人によっては少し苦手かも?
保健室から外に飛び降り、『アイギス』を足場にして飛び移りながら移動しつつ誰も居ない放課後の屋上にて1人、ベンチに寝転んでいた。
「はぁ………前世と今世が段々と混ざり始めてやがる…そのお陰と言うか、そのせいと言うか……倫理だったり死生観が今世の俺寄りになってるしな……」
徐々に沈む夕陽を視界の端で捉えながら『拡張領域』から禁煙タバコを取り出し、慣れたように1本目を口に咥えると火を着け、吸い始める。
「……今までのパターンからすると…この身体が死にかけたりする度、前世の俺がこの世界に適応しようとしているのか、今世の俺と混ざり合っていく感じだし……
この感じだと完全に混ざり合う迄、遅くて10回……早くて2〜3回か…そん時の"俺"は、"俺"で居られるんかね…」
薄々だが感じていたほんの少しの違和感。それが顕著に現れたのは合宿時に死にかけた時だ……あの日、左腕と腹部を吹き飛ばされた時は自身の死を前世で死んだ時以上に間近に感じた。
並の人間なら良くてトラウマ、最悪ならPTSDになる様な出来事だったのに目を覚ました時、自身の中では「死んだらその程度の存在なのだから問題無い」と、完全に割り切る様にしていた…いや、元々そうだと無意識に割り切ってしまっていた事に対し、表面には出さなかったが内心、恐怖を覚えていた。
「後何回、死にかけそうなイベント有ったっけ?……転生直後なら思い出せたんだが最近は小説、アニメ、ゲームの方の内容も徐々に思い出せなくなってるし………これも混ざり始めている影響か…」
その違和感が徐々に自身を蝕むかのような毒に感じ始めていた頃、曾祖父の所に彼女達を連れて婚約者だと言う宣言をしに行った時には毒を盛らてまた、死にかけた。
そして、その毒から回復した頃には倫理や死生観の半分がこの世界の龍也の中に元々あった考え方に塗り潰されていた。
「思い出せなくなる前に束に記憶を保存する装置でも作るように頼んでみるか……あの天災もとい、天才なら出来るだろう」
「おやおや?たっくん、天才科学者で愛しの婚約者でもある束さんを呼んだかい?しかもタバコなんか吸っちゃって、不良さんだねー」
「………何で此処に居るんだよ。つか、何時から盗み聞きしていた?」
1本目を吸い終えると上半身を起こし、吸い殻を灰皿ケースに捨てて2本目を口に咥えようとするも、頭に柔らかい感触が伝わると同時に後ろから抱き締められる。
この特徴的な声ですぐにわかった。なんで束が此処に居るんだ…なんで、俺の頭に抱き着いてやがるんだ。
「たっくんが言ったからこの束さんがわざわざ、話し合いに来たんだよ?だ、か、ら!頑張った私の事をたっくんに褒めてもらおうと探していたのさっ!んーとね、今までのパターンの所からずっとかなー?」
「そうか……ご苦労さま…って、ほぼ最初っからじゃねーか……居んならさっさと出て来いよ」
「いやー、タバコ吸って哀愁漂わせているたっくんに惚れ惚れしていたんだよ?それをカメラで撮影して、永久保存していたりしていたのさっ!
たっくんは、記憶を保存する装置を作って欲しいんだよね?流石の束さんでもすこ〜〜〜し、時間がかかるから待っててくれないかな?」
「なんならもっと惚れさせて、万年発情兎にしてやっても良いんだが?
じゃあ、頼もうかな…俺が俺として居られる間の内に完成させてくれよな」
「わー、たっくんのエッチ、スッケベー!そんな風にされちゃったら、たっくんが枯れるまでシちゃうぞー?
まっかせてよ!たっくんがたっくんで居られる間に、完成させてやるぜ?」
「そこまで余裕があるなら、学園祭が終わる頃までは会わなくても良さそうだな…
完成したら俺の1日か2日くらいはお前に時間をくれてやるよ」
しっかしよ、褒めてもらいたいからって俺を探して学園内を彷徨くなよ……姿を見られたら騒動になるだろうが。
相変わらず人をおちょくるのが好きな天災様だ…まあ、何を餌にすれば釣れるのかとか嫌がるとかは理解してるし、多少なりともご褒美を用意してやろう。
「あ…えっ…と?……それって本気?その間まで一切会ってくれないの?たっくんの記憶を保存する装置を完成させた後も、学園祭が終わるまで会ってくれないの?」
「それはそれ、これはこれ。装置の完成は急務だし、完成後はすぐにでも使用したいからその時は会うが……セシリア達にはバレないようにしろ」
「やったー!愛してるぜ、たっくん!もちろんそうするって約束するさ」
「俺も、愛してるぞ束。多少でもふざけるのをやめればもう少し優しくしてやるんだけどな?」
押し付けられ続ける胸の感触を頭で味わいつつ、会わないと言う単語に棄てられて絶望しそうな声を出す束に、龍也は自然と口元を緩ませていた。
だが、あまりぞんざいに扱う事をするつもりは無いのか、束に装置の件と学園祭が終わるまで会わないと言った件は別だと伝えた途端、束の声に元気が戻れば更に密着するのだった。
「うーん…それはたっくん次第かなー?もっと、たっくんが私に愛情を注いでくれたらふざけなくなるかも」
「なら、今の内に愛情を注いでやらないとな……今は、校内で屋外だからキス以上はしないぞ」
「今はそれで満足してあげる。たっくんを2回も独り占めする権利が後で貰えるしね?」
「………欲求不満にならない様に沢山キスしてやる」
「それじゃあ、今日はたっくんから来て?」
「まあいい……キス以上の事はしないのは覚えておけよ」
「もちろんさ。私の方からはしないよ」
束の顔が見えないながらも声色からデレデレして、だらし無い顔をしているんだろうと思いながらも短い時間だが、それでも充分なくらい愛情を注いでやろうと決めていた。
「俺からも、するつもりはねぇよ
あと、アイツ等にはこの先も俺が転生者だと話すつもりは無い…知らない方が、幸せな事もあるからな………それにこの先、血と罪に塗れながら屍で作られた道を歩く事になるなら俺だけで良い…未来ある若者が歩むには酷な道だ」
「………了解。でも、たっくんだってその未来ある若者の1人なんだし、その道を実際に歩く事になるんだったら私にだけは話して半分、肩代わりさせて?」
「じゃあ、お前だけには話す。お前が自分自身の計画をどう進めるかは口出しなんかしないし…それで俺が傷付いても、死にかけても、愛し続けてやる………『福音事件』の時みたいになってもな?」
「やっぱり知ってた?まあ、たっくんは転生者らしいし私がこれまでやった事や、これからやる事なんか知ってるんだもんねー?」
周囲に人が居ない事は確認済みらしいのか少々?物騒な会話をしつつ束がこの先、計画している事件やら出来事で自分の身に何が起きても愛し続けてやると宣言するのだった。
だが、その愛し続ける宣言が嬉しいのか抱き締めている束の腕の力が若干ながら強くなってきたような…
「知ってはいるさ。だが、下手に干渉するとこの先の未来が大幅に変わって色々と面倒な事にはなるかもしれないからな……だが、既に一夏を好きになる筈のセシリア、シャルロット、ラウラが俺を好きになっているし……束だって俺にベタ惚れだろ?」
「それ、大丈夫?たっくんのお嫁さんがもっと増えたりしたらヤバいんじゃない?私がやる事じゃなくて別件で面倒事が起きるフラグじゃない?もちろん、たっくんにはベタ惚れさ!」
「それが分からなから困ってるんだよ。そもそも、一夏以外の男がISを使っている時点で色々と、大幅に、変わっているからな」
「それだったらこの先、未来が大幅に変わっても色々と面倒な事にはならないんじゃない?たっくんがISを動かせる時点で、色々と大幅に変わってるんだしさ?」
「可能性の話しだ。可能性のな………0.0000001%でも可能性がある限りは油断なんか出来ない…その油断が片足を棺桶に突っ込むトリガーになるかもしれないからな」
「たっくんってば慎重すぎ…でも、気を抜きすぎるよりは良いかもね?流石、この私を堕とした男だよね?」
「…………ほら、ずっと俺の頭を抱き締めてないで正面から抱き締めろよ。胸が邪魔で愛しいお前の顔が見れないし、キスも出来やしないだろ?」
「わざとやってるの気付いてるよね?好きに揉んだりしても良いんだぞ?でも、たっくんが正面から揉みたい派なら仕方無いねっ」
龍也の手が束の頬に触れると、束も甘える様に手に擦り寄っていたが龍也が正面から抱き締めて来いと言ってくるので、恥ずかしがりながらも一旦抱き締めるのをやめれば正面に回り込み、束は龍也に向かい合うようにして膝の上に座るのだった。
「だから、スルーしてるんだよ。俺は正面で揉むより二人きりになってベッドの中で揉みたい派なんだがな…」
「やんっ、たっくんってばいきなり大胆になるよね?私とベッドに入りたいって事?」
「そうは言ってないだろ。抱く時は壊れるくらい何度でも抱いてやるから今日は我慢しろ」
「じゃあじゃあ、その時は束さんとたっくんでの主導権の奪い合いだねっ」
「主導権の奪い合い、ね……俺から奪えたなら好きにしろ」
「たっくんからの言質とったどー!絶対、ぜっっっっっったい!好き放題にするからなっ!」
主導権の奪い合いで龍也から主導権を奪えた場合、好きにしても良いと言う言質を取った束は嬉しそうに笑みを浮かべ、絶対に好き放題すると言うのだった。
「ふっ……そうだな。奪えるなら奪ってみせろよ天才」
「むっふっふっ!その時は進化したNEW束さんを見せてあげようっ!」
「そのNEW束に、期待しといてやるよ束姉さん?」
「っ!?…絶対…絶対にたっくんを私の魅力で骨抜きにしてメロメロにしてやっ!?」
束からの宣言に鼻で笑う様に笑みを浮かべ、余裕そうな態度を取りつつも主導権の奪い合いをする時には進化した自分を見せると言う。
そんな中、一家の長男でありながらも血族内の年上組を相手にし、溺愛させた年上キラーな笑みを浮かべれば直視した束にも効いたらしく、顔を真っ赤にしながら誤魔化すように言っている最中、スルッと束の首に腕を回し自身の顔を間近まで近付け、しばらく見つめ合ってから優しく唇を重ねていく。
「んんっ!?ん……ふっ…」
「…う…ぁっ……ん…ふ…ぅ…」
優しく重ねられる唇の感触に若干驚いてしまった束だが直ぐに受け止め、龍也のやる事に全て委ねながら自身も抱き締め密着していく。
龍也も束にキス以上はしない宣言をした手前、それ以上はやるつもりは無いのか唇を重ね合わせたり啄む様に軽くしたりしつつ、頭を優しく撫でたり頬や耳を触ったり軽く息継ぎする時に見つめたりするを、夕陽が完全に沈むまで続くのだった。
「ん……今日は満足出来たか?」
「舌も絡めて欲しかったかなー?でも、それしちゃうと私もたっくんも我慢出来なくなっちゃうもんね?」
「そうだな。キスだけでもまあまあ、我慢出来そうに無かったけどな…」
「それと、ちょっとタバコの匂いも混ざってたから私以外とは吸った後はしちゃ駄目だぞ?その程度は私だけの特権にしても問題無いでしょ?」
「禁煙タバコの匂いでも嫌だったか?」
「ううん…私は好きだよ。私しか知らないたっくんの一面だし……でも、程々にね?」
「わかってる。程々にしておくさ」
夕陽が沈み、夜が訪れると同時に名残惜しそうにしながらお互いに唇を離し、別れる前の最後の会話を楽しみつつも束が龍也から離れる際にお別れのキスをし、龍也の膝の上から降りる。
「じゃあ、今度は装置が完成した頃か、学園祭が終わったら会おうね、たっくん?」
「ああ……その頃になったらまた会おうな、束」
「うんっ!それじゃーねー!」
お互いに次に会う時の約束を結びつつ、嬉しそうにブンブンと手を振りながら走り去り、屋上から飛び降りた束を見送れば龍也もベンチから立ち上がる。
「さて、部屋の窓の鍵は開けっ放しにしてあるからそこから入っておくか…」
また、『アイギス』を全機展開して足場を作ればそれに飛び移りながら寮の自身の部屋へと向かって学園内を移動していくのだった。
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「っと…部屋の匂いは……うん、大丈夫だな。飯は冷蔵庫にあるので適当に作って食うかな」
鍵を開けっ放しの窓を開けて室内に入れば『アイギス』を収納し窓を閉め鍵をかけ、暗い室内を歩きながら靴を脱ぎ、制服を脱げば自身のベッドの上に投げ捨て、下着姿になっても電気は点けず暗いままの室内を歩いて冷蔵庫の扉を開けば中を漁り始める。
だが、龍也は気付いていなかった。この部屋には既に何者かが侵入しており、この部屋の主が戻って来るのを待ち構えていた事を……冷蔵庫を漁っている龍也の左斜め後ろに黒い影が這い寄っている事など知らないのだ。
さあ!さあ!龍也に這い寄る黒い影は誰なんだっ!
嫁か!それとも敵か!まさか……あの痴女かっ!
気になる正体は次回、明らかにっ!
龍也の嫁、増えたら嬉しいか
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YES
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NO