「おじょうさま」が嫌だっただけなのに   作:はがねジムのファン

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独自解釈とかが強いです。おそらくイッシュに近いどこか。


「おじょうさま」が嫌だっただけなのに

 元を辿れば出奔したのが一つ目の失敗だった。

 兄が「おぼっちゃま」となり、「ジェントルマン」の祖父や「マダム」の祖母と出会う内、自分がこの先「おじょうさま」になるのだと理解してしまったからだ。

 灰色と黄色の作業着を身にまといながら深くため息を吐くと、ひたすら幸せが逃げていく音がする。もはや見慣れてしまった胸板から突き出す二つの丘、それを包む布を灰色の作業衣で覆い隠す。

 「幸せは奪い取れ」なんて過激なことを言う輩が周囲には沢山いるが、絶賛身から零れ落ちている最中なんだ。いかにこれ以上落とさないか、こればかり考えてしまう。

 赤と白のツートンカラーのボールを放り投げると、中から金属質な生き物が現れた。

 

「ごめんね、コマっちゃん。オレンの実しか持たせられないや」

 

 二つ目の失敗は、この世界のルールを理解するのが遅かったこと。

 きっと出奔していなければ、きちんと教わる事ができたのだろう。何せ10歳で家を飛び出したんだから。

 この世界には素養、才能による差が明確に存在した。前世で遊んでいたゲームのときのように、好き勝手に手持ちを入れ替えたりは出来なかった。

 「俺」には「チャンピオン」になる素養が、才能がなかった。

 レベルを上げ、様々な戦術を考えたところで、才能と相性には敵わない。

 リーグの四天王を終ぞ突破できず、俺の「トレーナー生」はその時終わったと思ったのだ。

 この選択も失敗にカウントしても良いが、あの時はきっと満足していたのだ。自身の限界を知り、引き際だと感じてしまったのだ。

 

 三つ目の失敗、それは就職の失敗だった。

 10の時にトレーナーカードを手に入れそのまま家を飛び出し、各地を旅し、仲間を増やしジム巡りをし。16歳にしてそんなちゃらんぽらんな俺を二つ返事で採用した企業、疑うべきだった。

 俺は全てにおいて世間知らずだった。

 

 持たせたオレンの実を不思議そうに眺め、気に入ったのか両手で抱えてにこりとするコマっちゃん。そんな姿に思わずこちらも笑みが溢れる。

 

「コマっちゃんは可愛いねえ。……ごめんね、付き合わせて」

 

 明らかに裏の組織と繋がっている系のフロント企業。

 初めは本当に雑用だった。少し厳しい、……かなり横暴な上司にあれこれ指示をされ。セクハラなんてものをこの身で経験するとは思わなかった。

 ふと思ったが俺の年齢的にクソロリコンだなアイツ。

 

 何かの拍子にトレーナーカードのバッジを見られ、手持ちの仲間を上納するよう求められた。絶対に嫌だと泣いて抵抗したが、気づいた時にはこの通り、手持ちは配給されたコマタナ1匹。

 俺は裏の組織たる「スティール団」、その下っ端になっていた。

 

「……よし、絶対取り戻す、今はまだ雌伏の時だ」

 

 既に、スティール団幹部の4人が俺の仲間を手持ちに入れていることは分かっている。ただ力尽くでもバトルでも今は奪い返せない。接触の機会が少なすぎる上、バトルでは刃が立たない。

 コマタナをキリキザンに進化させ、下剋上を果たし組織を滅茶苦茶のぐちゃぐちゃにしてやるのだ。

 

 そして今日だ。

 復讐を誓ってから上司や幹部に対して媚びに媚びまくり、好感度を稼ぎまくったが故か、大事なミッションを任されることになった。

 ミッション名は―――

 

 

 

 

 

 

 改めて、俺は転生者である。ついでにいうと、この世界に似た世界観を持つゲーム「ポケットモンスター」の存在する世界からの、転生者である。

 ポケモンを捕まえて、倒して、戦わせて、そんな世界を何となく受け入れることが出来た。

 俺が「おじょうさま」になる運命を理解し、許嫁を連れてこられた時、この家を出ようと思った。前世の知識を活用して生きていこうと思った。だって、男と婚姻なんて御免だし、子供なんてもっと嫌だった。

 

 ただ、俺の生きるこの世界は、少なくとも「主人公から見た世界」ではなかった。

 俺にはすべてのポケモンを捕まえる素養が無かった。

 「はがねタイプを持つポケモン」しか捕まえられなかったし、育てられなかった。

 きっと、この世界にいる人たちは「俺みたいな素養」の人が殆どなのだと、その時理解した。

 

 だから。

 俺はきっと今、伝説を見ているのだ。

 

 配給されたコマタナ、もとい俺のコマっちゃんは力なく倒れ、モンスターボールに帰ってきた。

 

 

「まだ、やりますか」

「コマっちゃん……、ごめん」

 

 その帽子を被った少女は、手持ちが6匹だった。

 この世界では、自分の素養を超える数手持ちにポケモンを入れると非常に重たく感じる。私は5匹が限界だった。

 その帽子を被った少女は、手持ちのポケモンのタイプが全て異なっていた。

 ほのお、くさ、ノーマル、ひこう、むし、みず。少なくともポケモンジム、リーグ四天王は俺と似たような、「特定のタイプを持つポケモンを育てられる」という才能だった。他にも、「海辺に住むポケモンを育てられる」といった才能も見たことはあった。

 目の前の少女の持つその才能は少なくともその枠に当てはまらない。うわさに聞く、「チャンピオン」と同等の才能を持っているはずだ。

 

「……君みたいな子がチャンピオンになるのかね」

「えっ?」

「何でもない、完敗だよ。でも―――」

 

 黒煙と大きな音で空間が満たされる。背後の巨体が動き出した音がする。

 目的は達成された。

 

 「船を盗む」なんて初め聞いた時は度肝を抜かされたが、こうして成功してしまうのだから恐ろしい。これがきっとゲームの世界なら捕まってしまったり失敗に終わったりしたのだろうか。俺が最後っ屁の時間稼ぎをするだけでどうにかなってしまうのだから、この世界の警察は何をしているのやら。

 

 初の実働部隊入りでまさかトレーナーの天才、「主人公」と遭遇するなんて思わなかったけど、好感度稼ぎは上手くいったはずだ。

 正直に言うと、とても縋りたい。きっと頼まずともこの人は「帽子を被る人」だから悪の組織はきっと潰れる運命なのだろう。そして俺も捕まる。

 だから、それまでに、それまでに俺の仲間を取り戻さないと。

 

 なんて考えているうちに、船がどんどんと離れていっていた。

 

「あ、待って、おっ私、私まだ乗ってません……!!」

 

 普段の2倍くらいの速さで駆けてギリギリ船に飛びつくことができた。

 大義を果たす前に捕まるのだけは勘弁願いたい。




手持ちの才能云々は、pkmnとトレーナーの相性から上手く飼育できるタイプや系統、数に制限がある感じ。この「したっぱ」ははがねタイプに気に入られる一方他のタイプから苦手にされている、みたいな。
6文字時空なので「コマっちゃん」は正式なニックネーム。

「帽子を被った少女」は恒例の主人公枠。最近のキャラメイク仕様から男の娘である可能性も無きにしも非ず。

ちなみにこの地方のリーグの仕様
・四天王は連戦。バトル間の回復なし
・タイプはかくとう、ほのお、じめん、みず

以上。続かない

避けろ!◯◯!!

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