身体を引きずりながらエルガドの観測拠点に帰還したのは身体に自由が戻って五日くらいしてからだった。
「ネロ!?」
観測拠点に戻って、真っ先に俺に気付いたのフィオレーネだった。
「ボロボロじゃないか・・・誰にやられたんだ?」
「・・・ロアルドロス」
「・・・なに?」
「嘘のような本当の話だ。情けない話だが、やはり武器や防具などを一から見直さなくてはならないらしい」
「そうか・・・しかし、貴殿は仮登録のハンターの身だろう?素材などはどうする気だ?」
「その事だが、紹介状の件については心当たりがあるかも知れん」
俺はそう言うと身体を引きずりながら、その人等がいる場所へと向かう。本当にこの人等はあの頃と少しも変わらんなあ。
「・・・少し構わないだろうか?」
「ガハハハ!なんだ、ひよっこ!俺様と兄弟に何か用か?」
「まあ、そんなところだ」
俺はそう言うとそいつらの前で土下座した。
「・・・頼む。カムラの里への紹介状を書いてくれ」
「ちょっーー何をやっているのだ、ネロ!?」
「ガハハハ!こいつぁ良い!傑作だぜ!なあ、兄弟!」
「ドハハハ!全くだ!ハンターの恥さらしみてえなもんだ!」
そう言うと黒鬼が飲んでいた番茶を俺に浴びせ、赤鬼が豪快に笑いながら団子を喰った串で突っついてくる。
「貴様ら!いい加減にーー」
「うるせえな!こいつは俺達の問題なんだ!外野はすっこんでな!」
フィオレーネが何か言おうとした瞬間、黒鬼が怒気を込めて叫び、フィオレーネも硬直する。それからまたドッカリと座り直し、此方を静かに見据えていた。
「・・・いままで高みを目指していたベテランのハンターが土下座して頼む事がどれだけ屈辱かなんてものがお前達に解るかよ?・・・ましてや、その背中を大きくなって行くのを見ながら狩り場を駆け巡った俺達の気持ちなんかによぉ?」
「成長して行く様を間近で見ていた俺達がどんな思いで接していると思っているかなんざ、お偉方のあんたらにゃ解るまい?それでも、あんたらだって階級に上り詰めてから、また一から出直す事がどれだけ厳しさがある事なのかくらいは解るだろ?」
「それは・・・確かにそうだが・・・」
黒鬼と赤鬼ーーヘルブラザーズの言葉にフィオレーネが詰まっていると黒鬼の方が深い溜め息を吐く。
「わかった。書いてやるよ。どん底から這い上がって来るまでせいぜい頑張んな、兄弟」
「・・・すまない。助かる」
俺はそう言うとフラフラと立ち上がってヘルブラザーズに頭を下げると再び身体を引きずりながら、その場を後にする。
ーーー
ーー
ー
「・・・貴殿等、何故にあのような真似をしたのだ?」
「ベテランのままの気持ちだと思っていたら、いつまでも成長出来ねえ。ましてや、ココット村やポッケ村で自信がついていたハンターが新天地で新たに活動するからこそ、ベテランハンターとして誇りってのが邪魔になって来るんだ」
「あいつにゃあーーあの人にゃあ、俺達の上にいて貰い続けて欲しいんだよ。そんでまたハンターとして活躍するのを見てえんだ。例え、俺達が憎まれ役になろうともな。ドハハハ・・・ぐすっ・・・おい・・・今日の団子は随分としょっぺえじゃねえか、兄弟?」
「・・・全くだ・・・おまけに雨まで降って来やがる・・・本当に今日はなんてぇ日だよ・・・ちくしょう・・ガハハハ・・・ううっ」
※【注意】※
ヘルブラザーズはココット村から存在する二人組のベテランハンター。その腕はハンターとしても上位存在する。
ココット村でプレイヤーがハンターになる前からベテランのハンターとして活躍していた。
尚、ゲーム上の都合上なのか、二人が活躍する描写は周囲のNPCに会話しなくては語られる事がなく、実際にハンターとしては凄腕ではある模様。
つまり、ネロとは同郷とであると言う事になり、年齢的にもネロよりも高齢であると推察出来る。