夏バテやら夏風邪やらで一時的に筆が折れ、リハビリとリフレッシュも兼ねて新しい物語に手を付けていた作者です
思った以上に血みどろな物語になったので公開するかどうかは考え中です
ーー「では、デュノア家のすれ違いとデュノア社を愚か者達の手から救う話をしましょうか」ーー
龍也がそう言った瞬間、何か心当たりがあるのかアルベールとロゼンタの身体がほんの一瞬、強張ってしまっていた。
「話し合いと言うから婚約の件と思いきやいきなり何を言い出すんだ君は…」
「いやいや…何も知らないふりをして誤魔化そうとしたって無理がありますよ。
それに、我々の情報収集能力を甘く見ないでほしいものだ……この程度の情報なんざ漫画を読みながらでも集められる程度だぞ?」
「だから、何を言っ「デュノア・グループ内の一部でアルベール・デュノアの唯一かつ、直系の、血縁者であるシャルロット・デュノアの暗殺が計画され、それを実行しようとする者達が居ると言っても白を切ると?」っ……何故その事を知っている!」
龍也からの言葉に冷静を装いながら対応するアルベールだが、シャルロットの命が狙われている事を指摘されるとバンッ!とテーブルを叩いて何故知っているんだ!と、声を荒げながら立ち上がった。
「別に、シャルだけに隠すなら隠すで構わないですよ?ちゃんとシャルへの思いを言葉にしなかった結果、後悔する事になっても良いならね?」
シャルロット暗殺計画があった事を知られて焦りを見せるアルベールに対し、ニッコリと笑みを浮かべていたのだがトン、トン、トンと一定の間隔で足で床を叩き始めると雰囲気が徐々に変わり始める。
初めは好青年の様な雰囲気だったが足で床を叩く度に空気が重苦しくなり始め、アルベールとロゼンタの二人は喉元に鋭利な刃物を突き付けられたかのような感覚に冷や汗をかいていた。
「龍也……」
「大丈夫だよ、シャル………アルベールさん、アンタが本気でシャルとシャルの母親を愛しているなら言葉にしてちゃんと愛していると伝えろ。アンタが不器用でも言葉にして伝える事に意味があるんだよ。
それにロゼンタさん、アンタもアンタで間違いや誤解を招く行動があったならシャルにちゃんと伝えて謝罪しろ」
急に雰囲気が変わった龍也を心配そうに見つめるシャルロットだが、そんな視線に気付いた龍也は彼女の方を向くと何時もの優しい笑顔を見せつつ安心させる為に自分の顔が見えないよう彼女を抱き寄せ、頭を優しく撫で始めていた。
そして、シャルロットの両親に対して遠慮など一切せずにズバズバと物を言い始めるのであった。
「ちょっ、ちょっと龍也!?いきなり何を言い出すの!?」
「そうしてようやく、アンタ等は家族としてのスタートラインに立つんだよ。シャルを幸せにしたいんだったら不器用でも良いから愛しているって事を伝えてやれ。
デュノア社で起こっている問題は俺が手を回して片付けてやる。難航している第3世代機の開発だって一族にも技術者への伝手があるだろうからそいつ等を貸してやるし、俺のISのデータの一部を無償提供しようじゃないか」
「ストップ!ストップ!龍也、急にどうしちゃったの?今日の龍也、変だよ?」
龍也の言葉に驚きを隠せなくなったシャルロットが龍也の腕を掴み、引っ張るがそんな事など気にせず話していれば自身の専用機からデータの一部を提供するとまで言い始めていた。
ただでさえ専用機は貴重な上、どの国にも所属していないのに加えて噂だとあの『天才』、篠ノ之束が自らの手で作り出したISだとさえも言われている専用機のデータの一部である。
出す所に出せば最低でも一生働かずに暮らせる金額を貰える程度には価値があるものだ。それを無償で提供するなどと、発言するものだから流石のシャルロットも止めに入っていた。
「問題無いし俺はいつも通りだから大丈夫だって。シャルが心配する必要は無いよ」
「で、でも……本当に大丈っ!?」
「…だから、大丈夫だって言っているじゃないか…次は、その口をもっと長く塞ぐからね?
………さてと…アルベール・デュノアさん、俺からの提案を呑みますか?それとも、拒否しますか?」
流石の龍也もシャルロットが止めに入れば一度会話を中断し、彼女の方を向くとニッコリ微笑みかけながら右頬に触れると優しく撫でつつ両親が目の前に居るにも関わらず、撫でていない方の頬へと不意打ちのキスをしてから更に唇を軽く触れる程度に重ね合わせるのだった。
不意打ちのキスをされたシャルロットと彼女の両親はいきなりの事で固まっていたが、その原因を作った張本人はと言うと何事も無かったかのように先程の提案を受け入れるのか、それとも拒否するのかと問い掛けるのであった。
「……その提案を呑んだ際、君に支払う対価は何なのか聞かせてもらおうか…」
「んー…シャルとちゃんと話し合いをして、お互いのわだかまりを解消してもらうでいいかな?金銭とか地位とかには全くと言って良い程に興味無いので。
俺からしたらシャルが今後の人生を後ろ髪を引かれる様な憂いも無く、幸せに、かつ俺と一緒に過ごしてくれる事以外の価値は無価値なので」
「それが私達に対して君が求める対価だとでも言うのか……」
彼からの提案は開発に難航している企業からすれば、喉から手が出る程に欲しいモノだった。
それに対する対価が娘と話し合いをして今までの誤解を解くのが対価だと…だが、タダより高いものは無いとも言う。更に要求を突きつけられるのではないかとアルベールは警戒度を一段上げると、それに気付いた龍也は笑みを浮かべながら次の言葉を発するのだった。
「………シャルの件に関しては俺からの個人的なお願いなので別に対価とかそんな余計なモノは要らないです。
でも、まあ……第3世代機の開発に関しては後日、ウチの者達を向かわせるので詳しい内容はソイツ等としてください。あ、でも来るのは……ゴールディーの所か…まあ、ちょっとした借りが有るので一言、釘を刺しておけばスムーズに交渉は進むでしょう」
彼の口から出たのはこの国の政治家の中でも一番腹黒く、貪欲で敵に回してはいけないと言われた人物だけでは無く、警察でさえも手軽に手出し出来ない大物マフィアやカルテル相手に対し、太いパイプを持つどころか彼等が頭を下げて頼み事をしてくるとまで噂されている一族の名前が出たのだ。
聞き間違いでは無ければ彼の口からは”ウチの者達”と言っていた。
それならば、かの一族は彼の…いや、”無骸”の一部なのだろう…その一族に釘を刺し、交渉がスムーズに行くようにすると、それが当たり前かのように言う目の前の彼は隣に座っている自分の娘を心底愛している、何処にでも居る一人の青年の顔をしていた。
「わかった……君からの提案を呑ませてもらおう。今後、君達と良好な関係を維持出来るように私も努力しよう」
「ええ…そうして頂けるとこちらも他方への根回しをする手間が省けます。
では、俺はこの辺で失礼します…後は親子3人で話し合ってください」
商談にしては短い会話ではあったがお互いに納得のいく内容で話し合いが終わったらしく、龍也も席から立ち上がると…
「それじゃあ、また学園で会おうなシャルロット」
「うん…またね龍也……」
隣に座っていたシャルロットがまだ一緒に居て欲しそうな顔をしているが優しく微笑みかけ、頬に軽く触れる程度のキスをしてからギュッと抱きしめると別れの挨拶をすれば彼女から離れ、軽く一礼してから部屋を出て行くのであった。
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「さ、て、と………この先、どんな事になるかはシャルと彼等次第かな……帰る前に、本音にお菓子とかのお土産を買いに行きますかぁ」
社内から出た龍也は軽く伸びをするとお土産を買う為にスマホで有名所のスイーツ店を検索し、近くにあったのでそこを目的地にすればISを『スズキ 隼 EBL-GX72B』の見た目に『トランスフォーム』させた状態で展開し、『拡張領域』から黒いフルフェイスヘルメット取り出すとそれを被ってから跨ってエンジンをかけ、ヘルメットのシールド部分の端にマップが表示されたのを確認すればバイクを走らせていく。
「それじゃあ…アレとそれとコレと……あそこからアッチまで全部、4個ずつください。会計はコイツで」
それから暫くして…目的のスイーツ店の近くまで来れば路地に入り、ISとヘルメットを収納してから残りの距離を歩きで向かい、店内に入れば本音へのお土産用と自分用に大量に買い込みつつ普段はあまり使わないようにしているブラックカードを使っての支払いを行っていた。
最初は店員もあまりにも常識外れのレベルで大量に買い込むので本当に支払えるのかと懐疑的ではあったがそこはプロだ。表面上には出さないようにしつついざ、会計となれば目の前の少年が取り出したのはブラックカードであった。
それをさも当たり前かのように使って会計を済ませ、普段からやっているのか買ったモノを人目があるにも関わらず『拡張領域』内へと収納したのだ。
その光景から世界に二人しか居ないと言われている男性のIS操縦者の一人だとわかり、声をかけようとするもほんの一瞬、視線を離した間にその姿は店内から消えていた。
「いやぁ、アレもコレもと買い過ぎちまったなぁ……まあ、本音が嬉しそうにして食べるのを見れるなら、問題無いかな」
『拡張領域』内に収納したのを見た数人の客や店員が少々騒がしくなり始めたので、これ以上の騒ぎへと発展する前に他人から自分へと向けられた視線が外れた一瞬を見過ごさず、気配を極限まで薄くしながら店の外へと出ればまた路地に入ればバイクとフルフェイスヘルメットを展開し、跨ると空港へのルートを入力してからバイクを走らせ向かうのだった。
「やっべ……チケット取るの忘れてた…仕方無い、アイツに電話するか…………エステル、13時以降で良いから東京行きの飛行機のチケットを取ってくれ。無理そうならお前ん家のジェット機貸してくれよ」
「いきなり電話してきたと思いきや何を言い出すんすか……13時以降の東京行きの飛行機…飛行機……あー…残念ながら席の空きは無いっすね〜。ジェット機も今は別件で使っ「デュノア社との取引は良心的な方法でさせるが、第3世代機の開発に参加させるこ」はい!はい!はい!直ぐにフライトプランねじ込みますっ!もう一機、プライベート用のがあるんでそれ使ってください!」
ナビに従いバイクを走らせながらも帰りのチケットを取っていないことに気付けば一度、脇に停車しヘルメットを脱げば何処かへと電話をかけると電話に出た相手の声は眠たそうな声色でハスキーボイスだが、龍也が口にした名前からするにどうやら女性らしい。
「手のひらクルックルだな…詳しい内容は日本に戻ってからメールする。
お前は俺からのメールが来る前に前にゴールディー家全員に話しを通して納得させろ。一応、この前のリカルドの件で一族諸々に対して敵判定はしてないんだ…このチャンスを掴み取りこの先の未来を手に入れるか、ドブに投げ捨て一族諸々滅びの道を歩むのかはお前達の働き方にかかっているからな」
「そりゃあ、技術班としては第3世代機の開発に携われるのは喜ばしいんすよ?しかもデュノア社の!
取引に関しては詳細を見てから色々と詰める形ですけど……先ずは色々な国に散らばってるメカニック班と設計班の全員に、緊急招集のメール送ってその中から数人まで厳選しなきゃっすから!
あの馬鹿のせいで無関係の私まで消されるのは割に合わないんで、一生懸命働かせてもらうっすよ」
最初は眠たそうで面倒臭そうな声色だったのがIS関連かつ仕事の事になると切り替えたらしく、電話越しでも耳が壊れそうなくらいの声量なのでスマホを耳から離して会話していれば電話の相手の声は周囲に聞こえるほどに大声だった。
「俺の専用機からもデータの一部をくれてやるから好きにしろ。ただし、あくまでもデュノア社の第3世代機だからな?お前達の趣味と性癖とロマン満載な機体を作ろうとしたら、強制退去させるぞ」
「…………仕事の事なら真面目にやりますし、それに関しては暴走しないようにコッチで手綱を握っておきますんで。
あとアンタの機体、見辛いくらいの真っ黒なカラーリングとか、ちぐはぐなパーツの組み合わせで何なのか普通なら全く分からないけど……あれ、日本アニメのガンダムと実写映画の方のトランスフォーマーっすよね?どうやったらあんな機体構成になるんすか…」
コイツ、声量調整機能が壊れている以外は超有能なんだよな…声量以外はさ。
しかも俺の機体に使ってるのがどんな作品が使われているのかバレてるし…いや?一部がアレだけ露骨だったら分かる奴にはバレるか…そうなると更識簪にもバレてそれ経由であの疫病神にもバレる可能性は……………本音か本音の姉経由でバレるかも…考えただけで面倒くせぇな
「んなこたぁ知らんし俺が聞きたいくらいだ。初期化ん時にでも俺の記憶とか取り込んで機体を組んだんじゃね?二次移行後の機体見た時なんて俺だって驚いたくらいだし」
「んなこたぁ知らんって………まあ、世界で二人しかいない男性操縦者の一人っすからそのくらいの不思議な事が起こる可能性は十分あり得る、っすからねぇ…それにこれ以上、気にするのは時間の無駄になりそうですね」
「そんじゃあ、後の事は頼んだぞ。くれぐれも厄介事を起こすなよ?あと、追加でお前がオススメするワインを十数種類、見繕って俺宛てで学園の寮に送ってくれ。1本は贈答用でもう1本は料理に使うから本数の割合は7対3で頼む」
「はーい。料理用のには黄色いリボンを括り付けておきますね。
それじゃあ……厄介事が起きないよう”お友達”の皆に、私達がデュノア社と重要な”お仕事”をするって伝えときますね。仮に、それでも邪魔する馬鹿が居るなら”お掃除”しちゃいますから………それじゃあ、後で詳しい内容をメールしてくださいねー!!!!」
通話が終わる最後の最後で鼓膜を破壊するレベルの大声を出すんじゃねぇよ…片耳だけ聞こえねぇじゃねぇか。
と、まあ…エステルに仕事の件とお土産用のワイン選びを任せつつ、さっさと日本へ帰る為に再度バイクを走らせるんだが……この時の俺は知らなかった。あとは帰国するだけなのにまさか、あんな事が起こっちまうだなんて誰も予想なんか出来ねぇよ……
今後、起こるであろうトラブルにも対処する為の準備もしつつ身内に機体の元ネタがバレたりした今回ですが、次はどうなる事やら…果たして、龍也は日本へ帰国出来るのか!
龍也の嫁、増えたら嬉しいか
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YES
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NO