「では、もう一度、おさらいしよう」
「・・・ああ。理屈としては解ったが、やはり実践していくべきだからな」
俺は操虫棍を抜き、軽く振るって身構える。太刀でもなく、片手剣でもない。未だに疑心暗鬼だが理論上、これが一番負担が少ないであろうと言うのはなんとなく、理解出来た。
片手剣のように自在に扱い易く、更に変幻自在に飛び回れて何よりも右腕から放った蟲がモンスターから吸収したエキスの恩恵を受けられる。
理屈としては飛竜化とも相性が良いのは解る・・・解るのだが、どうにもこの右腕の蟲の感触に慣れない。いままで盾を使っていた分、左右のバランスは良いが、代わりに操虫棍の馬鹿みたいにデカい蟲だ。見た目的にも普通に慣れられるものではない。
「・・・やはり、違和感があるな」
「ふむ。顔に似合わず、蟲は苦手なのかい?」
「どちらかと言えばだが・・・過去に大型モンスターだった蟲で酷い目にあってな」
「そうか。なら、無理して使うものでもないだろうね。ただ、そうなるとーー」
「ああ。結局、片手剣か最も有力、か・・・」
俺とウツシは深い溜め息を吐く。やはり、これが俺に一番しっくり来るらしい。
「う~む。やはり、そうなってしまうか・・・期待させただけにすまない」
「いや、こればかりは俺自身の問題だからな。あんたが気に病む必要はないさ」
「しかし、そうなると飛竜化時の制御か・・・よし!俺の方でも愛弟子の狩りを観察して成長の時が来たら、特別なクエストを出そう!」
「そうか。気を利かせて悪いな」
「まあ、先の動きを見て、ある程度は俺の中で答えに近いものはあるんだが・・・それには愛弟子のハンターとしての新たな成長は不可欠だろう。それまでは日々、狩りの中で己を鍛えよう」
ウツシはそう言って俺の肩を叩く。理解していたつもりだが、やはりウツシはいままで出会った教官とも違う。ハンターに寄り添う事で論理的な意見を述べ、ハンターの事を考えて行動している。他のハンターよりカムラのハンターに勢いがあるのはウツシと言う教官の存在があって成り立っているのかも知れんな。
結局、武器はいつも通り、片手剣を使う事にした。ついでに飛竜化を使う事もウツシが責任を取ると言う形で認めてくれる事になった。
「それではまた里に戻ろう。今日は疲れただろうから、ゆっくり休んで明日から頑張ってくれ」
「ああ。解った」
俺はウツシに頷くと訓練所から再びカムラの里のオトモ広場へと移動する。オトモ広場に戻るとウツシは「そう言えば」と思い出したように呟く。
「愛弟子はヒノエさんとミノトさんにはもう会ったのかい?」
「いや、まだ里長とゴコク、あんたにしか声を掛けていない」
「それなら二人に挨拶がてら、里の住人にも挨拶して回るとしよう。里の住人全員が家族であり、仲間だと思ってくれて構わない。それだけ、里の絆は強いと思ってくれ」
「ああ。わかった。カムラは思っていたより懐がでかいんだな」
俺はウツシと共に里の住人に挨拶をしながら、まずはヒノエの元へと向かう。
「いらっしゃいませ、ウツシ様」
「やあ、ヒノエさん。新しい愛弟子を紹介しようと思ってね?」
「存じ上げています。あなたが噂のハンター様ですねーーと言っても私は既にあなたを拝見していますが・・・」
「ん?そうなのか?」
「ええ。此処からですと里長がよく見えますもの。ロンディーネ様と楽しそうにお話しながら歩いて行くあなたを見ております。あまりにも楽しそうでしたのでお声を掛けるタイミングを逃してしまいましたわ。ミノトも似たような事を申しておりましたわ」
「そうだったのか?それは悪い事をしたな?」
「とんでも御座いません。改めて、ヒノエと申します。宜しくお願い致します、ネロ様」
「ネロで構わん。まだまだ駆け出しのハンターだしな」
ヒノエは微笑むと隣に置いてある団子の山を旨そうに喰う。
「うさ団子は至福の味ですわ♪」
「・・・ふむ。エルガドで聞いていたが、本当に団子を食べ慣れているのだな?・・・あれだけの団子を食っても、平然としているとは?」
「いや、あれはヒノエさんが特殊なだけさ。さて、集会所のミノトさんにも声を掛けて今日は終いにしよう」
「ん?ああ」
団子を旨そうに食うヒノエをそのままに俺は挨拶巡りを再開する。加工屋の主人とは気兼ねなく話せたが、半人前のカムラのハンターからは毛嫌いされた。まあ、こればかりは仕方がない。
地道に経験を積み重ねていたハンターが、フラリとやって来た得体の知れない者が優先的にハンターになったのだから、さぞや面白くないだろう。
あとは郵便屋のアイルーと話をしてエルガドを目指すハンターを支援する装備やアイテムなどを受け取った。こんなものも扱っているとはやはり、カムラは他と違うらしい。
特に里守シリーズと呼ばれる武器の存在はデカい。初期で配布される武器とは思えぬ火力と扱い易さを秘めているのが解る。加えて、クロオビ装備の存在もある。しかも、下位装備と上位装備の両方を貰ってしまった。いままでこんな厚待遇をされた事がないので流石に俺も何か裏があるのではないかと思ってしまう。
まあ、ウツシがそれに対して動いてない以上は問題ないのだろうだが・・・因みにミノトとやらにはかなり警戒された。
慌ただしい一日であったが、なんとも充実した一日だった。
俺は久々に風呂に入って日頃の垢を落とすと布団で一眠りする。