
敵のガンダムMK-IIもビームサーベルを抜いて応戦しているが、単純出力ならともかく、リーチや手数なら、ツインビームトライデントの方が上だ。
その上からドラゴニックのバックパックから一対のドラゴンハングが縦横無尽に放たれる。
あ、ドラゴンハングがガンダムMK-IIのシールドに咬み付いて粉砕した。
『クソッ、こいつら思ったより強ぇ!』
『こうなりゃ、アレを使うぞ!』
おや?何だかインパルスの様子が変わったな。
機体がなんとなく輝いて見える。
見やれば、ガンダムMK-IIやダブルオーライザーにも同じような現象が。
少なくともトランザムの類ではないな、なんだ?
「うっそ!?まさか、覚醒システム!?」
ガンダムMK-IIを追い詰めていたイツキが何やら驚いている。
「覚醒システム?……違うな、擬似的なものを違法に組み込んだものか」
ゴジョウイン会長がそう零した。
覚醒システムとやらが何のことかは知らないが、どうやらバカチントリオのガンプラは、本来なら(恐らくレアケースだろうが)合法として存在するものを非合法な形にしてインストールさせているのだろう。
『さぁ、反撃といこうじゃねぇか!』
残されたビームライフルとビームサーベルを手に、インパルスが襲い掛かってきた。
ふむ、機体性能が上がっているらしい、先程よりも素早い。
でもね。
「合法だろうが非合法だろうが、使い手が性能を引き出せなければな!」
慌てずにビームライフルを躱し、ビームサーベルで斬り掛かろうとしてきたら、左マニピュレーターにハイパーバズーカを脇に抱えるように持ち、発射。
放たれるロケット弾はその直前でビームサーベルで斬り落とされ、爆風を撒き散らす。
まぁどのみち、VPS装甲に守られたインパルスにバズーカはあんまり有効じゃないんだが、爆煙で視界を妨げるのが俺の目論見だ。
爆煙の中へ即座にビームライフルで狙い撃つ。
しかし、バイタルパートへの直撃にも関わらず、インパルスのボディには被弾痕こそ見られるが撃破には至らなかった。
「ん?直撃したはず……」
『んなもんが効くかよ!』
いや、効いてるでしょ。ダメージがちょっと通りにくいだけだ。
接近してきたインパルスの斬撃を躱して真上を取ると、
「そうか。なら……」
やることはひとつ。
「効くまで叩き込むだけだ」
一発じゃ無理なら何発でも叩き込めばいいじゃない。
インパルスの頭上からビームライフルとハイパーバズーカ、その上から頭部バルカンも連続で撃ち込む。
砲弾、銃弾、ビームの雨に、さすがに違法強化されたインパルスと言えども耐えられるものではなく、粉々に爆散していった。
インパルスガンダム、撃墜。
さて、こっちは片付いたので、イツキのフォローに回るか。
ゴジョウイン会長が相手していたダブルオーライザーは、どうやらトランザムも併用しているが、それでもなお会長は左腕だけで操縦しているようだ。
一見、ダブルオーライザーがGNソードIIを両手に一方的に攻め立てているように見えるが、ゼイドラ・スタインはそれら攻撃を全て危なげ無く受け流している。
するとやがてトランザムの限界時間を迎え、ダブルオーライザーはトランザム特有の赤い輝きを消失させ、挙動を鈍らせた。
「座興はもう終わりか?」
そして、その時を待っていたと言わんばかりにゼイドラ・スタインは反撃を仕掛け、斜め上方から踏み付けるような飛び蹴りを繰り出す。
ダブルオーライザーを仰向けに蹴り倒し、頭部を踏み潰すと、
「まぁ、何一つ面白く無かったが」
『あっ、あっ、や、やめ』
何の容赦もなくゼイドラソードをバイタルパートへ突き込み、念入りに刳り抜いた。
リアルだったらパイロットはミンチよりひでぇことになってるけど、違法なシステム使ってるっぽいし、下手すると復活とかも有り得るから、しっかり息の根を絶殺しておくのはある意味正しいか。
ダブルオーライザー、撃墜。
残るイツキはというと。
『ホラホラどうしたァ!』
「くっそっ、急に動きが……!」
先程とは一転し、ガンダムMK-IIが攻め立て、ドラゴニックが防戦一方になっている。
殊の外苦戦しているようだ。
急いで援護に向かおうとするが、ゴジョウイン会長に「待て」と制止させられてしまった。
「任せてやろう。彼女が倒されたとしても、君か私で処理すればいい」
なるほど、どの道もう勝ちは決まっているようなものだから、イツキが奴を倒せるかどうかを見てもいいわけか。
負けるなよイツキ、この程度の"卑怯者"に遅れを取るお前じゃないはずだろう?
ガンダムMK-IIが振り翳すビームサーベルの一撃をツインビームトライデントで受けるドラゴニックガンダムだが、機体出力も上がっているらしいそれは容易く弾き飛ばす。
「なんっ、だよ!インチキなことして!」
『インチキだろうがなんだろうが、勝ちゃいいんだよ!』
勝てば官軍負ければ賊軍。
なるほどそう言った意味では、インチキも正当な手段に成り代わるだろう。
――同じインチキな手段を用いた僚機が既に撃破されていて、負け戦同然の"詰み"状態なことには果たして気付いているのか――
続けて放たれるガンダムMK-IIからのビームライフルに、ドラゴニックガンダムは回避しつつも左腕のシールドで受けるものの、違法強化された出力のビームは容易く装甲を破り、左腕もろとも突き破る。
焦るイツキ。
苦し紛れに右のドラゴンハングを放つが、それもビームサーベルによって斬り捨てられてしまう。
飛び下がって距離を置こうとするが、その背後には発進準備中のシャトルがあり、ぶつかってしまった。
「ヤ、ヤバッ……!?」
『こいつで終わりだ!』
突き出されるガンダムMK-IIのビームサーベル。
ドラゴニックガンダムは咄嗟にツインビームトライデントを差し向けて受けようとしたが、やはりパワー差が大きく、ツインビームトライデントが弾き飛ばされてしまい――それはすぐ背後にあるシャトルに突き刺さり、シャトルは大爆発を起こす。
「うわぁっ!?」
『うおぉっ!?』
――このケネディポートの戦いが本物なら、シャトルを破壊された時点でエゥーゴの負けだが――
シャトルの爆発がドラゴニックガンダムとガンダムMK-IIの両者を吹き飛ばす。
吹き飛ばされながらも、イツキは姿勢制御してドラゴニックガンダムを立て直すが、
「(トライデントも無いし、ドラゴンハングも片方しか無い、どうすりゃいい……!?)」
真っ当な攻撃では通じないのは、先程からの戦闘でも理解せざる得ない。
そうこうしている間にも、ガンダムMK-IIも体勢を立て直したか、爆煙の向こう側から現れる。
『今度こそもらったァ!』
迫るガンダムMK-II。
「(そうだっ、普通じゃ効かないなら……)」
イツキの脳裏が閃く。
閃くと同時に、残る左のドラゴンハングを放ち――しかしビームサーベルによってこれも斬り捨てられるが、
「そら今だ!」
ドラゴンハングは囮、ガンダムMK-IIにビームサーベルを振らせ、僅かに生じた隙に、ドラゴニックガンダムは加速して跳躍、フライングボディプレスをするようにガンダムMK-IIへ飛び掛かり、押し倒す。
『このやろっ、無駄なあがき……!』
「そ、れ、をっ、よこせ!」
ドラゴニックガンダムは右マニピュレーターをガンダムMK-IIのバックパック、正確にはそこにマウントされているビームサーベルを奪い取り、即座にビーム刃を発振、ガンダムMK-IIの肩口からボディへ押し付けた。
「自分の武器なら、効くだろ!!」
違法強化された機体の、違法強化された武器ならば効くだろう、というイツキの目論見は、成功したのだ。
ガンダムMK-II、撃墜。
『Battle ended!!』
途中でイツキが苦戦したけど、結果としては俺達の完勝。
いつの間にか筐体の周囲にはギャラリーが囲っており、勝った側の俺達三人に喝采を浴びせてくれる。
官軍賊軍に関係無く、そもそも一方的な逆恨みでバトルをけしかけたバカチンどもにはブーイングすらも無く、バカチンどもは悔しげに逃げて行った。ざまぁ。
「はー……あっぶねー。なんとか勝てた……」
ギリギリの辛勝に、イツキは脱力するように息を吐いた。
「お疲れさん。勝てたから良かったじゃないか」
「リョーと会長は余裕だったじゃん。なんかあたしだけ足引っ張ったみたいだー」
ブーたれるイツキ。
その隣では、シノミヤ副会長がゴジョウイン会長の勝利を称えている。
「お疲れさま、アマネ」
「すまんトモエ、本来ならもう20秒は早く処理出来たはずだった」
「利き手封印で、しかも相手は反則技でしょう?」
「それでもだ。オウサカと共に戦えると思って、少し浮かれてしまったな」
そうそう、その、"反則技"について知りたかったんだ。
ゴ"ジョウイン会長なら知ってるかもしれない。
「ゴジョウイン会長、さっきのアレ、何かご存知ですか?」
そう訊ねてみると、ゴジョウイン会長は難しそうに眉をひそめて、言葉を選ぶような間を置いてから答えてくれた。
「ガンプラバトルシミュレーターには、『覚醒システム』というものがある。曰く付きだが、一時的にガンプラの性能を飛躍的に高めるというものだ」
何それ、公式が認めたチートじゃん。
「けれど、誰にでも簡単に使えるものではない、と?」
「そうだ。覚醒システムは、ごく限られた、"システムに選ばれた者"しか使うことが出来ないし、その選ばれる資格や理由なども全く不明。言うなれば、システムのブラックボックスそのものだ」
……アレかな、『主人公』の"ご都合主義"のために作られた"設定"だろうな。
「だが、先程の奴等のガンプラに、それと酷似した状態が見られた。奴等が"選ばれた者"とは思えない以上、考えられるケースは、不正なシステムを使った違法強化だろう。私も、個人戦の部の全国大会でそういった輩と戦ったことがある」
尤も、そのような反則技を使ったその相手は直後に失格、以降の大会参加が不可能になったのだとか。
「はぇー……そんなのがいるんすねー」
隣で聞いていたイツキが、目をパチクリさせている。
「勿論、あくまでも違法なものだ。オリジナルの覚醒システムほどの恩恵は得られないとされているが、私達の間ではそういった違法強化状態のことを『疑似覚醒システム』と呼称している」
ようするに公式が認めたチートのパチモンってことね。
「君達も、見知らぬ相手とバトルをする際に、そういったこともあるということを覚えておいてほしい」
ほーい。
「っと、すっかり遅くなっちゃったわね。アマネ、そろそろ帰りましょうか」
「そうだな。オウサカ、タツナミ、巻き込んでしまってすまなかったな」
そう言えば学生会室の備品の買い出しに来てるって言ってたな。
「お気になさらず。俺達も帰りますけど、先輩たちもお気を付けて」
「お疲れさまっした!」
忘れそうになってたけど、イツキも買おうとしていた塗料を改めて購入して、改めて帰宅だ。
その日の夜。
RINEのグループトークの、『ビルドシンフォニー』のグループでは、俺とイツキ、ゴジョウイン会長のバトルについての話題で一喜一憂している。
メンバーさんは、リョウマ(俺)、マユ(マユちゃん)、イツキ、トウカ(ミカゲさん)、ケイスケ(ケイスケ先輩)の五人だ。
ケイスケ:なるほど、俺も噂程度には聞いてたけど、知り合いが被害に遭ったのは初めてだな
マユ:サイキ先輩は知っていたんですか?
ケイスケ:噂程度な。ガセか何かと思ってたよ
イツキ:でも、今日はマジでそんなんがいたんだよ。チートごときに負けてて、ビルドシンフォニーのメンバーが務まるかってんだ
トウカ:ゲームってそういうチートとかが横行するってよく聞くけど、本当に実在するのね。
リョウマ:今回のは単なる性能強化だけだったけど、もしかするとこの先、もっと質が悪い疑似覚醒システムが出てくるかもしれない
マユ:なんか怖いね……そんなのが近くにいるとか
イツキ:大丈夫、その時はあたしがマユを守ってやるぜ
ケイスケ:タツナミが男前でイケメン過ぎるwww
イツキ:誰が男前ですかい!!
マユ:www
トウカ:草。
リョウマ:除草剤推奨
ケイスケ:そんじゃそろそろ夜も遅いし、そろそろ寝るんだぞー
マユ:おやすみなさーい
イツキ:(寝落ち)
トウカ:お疲れさまでした、おやすみなさい。
リョウマ:おやすみなさい
トークも終了したところで、俺もそろそろ寝るとしよう。
しかし、疑似覚醒システムか。なんとも物騒だな。
そういうものを蔓延させている組織があって、それを根絶するために戦う……みたいな展開がありがちだけど、今世くらいはそんなドンパチとは無縁でいたいなぁ。
いや、それよりも目前に迫る地区大会だな。
俺はオリジネイト、マユちゃんはファラリアル、イツキはドラゴニック、ミカゲさんはグレモリーと来て、残るはケイスケ先輩のジム・キャノンIIだけだ。
けっこう時間を掛けて改造してるみたいだし、期待してもいいかもな。
ぼんやりと眠気が来たので、大人しく眠りについた――。