再びオトモ広場へと向かうとウツシが奥で待っていた。
「やあ、愛弟子よ!改めて、まずはキミの技術を確認だ!
さあ、この小舟に乗ってくれ!」
「ああ。解った」
俺は頷くとウツシと共に小舟に乗る。
「では、私はまた貿易窓口に戻るとしよう。貴殿もオトモを雇うようになったら私に話掛けてくれ」
「ああ。世話になったな、ロンディーネ」
俺はロンディーネと別れ、ウツシと共に小舟でオトモ広場から少し離れた洞窟へと移動する。その道中でウツシが声を掛けて来た。
「急拵えだったが、カムラの装備はどうだい、愛弟子よ?」
「悪くはない。寧ろ、良い方だ。ただ、いままで頭と腹はインナーだったからな。どうにも違和感がある」
「それもすぐ慣れるさ。今度からは防具も身に付ける努力をした方が良いだろう」
「ただ、そうなるとアルタード化した時が怖くてな。鎧を再度、補強する手間などを考えるとどうにも身に付けるべきか悩む」
「アルタード化?」
「完全飛竜化状態とでも呼べば良いのか・・・まあ、一種の暴走状態だ。たまに飛竜化が安定しない時に発動する。そうなると翼が生えたりと色々するんでな」
「それで普段から胴体を着けてないのか・・・成る程。愛弟子の事をまた一つ知れた気がするよ」
「俺からも一つ良いか?・・・あんた、ギルドナイトか何かか?」
「厳密には違うけれども、里を裏から支えると言う意味では似たようなものだね」
「・・・そうか。まあ、あまり話したくないのなら構わん」
「愛弟子が自分の秘密を教えてくれたのに俺だけが秘密って訳にも行かないだろう?
まあ、仕事なんて言っても里自体は問題ないさ。大体の場合は里にやって来るハンターなどだね?ーーそう言う輩が悪事をしないかを見張ったり、里長やゴコク殿の指示でモンスターの動向を調べたりするのが裏の仕事さ」
そんな会話をしている間に目的の場所へと到着し、ウツシが先に降りる。俺も小舟から降り、ウツシの案内で奥へと進む。その先にはオトモ広場と同じからくりや動く的などが存在した。
「では、早速、いままでの愛弟子の動きを見せて貰おう。
目の前の大型からくりが相手だ。モンスターだと思って思いっきり、やってくれて構わない」
「ああ。解った」
俺はウツシに頷くとカムラの片手剣を素早く抜きながら踏み込む。いままで散々、叩き込まれたラッシュやポッケ村から更に応用した盾での殴り戦術ーーそれらを観察しながらウツシが何か考え込んでいる。
俺はウツシが声を掛けて来るまで様々な攻撃パターンで大型モンスターを模したからくりを攻撃し続ける。
「・・・そこまでだ、愛弟子よ」
その言葉に俺も動きを止める。汗がほのかに蒸気し、ようやく、エンジンが温まって来たのだが、ウツシもそれを見据えてなのだろうか?
「愛弟子がいままでお手本通りの戦いしていたのは解った。次は飛竜化して思うままに戦ってくれ」
「構わんが、飛竜化してで良いのか?」
「ああ。大丈夫だ。愛弟子が思っている以上にこのからくりは丈夫に出来ているからね」
「・・・わかった」
俺は半歩下がり、呼吸を整える。そして、飛竜化状態へとスイッチを切り替え、再度、からくりに突っ込みながらカムラの片手剣を叩き込む。
ロアルドロスとやり合った時よりエンジンも温まっているからか身体がよく動く。
俺は飛竜化する事で生まれる本能に従い、暴風となってラッシュを叩き込み続ける。
不意にコツンと頭に何かが当たり、俺は動きを止めた。どうやら、ウツシが何かを俺に投げ付けて来たらしい。
「成る程。飛竜化すると文字通りに飛竜のように攻撃が主体になって防御が疎かになるのか・・・ある意味、片手剣で鬼神化するのに近いのかも知れないね」
ウツシはそう言って改めて俺を観察する。そんなウツシを見ながら俺は飛竜化を解除する。
「おや、もう良いのかい?」
「あんたの言う通り、確かに双剣の鬼神化状態に近いんだ。同じ理屈である程度余裕を持って解除しておかないとスタミナ限界時の反動でのダメージがデカい。実際、ロアルドロスとの戦闘時はG級クラスの攻撃を喰らいながら毒属性の片手剣の効果が出るまでラッシュを叩き込んでいたからな」
「では、今度からは飛竜化しても防御出来るように訓練しよう。ついでにカムラ流の片手剣の技術も教えよう。他の武器は扱えるかい?」
「片手剣しか使ってなかったからな。他の武器については知識としてあるくらいだ」
「では、片手剣をメインにカムラ流の技術を愛弟子に教えよう。だが、俺の見立てが確かならば愛弟子は恐らく、片手剣を辞めるべきだろう」
「・・・ん?それは何故だ?」
「身体が従来の片手剣の使い方に慣れきってしまっているからさ。こればかりはどうしようもない。しかし、片手剣が愛弟子との相性が良いのも確かでもある。ただし、それは飛竜化してない時の話だ」
「飛竜化が逆に弱体化をする原因になっていると?」
「片手剣の利点は攻めと防御の両立だ。しかし、愛弟子の飛竜化は防御が疎かになる。つまり、片手剣の利点が活かせないって訳さ」
成る程な。いままで何の疑問なく、片手剣を使い続けていたが飛竜化すると防御が疎かになる欠点とかがあったとは・・・。
「恐らく、愛弟子の飛竜化と最も相性が良い武器は双剣だろう。しかし、これにも少し思う事がある」
「この際だ。あんたの意見を聞かせてくれ」
「鬼神化と飛竜化による反動の倍加だ。飛竜化も鬼神化もスタミナを使う。つまり、相乗効果と言う奴さ。しかし、愛弟子の飛竜化が鬼神化と同じ理屈であり、上位互換であると言うのならば話は別だ」
「だから、実際に双剣を使ってみせろ、と?」
「そう言う事だ」
俺は「わかった」と頷くと近くにあるボックスの中からカムラの双剣を取り出す。
俺は軽く振り回し、基本通りに振るってから鬼神化してみる。その瞳はウツシから見ると飛竜化の時と違い、黒かったそうだ。
つまり、双剣を飛竜化と鬼神化を使った場合、負担は倍加する事が解った。ここでまた俺達は頭を悩ませる。
片手剣も駄目。双剣もスタミナ倍加するとなるといままで全く使って来なかった武器を試すようである。
俺はウツシが見守る中、飛竜化した状態と通常の状態で武器をあれこれ、変えながら何度も試行錯誤した。
そして、ようやく、飛竜化と相性が良くて俺でも扱い易そうな武器が見付かった。
それはカムラでも馴染みのない武器であり、多くのハンターが一度は敬遠するだろう代物ーー
ーー操虫棍である。