「おじょうさま」が嫌だっただけなのに 作:はがねジムのファン
前話は下書きの中に埋もれていた、いつ書いたかわからない奴だったので書き方を忘れております。
ご注意を。
……おや!? したっぱの 様子が……!
幹部らに呼び出され、爪を研いでいるのが遂にバレたかと冷や冷やしたが、なんと「下っ端」ではなくなり役職が付いた。
決定的だったのはいつかの「船の奪取」だったそうだが、問題は俺が「帽子を被った少女」の襲撃に遭いつつもミッションを完遂したことにあった。
何度もミッションをオジャンにされ危険人物と指定していた奴。俺の予想では彼女は「主人公」でありこの組織壊滅の鍵であると考えている存在。
そんな少女に何度も負け続けその度に作戦も失敗しており、部下のモチベもだいぶ下がっている。それをどうにかするために、ミッションを完遂させた俺を評価し、下っ端のモチベを高めたいらしい。
あってないような役職だが、それでも下っ端は卒業してしまった。
「これでもう下っ端じゃねえな!」
そう俺の肩を強く叩きながら空元気に応援してくれた同期には申し訳ないが、役職についてはあまり興味がない。
そして今現在、俺の心情はそれどころではなかった。
一目を避けるように自室に戻り、何度もトレーナーカードのIDと手に持つモンスターボールに表示される番号を見比べる。
手が震えて見づらいが、間違いなく、同じ番号だ。
中から飛び出してきたのは、見覚えのある傷を鎧につけたシュバルゴ。俺の奪われた手持ちの1匹だ。
あたりをキョロキョロと見渡して、久方ぶりに俺の顔を見たのだろう。少し硬直してから、スッと表情を和らげた。
最後に見たのは、幹部の手持ちであるハガネールのほのおのきばを俺から守ってくれた時だったか。
「す、ズバルぅぅ〜! 遭いたかったぞぉ!」
ほのおタイプの攻撃に極端に弱い、久しぶりに触れたその鎧。
はがねタイプの通り、ひんやりはしているのだが、その時ばかりはなんだか妙に暖かいような気がした。
再会の涙が乾ききったあと、もはや着慣れてしまった「スティールスーツ」なんて呼ばれていたりもするピチピチのボディスーツのような作業着を脱ぎ、寝巻きに着替える。
スティール団の悪行さえなければ「何かのコスプレか」とも言われそうなソレ卒業し、次からは新たに支給された服を身に纏うことになっているらしい。
まだ、新しい制服の方が良いような気がする。胸とか足の太さが気にならないし。
……少し思考が飛んでしまった。
女性の体に慣れたとは思っていてもふとした拍子に違和感が生まれるので、相変わらず気持ち悪い奴。
ともあれ。
俺の目標は「幹部」から仲間を取り戻すこと。
目的完遂のため、幹部の趣味嗜好から業務のスケジュールに日頃のルーティーンまで調べられることは調べまくっていたが、「帽子の少女」と出会ってからふと作業の手が止まった。
思い出すのはもはや十数年以上前の、前世の記憶。記憶の引っ掛かりがポケモン関係以外にほぼないため、このままだと消えてしまいそうに感じる朧げな記憶の中のゲームの記憶。
そこでは大体「主人公」は敵幹部と戦い、勝利をする。
「接触しにくい幹部の奴らより、あの子追った方が良いのでは?」
予想は的中した。
彼女の動向を追っていた俺は、幹部の任務地である研究所近くの街に足を運んでいることを知り、何とか雑用として滑り込んだ。
あとは、彼女が全て場を整えてくれたに過ぎない。
「幹部」と「帽子の少女」の戦いはかつて挑んだリーグ四天王にも迫る苛烈なものだったが、最終的にはご都合主義のような結末を迎えた。
「幹部」は彼女の相棒であるマグマラシのかえんぐるまのトドメで敗れ、そのラストアタックの余波で大きく吹き飛ばされ失神。
気絶した幹部を介抱ないし回収するふりをして、懐から4つ全てのモンスターボールを抜いた。幸い他の3匹も誰かから奪ったものであるようだし、真っ先に俺が疑われることはないだろう。
意図したものか偶然なのか、スティール団は団員の多くがはがねタイプと相性が良い。特に幹部は間違いなくはがねタイプの使いてだ。俺の仲間を切り札として扱っていた幹部に思うところが無いわけではないが、何はともあれ戻ってきたのだ。
他の仲間も今回のように「主人公」を使いヒットアンドアウェイで回収していけば、案外すんなりと全員取り戻せるのではないか。
なんて思っていた時期が、俺にもありました。
「っ、キノガッサ、コマタナにマッハパンチ! シキジカ、にほんばれ!」
「スバルっ、ファストガード! コマっちゃんはつめとぎ!」
幹部の主導する作戦に参加する、ということは当然乗り込んでくる「帽子の少女」とは敵対する訳で。
マグマラシを警戒して咄嗟にダブルバトルに持ち込んだおかげか奇跡的に上手く噛み合った。マグマラシの消耗を抑えたかったのだろうか。
「そのポケモン、どうして貴女が……っ」
「コマっちゃ、シキジカにれんぞくぎり!」
俺のスバルが幹部の持っていたシュバルゴと同じだと気づいたようだが、それに応えることなく、コマっちゃんに指示を出す。
シキジカに「にほんばれ」を使われた以上、マグマラシに交代されたらお終いだ。
手持ちの時点で二体六。時間稼ぎと言っても多勢に無勢。
出来ることなら消耗させてやりたいし、こうして戦っていると制服のように灰色の脳細胞がビビビと刺激されて「もしかしたら」なんて考えてしまうし。
この特殊な磁場を放つ洞窟でなら、そう多くないはがねポケモンも何匹か捕まえられたのに。コイルやギアル、運が良ければハガネールやドリュウズとも出会えたかもしれない。
そうすれば、この目の前のトレーナーに敵うやも。
「キノガッサ!」
「……スバル、ファストガードだ!」
「コマタナにフェイント!」
完全に判断ミスだった。
キノガッサ相手だとコマっちゃんがかなり不利。ただマグマラシと交代されるとどっちも駄目。その上俺は、勝負の最中に一体何を考えていた。
タイプ相性だってあるだろうに、俺の指示ミスのせいか完全に虚をつかれたコマっちゃんがフェイントで大きく弾き飛ばされる。
「続けてはっけい!」
「コマっ……スバルっ、シザークロス! キノガッサに!」
コマっちゃんは見るからに指示を聞ける様子ではない。咄嗟にスバルへ指示を出すことはできたが、シュバルゴは種族的にとても遅い。
結局はっけいを止めることは叶わず、間に合わなかった。
あとはもう、俺の指示出しを完全に読むようにフェイントとはっけい、やどりぎのタネを使われてジリ貧に追いやられ、呆気なくやられた。
俺は、負けたのだった。
……いや、負けていいんだ。俺が負けて、「幹部」も負けて。奪われたポケモンを奪い返す。元よりこうなることを想定していた。むしろ無駄に消耗させないことこそが俺の悲願達成につながったじゃないか。
もっと、冷静になれ。
「カタコ、さん」
「んえ? 名前、名乗ったっけ…」
カタコ。タカコじゃないのか、と何度思ったことか。
この名前のせいで、はがねタイプにしか好かれないのではないか、と真剣に改名しようか悩んだりしたが、両親からの人生初プレゼントを手放せるわけもなく。
「……正直、貴女のこと、もっと弱いと思ってました」
「し、辛辣だなぁ……」
「シュバルゴのことも……。終わったら、全部終わったら、ちゃんと話してください」
見送った「主人公」ことイチカは悩んでいるような、悲しんでいるような、不思議な顔だった。
それでも幹部をコテンパンにし、俺にポケモンを奪い返す機会をくれるのだから恐ろしい。
戻ってきたのはドータクンのドク。
残り3匹。それで俺がスティール団にい続ける理由がなくなる。
「主人公」ことイチカが関わっている時点で、組織はぶっ潰れるか、更生するか、雲隠れするかの三択くらいしか残されていない。正直言うと、一番可能性として高いのがぶっ潰れるだと思っているが。
「全部終わったら、かぁ」
ポケモンを全員奪い返した時、イチカがボスを倒した時、スティール団が壊滅した時。
全部終わった時、俺は何をしているんだろう。
「ドクはひんやりしてて良いなぁ……」
スバルがじとっと睨んできているが、たいねつを持つドクのひんやりさは誰にも負けないんだ。すまない。
ドクの体をペタペタ触りながらも、ふと考える。
「ドクって、トリックルーム覚えたよな?」
赤い模様のような目でイエスと返される。
トリックルームを使えていれば遅い奴ほど早く動けたはず。スバルのシザークロスも届いて、かなりのダメージを与えられた。おまけにドクはたいねつだからマグマラシにも強く出られた。
そうすれば、もしかしたら。
「……負けちゃったんだな」
どうしても考えてしまう。
久しぶりに、バトルを楽しいと思ってしまったのは何故だろう。
スバルが帰ってきたから、だろうか。それとも……。
おめでとう!
したっぱは 元したっぱに 進化した!
「下っ端」→「元下っ端」 カタコ
異世界TS転生者、本来ならば「おじょうさま」だった女の子
「主人公」 イチカ
帽子を被った少女、「カズト」を名乗る少年だったかもしれない子
私自身おすすめパーティでギリギリマスターランク行けたくらいの実力しかないので、バトル描写はダイジェスト+アニポケ寄り。
続く……けど、書けるかは分からない。
読了感謝。
避けろ!◯◯!!
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アリ
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ナシ