学校の運営が来年度から実施するつもりの〈ネット禁止令〉。それを阻止するために、沙知先輩から話を聞いた翌日からスクールアイドルクラブの1年生は早朝から学校の玄関口に集まっていた。
監督として俺も一緒に付いてはいるが……
瑠璃乃「えっと〜、つまり〜。学校側に〈ネット禁止令〉を、どうにかして引っ込めてもらわなくっちゃいけなくって、そのための手段を探すってことだよね?」
花帆「そう! そして、いちばん手っ取り早いのは……やっぱこれ!」
さやか「署名ですか…………」
淳平「意外とマトモだな……」
花帆「うん! ネット禁止なんて聞いたら、みんな署名活動を手伝ってくれるに決まってるよ! あと淳兄ぃ意外ってなにさ!?」
いやだって……普段の花帆を見てたら……ねえ?
花帆「とにかく! こんな、いつまで経っても隣にショッピングモールを作ってくれない学校なんて……!『学校の横暴を、許すなー!』だよ!!」
瑠璃乃「しょっぴんぐもーる??」
淳平「ルリちゃんは知らなくていいから」
さやか「と、とりあえずお願いしていきましょう!」
すると、さやかちゃんは「ふぅ」と1つ深呼吸し、
さやか「……よし、いきます!」
瑠璃乃「おお! あのさやかちゃんが、メチャあぐれっしぶ……」
さやか「ビラ配りで鍛えさせられましたからね! すみませーん! 署名をお願いしまーす!」
花帆「お願いしまーす!」
瑠璃乃「おーっし、そんじゃあルリも、やってやりますかぁ!」
そして3人は署名集めに奮闘した。
淳平「………でも、そう上手く行くのかな?」
そして、ほぼ全校生徒の署名を集め、生徒会室に来た俺達。
花帆「え!? 意味ないんですか!?」
さやか「こんなに集めたのに……」
瑠璃乃「あつめたのに……」
ルリちゃんは署名集めで充電を使い切り、ダンボールに入って充電していた……。
沙知「いやあ、集めてくれたことは、ありがとう。でも実は、嘆願書って毎年すごい数が提出されてて………」
沙知先輩は嘆願書の一部を取り出して見せてくれた。
さやか「『寮の食事をもっと豪華に』……」
花帆「こっちは『授業を短くしてほしい』だって」
瑠璃乃「……めぐちゃんじゃないよね?」
沙知「さ、さすがに慈でもそんな事は言わないよ……。でも、そもそも〈ネット禁止令〉なんて出したら、生徒から猛反発来るのなんてわかっているだろうしね……あ、で、でも! 学校のために動いてくれたっていうのは、本当に嬉しいんだ! ありがとう!」
花帆「ええい、次の作戦!」
そして第二の作戦。その日の昼休みの校内放送を使わせて貰った。
さやか『と、というわけで! 本日は、成績優秀な乙宗梢先輩に、勉強法のコツについてお聞きしたいと思います! よろしくお願いします、先輩!』
梢『え、ええ! 任せて頂戴! 今の時代と言えば、やっぱりネットよね!』
さやか『おお………ネットですか!?』
梢『ええ! 学校の授業だけじゃカバーできないところが。なんだって動画でアップロードされていてね。すごく勉強の役に立っているの! ネットが!』
さやか『そ、それは、ぜひぜひわたしも真似してみようと思います! ネットを使った勉強法を!』
収録室でのそんな二人のやり取りを、外の音響室では……
花帆「どう、この作戦!」
瑠璃乃「これは……なんだい? 花帆ちゃん」
花帆「全校生徒と先生たちに、猛アピールだよ! 成績優秀なふたりの言葉だから、説得力がすごいよね! これはネットの勝利!」
さやか『あ、じゃあわたしにも 参考にしているチャンネルを教えてもらってもいいですか!?』
梢『ええ、もちろん! ちょっと待っててね………。ええと、ええとね、まずは動画アプリを開いて……あのね。ええとね……ええと……』(もたもた)
それを教室で聞いていた淳平は……
淳平(明らかに人選ミスだろ……)
収録室に戻り、
梢『おかしいわね、普段はもっとサクッと開けるのに……どうしたのかしらね、きょうは……』
瑠璃乃「やばくね?」
花帆「し、しまったぁ! 梢センパイが機械オンチなの、忘れてたー! こんなことなら淳兄ぃにしとくんだったあぁあああっ!」
梢『本当よ、本当にネットを見ながら勉強してて……本当に! 本当なの!』
さやか『お、落ち着いてください梢先輩! あの! えと! それではみなさん、また!』
花帆「あわわわ」
瑠璃乃「とゅーびーこんてにゅーど! 次いこ、次!」
そして放課後の部活時間……
梢「ごめんなさい」
花帆「ぜ、ぜんぜん! がんばってくれましたよ! それもこれもぜんぶネット禁止令が悪いんですからね!? ね!?」
慈「ネットの必要性を伝えるのに梢は人選ミスでしょ……。寧ろ醜態晒しちゃってるじゃん」
梢「ううっ……」
うわぁ、めぐもけっこう言うなぁ。梢のライフをごっそり抉ってったぞ。……たぶん
慈「ま、よーするに、ネットが学校の役に立ってるって思わせればいいんでしょ? だったら、やることは決まってるんだよ! お金だよ、お金!」
さやか「稼ぐんですか!? その、株とかで………!?」
するとルリちゃんはめぐの肩を掴んで前後に激しく振りながら止めるように説得する。
瑠璃乃「絶対やめたほうがいいよめぐちゃん!! ぜったい向いてるわけがないよ絶対!!」ブンブン
淳平「俺もめぐはやるの止めたほうが良いと思う。綴理やさやかちゃん、ルリちゃんは有り金倍にしそうな直感あるけど、めぐは有り金にバイめぐしそうな気しかしない……」
慈「めちゃめちゃ言うじゃん、ジュンもるりちゃんも……。じゃなくて、ほら」
めぐはスマホデビューこの間のオープンキャンパスの時の動画を開いて見せる。
綴理「こないだの、オープンキャンパスの動画だ」
慈「そそそ。こいつを編集して、蓮ノ空の新入生募集の動画を作れば……来年からわーっと新入生が増えて、学校はいっぱいお金が儲かって、ネットすごーい! ってなるってもんだよ!」
花帆「おお……お金はともかく、なんだかよさそうですね!」
瑠璃乃「ジュン兄ぃとルリ、めぐちゃんのことまだまだ甘く見てたみたいだよ……!」
淳平(ルリちゃん、俺も……?)
慈「これが、ほんとに頭がいいってことなんだよ! あはは!」
う〜わ、分かりやすく調子に乗りやがった……。
すると、
綴理「だめかも、それ」
慈「む?」
さやか「どうしてですか? 綴理先輩」
綴理「屋根が足りない」
慈「はぁ? なに言って………」
梢「……蓮ノ空は全寮制だから、部屋が足りないってことね」
花帆・さやか・瑠璃乃・慈「「「「あ…」」」」
慈「足りない分は相部屋にしてさ! それでも足りなければ、食堂に布団でも敷いて寝かせればいいじゃん!」
瑠璃乃「めぐちゃん、甘かったよ。素直に負けを認めようよ」
めぐよ……お前は新入生にどんな生活させる気なんだよ……。
綴理「つまり、まずは署名活動で寮の建て増しを要求するところから?」
梢「今年度中に終わりそうには、ないわね」
慈「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬ!!」
瑠璃乃「でもでも〜、そーゆーこと、だよね?」
慈「なにがー?」
今度は分かりやすく不貞腐れやがった……。
瑠璃乃「えーと……めぐちゃんとか花帆ちゃんが言ってた通りさ? 学校が『いえあ! ネット最強!』って思わないといけないのかなーって」
梢「ネットがあることが、学校側の利益にならなくっちゃいけないってことね」
瑠璃乃「それっす!」
さやか「そもそも蓮ノ空学院は、どんなことなら利益だと考えてくれるんでしょうか?」
綴理「蓮ノ空学院は芸術・文化に秀でた学校で、毎年たくさんの賞を受賞している……だって。学校案内にも、いちばんにそれが載ってた」
淳平「ウチの美術部とか書道部とか、吹奏楽部とか強豪だしなあ……」
さやか「ってことは、やっぱりそっち方面ですよね」
花帆「そっち方面………」
俺達が考え込む。すると、
淳平・花帆「「あ!!」」
俺と花帆が、同時に何かに気づいた。
さやか「どうしたんですか花帆さん、淳平先輩?」
淳平「思いついたかも……たぶん花帆も?」
花帆「もしかしたら同じかも……スクールアイドル部のやり方でどうにかするにはこれが1番かもしれない!!」
慈「どーするの?」
花帆「梢センパイ、あの、ラブライブ!北陸大会のことなんですけど!」
梢「え、ええ……」
花帆「大会って、配信で参加できたりってしますか!?」
梢「それは……大会の会場に行ってライブをするんじゃなくて、スクコネの配信を使ってリモートで出場するってこと?」
花帆「はい!」
瑠璃乃「同じだった?」
淳平「ああ。同じだった」
綴理「でも、その案いいね。それ見たらおっけーくれるかも」
さやか「ネットでしかできないことで、北陸大会を優勝できれば……。ネットの必要性は示せますし、きっと実績にもなりますよね?」
慈「それならいけそうだけど……でも、ただ配信するだけじゃだめだよね。配信でやる意味のあるライブにしなくっちゃ!」
瑠璃乃「配信でやる意味があること? そんなの、無限にあるよめぐちゃん! だって、配信超楽しいじゃん!」
花帆「梢センパイ!」
梢「……そうね。実現可能なアイディアだと思うわ」
花帆「それじゃあ!」
梢「ええ! ラブライブ!北陸大会を優勝して、学校の〈ネット禁止令〉を撤廃する。ずいぶんシンプルな話になったわね。………やりましょう、みんな。来年度のスクールアイドルクラブを――私たちを、この手で救いましょう」
花帆・さやか・瑠璃乃・梢・綴理・慈・淳平「「「「「「「おおーーーーっ!!!」」」」」」」
ー つづく ー
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