機動戦士ガンダムSEED ボクラノキズナ 作:ただのリボン付き
コズミック・イラ91年9月27日。
南太平洋ソロモン諸島に存在する複数の島々からなる国家、オーブ連合首長国はこれまで幾度もなく戦争に巻き込まれた。
始まりは約20年前の第一次連合・プラント大戦。
この大戦の後半、当時の地球連合軍によるオーブ解放作戦による侵略を受けた事が一度目である。
同時に、この日は第一次大戦においての最終決戦である第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦が行われた日だった。
そして、一組の家族が慰霊碑の前に佇んで手を合わせていた。
一家の長たる父親は今は亡き自身の父親に対して想いを馳せていた。
「(……あの日、父さんが俺たちの命を繋いでくれたから……今年も一年、無事に過ごせました。ありがとうございます)」
「ねえ、お父さん」
「何だ?」
一家の長男が父親に対してある問いかけを投げかけた。
「お爺ちゃんって……どんな人だったの?」
「あ、私も気になります」
「私もです」
「うーん……僕も興味あるかな…」
立て続けに長女、次女、次男もそう口にした。
そんな子供たちの問いかけに彼らの母親が父親に言う。
「ねえ、教えてあげてもいいんじゃない? 一番上の子達は…もうあの時の私たちと同じ年になったんだし……」
「………そうだったな。それに、歴史の授業で習っていても、当事者だった俺たちから直接的な事を教える良い機会でもあるか……わかった。長くなるから帰りの車の中で話そう」
父親はそう告げ、自身の過去を振り返った。
時は遡る事、21年前…コズミック・イラ70年2月14日。
人として自然に生まれてきた人類であるナチュラルと遺伝子調整を受けた人類であるコーディネイターの対立は最高潮に達していた。
3日前の地球連合によるプラントへの宣戦布告により、連合の宇宙艦隊がコーディネイターたちの住むコロニー群であるプラントへの侵攻を開始。
この戦闘においてプラントの1基である食糧生産コロニー、ユニウスセブンに放たれた一発の核ミサイルにより、同コロニーは崩壊。
後世において血のバレンタインと呼ばれるこの事件により、24万3721名の犠牲者が発生。
プラント側は地球連合軍による虐殺と非難し、地球連合はプラントの謀略による自爆と応酬。
結果的に第一次連合・プラント大戦の激化の引き金を引くことになり、連合とプラントは全面戦争へと突入した。
誰もが数で勝る地球連合の勝利で戦争は早期に終結すると思われていた。
しかし、その予想はプラントが地球にも投下したニュートロンジャマーとモビルアーマーを圧倒する新型人型機動兵器モビルスーツの存在によって大きく裏切られた。
血のバレンタインの報復エイプリルフール・クライシスにより、ニュートロンジャマーの影響で原子力エネルギーを喪失。
10億人規模の凍死・餓死者を出す惨事となった。
戦闘面でも核分裂反応を抑止するニュートロンジャマーの影響で核兵器の使用が封じられた事に加えて副作用として通信電波が妨害され、戦況はザフト側に有利となった。
そして、開戦から11か月余りが経過したコズミック・イラ71年1月25日。
L3宙域に存在するオーブ連合首長国が保有する資源コロニー、ヘリオポリスから歴史は動き始めようとしていた。
機動戦士ガンダムSEED ボクラノキズナ PHASE-01 始まりの日
「全く……何だって俺たちだけに今回の任務を任せてきたんだ……お前だってそう思うだろ、ユキト?」
「ぼやくな、ワタル。アストレイと違って00シリーズは表に出しても問題ないから専属のパイロットの僕と開発も担当したお前が選ばれたんだ。仕方ないだろう」
2人の青年がそう言葉を交わしている。
オーブ国防軍に所属しておりパイロット「ユキト・クラマ」一尉と「ワタル・シラミネ」技術士官であった。
ワタルの方は文句たらたらで不満を口にしていた。
「けっ、だったら俺と師匠みたいに大半をモルゲンレーテが持ってる技術の延長線上で機体を完成させればいいんだよ。結果的にサハクの連中、あんな動く棺桶みたいな機体作りやがって…」
「それ、シモンズ主任の前では絶対に言ったら駄目だからね。あの人、きっと落ち込むよ? この間も母さんが愚痴に付き合ってあげてたんだぞ…」
自分たちのライバル機の開発主任を思い出しながらやれやれと言った顔をする。
彼らが受けた任務をユキトが口にする。
「それにしても……フブキで連合のG計画の試作機を模擬戦で完膚なきまでに叩き潰せ……か」
「要はこっちにはお前たちの機体よりも強い機体があるんだから手を出すなと遠回しな脅しをかけてこいって事だな」
彼らがヘリオポリスに訪れている理由。
それは今現在、このコロニーで連合とオーブで共同開発が行われているG兵器と呼称される新型MSが完成間近なのである。
完成後は実戦テストなども行う予定であるのだが、その仮想敵機としてユキト達が開発した試作機「ORB-00R フブキ」とその部品取り用に同じ00シリーズの試作機2機を送り込む事が決定されたのだ。
ワタルの言っている通り、オーブにはこういう機体があるのだから何か手出しすれば痛い目を見るぞという遠回しな警告でもある。
「で、実際どうなの、連合のMSって?」
「モルゲンレーテ側のスタッフとして関わらせてもらったけど、ありゃ相当苦労するぞ。何せOSは未完成。おそらく連合のパイロットじゃ操縦ですら困難だろうねぇ」
「……もしかして、01と02の4機よりも?」
「……正直な話、今のM1とどっこいって感じだ」
頭を抱えるユキト。
彼らのチームが開発した00系統とその成果を見込まれて任された01と02系統は既にナチュラルでも操縦応可能なOSの開発に成功している。
しかし、これらの機体群はその開発方針の影響もあって量産機には到底使えない高性能なCPUなども積んでいる為、とてもじゃないが大量生産には不向きな機体として完成してしまっている。
量産を前提とした対抗機には搭載は無理だった。
2人はそう言葉を交わしていたが、前方から1人の人影が見えた事で話を止める。
「おいでなすった。ラミアス大尉!!」
「お久しぶりです、シラミネ技官」
現れたのは地球連合軍技術大尉である「マリュー・ラミアス」大尉である。
ワタルは彼女とはオーブ側の責任者として何度も顔を合わせており、既に知らない間柄ではなかった。
「今回はこちらの急な上にかなり無理な要望を受け入れていただき、ありがとうございます」
「あの機体なら見せても良いと上層部から何とか許可が出たのもあります。そちらの最終調整にお役に立つのならユキト共々使ってやってください」
今回、ヘリオポリスにフブキを持ち込んだのは単純にG兵器の最終調整の為でもある。
実質、G兵器の基幹技術ともなっている機体との模擬戦を通してのOS開発の参考の為でもあった。
「採算度外視で作った実証機でもありますから、試作機のG兵器でも同じポテンシャルに持っていけるとは思いますよ」
「そういってもらえると助かります。そちらが……」
「ええ。フブキのパイロットです」
「ユキト・クラマ一尉であります。よろしくお願いします、ラミアス大尉」
自己紹介を済ませるユキト。
マリューの方はそう年端もいかないのに自身と同じ階級と聞いて目を丸くしている。
「大尉相当……それにしてはずいぶんと……」
「よく聞かれます。まあ、はっきり言ってしまいますけど、僕は1世代目です」
1世代目。
つまり親がナチュラルであり、遺伝子調性を受けて生まれてきたコーディネイターという事である。
ナチュラルに対してコーディネイターは成人年齢が15歳という事である為、ユキトもその例に漏れずにオーブでは成人と同時に国防軍への入隊を果たしている。
入隊から既に4年近くが経過しており、軍内でも新型機の開発功績もあって順調に階級を上げていっているのだ。
「シラミネ技官の事もありますから、さほど不思議には思いません」
「オーブって国の特殊性でもあるからなぁ……」
そうぼやくワタルの方はというと第2世代のコーディネイターである。
両親が第1世代のコーディネイターであり、親の能力を引き継いだコーディネイターでもある。
ただ、地球に第2世代のコーディネイターが居るのはかなり珍しい事であり、ほとんどはプラントのコーディネイターだ。
それを差し置いたとしてもナチュラルであるマリューから見た2人の態度は不思議だったのだ。
この2人はあまりにもナチュラルに対して差別意識を抱いていないのだ。
「……技官は以前から見知っておりましたが、クラマ一尉もそうなのですね…」
「そういや、ラミアス大尉には話した事なかったっけな。俺たちは……」
ワタルが理由を話そうとしたその時だった。
ヘリオポリス全体を大きな震動が襲ったのは。
「………嫌な予感が的中したか……」
「ちっ、どっかの情報屋あたりが漏らしてんじゃないかとは思っていたが、本当に仕掛けてくるか、ザフトめ……」
即座にザフトによる襲撃であると勘付く2人。
ワタルは即座に移動用に車を用意し始める。
考えている暇などあるはずがなく、ユキトは即座に判断を下していた。
「ラミアス大尉。この状況下なら自衛権の行使という名目で介入が可能です。オーブ国民の保護の為、至急、機体を取ってきます」
「……わかりました。お気をつけて」
「乗れ、ユキト!! とっとと行くぞ!!」
「では。ご武運を!!」
ユキトはマリューにそう告げるとワタルが回してきた車に乗り込んで自分たちの機体が置かれている工区まで全速で向かい始めた。
外に出た彼らが視認したのは既に戦場になりつつあるヘリオポリスの風景だった、
ザフトの主力MSである「ZGMF-1017 ジン」が数機侵入し、連合軍の車両を次々に破壊しつつあった。
「全く!! 人様のコロニーでいきなりドンパチ始めやがって!!」
「……連合と共同でMSの開発を行っていたんだ。もはや中立なんて言い訳は立たないさ!! 運転頼む!!」
「おうさ!!」
連合側の施設から出てきたのを確認されたが為に侵入してきたザフト兵たちから銃撃を受ける2人。
これに対して運転をワタルに任せたユキトは後部座席に積まれていたアサルトライフルを手にして反撃を開始。
1人を撃ち倒した所で状況を把握する。
「……なるほど。狙いは連合の新型機の奪取か」
「そーみたいだ。あーあ、あっちの3機はもう駄目だな」
ワタルが指摘した方向を見やる。
そこには連合軍のトレーラーから立ち上がる3機の新型MSの姿が見える。
モルゲンレーテ側スタッフとして開発に携わっていた彼は機体名を呟く。
「X102デュエル、X103バスター、X207ブリッツだ。ちっ、奪われたら一番厄介になりそうなのを持ってかれたか……」
「厄介?」
「光学迷彩ミラージュコロイド。ブリッツが搭載してる」
やがてフェイズシフト装甲が起動し、装甲が色づいた「GAT-X102 デュエル」、「GAT-X103 バスター」、「GAT-X207 ブリッツ」はそのまま空へと飛び立つと一気に離脱していく。
あれではもう取り戻すのは至難の業だろう。
「このままだと残りの2機も危ういぞ……下手をすれば俺達だけでジンに加えて奪われた新型の相手までしなきゃいけなくなる」
「急ごう…」
ワタルは出せるだけの速度を出してフブキが置かれている工区へと急ぐ。
だが、その工区にも既にザフトの手が伸び始めていた。
一人の赤いパイロットスーツを纏ったザフト兵が侵入していたのだ。
「あー、何だ、この機体……参ったなぁ……情報外の新型かよ……」
ザフト兵の名は「ラスティ・マッケンジー」。
彼の眼前には同型機と思われる3機のMSが鎮座していた。
彼自身、連合軍の新型MSの1機を奪取する役目を与えられていたのだが、回り道をしつつ目標に迫ろうとして別の工区から侵入した結果、この3機を発見してしまったのだ。
「どうするよ……アスランに任せとけば残りの2機のどっちかは奪えるだろうが……この3機を見過ごすってのもなぁ……」
戦闘状態にある為、周辺宙域にニュートロンジャマーが展開されている事もあって通信は届かないだろう。
彼自身の判断に全てが委ねられている。
だが、その決断を下すよりも先にこの工区に侵入してくる何者かの足音が聞こえてきた。
走ってきているのか、かなり慌ただしい足音だ。
「やっべ……ええい、仕方ないっすね!!!」
彼はとっさに物陰に隠れて様子を伺い始めた。
工区に入ったユキトとワタルは互いに状況を把握してどうするかを決めていた。
「ワタル、予備機としてタイプLを確保。タイプTは後で回収する」
「りょーかい。頼むぜ、ユキト。俺は確かに開発担当ではあるけど、まともにMS操縦の訓練は受けてないから実戦なんてとてもじゃないけど出来ないからな。今はお前が頼りだ」
一番機、タイプRフブキに乗り込んだユキトはシステムを立ち上げていく。
これまで試験で何度も乗っている慣れ親しんだ機体ではあるが、今回はこの機体での初の実戦だ。
「大丈夫……やれる。僕たちが作った機体はジンにも…連合の新型にだって対抗できるはずだ。そうでないと作った意味がない」
この機体を作ったのは彼らのエゴだ。
彼の幼馴染を、彼らを先輩と呼んで慕ってくれる後輩を、自分たちがコーディネイターでも変わらずに接してくれる部下の未来を守る為に作り上げた。
こんな所で止まるわけにはいかないのだ。
機体のシステムが完全に立ち上がり、ユキトはコックピット内で自身と機体に言い聞かせた。
「行くぞ、フブキ。僕たちの初陣だ。システムを試験モードから戦闘モードへ」
―メインシステム。戦闘モード、起動します。―
「ユキト・クラマ、フブキ、出る!!」
背部バックパックの出力を最大にする。
工区から加速をつけたフブキが勢いよく飛び出していった。
平和は脆くも崩れ去り、青年は戦いの舞台へと踏み入れていった。
偽りの平和は消え去った。
戦いの舞台に踏み入れた彼らは否応なく現実を突きつけられる事になる。
その最中、ユキトは今ここにいるはずの無い幼馴染の姿を見つけてしまう。
次回、機動戦士ガンダムSEED ボクラノキズナ PHASE-02 守りたいもの
その想い、貫け、フブキ!
この度、このような駄文にお付き合いしていただき、ありがとうございます。
SEED及びDESTINYのリアル視聴世代で長年、待ち続けた劇場版の公開が決まったという事もあって当時から抱え続けた自分の中にあった想いを全部吐き出そうと思ったが故に筆を取らせていただきました。
お目汚しになるとは思いますが、最後まで完走出来たらと思っております。
では、また次回。