機動戦士ガンダムSEED ボクラノキズナ   作:ただのリボン付き

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幕間に近い話。
この時期、シートが空いているMSって何かないかなと思ってSEED関連機の設定を漁っていた所、1機だけ出しても時期的にも問題がない機体があったので出すことになりました。
故にタグにASTRAYから登場機体有りを付け加えております。
該当の機体はオーソドックスなまま原型を保った稀有な機体。
本来ならパーツ状態でここから行方不明で戦後になるまで出番がないので、なら出した上で返却すれば原作と同じ状態でしょうとなったので前半のヒロイン機として採用する事に。
というか、ヒロイン抜擢かつ実はこの時点で原作よりも明らかに強くなっているのを示す手っ取り早い方法がMSに乗ってクルーゼ隊の誰かしらを撃退するのが最短と考えたのでこうなりました。
時間的にも次のサイレントラン~フェイズシフトダウンには間に合いませんので、初陣はまだ先ですが、この機体と彼女の活躍もお待ちして頂ければと思います。
では、6話です、どうぞ。



PHASE-06 王道を外れた者

崩壊したヘリオポリス。

周囲には先ほどまで大地だった区画が既にデブリになりつつあり、このままではアークエンジェルでも抜け出す事は出来なくなってしまうだろう。

先の崩壊の際に宇宙空間に放りだされたユキトは周囲を見渡していた。

 

「………守れなかったか……」

 

軍人としては任務失敗と言っても良い。

守るべき領土であるヘリオポリスを崩壊に導いてしまったからだ。

 

「……今頃、本国は怒号の嵐だろうなぁ……」

 

責任問題が浮上してくるのも間違いないだろう。

と、フブキのセンサーが何かを捉えたが、その反応に身構えるユキト。

 

「っ!? MSの反応!? ザフト機か!?」

 

反応があった方に機体を向ける。

が、そこにあったのは崩壊の余波で大破した数台のトレーラーとそのコンテナから放り出されたあるMSを構成するパーツだった。

 

「……こいつは……」

 

見覚えのあるシルエット。

フブキにとってライバル機の試作機の1機であり、先行して作られた3機と違って組み上げすらされていないが、ほぼ間違いない。

 

「………どうする? 確かにこいつを持っていけば万が一の時の戦力にはなる。だけど、乗れるとすれば僕かマユラだけだ。でも、あの子にはまだ実戦は早過ぎる」

 

出来ればまだ彼女にはまだ戦場に立ってほしくないという想いが強いユキト。

ムウに乗ってもらうという考えも浮かぶが、機種転換訓練など行っている時間はない。

その上、表に出せる00ナンバーと違ってこれを地球軍に見られるのは非常に不味い事態になりかねないのもあった。

 

「……背に腹は代えられないか……仕方ない」

 

ユキトは周囲の残骸のトレーラーの一台にパーツを積み込むとそれを引っ張っていく形でアークエンジェルに戻っていった。

 

 

 

機動戦士ガンダムSEED ボクラノキズナ PHASE-06 王道を外れた者

 

 

 

フブキがアークエンジェルに戻った時、既に一悶着が起きかけていた。

通信回線で何か問答が起きているのは聞こえてきたが、どうやら収まったようだ

 

「こちらフブキ、戻りましたが……何かありましたか?」

 

「いえ……実はキラ君が故障した救命艇を拾って来まして……受け入れる事にはしました」

 

それすなわちオーブの国民が乗っているものだ。

おそらくナタルが受け入れに反対していたのをマリューが押し切ったのだろう。

 

「賢明な判断、ありがとうございます。もし僕が拾ってきていたら脅しの一つでもかけている所でした」

 

「そうなると思いましたので、受け入れました」

 

「というより、お前さんも拾い物か? 見た限りトレーラーの残骸に何か積み込んできたようだが……」

 

外の様子をブリッジから見ていたムウがそう指摘する。

少し話すか悩むユキトに格納庫からワタルが通信を繋いでくる。

 

「格納庫から外の映像見てるが、お前、まさかそれはあれだよな……?」

 

「うん。あれ。大丈夫かな、これ見せても?」

 

「……そいつならまだ製造段階でなーんも特殊機能付けてないから大丈夫じゃないかねぇ…」

 

オーブ軍の技官だけあってワタルも正体には気が付いたようだ。

その会話を訝しげに聞くマリュー、ムウ、ナタルだが、ユキトは口を開いた。

 

「簡単に言えば未組み立て状態のMS1機分のパーツです。ただ、表に出せる00ナンバーと違ってこれはちょっと表に出せない代物だったので…」

 

「表に出せない?」

 

「詳しい事は機密なので言えませんが、そういう曰く付きの機体です。ただ、今後予想されるザフトの追撃を退ける為にも必要と思い、回収してきました」

 

ヘリオポリスに存在し、なおかつ表に出せない。

マリューは何となくだがその理由を察したのか、若干苦々しい表情になった。

 

「最も、こいつの開発チームと僕たちの開発チームは別なので、責めるならそっちをお願いします」

 

「……わかりました。1機でも戦力が増えるというのなら、そのまま受け入れます」

 

受け入れ許可は得た。

そうなるとパイロットをどうするかになるが、それはひとまず置いておいてまずは収容作業に入ることになった。

着艦してフブキから降りたユキトにマユラが近づいてくる。

 

「お帰りなさい、ユキト君。戻ってくるのが遅いから心配だったのよ?」

 

「悪い、拾い物しちゃって回収してきたんだ」

 

「ワタル君から聞いたよ? たぶん、プロトアストレイだって…」

 

「そうなるかな。所で、キラ君が回収したっていう救命艇の方は?」

 

話をそちらに振るユキト。

うーんと言った顔をしながらマユラは返した。

 

「……ちょっと厄介そうな人が混じっていたのよねぇ…」

 

「厄介?」

 

「うん。ヤマト君達のお友達。フレイ・アルスターさんって言うんだけど……たぶん、ブルーコスモス系の外交官ジョージ・アルスターの娘さんだよ」

 

内容を聞いて頭を抑えるユキト。

そういう事ならその「フレイ・アルスター」に対しては関係を持たない方がこちらとしても助かるが、既に救助してしまっているのだ。

今後、否応なく顔を合わせる事になってしまうだろう。

 

「………まだ僕とワタルの詳細は彼女に伝わってはいないね?」

 

「うん。でも、たぶん私と違ってガチガチの反コーディネイター思想じゃないかな? ユキト君達の事は知られない方が波風は立たないとは思う」

 

この点でユキトとワタルはかなり助かっている。

いかにナチュラルとコーディネイターが共存しているオーブと言えどもやはり差別感情を持つ人間は出て来るのだ。

これに対してマユラは持論を出す。

 

「……私とユキト君みたく昔から一緒ならナチュラルだコーディネイターだなんて気にならないのにね。人種だけ聞いて差別するなんて相手の事を何も理解する気がないのと同じなのに…」

 

「全く持って同意するよ」

 

今後の火種となりかねない存在にどう対処するか。

それはこれから考えていくしかないのだろう。

 

 

同じ頃。

崩壊したコロニーからヴェサリウスに帰還し、イージスから降りたアスランにイナズマから降りたラスティが真っ先に声を掛けた。

 

「おい、アスラン。一体どうしたってんだ? 今日のお前、少しおかしいぞ?」

 

「……その件も兼ねてクルーゼ隊長から出頭命令が出てるんだ。そこで全部話す」

 

「………なあ、アスラン。同室になる時、言ったよな。俺との間に隠し事は無しだって。どの道、オーブ機の性能報告もあるから俺も呼ばれてる。聞くことになるが大丈夫か?」

 

ヴェサリウスでの部屋割りでラスティはアスランと同室だ。

そういう関係もあり、隠し事はなるべくしないという事を決めてもいたのだ。

少し考えるアスランだが、ラスティはそれを後押しする。

 

「心配すんなって。俺がお前の親父さん含めた面々と仲悪いのは知ってるだろ? 黙っておいてやるからさ」

 

「……わかった」

 

そして2人で隊長室の前に到着した。

 

「アスラン・ザラ、出頭しました」「同じくラスティ・マッケンジー、報告に参りました」

 

「ああ、2人とも、空いている。入って構わんよ」

 

「「失礼します」」

 

クルーゼからの返事を受けて入室する2人。

 

「さて、呼び出した理由についてだが……その顔だと見当は付いているようだな、アスラン」

 

「はい」

 

「先の戦闘での無断出撃……普段の君からは考えられないような行動だった。聞かせてもらえるかね?」

 

仮面の下の表情を読み取ることはできない。

 

「わかりました。先の独断出撃の理由が、確かめたい事があったからです」

 

「確かめたい事……それは何かね?」

 

「奪取作戦の際、思いもかけぬ事がありました。最後の1機を奪取する際、連合の士官と共にいた民間人が1人いました。その姿が月の幼年学校時代の友人でした」

 

クルーゼの表情はわからないが、隣で聞いているラスティが驚愕の表情を浮かべている。

同時に、あー、ならしょうがないか的な顔を浮かべても居た。

そこでクルーゼはラスティに話を振る。

 

「ラスティ、君は気づいていたのかね、先の戦闘中に?」

 

「いいえ。何かいつものアスランらしくないとは思っていましたが、こうして今初めて聞かされました」

 

「良いのかね、私だけでなくラスティにもその事を知られて?」

 

アスランに問いかけるクルーゼ。

ラスティに視線を移しながらもアスランは返す。

 

「構いません。これは同室になってからの約束ですから」

 

「ええ、お互い隠し事無しって事にしていますので。イザーク達へのフォローも考えたら俺ぐらい聞いておいた方が良いかなとも思ってました。内容は想像以上でしたが」

 

今後、そう言った事情を抱えて戦っていかなければならないとなると誰か1人ぐらいは事情を知っておいた方が良いだろう。

話はそのまま続く。

 

「で、アスラン。そいつの名前は?」

 

「ストライクに乗っているのはキラ・ヤマト……私たちと同じコーディネイターです」

 

「(キラ・ヤマト……いや、まさかな……)」

 

名前を聞いたクルーゼはなにやら聞き覚えのある名に引っ掛かりを覚える。

そう思いつつもクルーゼはアスランに問いかける。

 

「しかし、アスラン。相手がかつての友人であったとしても、今は敵だ。撃てるのかね、君に?」

 

「そ、それは……」

 

重苦しい空気に包まれる隊長室。

しばらく無言にあるが、ラスティがこういう。

 

「まあ、隊長。しばらくはアスランのやりたいようにやらせるで良いんじゃないですかね?」

 

「やりたいように…とは?」

 

「大方、アスランはその友人をこっちの側に引っ張り込みたいって思ってるんでしょう。違うか?」

 

その問いかけをアスランは肯定した。

 

「あいつだってコーディネイターなんだ。話せばわかってくれると思うんです。自分がナチュラルに利用されているだけだと…」

 

「……だが、そう簡単にはいくまい。もし、それが聞き入れてもらえぬ時はどうするかね?」

 

アスランの脳裏には幼年学校時代のキラの姿が映る。

一瞬目を閉じるも、何かを覚悟してアスランは言った。

 

「その時は…私が撃ちます」

 

「(ほう)君の決意はわかった。今後も期待させてもらおう。それで、ラスティ、どうだったかね、オーブの新型の性能は?」

 

話はラスティの方に移る。

手にした報告書に目を通しながらラスティは言う。

 

「恐ろしいぐらいですね。正直、自分が抑え込んでいなかったらミゲルも含めて全滅していたでしょう」

 

「それほどかね?」

 

「少なくとも連合の新型と同性能です。ジンでは歯が立ちませんよ。仮に撃とうというなら先日お披露目された新型でも持ってこないと無理でしょう」

 

ザフトでも次世代MSの開発は進んでいた。

地上でのカオシュン宇宙港の陥落と同時に3タイプの新型がお披露目されている。

うち2機は地上戦用の新型であり、残りの1機のみが汎用型の新型だった。

 

「……性能については了解した。だが、その新型も連合から奪取した技術の反映を考えればすぐに出せるかどうかといったところだろうな」

 

「ただ、データや使われている機材に目を通しましたが、CPU含めてかなりの高性能故、量産するには厳しい機体と思えます。仮にオーブと戦端を開いたとしてもあれらがそのまま量産されて出て来るような事態にはならないと愚考します」

 

「……今のプラントにはそこまでの余裕はないと思うがね。とにかく、捨て置けぬ事は確かだ。下がっていい、今後の行動はこちらからまた追って伝える」

 

「「はっ!!」」

 

2人は敬礼返すと隊長室を後にした。

 

 

そして、事情を聴かれていたのはキラも同様だった。

格納庫でマユラと別れたユキトはアークエンジェル艦内で人気の付かない一角にキラを呼び出していた。

 

「さて、キラ君。これはさっきの出撃前の君の表情や敵パイロットからの直接回線で持った疑問だけど……まず、答えられないのなら答えなくていい」

 

「………」

 

キラ自身も何を聞かれるのかだいたい心当たりがあるようだった。

一拍置いてユキトは単刀直入に聞いた。

 

「キラ君、イージスのパイロットと知り合いだね?」

 

「………(こくっ)」

 

首を縦に降るキラ。

はあっとため息をつきながらもユキトは続ける。

 

「何も責めようってわけじゃないよ。これからしばらく同道することになるのだから、隠し事はない方がいいと思ってね。詳しく聞いていいかな?」

 

「はい。イージスのパイロット……アスラン・ザラとは月の幼年学校で一緒だった友達です」

 

「ザラ……プラント国防委員長パトリック・ザラの息子か…」

 

国際情勢にも明るいユキトは即座に見破った。

プラントの上層部の子息という事である。

キラは記憶の中にあるアスランの性格と今の状態が一致していない面もあったのだ。

 

「正直、戦場で再会した時、信じたくなかったんです。アスランがザフトに入っていたなんて…」

 

「昔はそういう行動をする子ではなかったということかい?」

 

「……そうとしか言いようがないんです。だけど、原因は……」

 

キラは約一年前の記憶を思い出す。

開戦直後に行われた血のバレンタインが報道された時に母から告げられたある事実。

おそらくそれだというのがキラの心の中にあった。

 

「……血のバレンタインだと思うんです。アスランのお母さんがユニウスセブンに居たんです。去年、あの事件が伝わった時に母さんから聞かされました」

 

「……なるほど、お母さんの仇討ちか」

 

「アスランがあそこまで変わってしまうとすればたぶん……」

 

心当たりがあるとすればそれしかないのだ。

ユキトはキラの事情を顧みてこうアドバイスを出した。

 

「キラ君。おそらく、アスラン君は君をプラントの方に引き込もうとしてくるはずだ。今後の戦闘中に説得をしてくる可能性は極めて高い」

 

「……僕は戦争が嫌で中立のオーブを選んだんです。それに、皆を置いてプラントに行くなんてできませんよ」

 

「だろうね。オーブ生まれオーブ育ちの僕としてもプラントに行く気なんて毛頭ないよ。最も、僕は頼まれたってあっちには行かないけどね」

 

自身の幼馴染の笑顔が頭をよぎるユキト。

遠目から2人の関係を見ていたキラもそれは流石に察せるレベルだった。

 

「あの人が居るからですか?」

 

「うん。キラ君と同じ。僕と彼女は幼馴染でもう10年以上の付き合いだ。あの子は僕が戦う理由そのものさ」

 

彼の戦う理由は明白だ。

自分の幼馴染をこの戦争で死なせない事。

今はまだ戦火がオーブに及んでいないが、そうなる日が来た時に戦える手段を用意しておくこと。

その第一歩が00ナンバーの開発だった。

 

「……強いんですね、ユキトさんは」

 

「そんなでもないさ。失いたくないから手元に置いているっていうのは悪い言い方をすれば拘束しているとも言えるからね。じゃあ、また後で。回収した機体の確認をしてこないといけないからね」

 

ユキトはそう告げるとキラと別れて格納庫に向かっていった。

 

 

アークエンジェル格納庫内では先ほど、ユキトが回収してきた機体のパーツが広げられていた。

マードック軍曹もそれを見て頷いていた。

 

「間違いなくMS1機分のパーツだな……坊主に嬢ちゃん、見覚えはあるんだな?」

 

「ええ。こいつは俺たちの開発チームとは別のチームが作った試作機の1機です。正直、俺はこいつ…正確にはこいつを含めた試作機群に対抗する為に00ナンバーを開発したんですけどねぇ…」

 

「P04で間違いないわね」

 

軍曹からの問いかけにワタルとマユラが同意する。

眼前のパーツ状態で回収されてきた機体。

それはオーブがG兵器の開発データから盗用したデータを用いて開発した「プロトアストレイ」シリーズの1機、「MBF-P04 アストレイ試作4号機」であった。

 

「正直、俺はこいつを好かんのだけどな。機動性や可動域は良いんだけど、紙装甲で対弾性は低いから避ける事を前提とした戦い方をするしかなくなる。そんな機体、扱い慣れたベテランなら何とかなるが、新米や経験の浅い若手を乗せる機体じゃないからな」

 

「……乗っていた側からすればごもっともな意見です」

 

ワタルの不満にマユラが同意する。

彼女もユキト達の開発チームに引き抜かれる前はアストレイの開発チームでテストパイロットを務めていたのもあって今現在の担当機体と比較できるのだ。

 

「島国で人的資源の限られるオーブにとってそんな機体、ご法度なんだよ。何もご先祖様と同じ過ちを繰り返す事はないだろうに。MSは零戦じゃないんだからさあ…」

 

例えを出すのはオーブのルーツとなった国が旧世紀の大戦で用いたある戦闘機の名前。

軍の無茶な要求に振り回され、攻撃力・運動性・航続力はどうにかなったが、防御力を犠牲にして完成させた名機。

同様のコンセプトを強いられているのがこのプロトアストレイの量産機となっているオーブの正式採用機だった。

その機体が辿った末路を考えるなら、同様の事が起きるのは間違いないだろう。

 

「お前さん、零戦なんて良く知ってるな。こんなご時世に旧世紀の歴史に詳しいのか?」

 

「んー、というより俺の趣味ですね。仮にも一からMS作ろうっていうなら古今東西の兵器のデータくらい頭に入れとかないと思いまして。先達と同じ過ちは繰り返したくないですからね」

 

「元々、00ナンバーの開発案もワタル君が持ってきたものだもんね。正直な話、シモンズ主任には悪いんだけど、完成度が段違いな面もあるのよね」

 

そこへ、キラとの話を終えたユキトが状態の確認にやってくる。

 

「ワタル、やっぱりP04か?」

 

「さっきOSを立ち上げて確認もしたよ。間違いなく4号機だな。全く、あっちのチームはこいつを資源衛星の工区にまで運び損ねていたか…」

 

襲撃がある直前の情報ではこのP04以外に既に組み上げられていた3機は崩壊せずに残っている資源衛星の工区に運ばれている事が確認されていた。

すると、何かを決意したような表情でマユラがこう口にした。

 

「……ユキト君。私が乗っても良い?」

 

「……お前、自分が何を言っているのかわかっているのか?」

 

念押しするようにユキトがそう返した。

眼前のP04に乗るという事はこのままアークエンジェルと避難民を守るためにザフトとの戦闘に参加するという事を意味している。

今までの模擬戦闘やシミュレーター訓練とは全く違う実戦に参加することになる。

だが、彼女はそれも承知だった。

 

「わかってる。だけど、今は1機でも助けが必要でしょ? 私ならアストレイの操縦には慣れてるし、戦い方だってわかってる。それに……」

 

この後に続く言葉が彼女の本心だった。

 

「私、守られてばっかりなのは嫌なのよ。今日まで努力してきたのはユキト君の隣に立てる私でありたいと思っていたからよ。だから、貴方の背中、守らせて」

 

「……そういうのはもうちょっと一端のパイロットになってから言うものだけど……決意は固いみたいだね」

 

仕方ないといった顔でユキトは矢継ぎ早に指示を出した。

 

「ワタル。予備機の00LからOSをP04にコピー。この方がマユラにとって扱い慣れているはずだ」

 

「OK。04は元々パイロット支援AIを載せる予定だったから、内部の容量的には問題なしだ。やっておく」

 

続いてマードックの方にもこう告げる。

 

「軍曹、次の戦闘に間に合わなくても良いですから、できる限り組み上げを急いでください。おそらく、フラガ大尉のゼロの修復の方が先でしょうからね。それが終わってからで構いません」

 

「わかった。幸い、こいつが回収された事はザフトに知られていないからな。切り札としておくには丁度いいだろう」

 

軍曹も承知する。

彼の言う通り、今現在、使用可能なMSがもう1機増えた事をザフトは知らない。

ここぞというタイミングで出せる切り札が出来たのは大きい事だ。

 

「最後にマユラ」

 

「はい」

 

「次の戦闘には間に合わないけど、準備だけは進めておいて。組み上げが終わってからのフィッティングや調整をワタルたちと一緒に頼む」

 

「了解しました、クラマ一尉」

 

軍人としての命令を受けたと判断したマユラは一瞬で空気をパイロットとしてのものに変えた。

普段の明るい可愛らしい彼女からは考えられない程の凛々しい表情に切り替わっており、君付けで呼んでいるユキトの事も階級付きの呼び方へと変えていた。

それを初めて目にした軍曹は目を丸くする。

 

「……驚いたなぁ…」

 

「自分もあんなラバッツは初めて見ましたよ。いや、ある意味あいつの本質ってやつなのか…?」

 

どうやらそれはワタルも同様だった。

同じ開発チームとして仕事を共にしてきたが、普段は本当にバカップルと言わんばかりにイチャイチャしている姿しか目にしていなかった。

それ故に本気になった場合の姿を見たのは初めてなのだ。

 

「後は何かしら使える武装があるかだが……それはこの後の作戦会議でラミアス大尉に聞いてみるしかないな」

 

この後の作戦会議。

いかにしてザフト艦の追撃から逃れるかという話し合いだった。




ちなみにキラが血のバレンタインでレノアさんが亡くなっているのを知っているのはReから持ってきている設定です。
同作の冒頭でカリダさんから伝えられているシーンが存在しているので、本作ではそういう事にしてあります。
同時にキラの側ではユキト、アスランの側ではラスティがそれぞれに事情を知る形になるので、両者共に相談相手ができるという点は本作ではプラスに働いてくれるかと思います。
で、前半のヒロイン機として抜擢を受けたのはP04、後のアストレイグリーンフレームです。
原作ではパッとした活躍がないので、この時期ならシートが空いてる上に設定的に行方不明で他者に使われた形跡がないですから、持ってきました。
問題はやはりこの段階で他に使える武装があるかという点ですかな…。
最初はストライクのバスーカ使わせるかとも考えましたが、この装備第8艦隊との合流時に搬入された装備なので現時点ではアークエンジェルに無いんですよね…。
一応、設定的に存在している余剰武装に心当たりがあるのでそれを使わせるつもりではいます。




それと、次回の更新間隔ですが、この先2週間、11月の第2週頭までは繁忙期最後の追い込みに入るので、更新頻度が遅くなると思います。
その点に関しては申し訳ありませんが、リアル優先です。
では、また。
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