IS 荒ぶる黒龍は咆え、喰らう   作:黒色晩餐

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今回はちょっと甘めだったり重めだったりしますっ


第六章〜夏休み編〜
43話〜眠れる龍は起き、黒兎と戯れる〜


 

「ゔぇっくしょんっ!!」

 

 月が沈み、日が昇り始めた頃。死んだように眠っていた龍也は自身の大きなクシャミと共に目を覚ました。

 

「……夏だからと言っても流石に服は着て寝たほうが良かったな……微妙に風邪引いたぞこれ…夏風邪は長引くから嫌いなんだよな…」

 

 ムクリ、と起き上がると風呂上がりで下着姿のまま布団の上で寝ていた事で若干だが風邪気味となり、気怠そうにベッドから出ると冷蔵庫を漁り始める。

 

「確か…栄養ドリンクがあった筈なんだが…………ラス1、か…あとは卵や生姜やネギもあるし…ご飯は冷凍したストックが3つ……一晩大人しくすれば治るだろ」

 

 ガサゴソと冷蔵庫内を漁りながら余りの食材なんかも把握しつつ、栄養ドリンクを取り出せば蓋を開け一気に飲み干すと甚平を着てから布団の中に潜り込み、目を閉じると眠りにつくのであった。

 

__________________

 

「んぁっ!?……寝過…って、なんか重いな……ラウラ?」

 

「んっ……龍也、おはよう…良く眠れたか?」

 

 それから数時間後…ビクッ!となって目を覚ませばお腹の辺りがズッシリと重く、布団も膨らんでいたので恐る恐る捲くると…制服を着たラウラが龍也に抱きつくような形でお腹の上で静かに寝息を立てながら寝ていた。

 ラウラも名前を呼ばれて目を覚ますと眼帯をしていない状態で寝惚け眼のまま、ふやけた笑みを浮かべているのだ。

 なんつうか、改めて見るとこうしているラウラは普段よりも幼さが見える分だけ数割増しで可愛い…寝惚けて半開きの瞼から見える赤色と金色の目も数割増しで綺麗だ。

 

「おはよう、ラウラ…ああ、ぐっすり眠れたぞ」

 

「ふふっ、そうか…………その…すまなかった……クラリッサから今朝、龍也の身に起きた事を聞いたのだ…同じ軍の者として謝罪する…」

 

 まだ寝惚けているラウラの頭に触れると指で髪を梳くように触ると気持ち良さそうにしながら頭を擦りつけてきていた。

 だが、ふと何かを思い出したラウラがシュンとして落ち込みながら瞳を潤ませ、昨日の例の件が伝わったらしいラウラから謝罪の言葉が出てくる。

 

「ラウラが悪い訳じゃないんだから気にする事なんか無いよ…悪いのは奴等なんだから」

 

「ふぁ……龍也…んっ………っ!?」

 

 ラウラは悪くないと言いながら龍也が彼女の両頬に手を触れるとマッサージするように揉み、ラウラも気持ち良そうに目を細めていたが笑みを浮かべる龍也の表情を見るとラウラの背筋に悪寒が走る。

 

「それにこの先、俺やラウラ達に危害を加える者は許さない……必ず、必ず消してやるからな」

 

 ラウラから見た龍也は何時ものように微笑んでいるはずなのだ。そのはずなのに言葉に出来ない違和感を感じていた。

 それが軍人としての勘なのか、はたまた女の勘なのかははっきりと分からない。だが、龍也の言葉で違和感の正体がはっきりとわかったような気がする。

 

「龍也…大丈夫か?何か私に話したい事はないか?」

 

「大丈夫だよ、ラウラ。何も問題は無いし話す事も無いよ」

 

 心配そうに見つめながらラウラが問いかけるも大丈夫だと答えて微笑む龍也の表情はラウラ達以外の人が見れば、その微笑みは愛しい人へと微笑んでいるかのように見えるだろう。

 だが、ラウラは違った。肌はヒリつき、背筋には悪寒が走る。この感じはつい最近…そうだ、あの日だ…『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』との戦いの際に龍也が墜とされ、海の中から現れた三つ首の黒い龍と対峙した時に感じたのと同じ感覚だ。

 

「本当か?本当に大丈夫なんだな?」

 

「大丈夫だって…ラウラは心配性だなぁ」

 

 ラウラの頭を優しく撫でる龍也の手の動きは何時も通り

、何時も通りなのだがその手を通じて伝わって来るはずの温もりの代わりに、まるで死神が自分の心臓を直接、鷲掴みにされたかのような感覚に顔から血の気が一気に引いてしまう。

 

 目の前で自分の頭を撫でる男は本当に自分が愛している龍也なのかと、そんな疑問が頭の中を過ると同時に仮に本当に龍也ならば何故、こんなにもけたたましいくらいに激しく警鐘が頭の中で鳴るのか…

 それこそ、目の前の男が普段から被っていた善人の仮面が何かの拍子に一部が剥がれ落ちると同時に、深淵の奥底へ押し込むように隠されていた凶悪な存在の気配が漏れ出し、獲物を狩るような眼で深淵から自分を覗き見ているような…そうだと本能が知らせるかの如く警鐘は鳴り続けていた。

 

「ラウラ、大丈夫か?なんか青白いけど…調子が悪いか?」

 

「っ……龍也、お願いだから私には隠し事をしないでくれ…何か思い詰めすぎる前に私に言ってくれ…お願いだ……」

 

 龍也は顔から血の気が引いて青白い顔になっているラウラを心配してか頭を撫でるのを止め、ギュッと抱き締めればその行動に対しビクッ!と、怯えるかのようにラウラは反応してしまった。

 

 その後、自分の意思とは無関係に身体は勝手にカタカタと小刻みに震えながら目からは溢れ、こぼれ落ちそうになる涙を一生懸命に堪えながら龍也の着ている甚平の胸辺りを目一杯握りしめ、隠し事をしないでくれと震えて徐々に小さくなってしまいそうな声を彼に聞こえるように精一杯、声を振り絞って出していた。

 

「……………なぁ、ラウラ…」

 

「な、なんだ…」

 

「怒りに任せて沢山の人を蹂躙し、その命を嬉々として奪う男を好きになれるか?」

 

「そっ…それはっ…」

 

 ラウラからのお願いに対してしばらくの沈黙の後、龍也は彼女の名を呼ぶ。

 その呼び掛けに対して返事をした後に彼女は彼の口から出てくる言葉と今にも消えてしまいそうで、辛そうな笑みを浮かべる相手に対してこれは悪手だと分かっているはずなのに…言葉を詰まらせてしまった。

 

「…やっぱりな…流石のラウラでも怒りに任せて殺戮を喜んでする男は好きになれないよな………ラウラ、ごめんな?こんな醜い怪物みたいな本性を隠していて…」

 

「ち、違っ…龍也、違うんだ!私はお前が好きだ!だから…だからそんな事を言って私から…いや、私達の前から居なくなろうとしないでくれ!」

 

 確実とは言えないが此処で手を離してしまうと彼は自分達から距離を取り、卒業と同時に自分達の前から姿を消し、再会することは叶わなくなってしまうだろう…

 彼から手を離すなと、自身の直感がそう言っている…確実ではない。確実ではないが、今の龍也ならその選択肢を選ぶと思えるくらいに自身に対して謝る龍也は危うい表情をしていた。

 

 それならば自分が選ぶ選択肢は1つだけだ。例え他の者達に話さず2人だけの秘密にてでも、どんな手を使ってでも龍也から手を離さず、側に居続け、彼が離れていかないようにする事だ。

 

「俺は人殺しだよ?」

 

「それでも構わん」

 

「俺の手や身体は敵からの返り血で真っ赤に汚れてるよ?」

 

「ならば私も貴様と一緒に汚れ、貴様が抱える罪を私が半分抱えよう」

 

「もしかしたら…ラウラに消えない傷を付けるかもしれないよ?」

 

「その時は貴様が一生をかけて償い続けろと言いたいが…そもそも、私と貴様は将来を誓った仲であろう。なら、問題ない。私は龍也の妻になる女だぞ?その程度で壊れてしまうようなヤワな鍛え方はしていない」

 

「…………そっか…この先、ラウラ達を守る為に血で血を洗う事になっても好きでいてくれるかい?」

 

「もちろんだ。セシリア、本音、シャルロット、篠ノ之博士だってこの話を聞いても貴様から離れる事なんか無い。ただ、やり過ぎたりしたら…皆で協力し、力づくで止めた後に説教だ」

 

 ラウラからの言葉と願いに対して確認を取るかのように問いかける龍也。

 それに対して自分は味方だと思って貰う為、言葉を選びながら答えるラウラがやり過ぎれば全員で説教だと少し、いたずらっ子のような笑みを浮かべながら答えると、それには龍也の表情も少し柔らかくなり、小さな笑みをこぼす。

 

「フフッ…皆から説教されるのは嫌だな………セシリアやシャルロットは怒らせると怖いけど…本音を怒らせると2人よりも怖いから」

 

「私や篠ノ之博士は3人よりも怖くないとでも言うのか?こう見えても私だって怒る時は怖いと言われているのだからな」

 

 小さな笑みをこぼす龍也の表情に内心は安堵するラウラだがそれでも油断はできなかった。

 もしかしたら表面上だけそう見えるように龍也が演技している可能性があるからだ。

 

 だが、それはそれ。これはこれなので自分や篠ノ之博士は怒っても怖くないみたいな言い方をする龍也に対し、 頬を膨らませながら自分だって怒れば怖いと言われているのだと反論する。

 更には龍也の胸板と自身の胸が重なり合うまで自身の身体を前へと移動させ、押し付けるようにして抱きしめる。

 

「そっかそっか……それなら、怒らせないようにしないと。ラウラの怒る顔を見るより幸せそうにしている時の可愛い顔を見たいしね」

 

「そう言って何かを隠す為に誤魔化そうとしても今日は通用しないぞ、龍也。私達を突き放して目の前から消えるつもりだったのだろ?」

 

「はぁ…なんで今日に限ってラウラの勘は何時も以上に鋭いのかなぁ……」

 

「何時も以上に龍也がわかりやすいからだ。それに、私は貴様の妻であり、貴様は私の旦那なのだからこのくらいわかって当然だ」

 

 お互いの心音が聞こえるくらい密着し合う中、一旦話しを切り上げて離れようと誤魔化すも抱きしめてくる腕に力を込め、更に密着してくるラウラの口から図星を突いてくる一言に龍也は内心、ギクリとする。

 これ以上の誤魔化しは自ら墓穴を掘る事になりかねないと判断したのか溜め息を吐き、苦笑いを浮かべる龍也とは反対に自慢気な顔をするラウラは嬉しそうにはにかんで笑みを浮かべていた。

 

「じゃあ、そろそろ離れてくれる?ご飯、食べたいんだげっ!?」

 

「ひゃめだ…わらひはへったいにはなへないぞ」

 

 生きている以上、腹は減る…流石に丸1日近く何も食べない状態だと空腹感が襲う…若干風邪気味なら尚更だ。

 抱きしめてくるラウラに離れてもらうよう言うが、肩の辺りに強い痛みが生じる。ラウラがなんの前触れも無く、いきなり右肩へと噛み付いてきたのだ。

 

 それこそお前は自分の男だ。私はお前から離れるつもりはないと、そう言っているかのように噛まれた部位から血が滲み出るくらいラウラは強く噛んでいた。

 

「じゃあ、一緒に食べよ?作ってる時も隣に居て良いからさ」

 

「………………わかった。旦那よ、今日はずっと離れないからな」

 

 このままだと肉を噛み千切られそうなくらいの痛みが襲う。肩に噛み付くラウラの頭を優しく撫でながらご飯を作っている間からご飯を食べる時も、一緒に居て良いと言う。

 そう龍也が言えばラウラは渋々ながらも肩から口を離し、自分で残した噛み痕に何度も舌を這わせいた。

 

「はいはい…でも、これ以上は強く噛まないでね?」

 

「それは、この後の旦那の態度や行動次第だな。今日の私は何時もよりしつこいぞ」

 

 噛み痕に何度も舌を這わせるラウラが途中からキスも追加し、赤くなる噛み痕にキスマークが追加されていく。

 どうやら本音以外が学園に居ない間に、マーキングを残しておくつもりらしいのか噛み痕の周囲以外にも首筋や鎖骨辺りに、キスマークや小さな噛み痕が残されていく。

 

「ラウラ、満足した?」

 

「まだだ…次は旦那が私に痕を残す順番になるのだからな」

 

 しばらく受け身のままラウラにされるがまま、首筋や鎖骨だけで満足出来なかったのか、甚平をはだけさせ上半身にキスマークや小さな噛み痕を残されるとラウラに満足したかと問いかける。

 どうやらまだ満足していないラウラが首を横に振るとガバッと布団を退かすと、鳩尾付近に跨るように座ったかと思いきや、目の前で制服を脱ぎ始めていた。

 次は龍也の番だと言えば上半身だけ裸になったラウラが龍也の頭を包み込み、小ぶりな胸を押し付けるように抱きしめてくる。

 

「俺はラウラを傷付けたくないんだけどなぁ……」

 

「な、なら!私の中に痕を残せば良いだろ!セシリアや本音やシャルロットや篠ノ之博士にはも、もう痕を残しているのだろっ」

 

 ラウラから次は龍也が自分に痕を残す順番だと言われると傷痕を残すような事はしたくない。

 そう伝えて引き剥がそうとするが引き剥がされるつもりは無いと言わんばかりに腕に力を込め、更に強く抱きしめてくるラウラ。

 それだけで終わるなら根負けして軽く噛み痕やキスマークを残せば良かったのだがその後、彼女の口から出た言葉に、ただでさえ戦闘によって消耗した理性が追加でゴッソリと削り取られる。

 

 小ぶりながらも柔らかい胸の感触とほのかに香るシャンプーの匂いと小さく震える細腕。

 普通の男子高校生だったならば今頃は彼女に手を出していただろうし、据え膳食わぬはなんとやらとも言う。

 だが、前世は社会人だし今の精神状態ではお互いに幸せにはなれないだろう。

 ここは酒の席で毎回のごとくウザったいくらい何度も繰り返す嫁と娘を自慢してくる泥酔上司からの話しを思い出そう…思い出せよ俺…………よし、よし。これなら、しばらくは勃たないな、よくやったぞ俺っ

 

「痕を残すってそっち?でも、今日は駄目かな…風邪気味だから体調も悪いし……それに、今の状態だとラウラを壊しちゃうかも…」

 

「それでも良い……龍也、貴様にならば私は壊されても構わんのだ。セシリア達には言えないような事も包み隠さず全てを私にだけ曝け出してくれ」

 

「だからね?風邪気味で体調が悪いんだって…」

 

 焦ってるなー…色々な意味で焦ってるよ。自分の国が起こした不祥事やら、それのせいで俺が落ち込んでるのとか色々と抱え込んじゃってさ…こんなに小さくプルプル身体を震わせてさ本当、可愛いったらありゃしないよ。

 このまま壊れるくらい抱いてもいいけどマジで頭とかボーっとしてるし、加減ができないんだよなぁ…なんとかして落ち着かせないと…

 

「私は…私は龍也に抱かれる価値は無いのか?私があの時、龍也の問いかけに答えなかったのが理由か?それとも…私に女としての魅力が無いのか?

 ……いや、胸か?やはり胸なのかっ!セシリア達よりも胸が無いからっ!龍也は私に対して魅力を感じないのかっ!」

 

「はいはい、ちょっと落ち着こうか、ねっ?胸の大きさ抜きにしてもラウラはセシリア達に負けないくらい魅力的だよ。

本当に、冗談抜きで、風邪気味で、絶不調だから。せめて調子が良くなるまでは休ませて…」

 

「な、ならば今すぐわっ、私とま、まっ、まぐっ、まぐわえっ!」

 

 あーあ…駄目だこりゃ。ラウラの思考が完全にネガティブな方へと暴走してるな。このまま、言われるがままされるがままに抱いた後、冷静になっても後悔してそのままネガティブ思考のままループするぞ。

 この方法だけは、使いたくなかったんだが…少しラウラも冷静になってもらわないとマシな話し合いが出来なくなっちまう。

 

「………ラウラ、俺さ…今のラウラみたいに話を聞いてくれない悪い子は嫌いだぞ?

 俺、風邪気味で絶不調だから調子が良くなるまで休ませてってさ、言ったよな?ラウラはさ、俺が嫌いだからこう言う事をするのか?」

 

「っ!?……ち、違う…違うんだ龍也!その、だな…話を聞くから嫌いにならないでくれ……私は…私は龍也が大好きだ!

 だ、だから…龍也が私の前から消え……離れて…欲しく……なかった…のだ…………」

 

 ラウラを引き剥がそうと腕を掴んでいた手を離してかや脱力し、声をほんの1、2トーン下げ、一切の感情を込めないようにした声で諭すように言う。

 そうするとあら不思議。さっきまで頑なに離れなかったラウラが抱きしめてくるのを止め、慌てて大好きだと訂正しているかと思いきや…段々と元気が無くなり、声も小さくなれば最後には自身の身体を支えるかのように龍也の胸辺りに手を置き、肩を落としうなだれていた。

 

「それだったら、この方法は悪手だって普段のラウラならわかるよな?」

 

「うむ…」

 

 龍也の質問に対してラウラはうなだれたまま、力無くコクリと小さく頷いていた。

 

「なら、どうしてこんな事をした?」

 

「龍也が………私達の前から消えそうだったからだ…このまま何も行動しなければ、貴様が何も言わず私達の前から消えそうに見えたのだ……」

 

「そう見えたからこんな事をしちゃったんだね……なら、仕方無いか」

 

「むっ…それはどう言う意味なのか聞かせてもらえるのだな?」

 

 何故、こんな手段を取ろうとしたのかと聞く龍也の言葉に手をギュッと握り締め、涙を目から溢れさせながらラウラは喋る。

 今のラウラの口から出てくる言葉は嘘偽りの無い、本心からの言葉なのだろう。実際、彼は時期が来たら彼女達の前から消えるつもりだったのだから。

 そんなラウラの言葉にそう見えたなら仕方無いと言う龍也に、溢れ出す涙で瞳をにじませていたラウラがその言葉の意味を問正そうとすると…

 

「実際、ラウラ達の前から消えるつもりだったからね……この先、俺にとって邪魔になる人達で屍の山を築き上げるかもしれないし……ラウラ達に俺のそんな姿を見せたくは無いんだ」

 

「っ!…ならば……ならばっ!私が…いや、私達がそうならない様に貴様を引き留める!だから龍也…私に合宿の…あの時のような絶望を味合わせないでくれ…」

 

 涙を溢れさせるラウラの頬に触れ、親指で目元を拭ってやりながら申し訳なさそうで、憂いを帯びた優しい笑みを浮かべながら彼女の直感が正しかったのだと、そう裏付ける言葉が彼の口から出てくる。

 その言葉を聞いたラウラはボロボロと大粒の涙を流しながら龍也の胸に額を押し付けるように身体を丸め、声を荒げて龍也が去るのを引き留めようとしていた。

 あの日、あの現場に居た者達にとっては忘れようとしても忘れられず、特に龍也へ好意を向けていた彼女達の心に大きな傷を残したあの事件と、今回の件がラウラの中で無意識に重なっていたのだ。

 

「…………はぁ……やっぱ、血筋は争えんな…ラウラ達が泣く姿を見ると死にたくなるくらい憂鬱になるわ……わかった、降参だ。ラウラ達に見捨てられない限りは消えない……約束だ」

 

「絶対だぞ…嘘をついたら地の果まで、地獄の底まで追いかけてやるから覚悟しろ」

 

 ズッズズッと鼻を啜りながら仕返しをしているのかグリグリと額を押し付けてくるラウラを龍也は優しく抱きしめ、頭を撫でながら白旗を上げるのだった。

 

「ああ、ラウラ達から見捨てられない限りは絶対に消えないよ…」

 

「龍也…貴様は本当に私を愛しているのか?」

 

 見捨てられない限りは消えないと再度、宣言する龍也に大人しく頭を撫でられるラウラ。

 そんなラウラが額を押し付けるのをやめ、涙を流した事で目元を赤く腫れさせながら顔は涙や鼻水が通った痕を顔に残した状態で龍也の方を向くと、いきなり自分を愛しているのかと問いかける。

 

「愛しているに決まっているじゃないか。だからこそ、大切にしたいんだよ」

 

「ならば何故、私だけ本音達のように手を出さぬのだ……やはり、他の者達より成長が著しく遅いからか?」

 

「だから、違うって…今だってラウラをめちゃくちゃにしたいのを我慢してるんだからね?愛している相手からそんな姿で求められて嬉しくないわけ無いだろ」

 

「それならば我慢せず、私をめちゃくちゃにしてくれ。クラリッサから聞いたのだが……その…男と言う者はだな…我慢し過ぎるのは色々と体に良くないのだろ?特に、戦闘後は昂ぶって狼になってしまうと聞いたぞ…」

 

 まーた、クラリッサから有り難いまでに間違った知識を教え込まれていやがる…確かに何時もより昂ぶってはいるんだが、それ以上に冷静なんだよな…

 一晩寝たら、予想以上に引きずってはいないんだよ…残党がまだ残っていた場合は1人か2人程度、確保してから他の残党が居ないかどうかを尋も…優しく聞き出して、苦しまないように楽にさせようって考えるくらいには立ち直っているし

 

「うーん……ツッコミたい事が沢山あるが…ラウラをめちゃくちゃにするのは俺の体調が戻ってからな?一先ず、涙とか鼻水とかをシャワーで流したらご飯食べて、寝るよ」

 

「龍也、それは一緒にシャワーを浴び、一緒にご飯を食べたら一緒に寝ると言う意味で良いのか?」

 

「もちろん。一緒にシャワーを浴びた事は皆に内緒だからな?」

 

「うむ。私と旦那だけの秘密だなっ」

 

 うわぁ…俺の嫁さん可愛すぎじゃね?一緒にシャワー浴びるって聞いただけで、こんなに嬉しそうな笑顔になるとか。

 このままシャワー浴びずに楽しみたい所だがマジで調子が悪いし…細かい力加減とか出来なくなっちまってるから抱き潰しそうだし………よし、気合いで明日までに治してしまおう。

 

「それじゃあ、シャワー浴びに行こっか」

 

「そうだな。龍也よ、我慢出来なくなったらシャワー中でもその…わ、私をだな…め、めちゃくちゃにしてい、良いのだからなっ」

 

「はいはい…その時はそうするね」

 

 シャワーを浴びに行くため、ラウラは龍也の上から降りると脱いだ上着と下着を腕に抱き、恥ずかしそうに頬を赤く染めながらシャワー中でも襲って良いと言えば逃げるように洗面所の方へと、走って行くのだった。

 尚、走って行く際に揺れた髪の間からチラリと見えた耳が端まで赤く染まっていたんだが、そんな状態なのを俺に見られていたって事は内緒にしておこう。

 

 





箸休め回でしたが、まだまだ続きます。
ここから先もう暫くはイチャラブ多めにしていこうかなと思っています

龍也の嫁、増えたら嬉しいか

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