『私には最強の眼があるのだよ』系リコリス   作:涼宮 シ苑

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Episode 3:I love you

 

 

 

 

 『千束と共に居たいがために、千束と共に貫いた不殺を捨てるのか?』

 

 

 『……』

 

 

 『千束が知ったらどう思うか――』

 

 

 『司令』

 

 

 『……なんだ?』

 

 

 『勘違いされているようですが、私は殺しに抵抗がある訳ではないんですよ。不殺は(こうした方が)千束が喜ぶからそうしてるだけです』

 

 

 『それが貴様の本性か』

 

 

 『物騒な物言いですね。昔から変わりませんよ、私は』

 

 

 『そういうところだ。千束の前で同じ事が言えるのか?』

 

 

 『……』

 

 

 『……改めて言わせてもらうがな。やつに知られたらどうするつもりだ?』

 

 

 『そう、ですね……どうしましょうかね』

 

 

 『なんだ。貴様にして珍しいくらいに考え無しだな』

 

 

 『……その時はその時です。そうならないように善処はしますし――協力もして頂けるんでしょう?』

 

 

 『……結果を出せば何も言うまい』

 

 

 『なら、何も問題はありません』

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 初めて会った時。

 

 綺麗な顔したやつだと思った。

 

 他を寄せ付けないような美人という訳じゃない。

 

 寧ろその逆。

 

 包み込まれるような――

 

 母親とか姉ってのが居たんなら、こんな感じなんじゃねぇか。

 

 知らねえけど。

 

 

 

 

 そいつの名前は暁 刀那。

 

 

 千束(あいつ)がファーストリコリスになってすぐの頃、本部(ここ)に配属されたリコリスだ。

 

 年は私より二つ上。

 

 年の離れたリコリス同士の交流がほとんど行われていないDAで、刀那のように年下を構うのはかなり珍しかった。

 

 刀那が年下に慕われるのも当たり前だ。

 

 その中でも同じファーストリコリスだった千束とは特に仲が良かったように見えた。

 

 いや、他のリコリスたちを蔑ろにしていた訳じゃない。

 

 寧ろ誰であっても、これでもかってくらいに構い倒してたからな。

 

 それと比較してって話だから、千束への入れ込みの強さは目立った。

 

 それが当時の私はすごく気に食わなかったんだ。

 

 

 勘違いすんなッ!

 

 あの千束(バカ)の事なんかどうでもいいッ!

 

 どうでもいいんだが――

 

 

 ……それでもあいつの弱音を聴けるのは、私だけだったはずだ。

 

 「他に言えるヤツが居なかったから仕方なく」

 

 もしかしたら、千束はそう思っていたのかもしれない。

 

 しかし、それは大した問題じゃない。

 

 子供(ガキ)だった私は、そこに少なくない優越感を覚えていた。

 

 

 だからこれは、友達(ダチ)を奪われたと勘違いした子供の癇癪だ。

 

 だが、当時の私には許容出来ない事だった。

 

 

 

 私が一方的に刀那を嫌っていたのは言うまでもない。

 

 お互いが千束の傍にいる以上、会わないように立ち回るのは無理だし、そんな器用なこともできない。

 

 だから、一々構ってくる彼女を素っ気ない態度で追い払った。

 

 無視を決め込んだりもした。

 

 

 それでも、何事もなかったかのように優しくしてくるもんだから、余計意固地になって。

 

 苛立ちを感じない日はなかったな。

 

 今思えばバカみてぇな話だ。

 

 

 

 

 

 

 当時サードリコリスだった私にとって、刀那と千束(二人)は雲の上の存在だった。

 

 それでも必ず追いついて、追い越してやるって。

 

 そう意気込んで、死に物狂いで努力を重ねた。

 

 誰よりも戦果をあげてやると、手柄ばかり気にしてた。

 

 

 そんなある日のことだ。

 

 私と刀那、二人での任務が入った。

 

 なんでこいつとって、内心で悪態をつく。

 

 セカンドリコリス昇進を目前に控えた私に、ファーストリコリスとの共同任務で経験を積ませることが目的らしい。

 

 上からの命令は絶対だが、今回ばかりは不満を隠しきれない。

 

 だが、やるしかない。

 

 ここで拒否すれば、今までの努力が水の泡になるから。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 「へぇ~、刀那さんと先輩って仲悪かったんすね~」

 

 

 からかいやがって……

 

 だから言いたくなかったんだよっ……!

 

 

 事の発端はつい最近あったライセンス更新の時だ。

 

 DAのリコリスであるためには、定期的にマーダーライセンスの更新が必要である。

 

 普段であれば初日に片付ける案件だが、今回はタイミング悪く任務が連続したため、期限の最終日となってしまった。

 

 面倒くさいとかいう舐め腐った理由で最終日まで引き延ばす千束(ズボラ)とは違う。

 

 

 そして例に漏れず、ノコノコと顔を出して来やがった。

 

 まあ、それだけならいい。

 

 だが、刀那(あの人)も一緒に来てるなんて聴いてねぇぞ!

 

 

 そして私の姿を見つけるや否や、一目散に駆け寄って来て頭撫でられた。

 

 もうそんな歳でもねぇってのに。

 

 司令や他のリコリスたちが居る前でやってきたもんだから、その恥ずかしさたるや思い出したくもない。

 

 

 たきなが居なくなった後に来た新しい相棒、乙女 サクラには大層揶揄われた。

 

 そして、それは未だ継続中である。

 

 

 「それにしても、先輩って可愛いとこあるんすね!」

 

 「だぁぁぁああッ!うるっせぇ!」

 

 「痛っ!なんで殴るんスかっ!」

 

 

 私の横で頭を抱えて蹲るサクラ。

 

 人を食ったような態度が目立ち、目上の人間にもあまり敬意を払わない。

 

 すぐ頭に血が昇る悪癖があるが、射撃技術には目を見張るものがあり、その結晶でもあるセカンドリコリスの制服に身を包んでいる。

 

 

 「まあ、いいっス。それでそれでッ!?その任務でなんかあったんすよね!?」

 

 「はぁ?」

 

 「今の話の流れで何もなかったって方が不自然っす!二人の関係が大きく変わったような出来事があったんすよねッ!?」

 

 

 ここまでヒントみたいなものを散りばめた私も私だが、こうしてこいつに言われると何か腹立つな。

 

 

 「……大したことじゃねぇよ」

 

 「ああッ!誤魔化さないでくださいよぉ!」

 

 「休憩は終わりだ。行くぞ」

 

 

 公園のベンチから腰を上げ、持っていた空の缶ジュースをゴミ箱に投げ入れる。

 

 (やかま)しい背後からの声を意図的に無視しながら、次の巡回場所へと歩を進めた。

 

 

 ……言える訳ねぇ。

 

 

 

 『……ッ……大丈夫かい?フキ』

 

 

 

 手柄を急ぐあまりに敵を深追いし、敵の自爆に巻き込まれそうになったなんて。

 

 そしてその結果、刀那(あの人)に怪我を負わせることになったなんて――

 

 

 銃弾は弾けても、爆風までは弾けない。

 

 彼女は身を呈して私を守った。

 

 幸い、命に別条はなかったけど。

 

 刀那(あの人)の身体には傷跡が残ってしまった。

 

 リコリスに怪我など付き物だ。

 

 しかし、それが自分の所為で出来たとなれば話は別だった。

 

 それも、刀那の撤退指示を無視した結果なら尚更。

 

 

 

 『君が無事で良かった』

 

 

 

 刀那に言われた一言だ。

 

 何でなにも言わねぇ!?

 

 恨み言の一つくらいあるだろうがッ!

 

 当時の私は殴るように吐き出した。

 

 汚い言葉も沢山ぶつけた。

 

 

 それでも――

 

 

 

 『……そうか。君にそういう思いをさせてしまっていたのであれば、それは私の責任だ』

 

 

 『君はなにも悪くないんだ』

 

 

 『すまなかったね、フキ』

 

 

 『でもこれだけは覚えていてほしい』

 

 

 『姉が妹を守るのは当たり前のことなんだ』

 

 

 『そして君も等しく、私の妹だ』

 

 

 

 『私は君を愛している』

 

 

 

 

 

 「クソがぁぁッ!小恥ずかしいこと言いやがってぇ!!」

 

 「うわぁ!黙ったと思ったら急になんすかっ!?」

 

 

 隣に追いついてきたサクラに蹴りを見舞う。

 

 怪我をした刀那に会いに行ったときの出来事だ。二人だけの空間で、他に誰も居なかったのは幸いだった。

 

 あの人、多分大勢の前でも同じこと言えると思う。それも、大真面目に。

 

 

 ……言われた方が爆死するわっ!

 

 

 「お前も思い出させんなよっ!」

 

 「一体なにがあったんすか!?そんなヤバいことだったんすかっ!!?」

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 北押上駅、地下鉄のホーム。

 

 静寂に包まれ、閑散とした構内に見える人影。

 

 一人に向き合うカタチで立つ三人。

 

 乗客だと仮定しても不自然な配置であり、事実乗客ではない。

 

 

 それを証明するかのように、無数の銃痕を刻む電車が鎮座している。

 

 そして、心臓を貫かれ、こと切れた亡骸。

 

 事故などではないことは、誰の目から見ても明らかであった。

 

 

 

 「これで残りは3人だ。精々気張りたまえよ、テロリスト諸君」

 

 

 

 線の細い人影がそう言う。

 

 

 トーンの高い、しかし落ち着き払った声音。

 

 そして、華奢な体躯。

 

 

 少女であることがよく解る特徴である。

 

 しかし、そこに『普通の』とはつかないだろう。

 

 

 膝丈までのスカート形状の学生服は全身が紅色であり、両手には直刀タイプの細剣(サーベル)

 

 しっかり手入れのされた黒色の長髪に、目鼻立ちのはっきりとした顔立ち。

 

 左眼を覆う白色の眼帯が、全体の雰囲気を些か野暮ったくしているが、各パーツの配置がまた絶妙であり、世間一般の基準で美人といえるだろう。

 

 名を暁 刀那。

 

 日本の独立治安維持組織“DA”のファーストリコリスである。

 

 

 そんな彼女が、テロリストと呼称した目の前の男たち。

 

 無地の作業服にアサルトライフルを手に持った男が二人。

 

 アロハシャツに黒色のコート、萌黄色のみだれ髪に拳銃を持った男。

 

 

 「ったく、俺の大事な部下になにしてくれてんだよ」

 

 

 中央に立つ黒コートの男は、やれやれとでも言いたげな仕草を見せながら、そう言う。

 

 真に受けるなら、部下を大切にするリーダーといった感じだが、あまりショックを受けたようには見えない。

 

 そんな様子を感慨もなく、刀那は眺めていた。

 

 

 「嬢ちゃんとは長い付き合いになりそうだ。自己紹介だ。俺は“真島(まじま)”。戦争屋だ、宜しくな」

 

 

 小馬鹿にしたような態度で名乗る真島。

 

 

 「ふむ……?暁 刀那という。身分については伏せさせてほしい。短い間になるだろうが、宜しく頼む」

 

 

 一瞬思案した後、同じように名乗る。

 

 

 「……」

 

 「……なにかな?」

 

 「あぁ、いや。普通ここで名乗るもんなのかと思ってよ」

 

 

 真島の言に、刀那は自身になんらかの落ち度があったかと振り返る。

 

 仮にも秘密組織に属する者として、名を教えるのは確かにマズいのかもしれない。

 

 しかし、別段珍しい名前でもないし、リコリスという身分さえ伝えなければ大丈夫だと考えてのことだった。

 

 

 「名乗られたら名乗り返すのが礼儀ではないのかね?」

 

 「はっ!お前、面白れぇやつだな」

 

 「褒められているのかな?ありがとう。では――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「死にたまえ」

 

 

 呟くように。しかし、よく響く声。

 

 その一言とほぼ同時に振るわれる無慈悲な凶刃。

 

 予備動作の全てを省略した不可視の踏み込みと共に放たれたそれは、最早音速にも迫るような勢いである。

 

 狙いはリーダーと見られる真島の首筋。

 

 

 「くッッ!」

 

 

 横一文字の一閃。

 

 それを文字通りの紙一重で回避する。

 

 あとコンマ二秒反応が遅れていたら、首に直撃とまでは行かずとも、頭の上半分が吹き飛んでいたことだろう。

 

 そういう意味で、真島の反応速度や身体能力の高さがうかがえる。

 

 

 だが、刀那に焦りはない。

 

 

 

 「ぐほぉッ」

 

 

 

 続けて二撃目。

 

 回避したことにより下がった真島の顔面を蹴り飛ばした。

 

 

 真島が吹っ飛ばされたことによって、彼の立っていた位置に刀那が降り立つ。

 

 丁度、真島の部下二人に挟まれるような配置だ。

 

 そして、ここまで何も反応出来なかった二人がここで再起動を果たす。

 

 

 

 「くっそぉッッ!!」

 

 

 

 真ん中に立つ刀那に向けて、アサルトライフルを撃つ。

 

 一見冷静さを失ったような射撃だが、同士撃ちを考慮し、お互いの射線が外れる位置からの射撃。

 

 彼らがただのごろつきではなく、実戦を重ねたテロリストであることが解る光景だ。

 

 

 距離にしてほぼゼロ。

 

 外すなど在り得ない。

 

 

 

 

 斜め前方、二方向から迫る銃弾の嵐。

 

 人の反応速度を遥かに上回る鉄塊。

 

 回避はおろか、視認することすら不可能――

 

 

 

 

 ――キンッ

 

 

 

 だったはずだ。

 

 

 

 

 

 煌めく銀閃と共に、弾丸が不規則な挙動で逸れる。

 

 そして、遅れて聞こえる着弾音。

 

 

 なんてことはない。

 

 刀那は自身に当たる銃弾だけを的確に弾いてみせたのだ。

 

 

 銃という兵器にとって、マズルフラッシュと同時に着弾する距離というのは、在って無いのと同じである。

 

 

 弾道を予測して回避出来れば、最早それは神の領域。

 

 如何に優れた視力を持っていようとも、銃弾の速さに追い付くことなど不可能。

 

 千束が専ら回避という手段をとるのがそのためだ。

 

 

 

 だが、刀那は別である。

 

 弾道を見切り、そこに刃を滑り込ませる。

 

 自身の速度を損なわない跳弾角度を瞬時に計算する演算能力。

 

 それを実行し得る精神力と、人外染みた身体能力。

 

 

 人間という種の()()を突破し得る天才。

 

 それが暁 刀那を最強たらしめる所以である。

 

 

 

 回避という手段を用いない都合上、最短距離で接敵することが出来る。

 

 そしてこの間合いは、既に刀那の確殺圏内である。

 

 

 故に――

 

 

 

 「あ~……こりゃ、本気でやべぇな」

 

 

 

 蹴り飛ばされた真島が復活する頃、物言わぬ亡骸が三つに増えていたところで、何ら不思議ではないのだ。

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 閑散とした駅構内。

 

 夕方に迫る時間帯をして、乗客が一人たりとも存在しないというのは、些か奇妙な光景に見える。

 

 それこそ、ここ日本の首都の一駅としては在り得ないとも言えるだろう。

 

 

 そんな場所において、一般市民が一生お目にかかる事がないであろう、演舞が繰り広げられていた。

 

 

 瞬く銀閃と発火炎。

 

 響き渡る風切り音と銃声。

 

 

 息つく暇もない猛攻を披露する刀那と、一瞬の隙を的確に突いて発砲する真島。

 

 殺し合いという極限状態において尚、二人の動きに曇りはない。

 

 手数と技巧。

 

 双方の釣り合った戦闘スタイルから、戦況は互角のようにも思える。

 

 

 しかし、状況は刀那の圧倒的優勢で遷移していた。

 

 

 

 「ハァ……ハァ……」

 

 

 

 激しい動悸と乱れる呼吸。

 

 それらを整えようという焦りからか、中々上手くいかない。

 

 真島は内心で舌打ちをした。

 

 

 死に瀕する状況など腐るほど体験してきた。

 

 故に緊張などといったことはない。

 

 しかしそれは、「勝てる」という見込みがあってのことだ。

 

 

 刀那が手数だけの剣士であれば拮抗したかもしれない。

 

 事実、真島の銃の腕はかなり高いものだ。

 

 それだけに留まらず、不利な間合いでも切り結ぶ胆力と身体技能は卓越していると言える。

 

 

 だが、撃った弾の悉くを弾き返す相手など、この上無い未知である。

 

 ただでさえ不利な間合いだというのに、こんな近接で人外技術を披露されようものなら、肉体的にも精神的にも疲弊するというものだ。

 

 

 防戦一方という状況は非常に好ましくない。

 

 いたずらに体力をすり減らすだけだと理解してはいる。

 

 だからと言って現状打破の一手が思いつかない。

 

 

 はっきり言って手詰まりだ。

 

 

 

 (銃弾を斬るってなんだよ、イカれてんのかっ……!)

 

 

 

 クソゲー。

 

 そんな単語が彼の頭を飛び交う。

 

 コンディションに低下はないが、それがいつまで持つかは分からない。

 

 

 

 反面。

 

 刀那の表情に変化はない。

 

 眉一つ動かぬ無表情であり、息切れの兆候など一切見られない。

 

 

 先に力尽きるのは自分の方だと察した真島は、攻撃の手こそ緩めないものの、撤退のタイミングを模索する。

 

 

 背を向けて逃げる?

 

 不可能だ。

 

 

 確実な隙を見出せなければ、待っているのは「死」である。

 

 現在進行形で無数の斬撃を放つ刀那に、一片たりとも隙はない。

 

 

 ここまで数多くの対抗策を編み出し、実行し、その全てを叩き潰された。

 

 

 (……化け(モン)ってのはこういうやつの事を言うのかねぇ)

 

 

 意外と冷静な思考に自嘲する。

 

 足搔きか諦観か。

 

 どちらかは分からない。

 

 しかし、それが良かったのかもしれない。

 

 

 (だが、同じ人間である以上、弱点が存在しないというのは在り得ねぇ)

 

 

 戦いというのは、言ってしまえば強みの押し付け合いだ。

 

 自身の得意な土俵で、如何に自身の強みを押し付けることが出来るか。

 

 

 その理屈で言うと、現状は一方的に押し付けられている状況だ。

 

 では、自身にあって相手にない強みとは……?

 

 

 そんなものは考えるまでもない。

 

 ()()()()()()()()()才能。

 

 それを使わずしていつ使うというのか。

 

 

 弾倉の残りは二発。

 

 最初(ハナ)から無駄撃ちなどはやっていないが、チャンスは限られている。

 

 

 ――発砲。

 

 

 案の定、弾き返される。

 

 だが、それは少なくとも一瞬の隙を生み出す。

 

 

 大きくバックステップし、切り札を取り出す。

 

 何に使うんだと笑いながら懐に突っ込んだ過去の自分に感謝しながら、それを投げつけた。

 

 

 閃光手榴弾。またはスタングレネードと言われるそれ。

 

 強烈な閃光と大音量でもって、敵を一時的に行動不能にする非殺傷兵器。

 

 しかし、大音量は発さないように作られている。

 

 理由は真島の能力に依るところなのだが、今は置いておくとしよう。

 

 

 

 爆ぜる。

 

 

 

 それと同時に自身の視覚情報を完全に遮断する。

 

 本来は効果範囲内の敵に混乱を与え、その隙に制圧するというものだが、今回は逃走に使用する訳だ。

 

 これでヤツの視力は一時的だが封じた。

 

 対して、耳さえ聴こえれば何でも出来る真島は、成功を確信した。

 

 目が良すぎるのも考えものだな、なんてほくそ笑みながら刀那の背後に位置する出口階段へと一直線に走り抜け――

 

 

 

 

 

 

 

 

 ズガンッッッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 大口径砲の発射音かと思うほどの音。

 

 

 ホームを支える柱。

 

 

 それに突き刺さる細剣(サーベル)

 

 

 音の出処は自身の眼前からだった。

 

 

 

 「どうした?」

 

 

 

 

 

 

 

 「こちらの目はまだ生きているぞ」

 

 

 

 

 

 

 ――ホントにツイてねぇよ、クソッタレが。

 

 




前回沢山の反響をいただきました。ありがとうございます。

(好評なら)続く……
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