ガンダムブレイカー・シンフォニーRe:BREAK   作:さくらおにぎり

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6話 開幕、地区大会

 イツキのドラゴニックガンダムが完成してから。

 今週日曜日に開催される地区大会に備え、俺達チーム・ビルドシンフォニーは地道な練習を繰り返していた。

 ある日いきなり突然強くなるなんてのは未来世紀のガンダムファイターぐらいにしてほしい。

 

 まぁそんなわけでケイスケ先輩のガンプラも無事に完成し、五人チームでチーム戦の練習をしたりもしたわけで……

 

 そしていよいよ、地区大会の日がやって来た。

 

 駅前広場で一度集合してから会場に向かうため、最初に俺とイツキが二人で到着し、その後でマユちゃん、ミカゲさん(美少女モード)と続き、残るはケイスケ先輩だけだ。

 

「ついにこの日が来たね……」

 

 マユちゃんは緊張しながらそう呟く。

 

「そんな気張らなくたっていいだろー?やることはやった!あとはぶつかるだけだ!」

 

 反対にイツキは気合十分だ。

 

「緊張し過ぎても、気合が入り過ぎても、最後まで保たないわよ」

 

 どちらでもない、ミカゲさんは至極冷静だ。

 この一週間で、ミカゲさんの実力は見違えるほどに高まっている。

 具体的には、模擬戦でイツキと真っ向から接近戦になっても長時間粘り、回数は少ないながらも勝利しているのだ。

 防御力の高いグレモリーに、冷静な性格のミカゲさんの性質は、予想以上にマッチしているようだ。

 

「まぁ、やること自体はいつもと同じだからな」

 

 俺も気負わない言葉を口にしておく。

 大丈夫大丈夫、これから寡兵で大軍相手に戦うようなムリゲーをしに行くわけじゃないから、余裕余裕、超余裕。

 

 集合時間の余裕は十分にあるので、のんべんだらりとケイスケ先輩を待つこと数分ほど。

 

「っと、もう来てたか。待たせたなっと」

 

 

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 最後に、引率者かつリーダーのケイスケ先輩が来た。

 四人でおはようございますの挨拶を交わして。

 

「いやー、とうとうこの日が来たな。……ところで、このお嬢さんは

どちらさん?」

 

 ケイスケ先輩はミカゲさんを見てそう訊ねた。

 ……あ、そういえばケイスケ先輩の知ってるミカゲさんは、地味子ちゃんモードの時だけか。

 

「サイキ先輩、ミカゲさんですよ、ミカゲ・トウカさん」

 

 マユちゃんがそっと教えてくれる。

 

「え?いやいや、ミカゲってもっと……、……はぁ!?マジ!?」

 

 予想通りの反応をしてくれた。

 

 ミカゲさんの"諸事情"について説明すると、ケイスケ先輩は「あー……まぁ、それならしゃーねぇか?」と納得してくれた。

 

 人間、ちゃんと話せば分かるのに、張り合うことばかり考えて、話を聞こうともしないから、拳で語り合うしかないってハッキリ分かんだね。

 

 

 

 電車に揺られること十数分。

 地区大会の会場に到着し、手続きやら何やら通して、会場内へ。

 いいね、こういう「これから戦いが始まるぞ」って感じのピリついた空気感。

 

「オウサカくん、あんまり緊張してないね?」

 

 ふと、マユちゃんが俺に話しかけてきた。

 

「ん?俺としては適度な緊張は保っているつもりだぞ?ミカゲさんも言っていたが、張り詰め過ぎても疲れるし、だからってヘラヘラしてるものも、相手はともかく身内のみんなには不快だしな」

 

 変にチャラくして、周囲から「治安の悪そうな破落戸集団」とか思われるのも嫌だしなぁ。

 

「適度な緊張感かぁ……わたし、こういう大会に出るのって初めてだから、気を抜いたら膝が震えそう」

 

 よく見ると、肩に力が入り過ぎているし、顔もどことなく強張っているように見える。

 軍隊とかなら、「縮こまっとるぞぉ、しっかりせい」って言いながら股間を握って緊張を解してやれるんだが、さすがに女の子にそれをやったらセクハラモノだ、警備員のお世話になりかねん。

 

「大丈夫だ、俺達ならやれる。イツキなんか見てみろ、これからガンダムファイトでも始めるのかってくらい自信満々だぞ?だからアサナギさんも、もっと自分に自信を持って良いんだ」

 

 うーん、もっと気の利いたことを言えればいいんだが、生憎俺は演技は出来ても、口はあまり上手い方じゃないんだよなぁ。

 それでもマユちゃんにはそれなりに効果があったらしく、彼女の顔の強張りが弱まっている。

 

「オウサカくん……うん、ありがと。おかげで、気が楽になったかも」

 

「どういたしまして」

 

 まぁなんでもいい。マユちゃんの戦意が保たれるなら、俺の下手くそな言葉も意味があったというものだ。

 

 

 

 抽選によるトーナメント表が決められ、創響学園チーム・ビルドシンフォニーと最初に当たるチームを確認する。

 

「公立定丹瑞(ていたんず)高校『チーム・タイタンズ』。毎年地区大会の優勝候補の一角と数えられるエリートチームだな。こりゃいきなり強敵と当たっちまったか」

 

 抽選を受けたケイスケ先輩は苦々しそうに眉をしかめる。

 エリートチームねぇ。どのくらいのレベルかは分からないが、優勝候補の一角ともなればそれなりに強いだろうな。

 ケイスケ先輩がちらりと向けた視線の先には、濃紺の制服に黄色い『T』の字を鳥のようにあしらった校章が目立つ、(なんか見覚えのある)やたらとキャラの濃い集団が見える。……つーか、あの人らほんとに高校生?

 

「ここが汚名挽回のチャンスってな!」

 

 特徴的な金髪をした、向こうのチームの一人がそう宣っているが、汚名を返上するんじゃなくて挽回するのか。ご苦労なことだな……

 

 

 

 開会式を終えれば、いよいよトーナメントの開始だ。

 

『創響学園チーム・ビルドシンフォニー、定丹瑞高校チーム・タイタンズ、両チームは、第三バトルブースで準備をお願いします』

 

 アナウンスが流れ、ぞろぞろと第三バトルブースへ向かう。

 始まる直前に円陣を組み、ケイスケ先輩が部長らしく檄を飛ばす。

 

「いよいよ俺達の初陣だ。勝ち抜かなきゃ廃部になるかもしれねぇが、何も気負うことはない。俺達なら勝てる、そんだけだ」

 

「「「「はい!」」」」

 

「よぉし、んじゃぁ行くか!」

 

 気合十分、俺達は勇ましく筐体へ向かう。

 

 

 

 ランダムフィールドセレクトは『ドルトコロニー宙域』

 

 ここは、P.D.(ポスト・ディザスター)のコロニー群のひとつだな。

 労働者のデモ隊とアナルホルン……ギャラルホルンとの武力衝突(とは名ばかりのアリアンロッドとノブリス・ゴルドンによるマッチポンプ、つまりは虐殺)で市街地がドンパチやってる真っ最中に、フミタン・アドモスを説得させてそのままクーデリアと一緒に脱出するのは本当にクソゲーだった。

 なんだって自殺願望のある人を抱えながらMW(モビルワーカー)が対人火器ブッパしてる中を潜り抜けて、そこから抜け出してもノブリス(金満ヒットマン)の刺客が狙撃しまくってくるとか生きた心地しなかったんだけど、ここでフミタンを生存させておくことで、彼女を操っていたノブリスを逆にコントロールし、クーデリアにも余裕が生まれてより強かになるんだよな。

 

 ガンプラバトル上ではテレビ局の宇宙船が障害物として存在する以外では、シンプルな宇宙フィールドのようだ。

 

 バナパス読み込ませてーの、ガンプラスキャンしてーの。

 

 さぁ、行くぜ。

 

「オウサカ・リョウマ、オリジネイトガンダム!」

 

「アサナギ・マユ、ガンダムファラリアル!」

 

「タツナミ・イツキ、ドラゴニックガンダム!」

 

「ミカゲ・トウカ、ガンダムグレモリー」

 

「サイキ・ケイスケ、『ジムカラミティ』!チーム・ビルドシンフォニー、出るぞ!!」

 

 

 

 ゲートから順に出撃してきて、まずはフォーメーションを組む。

 

 俺、イツキ、ミカゲさんの三人が前に出て、その後ろをマユちゃんとケイスケ先輩が後押しする形だ。

 

「牽制射撃します」

 

 早速、マユちゃんのファラリアルはビームアルケビュースを構えて、前方へ狙い撃つ。

 宇宙の彼方へビームのが吸い込まれ――しかし撃墜反応はない。

 

 その即座に、前方より敵対反応が多数接近。

 

 ジ・Oにパラス・アテネ、バウンド・ドック、ハンブラビ、ガブスレイ……見事にティターンズ系ばっかだな!

 しかしその内の三機は可変機か、意外と機動力の高いチームだ。

 これらの編成を前に、ケイスケ先輩はすぐに指示を飛ばしてくれる。

 

「アサナギは回り込んでパラス・アテネをマーク!タツナミとミカゲは手当った奴に張り付け!リョウマ、遊撃は任せるぞ!」

 

 指示を飛ばした後、ケイスケ先輩のジムカラミティは、バックパックの大型ビームキャノンを前方へ向けて発射、突撃してくる可変機三機を散開させる。

 

「よーっし、行っくぜー!」

 

 イツキのドラゴニックは左サイドスカートからツインビームトライデントを抜き放ち、プロペラのごとくブンブン振り回しながら突撃、ハンブラビへ迫る。

 

「なら私は……あの虫のような機体を」

 

 一方のミカゲさんのグレモリーは虫のような機体――MA形態のガブスレイをマーク、接近を試みている。

 となると、俺はバウンド・ドックだな。

 中距離からビームライフルで牽制、しかしMA形態のバウンド・ドックは素早い機動でビームを掻い潜りつつも、向こうもビームライフルを撃ち返してくる。

 

『そんなことじゃ、このバウンド・ドックは墜ちないぜ!』

 

 この声……さっきの汚名挽回くんだな。

 バウンド・ドックはMS形態へと変形、MA形態のそれとは打って変わった左右非対称の異形と化す。

 ……こうしてみると、バウンド・ドックってけっこうでかいな。確かグリプス戦役中じゃトップクラスの全高、27mくらいはあるんだっけか。

 

 あちらはビームサーベルを左マニピュレーターに抜いて迫ってきたので、こちらも同じく左マニピュレーターにビームサーベルを抜いて対抗だ。

 

 メガ粒子のサーベル同士が斬り合い、弾き返す。

 

 ――しかしなんだろうな、バウンド・ドックの姿を見ていると、奇妙な既視感を覚える。

 なんかこう、以前にもこうして戦ったことがあるような……あの時俺が使っていたのはガンダムAGE-2だっけ?……違うな、SDのガンダムアルテミー?いやこれも違う……

 

 まぁいいか、憑依する前のこの身体の記憶だろう、気にすることもない。

 それより今はバトルに集中しよう。

 

 

 

 ケイスケのジムカラミティは、敵リーダー機らしいジ・Oとパラス・アテネの両方に砲撃を行っていた。

 ビームキャノンを大型化し、ジムライフルの代わりにハイパーバズーカを装備、シールド裏に二門のビームガン、さらには胴体部のチョバムアーマーにはメガ粒子砲を内蔵したそれは、カラーリングも相まって、機体名の通り、『カラミティガンダム』を思わせる姿だ。

 多数のビーム砲を搭載したそれらは、火力重視のカスタムであり、単騎で複数の敵機を同時に砲撃可能な機体でもある。

 

「喰らいやがれ!」

 

『墜ちろ、カトンボ!』

 

 対するジ・Oは、重厚な見た目に反した素早い機動で多数のビームを掻い潜りつつ、ジムカラミティへ接近する。

 そのジ・Oの後ろからも、パラス・アテネが連装ビームガンで支援射撃を重ねて来る。

 しかし援護を行ってくれる存在がいるのはケイスケも同じだ。

 

「ガンビット!」

 

 マユのガンダムファラリアルは、エスカッシャンを分離させた多数のビーム砲を自身の周囲に展開、手数で対抗する。

 

 濃密な弾幕に、さすがのジ・Oも迂闊に近付けずに一度距離を取りつつビームライフルを撃ち返してくる。

 

 互いに距離を話しつつの中距離射撃戦へ縺れ込む。

 

 しかしパラス・アテネの火力は脅威であり、肩部の拡散ビーム砲や、シールドミサイル、さらに背部には大型ミサイルも備えている、歩く武器庫とも言うべき武装群。

 正面火力のぶつけ合いならば、ジムカラミティと言えども引けを取らざるを得ない。

 故に、ケイスケとマユは少しずつ押されつつある……『ように見せかけていた』

 

「サイキ先輩」

 

「おぅ、タイミングは任せるわ」

 

 そっと接触通信でコンタクト。

 近くに、テレビ局の宇宙船が浮かんでいるそこまで後退……という"誘い込み"。

 

『敵は及び腰……一気に押し込む!』

 

 パラス・アテネは持てる火力を的確に使い分けつつ、ジムカラミティとガンダムファラリアルへ距離を詰めていく。

 そのグラスグリーンの巨躯がテレビ局の宇宙船の近くを通過しようとした時、

 

『ムッ、いかん!そこから離れろ!』

 

 同じように追い込もうとしていたジ・O、しかし不意にパラス・アテネに制止を呼び掛けるが、

 

 それは既に遅かった。

 

「今っ、コラキ!」

 

 すると、宇宙船の陰から突然、多数の円盤状の物体が飛び出し、パラス・アテネの周囲を取り囲むと、一斉に赤いレーザーを照射する。

 

 途端、パラス・アテネはその動きを止めてしまい、棒立ちになってしまう。

 

 ガンダムファラクト特有のガンビット――コラキが放つレーザーは、装甲を破壊するほどの出力を持たない代わりに、レーザーの接触部位の機能を一時的に遮断する効果を持つ。

 

 マユはジ・Oとパラス・アテネと交戦する前に、テレビ局の宇宙船にコラキを隠しておき、敵機がそこへ近付いて来たところをコラキで取り囲ませたのだ。

 

 最初にエスカッシャンによる派手なビーム射撃を連発していたのは、エスカッシャンに注意を向かせて警戒させ、ここぞというところで潜ませていたコラキが牙を剥く、というもの。

 

 二種類のガンビットを使い分ける、マユの策。

 残念ながらジ・Oの使い手は寸前に罠に気付いてしまったようだが、これでパラス・アテネは確実に撃破出来る。

 

「よーくやった、アサナギ!」

 

 マユの策に、予め腹部のメガ粒子砲のチャージを完了させていたケイスケは、すぐさま砲口をパラス・アテネへ向けて、発射。

 ジェネレーターに直結している火器のため、連射は効かないもののその分単発の破壊力は随一、動けないパラス・アテネのボディを確実にぶち抜いてみせた。

 

『男たちって、ガンプラバトルばかりで……だからあたしは!』

 

 パラス・アテネ、撃墜。

 

 

 

 バウンド・ドックを相手に、一進一退の攻防を繰り広げる俺、つまりオウサカ・リョウマ。

 

『墜ちろォ!』

 

 距離を取ったと思えば、バウンド・ドックは右腕のアームカバーの砲口から拡散メガ粒子砲を放ってくる。

 これはさすがに潜り抜けられない、一度引けを取るしか。

 

「オウサカくんっ、ごめん抜けられた!」

 

 不意にミカゲさんの焦る声が通信に届き、瞬時に状況把握。

 

 どうやら、ミカゲさんと戦っていたガブスレイがこちらに向かってきている。 

 

『やらせはしない!』

 

 MA形態のガブスレイの速度に、グレモリーでは追い付けない、瞬く間に距離を離している。

 

 ふむ、バウンド・ドックと挟み打ちだな、ガブスレイもフェダーインライフルを撃ちまくって来ている。

 前後からのビームを躱しつつーの、と。

 

 ガブスレイは俺を通過すると、そのままバウンド・ドックと並んでMS形態へと変形、すぐさま連携を固めてくる。

 

 一歩遅れて、ミカゲさんのグレモリーが到着。ガブスレイとの戦闘で少し損傷しているが、問題なさそうだ。

 

「ミカゲさん、イツキは?」

 

「タツナミさんなら、向こうで善戦しているわ」

 

 見やれば、猛攻を掛けるハンブラビに、なんとか喰らいついているドラゴニックだが、このまま任せっきりはまずいだろう。

 なら、まずはバウンド・ドックとガブスレイをなんとかするか、っと、向こうから撃ってきた。

 素早くグレモリーが前に出て、ナノラミネートコートで弾き返してくれる。

 

「よしっ、ミカゲさん、突っ込んでくれ」

 

「了解」

 

 そのまま、グレモリーを盾にするように一緒に突撃。

 向こうのバウンド・ドックが前に、ガブスレイが一歩後ろにつく。

 そう来るなら……

 

 ギリギリまで接近し、バウンド・ドックの右腕のクローアームがグレモリーに襲い掛かる。

 そうだろうよ、バウンド・ドックの武装でナノラミネートコートを破るにはそれしか無い。

 

 だからこそ、

 

「今だ!」

 

 瞬間、操縦桿を跳ね上げて、グレモリーのナノラミネートコートを踏み台にするようにして跳躍、バウンド・ドックの真上を取る。

 同時に、俺が踏み蹴ったことでグレモリーもバウンド・ドックのクローアームから逃れる。

 

『何っ!?』

 

 オリジネイトとグレモリー、どちらに意識を向けるかに一瞬でも判断に迷うだろう。それが俺の狙いだ。

 ビームライフルを手放し、ビームサーベルを両手で握りしめ、喰らえっ、一・刀・両・断ッ!!

 

 振り降ろすビームサーベルは、バウンド・ドックの頭部からスカートまでを真っ二つに斬り裂いた。

 

『貴様はっ、俺のォォォォォ……ッ!!』

 

 俺の……なんだよ、何もしてないだろうが。

 

 バウンド・ドック、撃墜。

 

『よくも!』

 

 バウンド・ドックの撃破に、ガブスレイがフェダーインライフルの銃床からビームサーベルを発振させて突撃してくるが、

 

「させないわよ」

 

 その前にミカゲさんのグレモリーが俺との間に割って入ってインターセプト、機体ごと突進してナノラミネートコートで銃剣ビームサーベルを弾き返す。パワープレイだなぁ。

 仰け反ったガブスレイに、容赦なくバトルアンカーをボディに叩き込んだ。

 

『守ってみせるって、言ったのに……』

 

 ガブスレイ、撃墜。

 

「ナイスだ、ミカゲさん」

 

「どういたしまして……次はどうすればいい?」

 

「なら、イツキの援護に向かってくれ。俺は先輩とアサナギさんの方に行く」

 

「分かった」

 

 ミカゲさんにハンブラビの方へ向かってもらい、俺はジ・Oの方へ急ぐ。向こうの指揮官機はかなり強いようで、二人がかりでも苦戦している。

 

 

 

 

 

 イツキのドラゴニックガンダムは、ハンブラビの狡猾で執拗な猛攻に善戦していたものの、形勢が傾きつつあった。

 

「くっそーっ、このっ、強い!」

 

『ふははははは!墜としがいのありそうな奴だ!』

 

 ハンブラビのビームサーベルに対して、ツインビームトライデントで対抗し、弾き返してすぐに反撃するものの、ハンブラビは流れるようにMA形態へ変形して、即座にドラゴニックガンダムから逃れると、すぐに反転、背部一対のビームライフルを連射してくる。

 これに対してドラゴニックガンダムは、その場でツインビームトライデントを高速回転させ、ディフェンスロッドのごとくビームを弾き返してみせる。

 ビームを凌ぎ、すぐさまバックパックのドラゴンハングを伸ばし、ハンブラビを捕らえんと文字通り牙を剥く。

 しかしハンブラビはその場で蜻蛉返りをするようにドラゴンハングを躱すと同時にMS形態へと変形、左マニピュレーターに握っていた橙色のソレを射出、ワイヤーに繋がれたソレは伸び切ったドラゴンハングのアームブロックに巻き付く。

 

『そぉら、海ヘビを喰らえぃ!』

 

 瞬間、巻き付いたソレ――海ヘビは高圧電流を発し、瞬く間にドラゴンハングを通じてドラゴニックガンダムへと電撃を喰らわせる。

 

「うわわっ……!」

 

 ガタガタと震動するモニターと操縦桿。

 しかし、この程度で怯むイツキでは無かった。

 

「だから、どうしたぁッ!」

 

 電撃を浴びせられながらも強引にドラゴンハングを引き戻し、海ヘビもろともハンブラビを引き寄せる。

 

『ぬぉっ!?』

 

「喰らえ!」

 

 引き込んだハンブラビの尖った頭頂部を掴み、その距離でバルカンとマシンキャノンを一斉射、ハンブラビの装甲を穴だらけにしていく。

 

 ハンブラビもあがいてその場を離れようとするが、

 

「逃さない」

 

 ガブスレイを撃破した、トウカのガンダムグレモリーがハンブラビの背後に回り込み、腕部機関砲を撃ち込んでいく。

 

『バカなっ、このガンプラの弱点を知っているのか!?』

 

 前後からの銃弾に挟まれ、やがて装甲の耐久に限界が訪れてハンブラビは沈黙した。

 

 ハンブラビ、撃墜。

 

 同時に、ドラゴニックガンダムを襲う電流も止まったが、イツキのコンソールには『危険』を示すレッドランプが埋め尽くしていた。

 

「はー、やっと倒せたぁ……」

 

「タツナミさん、大丈夫?」

 

 ガンダムグレモリーが近付いて、接触通信を行う。

 

「うーん、ドラゴニックはもうダメだなー……あと一機だろ?なんとかしてくれるっしょ」

 

 これ以上の戦闘続行は不可能として、イツキは操縦桿から手を離す。

 

「なら、私は後詰めに向かうわ」

 

 トウカはガンダムグレモリーを反転させ、残る一機――ジ・Oの方へ向かう。

 

 

 

 

 

 リーダー機らしきジ・Oは想像以上の強敵らしい、ケイスケ先輩とマユちゃんが二人がかりでも押されている。

 

 だが、俺が来たからにはこれ以上はさせん。

 ビームライフルを撃ち込みながらジ・Oへ接近を試みる。

 

「リョウマか!助かった!」

 

「先輩は距離を取ってください!アサナギさん、援護を頼む!」

 

「分かった!」

 

 ビームキャノンやハイパーバズーカを破壊されて攻撃力の落ちたジムカラミティには一度下がってもらい、マユちゃんとの二人で仕切り直しだ。

 

 対するジ・Oもビームライフルを撃ち返してきながら、俺を迎え撃つべくビームソードを振るう。

 こちらもビームライフルを納めてビームサーベルを抜刀、ビームソードと打ち合う。

 

 すかさずジ・Oがフロントスカートの内側から"隠し腕"を展開、ビームソードを振り上げてくるが、それは予習済みだ、弾くようにオリジネイトを飛び下がらせる。

 

「そこ!」

 

 側面に回り込んだファラリアルがビームアルケビュースで狙撃してくれるが、ジ・Oの反応も早く、隠し腕のビームソード二丁をクロスさせてビームを弾いてしまう。

 マユちゃんに反撃はさせん、奴に張り付く。

 ビームサーベルで一当てしつつ、ヒットアンドアウェイ。

 

『常にガンプラバトルを動かしてきたのは、一握りの天才だ!』

 

「なるほど。つまり、あんたはそれに当て嵌まらないようだ」

 

『えぇぃっ、俗人が!』

 

 自分は天才だーみたいなことを言ってきたのでちょっと煽ってやったら即座に俺に注意を向けて近付いて来た。

 煽り耐性ひっくいなー、この自称天才さん。

 

「この程度の挑発に乗せられるか、あんたの言う"一握りの天才"の基準とやらは随分と敷居が低いようだな!」

 

『勝てると思うな、小僧ォッ!!』

 

 プライドだけは山ほど高い割に、その中味はスカスカだな。

 

 挑発に乗ってきたジ・Oのビームライフルとビームソードの猛攻を凌げば凌ぐほど、奴の攻撃が雑になっていく。

 雑になれば雑になるほど、

 

「遅い」

 

 隙が出来るんだよ。

 逆袈裟一閃、隠し腕を両方とも斬り飛ばす。

 反撃の左手のビームソードは、敢えてシールドで受けつつジョイントを切り離し、『肉を切らせて骨を断つ』戦法で間髪無くジ・Oの左腕をビームサーベルで斬り落とす。

 

『くっ……これでは戦いに勝てん……!』

 

 ジ・Oは慌てて距離を取ってビームライフルを連射するが、焦った『数撃ちゃ当たる』なんてただの無駄撃ちだよ。

「数を撃てば良いというものではない、よく狙って撃て」とドレン大尉も言っていたからな。

 

 オリジネイトを真っ直ぐ突っ込ませて、

 

「終わりだ」

 

 全身でぶつかるように、ジ・Oのボディへビームサーベルを突き込む。

 

『ムンッ!?ぐわあぁぁぁぁぁ!!』

 

 ……致命傷は与えたはずだが、撃墜判定には至ってないな、若干外れたかな?

 すると、ガシッとジ・Oの右腕がオリジネイトを掴んだ。

 道連れにするつもりか?

 

『私だけが、負けるわけがない……貴様も一緒に連れ……』

 

「させないよ」

 

 ファラリアルのビットステイヴが飛来すると、銃口からビームサーベルを発振させて、ジ・Oの右腕を破壊し、続いてボディへ殺到した。

 それ以上の言葉は無く、ジ・Oは爆散していった。

 

 ジ・O、撃墜。

 

『Battle endnd!winner.Build symfony!!』

 

 俺達の勝ちだ。

 

 

 

 歓声に包まれる中、次に利用する人のためにそそくさと後にする。

 

 少し離れたところで。

 

「よっしゃ!みんなお疲れさん!俺達の初勝利だ!」

 

 率先して、ケイスケ先輩が勝利を喜んでみせる。

 

「勝てましたね……!」

 

 マユちゃんも緊張を解きつつ、顔を綻ばせる。

 

「やったなリョー!」

 

 イツキはバシバシと俺の背中を叩いてくる。痛いです痛い。

 

「優勝候補チームを相手に、それなりに戦えた方だと思うわ」

 

 ミカゲさんもホッとしている。

 

「まだ一回戦だから、浮かれるのは程々にしよう。でも、この調子で行けば優勝出来るはずだ」

 

 そう、これで優勝ではないのだ。

 今からもう二回勝ち抜いて、その先の決勝戦を制してようやく優勝だ。

 勝ちは勝ちとして喜んで、気は抜き過ぎない程度にね。

 

「っと、リョウマの言う通りだ。俺達はまだここから勝ち抜いていかなきゃならねぇからな」

 

 最後にケイスケ先輩が締めて、次の二回戦を待つ。

 

 

 

 各所で順調にバトルが進むに連れて、俺達チーム・ビルドシンフォニーもトーナメントを勝ち進んでいく。

 優勝候補の一角と最初に戦ったおかげで、二回戦、準決勝ともそれほど苦戦せずに勝ち抜くことが出来た。

 

 一度戦えば緊張感にも慣れたのか、マユちゃんの操縦の固さも抜けた。

 

 初戦ではあまり良いところを見せられなかった、と言っていたイツキも奮戦し、先程の準決勝では一人で三機も撃破していた。

 

 ミカゲさんもグレモリーの性能を活かし、攻防に渡って忙しなく活躍してくれている。

 

 我らが指揮官のケイスケ先輩も、何が相手でも変わらず冷静に指示を出しながら、自らも積極的に砲撃を行ってくれていた。

 

 もちろん、俺もみんなに負けない活躍を見せつけたけどな。

 

 

 

 準決勝を勝ち抜いたので、次の決勝戦で戦うチーム同士の試合を見る。

 

 えーと、何々……私立二宮高校チーム・『ブラウシュヴェルト』と、公立梁山(りょうさん)高専チーム・『プロト』か。

 

「サイキ先輩、あの2チーム、どっちが勝つと思いますか?」

 

 マユちゃんがケイスケ先輩に両チームの勝敗について訊ねる。

 

「梁山高専は、定丹瑞高校と同じ、優勝候補の一角だ。去年もベスト4まで残っていたからな」

 

 けど、と反対側のチームの様子も見やるケイスケ先輩。

 

「向こうの二宮高校は、確か弱小だったはずだけどな?いや、俺も正確に覚えてるわけじゃねぇけど……」

 

 ふむふむ、片や優勝候補、片やダークホースってところか。

 ダークホースの方も、以前は弱小だったらしいが、準決勝まで勝ち残ってくるくらいだ、実力の過小評価にはまだ早い、実際のところを見てみないことにはな。

 

『ただいまより、準決勝第二試合、私立二宮高校チーム・ブラウシュヴェルト対、公立梁山高専チーム・プロトの試合を開始します。両チームは、スタンバイしてください』

 

 程なくして、両チームのバトルが開始される。

 

 ランダムフィールドセレクトは『南米フォルタレザ』

 

 ……どこだっけ?

 確か……C.E.73のブレイク・ザ・ワールド事件の直後に、なんかジン……の、インサージェントタイプがいたような。

 

 

 

 バトルスタート、出撃完了したところでまずは両チームの戦力評価からだ。

 

 チーム・プロトは……ブレイズザクファントムに、アロウズ仕様のジンクスⅢが二機、グレイズが二機か。いずれも量産型で、ザクファントムが指揮官機ってところか。

 

 もう一方のチーム・ブラウシュヴェルトは……エゥーゴカラーのガンダムMK-II、ウイングガンダムゼロ、ガンダムヴィダール、エールストライクガンダムと、あと……あれはイフリート・ナハトか?

 どうやら改造機らしい改造機は紺色のイフリート・ナハトだけで、機体名も『イフリート・ラピート』というらしい。

 シュツルムファウストを二丁装備しているのは、火力の増強か。

 

 さて、肝心の戦闘の方はというと。

 

 プロトの方は小綺麗なフォーメーションを組んでいるのに対して、ブラウシュヴェルトはてんでバラバラだな。

 あ、ネオバードモードに変形して突出したせいでウイングゼロが向こうの一斉射撃で墜ちた。

 

 ウイングガンダムゼロ、撃墜。

 

 エールストライクとガンダムMK-IIが並んで射撃して、そこにヴィダールがバーストサーベルを手に接近戦を試みているけど、向こうのザクファントムの指示か、プロトの方は二手に分かれると素早くランス装備のジンクスIIIとグレイズがヴィダールを取り押さえて、ランスとバトルアックスの攻撃で撃破する。

 

 ガンダムヴィダール、撃墜。

 

 残るエールストライクとガンダムMK-IIは、数的不利になって動揺しているようだが、もう一機……イフリート・ラピートの動きだけが他と違う。

 あのイフリート・ラピートのファイター、相当な手練ているようだな。

 

 夜陰に紛れるように市街地の隙間を素早く駆け抜けて、捕捉の遅れたグレイズの死角に回り込んで、忍刀――ナハトブレードを一閃。

 

 グレイズ、撃墜。

 

 確かあの機体の基……イフリート・ナハトは、ステルス性の高い機体だったはずだ。

 恐らくは目視で姿を確認出来るような距離でなければ、レーダーに反応は無いだろう。

 

 イフリート・ラピートの夜襲によって動揺しているのか、せっかくのフォーメーションが崩れている。

 続いてイフリート・ラピートが投げ放ったコールドクナイが、ジンクスIIIの頭部に突き刺さり、メインカメラを失って狼狽えているところを瞬時に接近、すれ違いざまにナハトブレードを一閃、真っ二つに斬り捨てる。

 

 ジンクスIII、撃墜。

 

 これで、数的不利は奪回。

 エールストライクとガンダムMK-IIも戦意を取り戻したか、拙いながらも健気な援護射撃を行い、もう一機のジンクスIIIを牽制する。

 

 数を減らされて、残るザクファントム、ジンクスIII、グレイズの三機は一度合流して体勢を立て直そうとするが、そこへ好機とばかりイフリート・ラピートがビルの隙間から飛び出し、手にした実弾のライフル――百錬のライフルカノンの改造品か――を連射しながら襲い掛かる。

 ザクファントムは背部のブレイズウィザードのハッチを開き、ミサイルポッド『ファイヤビー』を一斉発射、イフリート・ラピートを阻むように弾幕を展開する。

 これに対して、イフリート・ラピートはその場から跳躍し――なんとビルの壁面にピタリと張り付いて静止してみせた。

 

 まるでどこぞのハリウッド映画の蜘蛛男だな……

 

 静止して一拍を置くと、イフリート・ラピートはすぐにまたそこから離脱、追尾してきたファイヤビーはビルに炸裂するのみ。

 

 遅れてガンダムMK-IIとエールストライクも到着し、ビームライフルによる援護射撃が加わり、追い詰めていたはずが逆に追い詰められていくチーム・プロト。

 

 指揮官が慌てたらチームはそこで終わりだ、モノアイをギョロギョロと右往左往させているザクファントムに、イフリート・ラピートは電影のごとく迫る。

 

 苦し紛れにビームトマホークを抜いて接近戦に対応しようとするが、イフリート・ラピートはフッと姿勢を低くして懐へ飛び込むと、右腕を振り上げて、ビームトマホークを握るザクファントムの左腕をカチ上げてみせる。

 当然、ザクファントムは脇がガラ空きだ、そこへイフリート・ラピートは左腕の三連ガトリング砲を押し付けて接射……程なくしてザクファントムはモノアイの光を消して力尽きる。

 

 ブレイズザクファントム、撃墜。

 

 指揮官機を失えば、残るは烏合の衆も同然だ。特に、作戦通りにしか動けないようなチームではな。

 

 ジンクスIIIはガンダムMK-IIとエールストライクの連携射撃に撃破され、残ったグレイズもイフリート・ラピートのナハトブレードの錆に変えられた。

 

 ジンクスIII、グレイズ、撃墜。

 

『Battle endnd!』

 

 

 

 これで、チーム・ビルドシンフォニーの決勝戦の相手は、チーム・ブラウシュヴェルトに決まった。

 

「すげーな、あの紺色のイフリート。ほっとんど一人で倒してたじゃん」

 

 イツキは、この勝利の立役者たるイフリート・ラピートの強さを認めている。

 

「開幕に二機も墜された状態から、ほぼワンマンで逆転したんだ。油断するつもりはないが、油断していると当たり負けるな」

 

 ステルス性を活かした奇襲戦法に、瞬時に敵機を破壊する攻撃の手管、射撃もそこそこに上手いとなると、奴との疑似タイマンになったらかなり厳しい戦いになるかもしれないな。

 

「あのイフリート?とか言う紺色のガンプラ、刀とクナイが主な武器?グレモリーのナノラミネートコートで受け切れるかしら……」

 

 ミカゲさんは、イフリート・ラピートの武器や戦法から、グレモリーの防御力で受け切れるかを推し量っている。

 

「一撃で破壊されはしないだろうが、無防備に受けていいわけでもないだろうな」

 

 今回のバトルでは使っていなかったが、シュツルムファウストもあるのだ、まともに喰らえばグレモリーとて無傷ではいられまい。

 

「っても、あのイフリート以外はそこまで芸達者なファイターでもねぇみたいだがな。あいつの実力だけが頭一つ抜けてんのか、周りが素人ばかりなのかは分からねぇけと」

 

 恐らくは両方だろうな、とケイスケ先輩はそう評する。

 

「周りの僚機を出来るだけ早く倒して、数的有利の状態を維持しつつ、ですね」

 

 マユちゃんもあのイフリート・ラピートの強さを肌身に感じているようで、作戦の算段を考えている。

 

 ブラウシュヴェルトの面々を見やれば、イフリート・ラピートのファイターらしい、やや長めの黒髪を束ねた小柄な少年が、周りのメンバー達に褒め称えられている。

 

「すげぇよ『シオン』!次はもう決勝だ、俺達ももっと頑張らねぇと!」

 

「なあに、先輩達が踏ん張ってくれるから、俺も頑張れるんですよ。次の決勝、みんなで必ず勝ちましょうや」

 

 弱小校が途端にダークホース化する……となれば、あの、シオンと言うらしい彼がこのチームをダークホースにしたのかもしれないな。

 

 いいなぁ、あぁいう気持ちいいやり取り。

 

 ……とは、真反対なのが、向かい側にいるチーム・プロトの面々だな。

 

「何をやっていた!?二宮なんて無名の学校に負けるなど、私に恥をかかせるつもりか!」

 

 顧問か、監督らしいおじさんが負けたメンバーさん達を怒鳴り散らしている。

 クドクド、クドクドと、ご愁傷さまだなー。

 

「あれだけ有利な状態からあっさりやられてからに!それも、あんなふざけた髪型をした奴一人に翻弄されて……!」

 

 

 

「――テメェ今この髪型のことなんつったァ!?」

 

 

 

 鋭い怒声が会場を切り裂くと、彼――シオンがチーム・プロトの監督に駆け寄り、思い切り胸倉を掴み上げて額に額を打ち付けた。

 

「な、何だね君っ、いきなり……」

 

「ザケんなよテメェ!顧問監督はよその学生の髪をバカにしていいってのか!あ"ァ"!?」

 

 ありゃりゃ、思わぬ逆鱗に触れたみたいだな。

 梁山高専の面々もオロオロしてるし、二宮高校の先輩方も慌てて止めに行っているが……

 

 しゃーない、ちょっとお節介しにいこうかね。

 

 今にも殴りかからんとしている彼と、狼狽えている監督との間に、スマートに割って入る。

 

「はい、そこまでだ。ちょっと落ち着こうか」

 

「あ!?……ちっ」

 

 矛先がこっちに向くかと思ったけど、とりあえず矛を納めてくれた、ホッ。

 梁山高専の監督に向き直って、

 

「こちらの彼の怒りは尤もでしょう。容姿に関する悪口を言われて我慢ならない人もいます。まずは先程の失言を謝罪すべきです。そうですね?」

 

「容姿がどうのこうのと言われたぐらいで怒るなど、理解出来んな。二宮高校の校風に問題があるとしか思……」

 

 はい、ダメー。

 

「問題があるのは平然と人の悪口を言うような指導者が跋扈するような高等教育機関でしょう名誉毀損として裁判沙汰にしましょうか?こんなしょーもない裁判では弁護士も匙を投げますよ?それでどうします?素直にごめんなさいの一言で穏便に済ませますか?それとも敗訴して払わなくて済むはずの慰謝料でも払いますか?俺は第三者ですから裁判には関わりませんしどちらでも構いませんよ?賢明かつ大人の対応を取ることをお勧め致しますよ」

 

「ぐっ、ぐぐぐっ……!」

 

 レスバの基本は相手に反撃の隙を与えさせずに正論で丸め込む、だ。

 渋々、本当に渋々と監督さんはシオンに頭を下げて全く持って不本意だろう謝罪の言葉を吐き捨ててから、逃げるように会場を後にしていった。

 ざぁーこざぁーこ♪レスバクソザコおじさん♪

 

「あー……何と言うか、言いたいこと全部言ってくれたから、なあんか安心したわ。ありがとうな?」

 

 クソザコおじさんの背中にメスガキムーブかましていると、当の本人たるシオンが申し訳無さそうな顔をしていた。

 

「余計なことして悪かったな。でも、暴力沙汰起こして失格なんて嫌だろう?」

 

 こっちも余計な茶々を入れたからな、形だけでも謝罪はしておこう。

 

「そう言えばあんた、創響学園の……チーム・ビルドシンフォニーだろう?この後の決勝戦の。戦う前だって言うのに、カッコ悪いとこ見せちまった」

 

 苦笑してみせるシオン。

 

「……けど、人の髪のことバカにする奴はどうしても許せなくてさあ」

 

「それな。分かるよ、『単に自分が気に入らなかっただけでその人のことを悪く言うような奴』は許せないって」

 

 ほんとにね。

 

「だよなあ……っと、申し遅れた。俺は『タチバナ・シオン』。二宮高校の、チーム・ブラウシュヴェルトのメンバーだ」

 

 名乗ってくれたので、こっちも挨拶を返す。

 

「創響学園チーム・ビルドシンフォニー、オウサカ・リョウマだ。これ以上は、ガンプラバトルで話すとしようか」

 

「あぁ、あんたと戦うのが楽しみだよ」

 

 互いに視線をぶつけ合い――敵意のそれではない昂り。

 

 ――これは、"熱く"なりそうだ。

 




今回登場のガンプラ『ジムカラミティ』の画像や詳細設定はこちらです↓(ガンスタグラムへのジャンプです)

https://gumpla.jp/hg/1702708

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