ガンダムブレイカー・シンフォニーRe:BREAK 作:さくらおにぎり
『ただいまより、決勝戦を開始します。創響学園チーム・ビルドシンフォニー、二宮高校チーム・ブラウシュヴェルト、両チームはスタンバイしてください』
決勝戦開始のアナウンスが流れ、会場はにわかに騒がしくなる。
向こうのエースファイター――タチバナ・シオンの一件でちょっと一悶着あったけど、とりあえず丸く収まったので良しとしよう。
お節介を焼いたところで、チームのみんなの所へ戻る。
「オウサカくん、なんか喧嘩の仲裁してたみたいだったけど……大丈夫?」
戻って来て最初に、マユちゃんが心配してくれた。優しい娘だなぁ。
「大丈夫だ。向こうの監督さんも"大人の対応"を取ってくれたから、ペナルティとかは無いはずだ」
訳:レスバクソザコおじさん、ざまぁ過ぎてクッソワロタwww
「ってかリョウマお前、あんなキレ散らかしてる奴によく止めにいったな?普通は手を出したくねぇもんだぞ?」
ケイスケ先輩にも心配させちまったか。
「そこはまぁほら、荒事には慣れてるので」
過去の異世界転生じゃ、軍人崩れの破落戸の相手だってしたことあるから、ただのチンピラの暴力なんて子どものわがままみたいなもんだよ。
「大人相手にも食って掛かれるくらい強気な相手ね……簡単には倒せないでしょうけど」
「まぁまぁ、何も起こらなかったんだし、いいじゃん!」
シオンのことを警戒しているミカゲさんだが、もう終わったことなんだし、とイツキは話を切り替えようとしてくれる。
そうそう、これから決勝戦だからな。気を引き締めていくとしよう。
ランダムフィールドセレクトは、『アザディスタン王国 太陽光送電設備』
ここは確か、西暦は西暦でも、西暦2312年……ソレスタルビーイングが存在していた頃の時代で、アザディスタン王国内の内紛に対する武力介入だったかな。
それにしても夜か。
あのシオンのイフリート・ラピートにとっては、絶好のフィールドだろうな。
そう言えば、"ラピート"って確かドイツ語で『速い』って意味だったよな……なんか南海電鉄の新幹線がそんな感じの名前だった気がするけど、うーん、鉄道知識には疎いんだよなぁ。
――なんか急にたこ焼きが食べたくなってきたな……?
まぁいいか、あとでみんなで一緒にたこ焼き買って食べるか。
出撃準備。
「オウサカ・リョウマ、オリジネイトガンダム、行きます!」
「アサナギ・マユ、ガンダムファラリアル、
「タツナミ・イツキ、ドラゴニックガンダム、行くっぞー!」
「ミカゲ・トウカ、ガンダムグレモリー、出るわ」
「サイキ・ケイスケ、ジムカラミティ!チーム・ビルドシンフォニー、出るぞ!!」
一方の、チーム・ブラウシュヴェルトのシオンからも。
『タチバナ・シオン、イフリート・ラピート、任務遂行!』
ゲートより出撃完了して、着陸。
すぐにケイスケ先輩から通信が届く。
「よーし、全員聞こえるな?ブラウシュヴェルトの奴らだが、あのイフリート以外はそこまで強いわけじゃねぇから、向こうはイフリートの奇襲に頼る必要があるはずだ」
ケイスケ先輩がそう言うように、あのチームの勝ち点はシオンのスタンドプレーによる奇襲戦法が肝だ。
彼を抑え込めれば良いんだが、それはそう簡単させてくれる相手ではないし、さっきの様子を見る限りなら、彼の先輩達も、シオンがピンチなら一も二も無く救援に駆け付けるだろう。
個々の実力にバラつきはあるにせよ、チームとしては強い結束力がある。
「だから、ここは逆に『奇襲を誘い込む』。リョウマは前線に出ずに、俺と並んで射撃戦を展開してくれ。で、イフリートが俺を狙って奇襲してきたら、頼むぞ」
「了解、後衛に回ってくれってことですね」
司令塔たるケイスケ先輩のガードを逆に薄くすることで、シオンの奇襲をコントロールするってことね。
「アサナギ、タツナミ、ミカゲは残りの四機を相手してくれ。途中から数的不利になるが、お前らなら大丈夫だ」
こっちがシオンのイフリート・ラピートを抑えている内に、残りの女子三人は前線で敵の数を減らしていく、と。
「了解です」
「オッケーでーっす!」
「分かりました」
マユちゃん、イツキ、ミカゲさんの応答を確認したところで、作戦開始……と、同時に前方から高熱源が迫ってくる。
ウイングゼロのツインバスターライフルか?
素早く散開し、一方は俺とケイスケ先輩、もう一方は女子三人にそれぞれ別れて、行動開始。
やはり先程の準決勝と同じように、イフリート・ラピート以外の四機は、散発的な動きで近づいて来ると、各々のライフルで射撃を仕掛けてくる。
よし、前線は三人に任せて、こっちはケイスケ先輩と並んで砲撃だ。
ビームライフルとハイパーバズーカを両手に、景気よくドンドンいくぜ。
ケイスケの作戦通り、いつもは前線にいるリョウマのオリジネイトは、今回は後方援護(のフリをした、敵エース機の抑え役)だ。
イツキとトウカの二人が接近戦を仕掛け、マユは二人の援護に回る。
今はケイスケからの砲撃も助けてくれるが、それも長く続かない、そこから先は自力で倒していくしかない。
少し心細さを感じていたマユだが、イツキとトウカが奮戦するのを見て、自分も腕を奮わねばと意識を切り換える。
空中に陣取るガンダムファラリアルは、同じく空中のウイングガンダムゼロに向けてエスカッシャンを射出、多数のガンビットとなってウイングガンダムゼロを取り囲もうとするが、ウイングガンダムゼロはすぐにネオバードモードへ変形し、ガンビットの包囲から抜け出すと、旋回しつつバスターライフルを撃ち返してくる。
しかしあまり正確な射撃ではないようで、マユは慌てずに回避し、ガンビットをプラットフォームに呼び戻しつつ、すばやくビームアルケビュースを構え、狙い撃つ。
「当てて、みせる!」
直撃こそ出来なかったものの、ウイングガンダムゼロの左翼スラスターを破壊することに成功し、バランスの崩れたウイングガンダムゼロは慌ててMS形態に変形して不時着する。
『くそっ、やられた!』
そこへ追い撃ちを掛けようとビームアルケビュースを狙い直すが、そこへエールストライクガンダムが割り込み、シールドでビームを防ぐものの、一撃でそれを貫通し、エールストライクガンダムの左腕もろとも撃ち抜く。
『まだだ!まだ粘るんだよ!』
左腕を失いながらも、エールストライクガンダムはビームライフルを撃ち返す。
ブラストブースターを逆噴射させて距離を取りつつ、イツキとトウカの状況を見やる。
イツキのドラゴニックガンダムはガンダムMK-IIを追い込み、トウカのガンダムグレモリーも、ガンダムヴィダールに喰らいついている。
敵エースのイフリート・ラピートが見当たらないのは、ケイスケのジムカラミティに奇襲を仕掛けるためだろう。
ならば自分はこのエールストライクガンダムの相手をするべき、とマユはガンビットを自機の周囲に展開して、手数で対抗する。
一方でトウカは、ガンダムヴィダールを相手に善戦している。
「同じガンダムフレーム……注意すべきなのは、あの細い剣くらいね」
ナノラミネートコートに有効打を与えられるのは、細い剣――バーストサーベルくらいのものだろう。
ガンダムヴィダールの方もそれを分かっているようで、バーストサーベルによる刺突を積極的に狙ってくるが、トウカは大振りなバトルアンカーを巧妙に振るい、次々にバーストサーベルを弾き返し、隙あらば反撃してガンダムヴィダールの装甲を削り取っていく。
このまま追い込めば、仕留められる。
トウカのその見立ては間違っていなかった。
が、眼前の敵機に集中し過ぎてしまったのが仇となり――命取りになった。
途端、死角からのアラートにトウカのコンソールががなり立てる。
「後ろっ!?」
自分の後ろにいるのはオリジネイトガンダムとジムカラミティだけのはず……
思わず振り返ろうとするが、それは叶わない。
何故なら、ガンダムグレモリーの両膝のフレームが斬り裂かれており、脚の支えを失った上半身は地面を転がってしまう。
「あの紺色のっ、……まずいっ」
このままではイツキも危険だ、そう判断したトウカだが、ガンダムグレモリーは脚部を失ってしまって起き上がれない。
そこへガンダムヴィダールが迫り、バーストサーベルを突き立てようと振り上げていた。
「……ッ!」
『こいつを、喰らえ!』
バイタルパートにバーストサーベルを突き込まれ、カキンッとバーストサーベルの刀身と柄が切り離されると――刀身が炸裂した。
バーストサーベルの異質な特徴――それは、刀身の内部は炸薬で出来ていることだ。
装甲に穴を空けられ、その内部を直接爆破されたのでは、如何にナノラミネートコートの防御力があろうと無関係だった。
ガンダムグレモリー、撃墜。
「……んっ!?ミカゲがやられた!?」
爆発の方向と、ミカゲさんの撃墜通知を見て、ケイスケ先輩は声を上擦らせた。
「ミカゲさんが奴らに遅れを取った?」
一瞬信じられなかったが――そういうことか――即座に思い当たる節があった。
「ケイスケ先輩!敵エース機の狙いはこっちじゃない!『裏をかかれた』!」
「裏をかかれた?……やべぇっ、すぐに戦線を上げるぞ!」
つまりどういうことかと言えば。
敵エース機……タチバナ・シオンのイフリート・ラピートは、夜陰に紛れて真っ先にケイスケ先輩を狙ってくる、とこちらは考えていたのだが、『その考えを読まれた』のだ。
遊撃手たる俺が後方に回っていたせいで、シオンは女子三人の死角に回り込むことに成功し、恐らくはミカゲさんのグレモリーを撃破したか、あるいは味方と連携したか。
そうしてミカゲさんを倒したとなれば、あいつの次の狙いは……
「気を付けろイツキっ、イフリートが狙ってくるぞ!」
イツキに注意喚起を飛ばしつつ、俺は操縦桿を押し出して、オリジネイトを一気に加速させる。
ドラゴニックガンダムはガンダムMK-IIに接近戦を仕掛け、ツインビームトライデントによる連撃で追い込みつつドラゴンハングを放ち、ガンダムMK-IIのボディを噛み砕いてみせた。
『こんな、ところで……!』
ガンダムMK-II、撃墜。
「よっしゃ、一機げ……」
「気を付けろイツキっ、イフリートが狙ってくるぞ!」
敵機撃破を告げようとしたイツキだが、それはリョウマからの怒鳴るような声に遮られた。
「え?イフリート……」
無意識にドラゴニックガンダムを振り向かせ――イフリート・ラピートのモノアイが残光を引きながら迫り来ていた。
「うっ、うわぁっ!?」
首を刎ねる忍刀――ラピートブレードの一閃に、イツキは咄嗟にツインビームトライデントの柄で受け止めてみせる。
『チッ、気付かれたか……けどなあっ!』
イフリート・ラピートはそこで力比べにせず、即座に弾かれるように左脚を一歩引き、その引いた脚を軸足にぐるりと機体を回転させ――鋭い右の回し蹴りを放ち、ツインビームトライデントを蹴り飛ばした。
「このっ……なめんな!」
ツインビームトライデントを失いながらも、ドラゴニックガンダムはバルカン砲とマシンキャノンを斉射するが、イフリート・ラピートはその場からバック宙するように飛び下がりつつ、左マニピュレーターにライフルカノンを持たせて連射する。
銃弾に対し、ドラゴニックガンダムは左腕のシールドで防ぐが、別方向からも銃弾が飛んでくる。
ガンダムグレモリーを撃破したガンダムヴィダールが、左マニピュレーターに握ったハンドガンを撃ちながら近づいて来ているのだ。
「邪魔……すんなしっ!」
反撃にドラゴンハングを放ち、ガンダムヴィダールのバーストサーベルごと右腕を噛み砕く。
『……まだだぁぁぁぁぁ!』
弾を撃ち尽くしたハンドガンを捨てて、ガンダムヴィダールはフルスロットルで突進、左肩からドラゴニックガンダムへショルダータックルを喰らわせ、そのまま縺れ合う。
「うわわっ……!」
押し転がされるドラゴニックガンダムに、ガンダムヴィダールは左マニピュレーターを伸ばし、ドラゴニックガンダムの頭部を掴み、引きちぎろうとする。
『せ、せめて、頭だけでも……!』
しかし、それは横合いから放たれたロケット弾の炸裂によって妨げられ、ガンダムヴィダールは吹き飛ばされた。
吹き飛ばされ、即座に押し倒され、ビームサーベルをバイタルパートに押し付けられ、ナノラミネートアーマーを焼き斬られた。
『クソ!クソォォォォォ!!』
ガンダムヴィダール、撃墜。
フーッ、間一髪間一髪。
ヴィダールがイツキのドラゴニックに悪あがきしようとしていたので、ハイパーバズーカで吹っ飛ばして、吹っ飛んだところをビームサーベルを押し当ててナノラミネートアーマーごとフレームを焼き斬ってやった。
残ってるのは、マユちゃんと、その彼女を援護するために急行するケイスケ先輩が戦っているストライクとウイングゼロと、イフリート・ラピート。
「助かったぁ。あんがとな、リョー」
「どういたしまして……俺はウイングゼロを追う。イツキはストライクの方に向かってくれ」
イフリート・ラピートは夜陰に紛れて見えなくなってしまった、乱戦の中に奇襲してくるのを迎え撃つしか無いか。
「オッケー!」
俺は一足先にオリジネイトを飛ばし、ウイングゼロの撃破に向かう。
イツキのドラゴニックも、蹴り飛ばされたツインビームトライデントを拾いに行くのを見送り……
「あっ!?リョー!イフリートがこっ……」
途端、イツキの撃墜通知がコンソールが流れた。
ドラゴニックガンダム、撃墜。
「なっ……あいつ、俺がイツキから離れた瞬間を狙っていたのか!?」
しまった、これはしてやられた。
俺という脅威が離れるのを待ってから、イツキが一人になるところに再奇襲を掛けたのか。
狡猾だな、だがそれを実行に移せる力と度胸は認めざるを得ない。
……急ぐか。マユちゃんとケイスケ先輩と一緒に固まって動けば、あいつもどこかで仕掛けてくるはずだ。
ファラリアルが空からビットステイヴで弾幕を、ジムカラミティが地上から砲撃を行っているそこへ急ぐ。
向こうのストライクとウイングゼロも満身創痍だが、まだ倒し切れていない。
「おっ、来たかリョウマ!あいつら結構根性あって、手こずってたところだ」
「すいません先輩、イフリートを見失いました。多分、すぐにまた奇襲が来ます」
「おぅ、分かった!」
ジムカラミティのハイパーバズーカがストライクに直撃、吹き飛ばすがしかしPS装甲によって撃破には至らなかったが、今のでPSダウンを起こし、トリコロールカラーの装甲がスチールグレイに染まっていく。
悪いがそこは狙わせてもらう、倒れたストライクにビームライフルで狙い撃t……
「……ってそこか!」
ほぼ勘だ。
寸前でターゲットロックを切り替えて、背部へ向けてビームライフルを放てば、ジムカラミティの死角からイフリート・ラピートが斬りかかろうとしていた。
残念ながらそれも躱されてしまったが。
『おっと、鋭いなあ!』
「そう何度も好きにさせるか」
もう逃さんぞ、レーダーの範囲外に逃げられる前に追撃だ。
「先輩はアサナギさんを!こいつは俺が追います!」
「うっし、任せるぞ!」
ジムカラミティはその場からホバー機動で移動し、マユちゃんのファラリアルの元へ急ぐ。これで向こうの二機は倒してくれるはず。
後背の憂いは無くなった、俺はシオンの相手に集中しよう。
すると、イフリート・ラピートはそこで逃げようとせずに踏み止まると、ライフルカノンを捨てて、ラピートブレードも鞘に納めた。何のつもりだ?
『あんたには生半じゃあ勝てない。俺も本気で行かせてもらう』
すると、温存していたシュツルムファウストを、ん?
イフリート・ラピートが取り出した二丁のシュツルムファウストだが、何故か柄尻がチェーンに繋がれ、その間にもう一本棒が繋がっている。
そう、それは……シュツルムファウストで作られた……
「……"三節棍"だと?」
確か、琉球武術だったか?
ヌンチャクの派生だとかなんとか……三節棍をガンプラバトルで使ってくるなんて、こいつくらいのものだろう。
『さあ、俺の本気を受けてもらおうじゃあないか!』
ドンッ、と踏み込んでくると勢いよく三節棍が振り抜かれる。
咄嗟にシールドで受けるが、恐らくは先端部分にウェイトが集中しているのか、遠心力と合わさったそれは思いの外重く、この一撃でシールドの表面がへしゃげる。
接近戦じゃ分が悪いか?
しかし距離を離せばこいつはすぐにケイスケ先輩かマユちゃんを狙うだろうし、『俺がそう考えることも恐らく読み切っている』に違いない。
こいつ……めちゃくちゃ強かでクレバーな奴だ。
だがこの接近戦、敢えて乗ってやろう。
飛び下がり、へしゃげたシールドを切り離し、ビームライフルも捨てると、ビームサーベルを右のマニピュレーターに抜き放ち、瞬時に加速。
ビームサーベルを振り抜くが、イフリート・ラピートは三節棍をクロスさせてビームサーベルを防ぎ、弾き返される。
表面には耐ビームコーティングか!
『そらっ!』
イフリート・ラピートは反撃に三節棍を突き出してくるが、そうはいくか。
何のために左手を空けてると思ってるんだ?
すかさずその左マニピュレーターで、突き出された三節棍の柄を掴み上げ、間髪無く引き込み、引き寄せた勢いで膝蹴りをイフリート・ラピートの腹部に叩き込む。
蹈鞴を踏みながらも体勢を維持しようとするイフリート・ラピートに、即座にビームサーベルで追い撃ちを掛けるが、横っ飛びされて躱されてしまう。
『ははっ、やるねえ!』
横っ飛びしながら側転し、着地すると素早く左腕の三連ガトリング砲を連射してくるイフリート・ラピート。
ガトリングシールドよりも小口径のくせにたった数発で量産型ガンタンクを破壊するような威力だ、まともに喰ら――ったところでオリジネイトに効くわきゃねぇだろうが!
左腕装甲を盾に頭部を守りつつ、正面から突撃。
「逃がすか」
ビームサーベルの間合いに踏み込むなり、突き。
斬る、薙ぐような動作では三節棍に弾かれる。
しかし突き出したビームサーベルに、イフリート・ラピートは右脇に潜らせるようにやり過ごし、
『こっちの台詞!』
即座にカウンターとして三節棍を振るい――オリジネイトのボディに打ち込まれた。
「チッ……!」
激しく震動し、損傷度をがなり立てるモニターとコンソール。
コクピット周りに直撃したか……!
――追撃が来る。
返す刀で逆の三節棍を振るうイフリート・ラピートに、俺は即座に左の操縦桿を跳ね上げ、オリジネイトはそれに応じて左マニピュレーターで拳を握り――
「っらァ!」
パンチ!!
突き出された拳は三節棍と衝突し――単純な膂力はオリジネイトの方が上だ、三節棍もろともイフリート・ラピートを弾き返す。
『おぉっと!?』
思わぬ力任せな反撃だったのだろう、吹っ飛んだイフリート・ラピートは背中から転倒し、すぐに起き上がろうとするが、そうはさせん、瞬時に接近してビームサーベルを振り降ろす。
するとイフリート・ラピートは三節棍で防ぐが、これは想定済みだ。
「こっちにもある!」
接近する前に予めランドセルから抜いていた左のビームサーベルにアイドリングリミットを掛けておき、後ろ手に隠していたものを振るう。
『ちっ!』
だがシオンの反応も早い、これも三節棍で防がれた。
「やるっ!」
しかしこれも想定の内だ、間髪無くこの距離で頭部バルカン砲を速射、イフリート・ラピートの装甲を穿っていく。
『なめんな!』
このまま押し切れるとは思っていなかったが、イフリート・ラピートのハイキックにボディを蹴り飛ばされる。
「クッ……」
蹴り飛ばされて、瞬時に姿勢制御――っと、三連ガトリングが飛んできたのでこれは躱す。
『そこォ!』
躱した先に回り込むように、イフリート・ラピートが放ったコールドクナイが飛んで来た、ビームサーベルで斬り弾いて――これは次への布石!
『お命頂戴、ってなあ!』
接近してきたイフリート・ラピートは三節棍を素早く振り回しながら迫りくる。
右が左か、どっちが先に来る?
いやそうじゃない、どっちが先に来るかを『待つんじゃない』。
先に仕掛ける!
その場で、左のビームサーベルを投げ付ければ、これは左の三節棍で弾き返され――
「行けェ!」
操縦桿を押し上げて一気に加速。
『だと思った!』
間髪なく勢いのついた三節棍を横薙ぎに振るうイフリート・ラピート。
このままではビームサーベルの切っ先が届くより先に横殴りの一撃を喰らう――視えた!!
「翔べっ、ガンダム!!」
――誰にも追い付けないスピードで、地面蹴り上げ空を舞う――
と、同時にオリジネイトをジャンプさせ、三節棍の一撃をギリギリのところで躱す。
『は!?なんっつう、瞬発力!?』
バーニアに頼らない、両脚各部のサスペンションを駆使した、"跳躍"だ。
そのまま空中でグルンと回転して、
「喰らっとけ!」
必殺、空中踵落とし!!
三節棍を振り抜いて隙が出来ていた、イフリート・ラピートの頭部を蹴り潰す。
『ぐわあぁっ!?』
この直撃は効いたらしい、頭部がへしゃげ、イフリート・ラピートがうつ伏せに倒れる。
「これで!」
すぐにビームサーベルを振り降ろしてイフリート・ラピートの背中に突き立てようとするが、ほぼ咄嗟の回避か、うつ伏せたままスラスターで強引にその場から逃げられた。
『メインカメラが死んだかあ……けど、まだ!』
立ち上がって三節棍を構え直すイフリート・ラピート。
へしゃげ潰れた頭部からスパークが漏れているが、その威容はむしろ強まっている。
「上等……ッ!」
メインカメラが死んだくらいで狼狽えられては困る。
本物のMS戦闘は、メインカメラが死んでからが本番みたいなもんだからな。
再三再四に渡り、三節棍を振るうイフリート・ラピートを迎え撃つ。
マユのガンダムファラリアルのビットステイヴと、ビームアルケビュースによる狙撃を受けたウイングガンダムゼロは満身創痍、もはや戦える状態では無い。
けれど、ウイングガンダムゼロのファイターはまだ諦めてはいなかった。
もうこの機体ではガンダムファラリアルは倒せまい、しかし残弾僅かのマシンキャノンと、片方しか残っていないバスターライフルを撃ちまくる。
『最後に、一矢でも報いる!』
銃弾とビームを回避するガンダムファラリアル。
すぐにバスターライフルを捨てたウイングガンダムゼロは、左肩からビームサーベルを抜き放ち、上空にいるガンダムファラリアルへ飛び上がる。
メインスラスターの片方を失ったその飛行は不安定でフラついているが、その不安定さはむしろマユの予測射撃を惑わせる。
ついに間合いに踏み込まれ、ウイングガンダムゼロのビームサーベルが、ビームアルケビュースを斬り裂く。
『これが俺の意地だぁぁぁぁぁ!』
続けざま、ビームサーベルをガンダムファラリアルへ振り翳す。
「ッ!」
ガンダムファラリアルはエスカッシャンを振り上げると――シールドの形を保ったまま、ビットステイヴの砲口からビームサーベルを発振させた。
ガンビットを集約させた出力でビームサーベルの形状を伸ばし、ウイングガンダムゼロがビームサーベルを振り下ろすよりも先に、貫かせたのだ。
『ここまでか……すまん』
ウイングガンダムゼロ、撃墜。
もう一方、既にPSダウンし、エールストライカーも失ったストライクガンダムも、残された最後の武器である対装甲ナイフ――アーマーシュナイダーを手に、ケイスケのジムカラミティの砲撃を掻い潜っていた。
「いい加減しぶてぇなー……」
『まだだ、まだ終わらんよ!』
クワトロ・バジーナの名言を口走るストライクガンダム。
ジムカラミティも、弾数の少ないハイパーバズーカや、エネルギーを消耗しやすいメガ粒子砲などは使わず、バルカン砲やシールドビームガンで追い込んでいるのだが、これがなかなかどうして当たらない。
「しゃーねぇ、接近戦してやるか!」
ハイパーバズーカを捨てると、左腕装甲からビームサーベルを抜き放ち、ストライクガンダムへ迫るジムカラミティ。
『そっちから来るなら!』
アーマーシュナイダーの間合いで戦える、とストライクガンダムは突進、一気に距離を詰める。
最初に仕掛けるのはジムカラミティの方だ、ビームサーベルを横薙ぎに振るうが、ストライクガンダムは不意にその場で急に姿勢を低くし、フットボールのタックルで相手選手を転倒させるように、ジムカラミティの腹下へ飛び込む。
『うおぉぉぉぉぉ!』
「おっとっ、ゼフィランサスタックルか!」
組み付かれ、仰向けに倒されてしまうジムカラミティ。
『これ、で!』
振り翳したアーマーシュナイダーを、ジムカラミティのバイタルパートへ突き立てようとするが、
「悪ぃな、それ読んでんだわ」
ケイスケはウェポンセレクターでメガ粒子砲を選択、既にチャージが完了されているそれを撃ち放った。
アーマーシュナイダーを突き立てようとしていたストライクは、高出力のメガ粒子を直撃、上半身を吹き飛ばされてしまった。
『シオン……あとは、頼む』
ストライクガンダム、撃墜。
メガ粒子の剣と、耐ビームコーティングの三節棍が、激しく打ち合う。
頭部を破壊されて視界もまともでないだろうに、イフリート・ラピート……シオンは喰らいついてくる。
それを同じくして、ケイスケ先輩とマユちゃんがそれぞれストライクとウイングゼロを仕留めたらしい。
残るはエースのこいつだけだ。
『先輩達はみんなやられちまったかあ……でも、あんたさえ倒せれば勝てる!』
瞬間、イフリート・ラピートは真っ直ぐに突撃してくる。
ここで勝負を決めるつもりだな。
「随分俺を過大評価してくれているな、過分な期待に応えるのも大変だ!」
ならばこちらも正面から迎え撃つまでだ。
衝突するビームサーベルと三節棍。メガ粒子と耐ビームコーティングがせめぎあい、スパークが乱れ迸る。
「侮っていたつもりはないが……予想以上に、しぶとい!」
弾き返し、返す刀でボディを狙うが、イフリート・ラピートはバク転するように飛び下がり、すぐに軸足を入れ替えて三節棍を振り下ろしてきた。
これは避けられない、脳天を砕く一撃に、オリジネイトの頭部の上半分がへしゃげる。
『生憎としぶとさが取柄なもんでねえ!あんたに勝つまでは、粘らせてもらおうじゃあないか!』
だがメインカメラが死んだわけではない、即座に左操縦桿を捻り、三節棍のチェーンを掴み上げ、引き寄せてヤクザキックでイフリート・ラピートのボディを蹴っ飛ばす。
「スカしたこと言う割には、なかなかどうして泥臭い!」
『ッ……泥臭くて結構!本人の体格差なんて関係ない、製作も、バトルも、実力が全て!』
イフリート・ラピートは三節棍から手を離して飛び下がり、先程鞘に納めたラピートブレードを抜き放つ。
『だからこそ、ガンプラバトルは楽しいんじゃあないか!』
再三再四の、突撃。
奪い取った三節棍を捨てて、ビームサーベルを構え直す。
そろそろオリジネイトも十全な性能を発揮できなくなるな、今度こそ決めてやる。
「……そうだろうさ、ガンプラバトルは何も関係ない。例えそれが、『異世界転生した誰かさん』でもな!」
だとしても、と踏み込みと共にバーニアを炸裂、真正面からイフリート・ラピートへ突っ込む。
「『勝つのはっ、俺だァァァァァぁぁぁぁぁ!!」』
迷わん、ビームサーベルを真っ直ぐに突き出す。
ビームサーベルの切っ先がイフリート・ラピートのバイタルパートを貫き、一拍遅れてラピートブレードの切っ先にボディを突き破られた。
損傷甚大――だが、辛うじて生きていた。多分、現実だったらコクピット抉られてキンケドゥみたいなことになってたかも。
もう一方、ビームサーベルにまともに貫かれたイフリート・ラピートは、モノアイの蛍光ピンクの輝きを弱々しく点滅させ、
『お見事……ッ!』
フッと消えた。
イフリート・ラピート、撃墜。
『Battle ended!Winner.Build symfony!!』
決着と同時に、会場内に爆発的な歓声が響き渡る。
「ふぅ……勝てたかぁ」
いやー、強かった。
これがガンプラバトルだったから良かったけど、もしリアルMS戦だったらこんな綱渡り二度とやりたくねぇわ……
筐体からオリジネイトを回収すると、
「やったなリョー!」
真っ先にイツキが飛びっきりの笑顔で飛び込んで来た。おぉぅ、近い近い。
「ありがとう、オウサカくん!」
マユちゃんもイツキに負けないくらいの素敵な笑顔を見せてくれる。かわいい。
「よくやったなリョウマ、これでウチのガンプラバトル部は存続だ!」
「私はあまり役に立てなかったけど……ナイスファイト、ね」
ケイスケ先輩は部の存続という危機が去って安堵の表情を浮かべ、ミカゲさんも俺の勝利を称えてくれている。
……そうだったな、この勝利を以て俺達は地区大会を優勝、トロフィーを持ち帰って、ガンプラバトル部は存続になるはずだ。
鎬の削り合いに夢中で、当の目的なんかすっかり忘れてた。
「俺だけじゃない。この勝利はみんなで勝ち取ったものだよ」
いぇーいいぇーいと身を寄せてくるイツキを往なしつつ、ってこら、無意識なんだろうけど、お胸様を押し付けるのはやめなさい、ドコとは言わないが反応しちまうだろ。
そして向こう側からも、シオンと、その一歩後ろに彼の先輩達が待ってくれていた。
「負けちまったけど……こんなに清々しく負けたのは初めてだ。ありがとさん」
シオンの方から右手を差し出してきた。握手しようぜってことだな。
「こちらこそだ」
こちらからも握手を返して、互いにグッと握り合う。
確かに背は低いが、その手は確かに"戦士"の手をしていた。
俺とシオンの握手によって、会場はさらに沸き立つ。
あ、そうだそうだ。
「よしシオン、たこ焼き食べるか!」
「へ?たこ焼き?」
「ん?たこ焼きって知らないか?小麦粉を出汁で溶いた生地に……」
「いやいや、それは知ってる。なんでたこ焼き?」
俺が「たこ焼き食おうぜ!お前タコな!」って言ったら「何言ってんだこのタコ」みたいな顔をされた。
「バトル中に、なんか急にたこ焼きが食べたくなったんだよ」
「なんだそりゃあ……」
困惑してるシオンを尻目に、ケイスケ先輩達に向き直る。
「ケイスケ先輩、今日の昼飯はたこ焼きにしましょう」
「たこ焼きか。確か会場にフードコーナーがあったが、たこ焼きってあったか?」
「ありましたよ。だからたこ焼きにしましょう」
「突然のたこ焼き推しだな……みんなもたこ焼きでいいか?」
ケイスケ先輩が女子三人にも意見を訊くと、
「たこ焼き!いいっすね、あたしは賛成だ!」とイツキ。
「わ、わたしはたこ焼きで構わないけど……」とマユちゃん。
「たこ焼きなんて何年ぶりかしら」とミカゲさん。
よし、賛成多数につき、たこ焼きで決定だな。
二宮高校の人らも、俺達とたこ焼き会食することに抵抗は無いようなので、このあとの3位決定戦と表彰式、閉会式が終わったらフードコーナーへ向かうとしよう。
3位決定戦も滞り無く決着、順位が決定されて、続いて表彰式へと移る。
優勝は、創響学園チーム・ビルドシンフォニー。
部長であるケイスケが、金メッキのハロを象られたトロフィーカップを受け取るその様子――厳密には、そのケイスケの後ろで並ぶリョウマの姿を、遠くから見ている者がいた。
――イレギュラー1、確認。
――イレギュラー1は、オウサカ・リョウマの姿に憑依している模様。
――イレギュラー1、コードN.T.への断片的な記憶を所持。
――原作への侵食率……79%。
――可及的速やかな排除を推奨。
――否定。イレギュラー1はサンクチュアリへのアクセス権を持つため、運命決定による排除は不可。
――・・・了承。疑似覚醒システムのアップデートを急務とする。
表彰式を見届けた後、何者かは踵を返して静かに去っていった。
閉会式を終えたら、ぞろぞろとフードコーナーへ向かう。
昼飯時が近いので少し混雑しつつあったけど、閉会式終了、解散の直後真っ先に来たおかげで、どうにか席を確保することが出来た。
人数が人数だけあって、ちょっとしたパーティーだ。
……なるほど、これが『タコパ』ってやつだな。
皆さん揃って飲み物の紙カップを手にしたところで、ケイスケ先輩が音頭を取る。
「えー……それでは、我々創響学園チーム・ビルドシンフォニーと、二宮高校チーム・ブラウシュヴェルト、互いの敢闘を祝して……」
「「「「「かんぱーい!!」」」」」
紙カップ同士をパスパスと擦り鳴らす音と共に、ゴクリと一口。
自然な形と言うべきか、俺とシオンは相席だ。
「まさか、バトルをした相手とこうして一緒に飯を食う日が来るとはなあ」
思いもしなかった、とシオンは苦笑しつつたこ焼きを一口。
「にしても、数あるメニューのなかで、なあんでたこ焼きがチョイスされたんだ?」
なんでと言われてもなぁ……説明が難しい。
「ほら、シオンのイフリートって、名前にラピートって付いてるだろ?濃紺の色もそうだから、南海電鉄の新幹線を思い出してさ」
「まあ確かに、俺のイフリート・ラピートはそれをイメージして塗装はしたけど。それで、そこからどうやってたこ焼きに繋がった?」
それはそうだ、と周りのメンバーさん達も耳を傾けている。
「んーーーーーとな……なんか、『昔の新幹線ロボットで、南海ラピートをモチーフにした忍者の関西弁キャラクターがいて、そいつがたこ焼き屋をやってた』から?」
「それ、ヒカ○アンじゃあないか?電光超特急の」
「おぉーそうそう、それだ。よく知ってるな」
この話題は俺とシオンにしか通じないのか、周りの皆さんはたこ焼きを食べるのに意識を戻したり、マユちゃん達に話しかけたりしている。
「で、だ。話題は変わるんだけどよお」
ヒカリ○ンについて粗方話し終えたところで、シオンが話題を変更してきた。
「ぶっちゃけ、誰狙いだ?」
「誰狙い?」
「そりゃあ、女の子についての話題だ。あれだけかわいい女子が三人もいて、誰にも興味無いなあんてことは無いだろ?」
昔のアニメの話から急転したな……ふむ、マユちゃん、イツキ、ミカゲさんの三人のことを指しているようだな。
シオンが身近な話題を口にしたことで、急に周りのみんなの視線が集まる。
恋バナだもんなぁ、気になりもするか。
「そうだなぁ……」
俺がこの時、誰の名前を挙げたのか。
それはまた別の話として語るとしよう――。