『バハリへ。俺がロアルドロスと戦う事はなかったが、他のカムラのハンターが捕獲に成功した。その個体を観察させて貰ったが、幾つか気になった事を上げておく。
・まずは噛み傷だ。小型モンスターよりも小さい生物による噛み痕が気になる。しかも一つや二つではない。そちらのモンスターにもあるかを確認してくれ。
・次に狂暴化についてだが、捕獲したロアルドロスが目覚めて即、攻撃に移った。毒で苦しんで逃げ出した同じ個体の行動にしては矛盾がある。敵意を剥き出しにするのは理解出来るが、ロアルドロスに檻の存在を認識する余裕がなかったのが、俺が気になった事だ。寝惚けていた行動にも思えない。
あれはもっと違う理由による狂暴化ではないかと俺は睨んでいる。或いはこの噛み付いた何かが解明するヒントになるかも知れん。そちらでも何か情報を掴んだら、また連絡を頼む。
ーーネロより』
俺は拠点となる家で手紙を書くと再びロンディーネが商談しているオトモ広場へと向かう。
「あ、ネロさん」
そんな広場へと向かうと俺に声を掛ける者がいた。顔合わせはしたが名前が出てこない。
「お前は・・・あーっと・・・」
「その様子だと忘れちゃったみたいですね?・・・オトモの受付窓口をやっているイオリです。今度はちゃんと覚えて下さいよ?」
「・・・うむ。すまんな、イオリ」
俺は鼻の頭を掻きながらイオリに頷く。
「こうして話をするのははじめてですよね。
その、赤夜叉とタマについてはどうですか?」
「二人共、よくやってくれている」
「そうなんですね・・・ここだけの話ですが、赤夜叉とタマについてボクはほとんど携わってないんです」
「そうなのか?」
「正確に言うとタマとは訓練関連を一通りさせたくらいですが、とてもオトモとしての実力があるとは思えなくて困っていたんです。どちらかと言えば、タマは戦いに向いてはいませんから・・・それでも、タマがオトモアイルーをしているのが訳がありまして」
「なんとなく、理解はした。狩猟の空気を直に感じたいとか、そんな理由だろ?」
俺の言葉にイオリは「すごい!」と呟いてから笑って頷く。
「タマは戦略を立てたりするのは得意だからな。お前が思う以上に軍師としての素質がある。逆に言えば、オトモアイルーで収まる器ではない。活かし方次第ではこいつは化ける可能性が十分にある」
「軍師ですか・・・成る程」
イオリは何かに納得するとタマの頭を撫でる。なんのかんのタマもイオリには気を許しているらしく、喉を鳴らしてゴロゴロと甘えている。
「理解ある人に選んで貰えて良かったね、タマ?」
「フニャ~♪」
「それについてはレオーー赤夜叉の見立てだ。俺が厳選した訳ではない」
俺がそう言うとレオは素知らぬ顔でそっぽを向いてしまう。
そんなレオを見て、イオリは少し考える。
「やっぱり、キミ・・・あの時の事をまだ気にしていたんだね?」
「あの時?」
「ガウッ!」
俺が話を聞こうとするのをレオが袖を引っ張る事で止める。
「・・・どうやら、聞いて欲しくない話らしい。すまんが、その話はまたにしてくれ」
「わかりました。他にもオトモを雇いたくなったら、いつでも声を掛けて下さいね」
俺はイオリとの会話をそこで終いにし、改めてロンディーネに手紙を渡す。
ロンディーネはそれを受け取ると「確かに」と言って頷く。
「流石はベテランのハンター殿だ。もう異変についての情報を手に入れたのか」
「まあ、そんなところだ。確かに渡したぞ?」
「うむ。その働きぶりに感謝する」
そこまで言ってロンディーネは「時に」と続けた。
「観測拠点にガランゴルムの討伐依頼が正式に入ったそうだ。本格的に動くのはこれからになるだろうから、また進展があるだろう。ただ、私の知る限り、あの温厚なガランゴルムが狂暴化するなどとは、にわかには信じ難い事だ」
「理由については俺も気にはなっているところだ。この狂暴化には古龍とは別の何らかの理由がある気がする。今回の手紙にも書いたが、それについて何か気付く事があれば、此方にも情報共有を頼む」
「承知した。この手紙は必ずエルガドに届けよう」
ロンディーネと頷き合うと俺は再び里で起こる依頼をこなす日々へと戻る。