エグゼレコード   作:バームクーヘン753

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第2章 絆のクロスフュージョン①

 神浜を再び訪れたいろはは小さなキュゥべえを探すことにした。しかし手がかりのない中探しても一向に見つかる気配はない。

どうしようと途方にくれていたところ、誰かが声をかけてきた。

 

「あ、やっぱりこの間の人だぁ」

「えっと…秋野、さん?」

 

 出会ったのは以前出会った魔法少女の秋野かえでだった。

かえでに小さいキュゥべえを探している事を伝えると、悩んだ末にある提案をしてきた。

 

「調整屋に行けばなにか分かるかも…」

「調整屋ですか?」

 

 調整屋とは神浜にいる一人の魔法少女が営んでいる場所で、そこでソウルジェムに手を加えることで魔力の強化などを行っているらしい。

かえでが所属しているチームの皆と合流して調整屋に行き情報を集めることにした。かえでに連れられて移動した先にはかえでの仲間がいた。

 

「あんたがかえでの言ってた子だね。私は十咎ももこ」

「……レナ」

 

 ももこが気さくに声をかけてきたのに対しレナの方はぶっきらぼうに自分の名前だけ告げた。

こう言う奴だから気にしないでくれとももこに言われていろはは頷き、みんなと一緒に調整屋へ向かった。

 

 

 

「いらっしゃいー」

 

 調整屋に入ると銀髪の女性が挨拶をしてきた。彼女が調整屋を営んでいる八雲みたまという魔法少女のようだ。

いろははみたまに小さいキュゥべえについて知らないか尋ねるも、そんなキュゥべえはみたことないと言われてしまう。

 

「そうですか……」

「ごめんなさい。代わりと言ってはなんだけど、いろはちゃんも調整していったらどうかしら?」

 

 みたまの提案にPETの中にいる黒江が賛同する。

 

「いいんじゃないかな。この街で行動するならいろはも強くなっておいた方がいいよ」

「そうだよね……ももこさんも調整してもらっているんですか?」

「ああ、言ってなかったっけ。アタシとレナはただのネットバトラーで魔法少女じゃないんだよ」

「そうだったんですか?」

 

 かえでとチームを組んではいるものの魔法少女なのはかえでだけで他の二人は魔法少女ではないらしい。

ともかくいろははみたまの調整を受けることにした。自分のソウルジェムに他人が干渉する感覚は今まで経験したことのない不思議な気分だった。

調整を終えたいろはに黒江が声をかける。

 

「いろは、どう?」

「うーん……よく分からないよ」

 

 少しスッキリした気はするが何かが明確に変わったも思えずいろはは困惑していた。

そこでいろははみたまにある質問をした。

 

「あの、みたまさん。私のソウルジェムを調整してなにか見えませんでしたか?もしかして私の忘れていたことが見えたり……」

「えっと……それがよく分からなかったのよぉ。ごめんね」

 

 みたまの返答にいろはは残念そうに肩を落とした。そんないろはを見ながらみたまは内心疑問を抱いていた。

 

(あの記憶の閉ざされ方……人為的なものね。いろはちゃんの記憶は誰かが意図して封じている……でも、一体誰が?)

 

 PETの中で黒江はこの話を聞いていた。

その顔は、どこか安堵しているようにも見えた。

 

 

 

 

 

 数日後、いろはのPETにももこからメールが届いた。

なにか小さいキュゥべえについて分かったのかといろはが尋ねるとどうやらそんな場合ではなくなってしまったようだった。

 

「かえでちゃんがいなくなった!?」

「ああ…」

 

 ももこ達が言うには、いつものようにかえでとレナが喧嘩してそれをももこが仲裁していたのだがかえでが謝った途端に何者かがかえでを連れ去ったという。

 

「魔女の仕業ですか!?」

「いや……魔女とは違う雰囲気だった」

 

 ともかくいろはもかえでが危ないと知り急ぎ神浜に向かった。ももこ達と合流すると調整屋へと向かう。

ももこがみたまに何か知っていることはないかと相談するとみたまが応援を呼ぶと言ってくれたらしい。

そうして調整屋に向かうとそこにはみたまと一人の少年がいた。

 

「オフィシャルネットバトラーの伊集院炎山だ…話は八雲から聞いている」

「オフィシャルか…」

「どうしてみたまさんがオフィシャルの人を呼べるんですか…?」

 

 いろはが尋ねるとみたまは炎山を後ろから抱きしめて話し始める。

 

「炎山とは東西抗争の時からの付き合いでねー。あれから色々助けてもらっているのよ」

 

 炎山は頬を摺り合わせてくるみたまを引き剥がすと咳払いをして話を再開する。

 

「秋野かえでを拐ったものの正体だが……おそらくウワサと呼ばれている奴だろう」

「マジかよ…」

「ウワサ…ですか?」

 

 いろはがどういうことか尋ねる。

ウワサというのは最近神浜でまことしやかに囁かれている怪異のことで、ネットにもその情報が出回っているらしい。

ももこは不服そうに口を開く。

 

「あんまりそういうの信じたくないんだけどな…」

「残念だが今のところその可能性が最も高い」

「それで、どうすればかえでちゃんを助けられるんですか?」

「俺にも詳しいことは分からん。だから詳しい奴を呼んだ」

 

 炎山がそう告げたタイミングで調整屋に一人の訪問者が現れた。その人物の顔を見ていろははあっと声を漏らす。

 

「あなた……結局来てしまったのね」

「七海さん…」

 

 やって来たのはやちよだった。ももこは炎山に小声で愚痴を言う。

 

「なんでこの人呼んじゃったんだよ」

「俺達はウワサについてあまりにも知識がない…詳しい奴を呼ぶのは当然だろう

「まあ…そうだけどさ。十七夜さんはどうしたんだよ」

「あいつはバイト中だ」

 

 やちよはももこ達の話から今回かえでを連れ去ったウワサは絶交階段のウワサだろうと説明した。

絶交するほど喧嘩した二人のうち、仲直りの謝罪をした方を引きずり込むというウワサだ。その話を聞いてももこは納得したような様子を見せる。

 

「たしかにあそこには階段もあったな…」

「決まりね。ところで、あなたもついてくるの?」

 

 やちよがいろはの同行を渋るとそれを炎山が制した。

 

「相手がウワサとなれば魔法少女の数が多いのに越したことはない。それに…どうせこいつらもついてくるだろう」

 

 炎山がももことレナを目配せする。やちよはそれを見てため息をついた。

 

 

 

 そしていろは達が外に出て絶交階段のウワサを呼び出すことにした。

謝罪の言葉を口にしておびき出す作戦を立てて現れるまで何度も試す。そうして繰り返しているうちに、とうとうその入口が現れた。

 やちよが引きずり込もうとする手を槍で切り捨てると皆で次々とウワサの空間内へと突入する。その先では……

 

「……」

「ガルル……」

 

「ここにもウイルスが…」

 

 ウワサの空間内ではガルーやキオルシンと言ったウイルス達が蔓延っていた。

炎山はこの様子を見てやちよに話しかける。

 

「お前の話通り、やはり実体化ウイルスも現れたか」

「ええ……」

「ともあれば、科学省へ要請は必要ないな。行くぞ!」

 

 炎山は一枚のチップを取り出すと、PETへスロットインする。

 

「クロスフュージョン!」

 

 次の瞬間、炎山とそのナビブルースが一つに合体した。

驚愕するいろはに黒江が落ち着いて話をする。

 

「あれがクロスフュージョン…人間とネットナビの融合。人とナビの新しい未来だよ」

「クロスフュージョン……」

 

 やちよはいろはに向かって口を開く。

 

「あなたはそこでももこ達を守ってなさい」

「え?」

「秋野かえでの救出は俺達でする。二人を守ってやれ」

 

 炎山とやちよはウイルスの群れに向かって突っ込んでいく。

やちよの放つ槍が次々とウイルスをデリートしていき、炎山の素早いフミコミもみるみるうちにウイルス達を切り捨てていく。

やがて絶交階段が本性を出し手下達を仕向けるもそれすらやちよと炎山は容易く退ける。

 

「す、凄い…」

「こうなるとアタシら見てるだけだな…」

 

 感嘆するいろはに半ば引き気味のももこは後方からこの戦闘を眺めるしか出来なかった。

 

「はぁっ!」

「ソニックブーム!!」

 

 やちよと炎山の一撃が絶交階段に大ダメージを与え、それにより捕らえられていたかえでが解放された。

やちよがかえでを受け止めて炎山も無事を確認する。これで終わりかと思われた瞬間、いろはが二人を背後から狙う存在に気がついた。

 

「あ、危ない!」

 

 いろはの放った矢が迫り来るコウモリを撃ち抜いた。

背後に迫る存在に感づいた炎山とやちよが警戒すると、そこへ一つの影が現れた。

 

「邪魔が入ったか」

「お前は…」

 

「キキキ……だが嬉しいよ。こんなにデザートの方から乗り込んできてくれるとはね!」

 

 そこにいたのはコウモリ型のダークロイド、シェードマンだった。

 

 




ウワサに攫われたかえでを助けに行ったはずなのにシェードマンに出くわすダイス特有のライブ感
あんまりにもあんまりなので絶交階段君にも出番を用意しました

この章全体的にダイスが暴れててだいぶ酷かった
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