「おじょうさま」が嫌だっただけなのに   作:はがねジムのファン

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赤バーになったので続きました。
ただし、もともと色々ふんわりした世界なのでひたすらダイジェストです。あと「避けろ〇〇!」のナシ派が想像より多めだったので戦闘シーンは全カットです。



3戦目(さいご)

「コマっちゃん改め、キリっちゃん……かな」

 

 恐ろしい速さで首を横に振りまくるコマタナのコマっちゃん、改めキリキザンのコマっちゃん。

 遠くの地方には「かしら破り」なるキリキザン同士で決闘をすることで進化する方法があると聞くが、この地方ではそう言った進化方法は伝えられていない。と言うことはこれで進化打ち止めということだろう。

 

 ついにここまで来てしまった。

 初めはLV.5だったコマタナが進化するレベルになった。そう言った感慨もあるが、今この時は本当に色々な意味が含まれていた。

 

「カタコ様! 用意が出来ました!」

「うん、ありがとう。……むず痒いからその『様』というの辞めません?」

 

 全力で拒否された。

 何故だ、「幹部」を様付けで呼ぶのは暗黙の了解であって、規則ではない。俺が要らないと言えば、それで終わると思ったのだが。

 

 一つ、俺は「幹部」になってしまった。意味不明である。

 二つ、俺たちスティール団は「伝説のタカラ島」に辿り着いた。

 コマタナの進化はこれら二つの要因に重なったものだ。故に本当に色々な感情が爆発しそうで困る。

 

 おい、ボスがお呼びだ。

 そう残る幹部二人に呼び出されたのがこの妙な状況になるきっかけであった。

 結論から言うと俺のポケモン奪還は普通にボスにバレており、大人しく手放すか、手放さないなら然るべき立場に付け、そう言われた訳だ。

 まあ手持ちが急に増えるのは当然違和感がある。敗北した「幹部」が片や行方知れず、片やひたすらダンマリを続けていても、俺の増えた手持ちからは流石に明らかだった、と言う訳だ。

 当然ながら俺は手放すつもりはない、と以前より遥かに語気を強くして言い放った。

 

「それがこの腕章になる、かあ」

 

 ポケモンの技を人間に向ける、と言う経験したことのない状況を起こした奴の腕章。あの時スバルが庇ってくれなければ、火傷どころでは済まなかったかもしれない。

 だから、少しいい気味だ。なんて思ってしまう俺自身に嫌気がさす。

 腕章を撫でながら、溜息を付いてしまった。

 

「コマっちゃん、きっともうすぐ……。もう直ぐだから」

 

 きっと彼女はこのタカラ島に何らかの手段でやってくるだろう。

 コマっちゃんが進化するきっかけとなった、いわゆる御前試合。

 他の「幹部」とバトルして勝って、勝って。もしかすると初めからこうしていれば、ここまで時間をかけなくて済んだのかもと頭をよぎりつつ。

 この腕章を持っていた方からはポケモンを奪い返して、もう片方もと考えていたがボスに止められ「とある約束」をして預ける形で留めた。

 

 スティール団が目指したこの「タカラ島」。「伝説の」、なんて言うんだ。

 ポケットモンスターのゲームでは「伝説の」と言えば特別な意味を持つ。だからきっと最終決戦のような場所になる、そんな予感がするのだ。

 

 背の高くなったコマっちゃんの頭を撫でながら、装置を起動した。

 

 

 

 

 伝説の宝島に眠る、伝説の秘宝。至極ありふれた伝説。

 ボスはそれを手に入れるために、こんな組織を作り上げた人だ。絶対に手に入れる、そのためだったら何だってやる、いわば執念の人だ。

 個人的な思いや前世の知識を踏まえると、ここには何もなく、ただ伝説ポケモンが眠っているか、本当に何もないか……そんなところだろう。

 

 4箇所で動作する掘削機の動力装置、それを守護するのが俺たち「幹部」の使命、となっている。

 一人が自身の敗北を有耶無耶にしたいのか行方知れずになっているので、実際に「幹部」が守護しているのは3つ。1つは幹部の証である腕章を奪われた奴が守護している。

 

 なんて考えていると、ついに待ち人が現れた。

 帽子を被った女の子。俺がジム巡りしていた時くらいの見た目、そして俺と同じくジムバッジも8個と制覇している。しいて俺との違いを考えるなら、帽子を被っているかいないか、だろうか。

 

「カタコさん……?」

「おい。持ってきてやったぞ」

 

 こっちも待っていた。裏道を通ってきた「幹部」からボールを二個、手渡される。

 これで、シュバルゴ、ドータクン、エアームド、ジバコイル、メタグロスの五匹。ジバコイルのコッツン、メタグロスのバルタは久しぶりに帰ってきて早々だけど、俺を手助けして欲しい。

 ボールから出して抱きしめて、ひとしきり撫でてひんやり感を楽しんだところで、我に返る。

 

「……」

「何ですか。……ふぅ、私の言った通り、強かったでしょう?」

「まあな、手も足も出なかった。クソッ」

 

 あの子に負けたらポケモンを返す。

 そう約束をして守ったことを考えるに、こいつも根は悪い奴じゃないのかも知れない。

 何度か呼吸を整えて、ベルトに帰ってきたボール二つを付ける。

 

「まあ色々ありまして襲名というか下剋上というかで、幹部になりました」

「……他の幹部達のポケモンは、カタコさんのポケモンだったの?」

「ええ、もう何年も会えていなかったので、感動の再会というアレですね」

 

 エアームドも、なんてボソリと言っていたが誰かから聞いたのだろうか。

 ともあれ、先ほどのスキンシップを感動の再会の一部としてさっさと忘れてもらいたい。

 

「……するんですよね、バトル」

「そうですね……ふぅ、うん。しようか、バトル」

 

 短い期間だったが、もう幹部としての俺は辞めよう。スティール団としての俺も、また。被っていた仮面を脱ぎ捨て、可能な限り素の自分に近づける。

 今この瞬間だけは、全力でバトルをしたい。そういう気持ちでいっぱいだった。

 

 俺はそっと手を添えて、コマっちゃんの入ったボールをベルトから外す。

 違和感。

 

「持てる……」

 

 何で?

 あれだけ持とうとしても持てなかった6つのボールが一時的にとは言え、持てていた。

 あれだけ頑張って負けて、勝てなくて、何度も繰り返して、どうしても勝てなくて、実力を思い知って、諦めて、それで。それで。

 どうして今、持つことが出来るんだよ。

 

 成長した、ということか。

 とっくに諦めていた、冷め切っていた熱が戻り始めているような感覚がする。

 俺はもしかするとまだ、やれるのかも知れない。

 外したコマっちゃんのボールをそっと戻す。最後の戦いの時、誰を外すか悩み最終的に選んだコマっちゃんだが、応えてくれるだろうか。

 

「……全部終わったら、またリーグ制覇、目指そうかな」

「えっ?」

「いいや、こっちの話。……バトルしよう、元ジムバッジ制覇の実力、見せてやる!」

 

 とりあえず、全力でぶつかる。

 かつてやっていたことだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は負けた。

 その後細かい部分は覚えていない。ただイチカの向かったボスのいる島の最奥が雷のような音と光に包まれたのを確かに見た。




下っ端が元下っ端を経て、幹部になるサクセス悪役。
3戦目(さいご)、正確には主人公から見た時の本編中最後のカタコ戦。

素養で持てる手持ち数が決まると言っておいて手持ち数が増えたのは経年による成長か、転生者故の誤認識ストッパーによるものかまたはその両方。

もしかしたら小話が続くかも知れない。
もともと140字程度の妄想で始まったので細かいところはご容赦ください。

避けろ!◯◯!!

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