モンスターハンター【夕闇の不協和音】   作:陰猫(改)

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そのハンター、カムラのかけだしのハンターになる

 ロンディーネに案内されて訪れた集会所は里の中里で一番と言って良い程、華やかな場所であった。

「来たでゲコな」

 その中央にテツカブラの幼体がいて身構えたが、よく見れば、竜人族のふくよかそうな爺さんが跨がっていた。その先には手には団子が吊るされ、テツカブラの幼体が物欲しそうに口を開閉させる。

 いまはまだ良いが、その内、テツカブラの逆襲に合わなければ良いのだかな・・・まあ、カムラの手練れならテツカブラごときは敵ではないのかもな。

 先程、喋ったのはこのテツカブラに跨がっていた爺さんらしい。

「ゴコク殿。この者のハンター登録はお済みですか?」

「ちと、難航したが登録は終わっているでゲコ」

 ロンディーネの言葉にゴコクと呼ばれる爺さんが頷く。

 ゴコクは「それにしても」と呟き、何事かを考え込んで空いている手で資料を確認する。

「紹介状が二つもあるハンターとは・・・お主、相当に期待されているらしいのう」

「二つ?・・・ヘルブラザーズを名乗るハンター達の紹介状だけではないのですか?」

「確かに片方はそんなハンター達の紹介状でゲコ。そして、もう片方がガレアス殿から紹介状でゲコ」

「ガレアス提督自らが!?」

「うむ。エルガドでの仮登録中の働きぶりを大層、評価されているでゲコ。素材もアイテムも横領したりせず、管理もきちんとされていて、またエルガドに欲しい人材とあるでゲコ。

 紹介状とは別にハンターとして採用されなくとも研究員として歓迎もするとあるでゲコよ。

 ただ、この字はガレアス殿のものではないでゲコが・・・ヘルブラザーズに関しては・・・おっと、こっちは本人には内密であったゲコ」

 ゴコクはそう言うと資料をしまい、俺を見据えた。

「何はともあれ、これだけの評価をされた紹介状でゲコ。カムラの里としても、その働きぶりに期待するでゲコよ」

「ああ。わかった。宜しく頼む」

 俺が頭を下げるとゴコクは「ゲコゲコ」と笑い、ロンディーネが「すごいな」と呟く。

「貴殿は誠実なハンターだったのだな?」

「仕事に手は抜かん。誰にでも出来る事をしただけだ」

「それは自分を下に見すぎではないか?」

「ベテランから新米に戻るんだ。これくらいの気概の方が良いだろう。舞い上がれば、それが命取りにも繋がる」

 ロンディーネに俺がそう言うとゴコクは「ほう」と関心する。

「お主、伊達にハンターとして長い訳ではなさそうでゲコな?・・・ますます、期待が高まるでゲコ」

「あまり、期待されても困るが・・・まあ、応えられるように励ませて貰う」

「うむ」

 俺がゴコクと会話していると「話は聞かせて貰った!」と奥から声が聞こえる。随分と若いハンターのようだが、目をやれば随分と腕が立ちそうなハンターがいた。

「ウツシ殿。お元気そうで何よりでございます」

「ロンディーネ殿こそ、お変わらずーーそれよりもそこのキミ!キミの心意気は解った!」

「あんたがウツシか・・・しばらく、厄介になる」

「ああ!宜しく!・・・よし!今日からキミも愛弟子だ!」

「まだ技量も見てないのにか?」

「技量以前にキミの狩りに対する真摯な心構えが気に入った!キミならきっと、カムラも誇れるハンターとなるだろう!」

 そう言うとウツシは「ただ」と考え込む。

「エルガドの地ならば、アルローが教官をしていた筈だが・・・アルローには会わなかったのかい?」

「・・・いや、紹介すらされなかったな」

「恐らく、アルロー殿も他の王国騎士達の育成で手一杯だったのかと・・・ガレアス提督がアルロー殿をネロの件で蔑ろにされるとも考えられませぬ」

 考え込むウツシにロンディーネがそう助言するとウツシが真剣な面持ちに変わる。

「ふむ。それだけエルガドの地の災厄は厄介と言う訳か・・・」

「ああ。俺もロアルドロスとやり合ったが、手応え的に大型モンスターは恐らく、G級クラスのレベルだろう。あの地にで他の奴を育成するとなると手間暇が掛かってしまうだろうな」

「G級か・・・俺達はマスターランクと呼んでいる。キミ、よくマスターランクの大型モンスター相手に生還出来たな?」

「いや、俺もかなりの深手を負った。生きて帰れたのは奇跡に近いだろう」

「良い心掛けだ。キミなら近い将来、再びマスターランクのロアルドロスと対峙しても難なく、討伐出来るだろう」

「その為にも狩りの基礎を見直す必要がある。すまないが、改めて宜しく頼む」

「ああ。俺もキミの気持ちに答えられるようにレクチャーしよう」

 ウツシはそう言うと俺の肩に触れ、何かに気付く。

「・・・キミ、普通の人間ではないな?」

「まあ、これから世話になるんだ。隠し事するのは不粋か・・・」

 俺はそう言うとエルガドのおひめさんの時と同様に目を飛竜のものに変化させ、事情を話す。

「・・・成る程。キミが普通のハンターではないのは解った。だが、特別扱いはしないから安心してくれ」

「ああ。そうしてくれると助かる」

「飛竜の目か・・・ヒノエさん達のような飛竜との共鳴による瞳に似てなくも思えなくはないな」

 ウツシはひとりで考え込み、「ふむ」とある仮説を立てる。

「キミには元々、何らかの飛竜との共鳴があったと考えるのが妥当かも知れないな。飛竜との共鳴出来る力を秘めていた。

 だからこそ、キミは飛竜との相性が良かったのかも知れないな。そして、共鳴する体質だったからこそ、キミの中で飛竜達は一つになり、キミに飛竜化と言う力を与えた」

「共鳴したが故に飛竜が同化した、とウツシ殿はそのようにお考えなのですね?」

「あくまでも仮説だが、全く可能性がゼロと言う訳ではないだろう。恐らくだが、飛竜達の血を取り入れた事でキミの中で共鳴力が増したとも考えられるーーまあ、俺も専門家ではないし、ヒノエさん達と古龍達の共鳴を見たから言える事だけれどもね。キミの飛竜化状態と言う力は本来、普通のハンターにはないものだ。扱い次第ではキミ自身が災厄となるかも知れないが制御する術を学べば、キミは再びハンターとしてだけでなく、人としても成長出来るだろう」

 ウツシはそう結論付けると再び俺の肩を叩く。

「それで早速でなんだが、キミの基礎技術と言うのを見たい。まずはオトモ広場へ来てくれ」

「オトモ広場へ?」

「ああ。そこを小舟で移動した先にカムラの里の訓練所と言うものがあるんだ。詳しい事はそちらで話そう」

 そう告げるとウツシは集会所から覗く花びらを舞わせながら蟲を使って、その場から去る。

「ウツシ殿の事だ。何か考えがあるのだろう。我々も向かうとしよう」

「ああ」

 俺はロンディーネと共に集会所を後にし、再びオトモ広場へと向かうのであった。

「おっと、その前にカムラの装備とやらを確認した方が良いんじゃないか?」

「・・・それもそうだな。この格好だといつまでも馴染めそうもないしな」

 オトモ広場へ向かう道中でロンディーネの言葉に頷くと俺はカムラの狩人達の装備に着替える。急拵えとは思えぬフィット感だ。昔、ハンターとして初めてレザー装備を装着した時を思い出す。

 そんな俺を見て、ロンディーネが笑う。

「なかなか似合っているじゃないか。こうして見ると貴殿も立派なカムラのハンターだな」

「見た目だけはな・・・本番はまだ始まってもないだろう?」

 俺の言葉にロンディーネも頷くと「ウツシ殿を待たせる訳にも行かないな。急ごう」と言って走り出す。俺もロンディーネを見失わぬように地を踏みしめ、脱兎の如く駆け出す。

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