ーーと言う訳で来たのが、観測拠点エルガドのメインの狩り場となる城壁高地であった。ところどころ、かつて人間が舗装した道も見えるが大半はほぼ、自然と同化していた。
「よし、行くとしよう」
「ああ」
俺はフィオレーネの言葉に頷くと早速、普段通り、支給品の入っている青い箱を開く。
入っているべき地図がないぞ?
「・・・フィオレーネ?」
「どうかしたか?」
「支給品に地図がないぞ?どうやって探索するんだ?」
フィオレーネは俺の言葉に「そこからか」と頭を抱え込む。
「すまないな。我々は地図は必須品で常に持っているのだ。次の時にでも渡そう。いまは身体で覚えてくれ」
「・・・わかった」
俺は頷くと必要そうな支給品を手に取る。随分と高価そうな応急薬だな。この領地の支給品は良い物を使っているらしい。
「今回は私のオトモ達も連れて来た。働き者だから期待してくれ」
「アイルーの方は解るのだが、そっちの犬の方はなんだ?」
「こっちはガルクと言う狩猟犬だ。支援だけでなく、移動手段の補佐なども兼ねている」
ガルクと呼ばれた犬は「バフッ!」と一声吠え、フィオレーネに撫でて貰って尻尾を振る。
「それからカムラが編み出した蟲技も幾つか紹介しておく」
そう言ってフィオレーネは俺に手のひらくらいの光る羽虫を渡して来る。
「私のするように蟲を使ってくれれば良い。はじめは慣れないだろうが、扱えるようになれば、移動の幅が増える」
そう言ってフィオレーネは蟲を飛ばし、その糸を掴んで跳躍する。
俺も見よう見まねで蟲を飛ばし、その糸を掴んで跳んで見る。蟲は思っていたよりも力があるらしく、俺の身体も宙に舞う。はじめての体験だが、これは面白い。
「蟲にはインターバルが必要だ。連続しようが出来ないから、そこは注意が必要になるだろう」
ふむ。成る程な。それにしてもーー
「なんだかんだ言って、お前も物を教えるの上手いじゃないか?」
「立場的に機会が多いだけだ。ウツシ殿には遠く及ばない」
「ココット村の教官に比べたらマシな方だ。あいつらはフィジカル過ぎる」
「それについては・・・貴殿を見ていて、なんとなくだが、そうなのではないかと思っていた」
だろうな。ココット村の教官に狩りは根性だの気合いだのだと熱弁された事を思い出す。そんな事を考えながらフィオレーネと共に道なき道を進んで行く。
「ネロ。この上に採取出来る場所がある」
「わかった。だが、ツタがなくて登れんな・・・普通にジャンプで届くだろうか?」
「フィジカルな割には変なところで律儀なんだな?・・・ココット村と呼ばれる村がますます解らなくなりそうだ」
「どういう事だ?」
「この程度の壁なら駆け上がれば良いだろう?」
そう言ってフィオレーネはヒョイヒョイと壁を駆け上がって行く。思っていたよりも豪快な方法で登るんだなと思いつつ驚きながら、俺も見よう見まねで壁を駆け上がって行く。
ココット村とかでの狩りしか知らない奴が見たら絶対に驚くぞ、これ?
俺は壁を駆け上がるとフィオレーネが待つポイントへと向かう。ここはココット村やポッケ村なんかと違って採取出来るポイントがわかりやすくて助かる。
「そう言えば、支給品に肉焼き器もなかったな?・・・まさかだと思うがーー」
「肉焼き器も常備品扱いだ」
マジで凄いな、エルガド領地。ココット村よりもデカい訳だ。下手すりゃあ、ドンドルマよりも凄いんじゃないか?
「そう言えば、調合書を持って来なかったな。調合が上手く行くかどうか・・・」
「・・・調合書?」
「調合書もないのか?」
「そんなものなくても片手間で調合出来るんじゃないのか?」
「いやいや、流石にちょっと待て・・・調合書がなかったら薬草とアオキノコの分量はどう計ってやっているのか?下手すりゃあ、もえないゴミになったり、薬草のままで食う羽目になるだろう?」
「・・・いや、回復薬くらいは薬草だけで作れるだろう?そんなに手間を掛けるのか、ココット村と言うのは?ーーと言うか、貴殿の話が本当なら薬草のまま食べるとか正気とは思えないのだが・・・」
前言撤回だ。確実にドンドルマより発展している。
寧ろ、俺がいままで基礎だと思っていた事がおかしいのかと感じてしまうくらい、簡単にフィオレーネは薬草だけで本当に調合して見せた。
ココット村を出て、ポッケ村やユクモ村でもハンターとして少なからず携わる機会があったが、エルガドに来て俺が常識だと思っていた事がことごとく、打ち壊されていく。
「因みにだが、この技術はほとんどがカムラの里のものだと言って良いぞ?」
・・・カムラの里、マジで凄すぎだろ?
そんなハンター達が苦戦する程の百竜夜行って災厄はどのくらいのレベルのものなんだ?
老山龍みたいな奴を相手にするようなものなのか?それともアカムトルムみたいな奴を相手にしているのか?
「フィオレーネ」
「なんだ?まだ他に気になる事でもあるのか?」
「あるっちゃあるが、カムラの里の百竜夜行って言うのが、どんなものか教えてくれないか?」
「私の知る範囲では大型モンスター達の大移動だ。モンスター達は何かから逃げるようにカムラの里を目指し、襲って来る」
なんだ、その災害レベルのアホみたいな災厄?
モンスターの大移動とか、ベテランハンターとかでも敬遠するだろう。精々、二匹か三匹、大型モンスターを討伐出来れば良い方だ。
「カムラの里の住人は里を守る為、住人総出で百竜夜行を迎え打つ準備をする事で幾度となく、百竜夜行を阻止して来たそうだ。最近になって元凶もわかり、ウツシ殿が追跡しているとか・・・」
は?いやいや、おかしくないか?カムラの里の住人はあれか?戦闘民族か何かか?
住人総出で災厄を阻止とか、どう考えてもおかしい状況だろ?ーーと言うか、大型モンスターにも苦戦するココット村やポッケ村では絶対に出来ないだろ、そんな大事?
エルガドがカムラの里にこだわる理由がわかった気がする。俺はまだカムラの里を知らないらしい。
※【注意(修正)】※
ワールドの段階から回復薬など特定のアイテムは採取と同時に即調合出来るそうです。また、回復薬に必要な素材は薬草のみであり、アオキノコを必要としないそうな。
ついでに地図はアイテム扱いではなく、常に表示され、プレイヤーが地図を暗記したりする必要がありません。
そして、フィールド内の大半はスタミナゲージを消費して駆け上がったりなどが出来る。飛翔蟲も使いこなせば、フィールド内で行けないところはほぼ、ないだろう。因みにカムラのハンターにとっては全て常識の範疇である。カムラこえ~。