観測拠点エルガドに漂流したハンター
「おいっ!あんた、しっかりしろ!」
遠くから自分を呼ぶ声が聞こえ、俺はムクリと上体を起こして欠伸を一つする。
「・・・なんだ?やっと着いたのか?」
首を捻って鳴らしながら、俺は周囲を見渡す。
どこかの港のようだが、それにしては随分と物々しいものなどが並べられている。
「ここは何処だ?ココット村じゃないのか?」
「おいおい、寝惚けているのか、あんた!?」
目の前の人間は妙に慌てているが、何か問題でもあったのだろうか?
俺はゆっくりと立ち上がり、大きく伸びをする。
船による長旅で身体が鈍っているらしい。
俺は軽く手を握ったり、開いたりを繰り返しながら改めて、周囲を観察する。
「あわわわ・・・大物だと思ったら、見た事のないハンターさんが釣れたのニャ!?」
「このアイルーに感謝しなよ。漂流していたあんたを見付けたんだからな?」
「漂流していた、だと?」
見た事のない服を着たアイルーと此方を心配する男の言動からするに俺が爆睡している間に乗っていた船に何かがあったらしいな。
となると俺は未開の土地にやって来てしまったらしい。
「成る程。なんとなくだが、大体の状況は把握した」
「・・・あんた、妙に落ち着いているように見えるが何者だ?」
「俺の名はネロ。【狂戦士】のネロだ・・・まあ、ココット村での呼ばれ方ではと言う話ではあるがな」
俺は軽く自己紹介をすると周囲を観察して感じた事を口にする。
「それでお前達は何処の騎士団だ?・・・ギルドナイトとは異なるようだし、察するに何処かに所属する王国騎士団か何かなのだろう?」
そう言うと俺は腰のデッドリィ・タバルジンを見せ、ニヤリと笑う。
「すまないが、船代の為にもハンターの狩猟を専門に扱っている場所へ案内して貰えないか?・・・なに。荒事をする訳ではない。ハンターが正式な登録無しで狩りを行うのはご法度だからな」
「随分、詳しいんだな?」
「・・・まあ、伊達に長年、ハンターとして生活してないんでな」
そんなこんなで俺はここの住人っぽい漁師の男に案内を頼み、ここがどんな場所であるかを聞きながら歩いて行く。
アイルーはわかるのだが、隣にいる犬はなんだ?あれもオトモなのだろうか?
「提督殿。お話しが・・・」
「うむ」
案内された先は何かの作戦室のような場であった。
そして、格好からするにその場にいる全員がそれ相応の実力者であるのが目と微かな動きから把握出来る。
「私がこの観測拠点を任されている者だ」
「・・・名乗らないのか?」
「手練れなのは目を見れば解る。そして、異質なのもな」
提督を名乗る人物がそう告げると黒髪ショートの女騎士が前に出る。
赤を強調した鎧と動きから察する恐らくは提督とやらの右腕か、実行部隊のリーダーと言ったところだろう。
「我々は王国から災厄の元凶と思われる古龍【メル・ゼナ】を討伐する為に動いているエルガドの騎士だ。
見立て的には貴殿もハンターなのだろうが・・・それにしては貴殿からはなんと言うべきか迷うが、常人ならば吐き気を起こしてしてしまいそうな程の血の臭いを色濃く感じる。
戦力として加わってくれるのなら心強いかも知れないが、それと同時に何か危険なものを感じてしまうな。
例えばの話になるだが、古龍が味方になるかのような・・・そんな事を思わせるオーラを秘めているように私からは感じる」
そんな言葉を投げ掛けられて俺は感心する。確かに俺の身体は特殊だが、まさか、それを雰囲気で把握するとはな。此方の見立て通り、この場に全員がそれだけの実力者なのだろう。
リーダー格の女騎士のその観察眼はまさしく見事である。
「俺としては村に帰れれば良いのだが、ただで帰るのも申し訳ないのでな。ココット村のハンターとして手伝いはしようと言うのが此方の提案だ」
「協力の申し出は感謝するが、貴殿がどれ程の力量のハンターであったとしても何らかの紹介状がないのではメル・ゼナの件に参加させるのは難しいと言うのが、正直なところだ。だからと言って、そのココット村とやらまで送り届けるにも時間も掛かるだろう」
「ならば、こうすれば良かろう、フィオレーネよ?」
考えあぐねていた女騎士に提督が助け舟を出す。
俺とフィオレーネと呼ばれた女騎士はいま一度、その提督とやらに顔を向け、話の続きに耳を傾ける。
「カムラの里の猛き炎の助力を求めている間の船旅でフィオレーネが不在中、この者に臨時で参加して貰う。
この者の処遇は仮登録と言う形でチッチェ姫に紹介状と手続きを行って貰う。そちらもそれで良かろう?」
「ああ。問題ない」
「此方からの条件としては仮登録中のアイテム、及び狩猟したモンスターの素材は全て提供して欲しい事だ。
ただし、登録が正式に行われ、公式にハンターとなった場合は提供して貰っていた物を返そうーーその条件の元、参加するかを考えて欲しい」
「考えるまでもない。仮登録中としては妥当な判断だと俺も思う。迂闊にモンスターの素材やアイテムを横流しされたら目も当てられんからな。その条件で此方は構わんさ」
俺の即答に提督は「そうか」と頷く。
「では、改めて仮登録の準備期間まで待って貰う。
その間、この観測所で大人しくしていて貰う」
「了解した。しばしの間だが、世話になる」
ーーこうして、ココット村から遥か離れた遠い地であるエルガドで仮登録ながら俺の新たなハンターとしての生活が再び幕を上げようとしていたのであった。
名前:ネロ
称号:バーサーカ
通り名:狂戦士のネロ
年齢:不詳ーー外見から察するに20代前半の青年に思われる。
武器:デッドリィ・タバルジン
頭:なし
胴体:なし
腕:グラビモスS
腰:グラビモスS
足:イーオスS
概要:ココット村で狂戦士のネロを名乗る歴戦のハンター。
主に捕獲ではなく、討伐を主体としたソロ狩りを専門にして行う為に常に大型モンスターとの死闘の連続を繰り返していく内に狂戦士と呼ばれるようになる。
その肉体は特殊であり、未だに狩りにおいて衰えらしい衰えを知らず、様々な舞台で狩りを続けている猛者である。
ココット村へ帰る船旅の途中、謎の現象に襲われてエルガド観測所に漂流していたらしいが、その間の事については本人が爆睡中であった為に何が原因でエルガド観測所まで流されてしまったかは不明である。
頭部や胴体の防具を着けない事については武装を最低限必要なものをする事で動きやすくする為と本人は語るが、実際に頭部や胴体を武装しても他のハンターからするのならば、あまり違いは変わらないらしい。
寧ろ、この状態で大型モンスターとの死闘を繰り広げるなどとは自殺行為なのでネロの持論と他のハンターの意見との間に矛盾が生じる。恐らくはネロ本人にしか解らないちょっとした違いと言うものがあるのだろうが、あくまでも彼なりのこだわりなので一般ハンターは真似をしないようにする事をオススメする。
尚、タバルジンの素材となるゲリョスやグラビモス、イーオスはエルガド観測所やカムラの里の狩猟エリアでは観測されておらず、ネロの装備を再現する事は実質、不可能である事を此処に記しておく。