あとになって、一つ重大なミスをした事に気付いた。後先何も考えずに普通におひめさんとわかれてしまったが、寝床とか教えて貰っていなかったなーーいまからでも聞きに戻るか?
「ニャ!さっきボクに釣られた人!」
その声の主に振り返ると船の近くで釣りをするアイルーに気付く。大物でも引き当てたのか現在、格闘中のようだ。
「ちょっと手を貸して欲しいニャ!大物過ぎてボクだけの力じゃ逃げられちゃうニャ!」
いまはそれどころではないのだが・・・まあ、このアイルーに救われたのが全ての始まりだしな。恩返しって意味で手伝ってやるか。
俺はそのアイルーに駆け寄るとアイルーごと片手で竿を引っ張る。大物と言っても大食いマグロとかだろうと思っていたが、釣り上げたのは見た事のない魚竜種であった。
「ヴォルガノスか!?」
「違うニャ!コイツはジュラトドスだニャ!」
慌てて俺の後ろに隠れるアイルーを守るように俺はピチピチ跳ねるジュラトドスなる大型モンスターを見据える。
一見するとヴォルガノスと見た目がそっくりだが、このジュラトドスと言う奴は水中を泳ぐモンスターらしい。ヴォルガノスは溶岩の中を泳ぐ魚竜種なので恐らくは亜種みたいなモノなのだろう。まさか、実際にこのような場所にモンスターが襲来して来るとは思わなかった。さて、どうするか・・・ポーチの中の回復薬は少しあるが、初めて見る大型モンスター相手にこの量では若干、不安だ。何よりも寝ていた時に普段から使っている砥石の石が海の底に沈んでしまったのでいまの状態での戦闘はいくら、狂戦士と言われた俺でも悩んでしまう。
そんな事を俺が悩んでいる間にジュラトドスと呼ばれる大型モンスターはムクリと起き上がり、周囲を見渡してから小さな鼻をひくつかせる。すると何故だか、しかめっ面をして再び海へと飛び込み、観測拠点から遠ざかって行く。
「た、助かったのニャ~」
「ああ。だが、わからんな。何故、奴はそのまま帰って行ったんだ?」
「それは多分、モンスター避けも兼ねたたたら場の煙のお蔭だと思うニャ。モンスターはこの煙の臭いが大嫌いなのニャ」
「ああ。このこやし玉を放置し過ぎて腐らせたような独特の臭いの事か・・・確かに鼻が曲がりそうな位、悪臭ではあるな。道理で嗅覚が麻痺している訳だ。普段よりも臭いでの判別が難しいのは、そう言った理由か」
「ハンターさんはモンスター並みに鼻が良いのかニャ?・・・ボク達の鼻でも、そこまで違いが解らないニャ」
「まあ、ちょっとした特殊体質なんでな。それよりも寝床になるような場所はないか?」
「ニャ?ハンターさんなら専用の寝床が普通あると思うんだけどニャ?」
「生憎と俺は準備待ちの身でな。普通のハンターとは若干、扱いが違うんだ」
「そうなのかニャ?・・・仕方ないニャ。ハンターさんじゃないハンターさんはそこの使ってない小舟でも使うと良いニャ」
「贅沢を言える立場ではないが扱いが雑過ぎやしないか?」
「働かざるもの食うべからずニャ。お仕事出来ないハンターさんはハンターさんじゃないニャ」
まあ、確かにこのアイルーの言う事は最もだな。おひめさんの返事を待つって意味でも、この小舟で我慢するか。
俺は小舟に飛び乗るとそのまま、一眠りを決め込む。
近くで誰かが船酔いでゲロ吐き出しているのが聞こえたが、しばらくはこの生活か・・・やれやれ。
※【注意】※
カムラの里や観測拠点エルガドにはたたら場の鉄を加工する時に出る黒煙を放出する煙突などがあり、モンスターはこの煙を嫌い、普段は侵入する事がない。例外として百竜夜行などの災害があるが、興奮状態にないモンスターなどはまず侵入して来ようとはしない。
このアイルーに釣り上げられたジュラトドスは遊泳中のジュラトドスであり、興奮状態ではなかったのもあった為、たたら場の黒煙の臭いに反応して観測拠点エルガドを後にしたのでした。
尚、観測拠点エルガドのモンスター避けの黒煙らしいものはエルガド研究所の奥側に見えるゲーム設定上、立ち入る事が出来ない採掘場らしき場所でそれっぽい物が確認出来ます。