イズモ「どういうこと?」
施設中央管制室。
照明は落ち、ホログラムも沈黙し、空気だけが不自然に静止していた。
カエデ「多数のエリアで、同時に物理的な電源喪失が発生しました。」
カエデ「全エリアの非常用電源も停止しています。」
イズモ「そんな……じゃあ今、この施設は?」
カエデ「完全に沈黙しています。」
カエデ「電気系統のトラブル、もしくは外的要因によるものと考えられますが……」
カエデ「現時点では原因不明です。」
イズモ「場所的に、クデュック内部だよね。」
カエデ「そうですね。」
イズモ「……クデュックに、何か起きてる?」
カエデ「可能性は高いです。」
イズモ「非常電源も落ちてるんだよね?」
カエデ「はい。」
イズモ「UPSは?」
カエデ「……作動していません。」
イズモ「え?」
イズモ「普通、電源喪失時はUPSが自動で送電するはずじゃ……」
カエデ「本来はそうです。」
カエデ「ですが、UPS自体が送電を停止しています。」
カエデ「理由は不明です。」
イズモ「クデュックに何かあっても、UPSが生きてれば最低限は……」
カエデ「その前提が崩れています。」
イズモ「……これ、ただの停電じゃないよね。」
カエデ「ええ。」
カエデ「意図的な可能性が高いかと。」
イズモ「発電施設?」
カエデ「断定はできません。」
イズモ「でもこの規模なら、送電線も切断されてる可能性あるよね。」
カエデ「可能性はあります。」
カエデ「ただし基幹送電線は非常に太く、簡単には切断できない設計です。」
イズモ「あ、そうなんだ。」
カエデ「仮に切断された場合も、自動でUPSが起動しますし、施設側が異常を検知します。」
イズモ「……ってことは。」
カエデ「外部、もしくは内部からの高度な干渉。」
イズモ「……内部犯行の線、濃いね。」
カエデ「今は、何が起きても不思議ではない状況です。」
イズモ「そうか……。」
沈黙が落ちる。
機械の唸り一つない空間が、不安を増幅させる。
カエデ「しばらく様子を見るしかありませんね。」
イズモ「……だね。」
カエデ「では、私は少し休憩してきます。」
カエデは立ち上がり、暗い廊下へと消えた。
イズモ「……じゃあ俺は、物理損傷の修復に行くか。」
イズモは修復班として、地下へ向かった。
一方その頃。
クデュック地下深層。
レナ「ところで、この施設って、元は何があったんですか?」
新人設備員レナは、上司と共に電源喪失の調査に来ていた。
目の前には、天井の高い巨大ホールが広がっている。
使われなくなった機械と配線が、無数に残されていた。
主任「ここは、NERV時代の居住層都市の避難用シェルターだったらしいわ。」
レナ「へえ……。」
主任「使徒襲来時に、市民を収容するための場所ね。」
主任「今はUPSが大量に置かれてるだけだけど。」
レナ「UPSって?」
主任「非常用バッテリー。」
主任「この施設を動かす、最後の命綱よ。」
レナ「なるほど……。」
主任「じゃあ、設備を確認しましょう。」
二人は制御室へ入る。
壁一面の巨大コンソール。
だがモニターに映るのは、冷たい警告文だけだった。
物理的損傷のため送電できません。
主任「……これはダメね。」
レナ「え? どうしてですか?」
主任「この機器はUPSで動いてたの。」
主任「そのUPSが死んでる。」
レナ「……じゃあ直せない?」
主任「ええ。」
主任「原因も分からないし。」
レナ「うーん……。」
主任「送電ケーブルを確認しましょう。」
別室。
太いケーブルが走る部屋。
レナ「……これは。」
主任「完全に切断されてるわ。」
接続部は消失し、切断面は異様に滑らかだった。
レナ「どうして、こんな……。」
主任「高周波ブレードね。」
主任「しかもアリア用。」
レナ「え?」
レナ「アリアって、外部の人間は使えないですよね?」
主任「そう。」
主任「つまり犯人は、クデュック内部の人間。」
レナ「……。」
主任「同じ構造の施設が、あと256箇所ある。」
レナ「……え?」
主任「全て同時に破壊された可能性もある。」
レナ「……え?」
主任「アリアを総動員すれば、不可能じゃないわ。」
レナ「……。」
主任「ここは修理不能ね。」
レナ「残念です……。」
主任「他を当たりましょう。」
主任「まだ、生きてる場所があるかもしれない。」
レナ「はい!」
二時間後。
二人は別の制御室にいた。
エレベーター制御室だ。
主任「ここも……ダメね。」
レナ「さっきと同じです……。」
主任「……あ。」
主任が制御盤を覗き込む。
主任「ここなら、いけるかも。」
レナ「どうしてですか?」
主任「非常用電源で動いてる制御盤なの。」
レナ「なるほど!」
二人はエレベーター内部に入り、作業を開始した。
数分後。
照明が、点いた。
限定的だが、停電が復旧した。
イズモ「お待たせー。」
主任「イズモ三佐。」
レナ「……この人は?」