ネット禁止令が発令された日の昼休み、俺は部室に向かっていた。
淳平(今日一日見てたけど…こうなるのも当たり前だよな……)
そう、今日だけでも、学校内は雰囲気は大荒れ。中には「何がネット禁止だ!ふざけんな!」と激怒する生徒たちも大勢いた。
淳平(早く部室に行こう……)
すると、
?「おや、君は……」
淳平「ん?」
背後から誰かに声をかけられた。
?「やはり、日野下淳平くんか。噂は聞いてるよ? 素晴らしい成績を残す生徒が2年生にいると……」
淳平「……あなたは?」
なんだコイツ? 大人だけど、雰囲気の端々から感じ取れる嫌味な雰囲気。対面してるだけでムカついてくる。
?「失敬。私はこの蓮ノ空学院の理事の
嫌味原……名前まで嫌味なやつじゃねぇか。
淳平「で? その理事様が何か?」
嫌味原「いやね? 私達は、もっと蓮ノ空の生徒に勉学に打ち込んで欲しいんだ。そのためにネット禁止にしたんだけど理解されなくてね……。だが、生徒たちからも人望のある君が率先してくれればそのうち収まるだろ。期待しているよ?」
そして、その理事、嫌味原は去っていった。
淳平「……………」ググッ
俺の両手は、血が出るのではというほどに硬く握られていた。
沙知「あれ?ジュンペイ……。さっきの人は確か規制派の理事の……大丈夫かい?」
淳平「沙知先輩……はい。殴りたいのを必死に抑えるのが大変でした」
淳平(……本当に必死に抑えなきゃ、本気で殴り飛ばす所だったぜ………。だけど、禁止派にとって、俺はかなり重要みたいだな……それが知れただけで収穫だ……)
そして、俺たちは部室に急いだ。
◇
――その頃、
さやか「では、『ネット禁止令』についての情報をまとめますね。正確には、1か月間の通信データ制限です。動画を見たりゲームを遊ぶと、すぐにネットが使えなくなってしまいます代わりに、家族とのメッセージや連絡のやり取りに限っては行っても大丈夫。ということらしいですね。スマホが没収されなかったのも、そのためでしょう。」
さやかちゃんは「そして……」と続け、
さやか「しっかりと寮のWi-Fiは撤去されていたので、授業を除いて、学内で個人が自由にネットを使える場所はありません…………」
花帆「あの……。ちなみに通信データ制限って、どれぐらいなんですか? スクコネだと…………」
綴理「たぶん、アプリを立ち上げることもできないと思う」
花帆「そ、そんなぁ……」
花帆の落ち込み具合が半端じゃない。だが、それは他のみんなも同じことだ。
慈「なんなの!?もう!! ネット禁止は、来年度からって話じゃなかったの!? むかつくー!! いくよ!綴理!」
綴理「わかった」
めぐと綴理が席を立ってどこかに行こうとする。
梢「ま、待って。どこに行くつもり?」
慈「決まってるでしょ! 校長室に殴り込みだよ! ねえ綴理!」
綴理「うん、手袋叩きつけてくる」
さやか「そんな、綴理先輩まで…………!」
瑠璃乃「ごめんね、さやかちゃん。ルリもめぐちゃんに同意だよ。こんなの酷いって思う。だから、突撃だ……!」
梢「やめなさい、3人とも! ここで騒動なんか起こしたら、それこそスクールアイドルクラブが廃部になるわよ!」
慈「だって! ネットが使えなかったら、配信ライブなんてできないじゃん!」
するとそこへ、
ガチャ
淳平「悪い遅れた……」
沙知「アタシもごめん、遅れちゃって。いやー……参ったね。まさか、こうなるなんて……」
慈「沙知先輩……」
沙知「ええっと……。とりあえず、もう一度座ってもらっても、いいかな。こっちの状況を説明させてほしいんだ。ね、慈」
慈「………お願いします」
そして、淳平も含めた全員が席に座った。
沙知「まずは、ごめん。あたしの見通しの甘さで、みんなを余計に不安にさせてしまって」
梢「……いいえ。ですが、いったいなぜこんなことに?」
沙知「うん…………。前にも言ったけれど、蓮ノ空学院にはふたつの陣営があってね。『蓮ノ空の生徒はこの静かな環境で感性を育むべきだ』という派閥と、『 時代の流れを尊重して生徒の自主性を重んじる』派閥。規制派と容認派とでも呼ぼうか。それらは緩やかに対立をしていたんだ」
さやか「じゃあ、この時期にネット規制が入ったってことは、これから先もずっと……!?」
沙知「わからない。でも、今回のは、規制派がかなり強引な手段を使ったみたいでね。容認派も手を焼いているみたいなんだ」
瑠璃乃「うう、一生懸命お願いしたら、わかってくれないかなあ……。ネット禁止にされると、ルリたちメチャクチャ困っちゃうので、許してください!って……」
沙知「残念ながらそれは、難しいだろうね…………。ごめん」
淳平「沙知先輩が謝ることなんて1つもない!!」
沙知「うん、そうだね。ごめん。……あ」
っ! 沙知先輩にこんな顔させやがって……!! やっぱり一発ぶん殴っておくべきだったか……?
綴理「………………」
梢「これから、どうしようかしらね………」
瑠璃乃「じゃあじゃあ、容認派の方に、助けてください〜! って言いにいくのは………」
慈「るりちゃんにお願いされたら、そりゃ私なら秒で助けるけども!」
淳平「いや待て……それ…案外やってみる価値はあるかもしれない」
慈「え? 私?」
淳平「違うよ。敵の敵は味方ってとこ!」
梢「そうね……沙知先輩。規制派が強引な手段を使ったということは、当然不満の声もあがっているはずですよね。だとすれば、もし今、容認派にとっての追い風が吹いたのなら?」
沙知「………そうか! 規制派のやったことが間違いだったと、認めさせることができるかもしれない!」
花帆「えっ、えっ!?」
さやか「『ネット禁止令』は、今度こそ撤廃できるってことですか!?」
沙知「ああ、できる。だけど……そのためには大きな実績が必要だ。盤面をひっくり返すほどの大きな実績、それは――」
梢・綴理・慈・淳平「「「「――ネット配信で、北陸大会突破!」」」」
さやか「それが、最低条件………」
沙知「ごめん、キミたちに余計なプレッシャーをかけたくはないんだけど……」
沙知先輩の言葉を聞いためぐは挑戦的な笑みを浮かべ、
慈「べっつにい? 配信だろうがなんだろうが。優勝するのはもともとの目的だし!」
綴理「うん。変わらない。それともさちは、ボクたちには無理だと思ってる?」
沙知「え? いや! まさかそんなことは!」
慈「ちょっと綴理! 沙知先輩ひどくない!? 私たちのこと、信じてないんだよ!」
綴理「うん、とてもつらい」
こいつら遊んでる……。まぁ、いいか。
沙知「ち、違うよ! キミたちなら必ず優勝できる! それは間違いなく! 初めて3人を見たとき、とんでもない逸材が3人も一気にやってきたって思ったんだから!本当に! でも…、本当は逸材は4人だったことに後で私も気付いたんだけどね……。ごめんねジュンペイ。あの時、あたしの勘違いで……。てっきり、女目当てだと思ってたからさ……」
淳平「それは去年謝ってもらいましたから良いですよ! それより、今はラブライブのことを考えましょう」
梢「そうね。沙知先輩は安心して構えていてくださいね。私たちは負けませんから」
慈「規制派に目にもの見せてやるんだから!!」
綴理「うん」
沙知「みんな……。ほんとに、強くなったね、みんな………。」
梢「あの頃の先輩と一緒です。私たちにも、守るべき後輩ができましたから」
淳平「そーゆーこと!」
沙知「みんな……グスッ うん!」
沙知先輩の瞳から、涙が零れ落ちた。
淳平「さて、というわけでこれからの方針なんだけど……」
花帆「うん!」
梢「校内でネットが使えない以上、北陸大会は学外にステージを作って進めることになるわ。私たちだけじゃ準備が追いつかないでしょうから。外部協力者の力も借りなくっちゃね」
瑠璃乃「学校の外の仲間に、声をかければいいってことですか?よっしゃ、めっちゃ声かけよ!」
さやか「綴理先輩の分も、いっぱい外出届を書かないといけませんね」
慈「綴理、後輩に書かせてるの!?」
綴理「知らなかった。ボクは外に出るのを許されたんだと思ってた」
さやか「あ、あの! その方が早いかなって! すみません勝手に!」
瑠璃乃「あれ……? でも、そもそもべんきょーのためにネット禁止令が出たんだったら、べんきょーせずに毎日毎日ステージ探しにお外巡るのってムリめぐじゃ……」
……確かに、
梢「正当な理由ではないと外出届を突っぱねられる可能性は、あるわね」
沙知「そこはだいじょーぶ! あたしのスーパー会長パワーでねじ込むさ! 県内で門限までならどこでも行っておいで!」
花帆「わあ、生徒会長すごいです! ついでにショッピングモールも作ってください!」
沙知「それは無理!」
花帆「がーん!」
慈「よーし! 最高のステージ作ってやるぞー!」
綴理「目標は優勝ただひとつ」
梢「まだ打つ手がなくなったわけじゃないわ。私たちの大逆転を、見せてあげましょう!」
花帆・さやか・瑠璃乃・梢・綴理・慈・淳平「「「「「「「おおーーーーっ!!!!!」」」」」」」
ー つづく ー
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