正しい平和は、いつも個人を置き去りにする   作:最上 イズモ

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1.電源喪失

イズモ「どういうこと?」

 

施設中央管制室。

照明は落ち、ホログラムも沈黙し、空気だけが不自然に静止していた。

 

カエデ「多数のエリアで、同時に物理的な電源喪失が発生しました。」

カエデ「全エリアの非常用電源も停止しています。」

 

イズモ「そんな……じゃあ今、この施設は?」

 

カエデ「完全に沈黙しています。」

カエデ「電気系統のトラブル、もしくは外的要因によるものと考えられますが……」

カエデ「現時点では原因不明です。」

 

イズモ「場所的に、クデュック内部だよね。」

 

カエデ「そうですね。」

 

イズモ「……クデュックに、何か起きてる?」

 

カエデ「可能性は高いです。」

 

イズモ「非常電源も落ちてるんだよね?」

 

カエデ「はい。」

 

イズモ「UPSは?」

 

カエデ「……作動していません。」

 

イズモ「え?」

イズモ「普通、電源喪失時はUPSが自動で送電するはずじゃ……」

 

カエデ「本来はそうです。」

カエデ「ですが、UPS自体が送電を停止しています。」

カエデ「理由は不明です。」

 

イズモ「クデュックに何かあっても、UPSが生きてれば最低限は……」

 

カエデ「その前提が崩れています。」

 

イズモ「……これ、ただの停電じゃないよね。」

 

カエデ「ええ。」

カエデ「意図的な可能性が高いかと。」

 

イズモ「発電施設?」

 

カエデ「断定はできません。」

 

イズモ「でもこの規模なら、送電線も切断されてる可能性あるよね。」

 

カエデ「可能性はあります。」

カエデ「ただし基幹送電線は非常に太く、簡単には切断できない設計です。」

 

イズモ「あ、そうなんだ。」

 

カエデ「仮に切断された場合も、自動でUPSが起動しますし、施設側が異常を検知します。」

 

イズモ「……ってことは。」

 

カエデ「外部、もしくは内部からの高度な干渉。」

 

イズモ「……内部犯行の線、濃いね。」

 

カエデ「今は、何が起きても不思議ではない状況です。」

 

イズモ「そうか……。」

 

沈黙が落ちる。

機械の唸り一つない空間が、不安を増幅させる。

 

カエデ「しばらく様子を見るしかありませんね。」

 

イズモ「……だね。」

 

カエデ「では、私は少し休憩してきます。」

 

カエデは立ち上がり、暗い廊下へと消えた。

 

イズモ「……じゃあ俺は、物理損傷の修復に行くか。」

 

イズモは修復班として、地下へ向かった。

 

一方その頃。

 

クデュック地下深層。

 

レナ「ところで、この施設って、元は何があったんですか?」

 

新人設備員レナは、上司と共に電源喪失の調査に来ていた。

目の前には、天井の高い巨大ホールが広がっている。

使われなくなった機械と配線が、無数に残されていた。

 

主任「ここは、NERV時代の居住層都市の避難用シェルターだったらしいわ。」

 

レナ「へえ……。」

 

主任「使徒襲来時に、市民を収容するための場所ね。」

主任「今はUPSが大量に置かれてるだけだけど。」

 

レナ「UPSって?」

 

主任「非常用バッテリー。」

主任「この施設を動かす、最後の命綱よ。」

 

レナ「なるほど……。」

 

主任「じゃあ、設備を確認しましょう。」

 

二人は制御室へ入る。

壁一面の巨大コンソール。

だがモニターに映るのは、冷たい警告文だけだった。

 

物理的損傷のため送電できません。

 

主任「……これはダメね。」

 

レナ「え? どうしてですか?」

 

主任「この機器はUPSで動いてたの。」

主任「そのUPSが死んでる。」

 

レナ「……じゃあ直せない?」

 

主任「ええ。」

主任「原因も分からないし。」

 

レナ「うーん……。」

 

主任「送電ケーブルを確認しましょう。」

 

別室。

太いケーブルが走る部屋。

 

レナ「……これは。」

 

主任「完全に切断されてるわ。」

 

接続部は消失し、切断面は異様に滑らかだった。

 

レナ「どうして、こんな……。」

 

主任「高周波ブレードね。」

主任「しかもアリア用。」

 

レナ「え?」

レナ「アリアって、外部の人間は使えないですよね?」

 

主任「そう。」

主任「つまり犯人は、クデュック内部の人間。」

 

レナ「……。」

 

主任「同じ構造の施設が、あと256箇所ある。」

 

レナ「……え?」

 

主任「全て同時に破壊された可能性もある。」

 

レナ「……え?」

 

主任「アリアを総動員すれば、不可能じゃないわ。」

 

レナ「……。」

 

主任「ここは修理不能ね。」

 

レナ「残念です……。」

 

主任「他を当たりましょう。」

主任「まだ、生きてる場所があるかもしれない。」

 

レナ「はい!」

 

二時間後。

 

二人は別の制御室にいた。

エレベーター制御室だ。

 

主任「ここも……ダメね。」

 

レナ「さっきと同じです……。」

 

主任「……あ。」

 

主任が制御盤を覗き込む。

 

主任「ここなら、いけるかも。」

 

レナ「どうしてですか?」

 

主任「非常用電源で動いてる制御盤なの。」

 

レナ「なるほど!」

 

二人はエレベーター内部に入り、作業を開始した。

数分後。

 

照明が、点いた。

 

限定的だが、停電が復旧した。

 

イズモ「お待たせー。」

 

主任「イズモ三佐。」

 

レナ「……この人は?」

 

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