結果から言えば、狩りは普通に成功した。無論、下位より低いレベルのモンスターだったのもあったが、連携系統がまとまったと言う収穫の方がでかい。
里に戻ると「ご無事でしたか」とヒノエが安堵する。
「狩りについては思っていた以上に問題なかった。ヒノエが心配する程ではない」
「ああ。すみません。そうではなく、例のロアルドロスが確認されまして」
「なに?本当か?」
「もちろんです。ウツシさんも確認して頂けましたし、件のロアルドロスに間違いはないでしょう」
「・・・そうか」
まだ一週間足らずだと思っていたが、もうロアルドロスが目撃されるとはなーーもし、そうであるならば、ロアルドロスは毒を克服した事になる。未知の猛毒で苦しんでいたとは言えども、流石はマスターランクの大型モンスターなだけはあるようだ。
「それでそのロアルドロスはどうした?・・・もう討伐したりしてしまったのか?」
「それについては俺から話そう!」
ヒノエにした質問に対して、そう返したのはウツシの声だった。
しかし、何故か、ウツシの姿は見当たらない。ヒノエに顔を戻すと上を指差すので、俺はもう一度、振り返って頭上を観察すると目撃したのは何故だか里の本殿らしき建物の屋根で腕を組んで此方を観察しているウツシだった。
「ふっふっふ!やあ、愛弟子よ!」
ウツシは片手を上げて此方に挨拶してから「とうっ!」と叫んで真正面に着地する。
「今回の狩りは一部始終見せて貰っていたよ!的確な指示と判断ーー何よりもオトモとの協力しての討伐プレイは実に見事だった!」
「タマの事を理解出来たのが大きかっただけだ。それよりもーー」
「心配ない。ロアルドロスは他のカムラのハンターが捕獲したよ。負傷者が出なかった訳ではないが、カムラの里のハンターを侮って貰っては困る」
「侮っていた訳ではないが、流石だな・・・しかし、討伐ではなく、捕獲なのか?」
「それについては思うところがあってね。そういう訳で愛弟子に少し見て貰いたい」
俺はウツシにそう言われ、捕獲されたロアルドロスが眠っている檻までやって来る。
あちこちに無数のハンターと戦った痕跡や部位破壊された箇所があるが、ロアルドロスの寝息は規則正しい。少なくとも、ある程度の回復はしているのだろう。流石はマスターランクのモンスターなだけはある。
「愛弟子から連絡のあったロアルドロスなんだが、確かに衰弱はしていたーー筈なのだが、此方が想定していたよりも狂暴化していてジリ貧の結果、なんとか捕獲に成功したんだが、どうにも通常のロアルドロスと様子が異なる。愛弟子はエルガドの研究員も認める目利きだと聞いているし、何か気になる事とかはあるかい?」
ウツシにそう言われ、俺は眠っているロアルドロスを観察する。そこで俺はロアルドロスについた無数の小さな傷に気付く。ハンターの攻撃や大型モンスターとは別の小さな傷だ。
それはどこか、ポッケ村の雪山で採掘時に付着するフルフルベビーのものにも見えなくはないが、よく観察すれば、身体の至るところーー特に頭や背中に多く見られる。
ロアルドロスの頭上にフルフルベビーが大量に噛み付いた?ーーいや、それだったら他のハンターも気付く筈だ。
しかし、そうではなかった事を踏まえるとこの噛み付いた痕を残した奴はフルフルベビーとは考え難い。そもそも、フルフルベビーは古龍であるクシャルダオラの抜け殻の内側に寄生してはいるが、自らが積極的に噛み付いたりする類いの幼体ではない。魚の類いが衰弱しているロアルドロスに群がったと言うのとも、どこか違う気がする。
これ以上についてはバハリに報告して専門的な分析をして貰ってみた方が早そうだ。
ーーそこで俺とロアルドロスの目が合う。
「ーーっ!?」
俺とウツシは身構え、ロアルドロスの出方を窺う。目を覚ましたロアルドロスは俺を見るや勢いよく突進して来る。
マスターランクのモンスター突進にも堪える程、カムラの檻は強固であったが、その威力を完全に殺せずに檻がへしゃげる。
そんなロアルドロスにウツシが麻酔玉を投げつけ、再び眠りにつかせる。
「もう起きたか・・・カムラの里の上位以上の体力にパワーを持つ大型モンスター用の檻の制作をハモン殿に作って貰うか・・・それとも麻酔効果を強めるか」
「・・・やはり、おかしいな」
ウツシがロアルドロスの扱いに悩んでいる中、俺はひしゃげた檻に触れる。
ロアルドロスは周囲を確認するより目の前の対象に飛び掛かったーー猛毒で苦しんで逃走していたあのロアルドロスと同じ個体とは思えない行動だ。まるで逃げる事や状況確認などを考慮していないかのように獲物を仕留める事にのみ、特化した行動だ。
例えるのならば、飛竜化した状態の俺に近いが、俺の場合は体内に宿る内なる飛竜の力を発現しているからだーーでは、自然に生きているこのロアルドロスは何を媒体に力を上昇させている?
これもメル・ゼナと言う古龍と何か関係があるのだろうか?
気になる事が多すぎるが一つ一つ消化するしかあるまい。
俺はそんな事を檻に付着したロアルドロスの血を指で掬って弄りつつ、あれやこれを考えながらウツシの指示に従って、その場を後にする。