蓮ノ空スクールアイドル録   作:松兄

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第107話:大会後…。大沢瑠璃乃

コートを着て外に出た二人は、寮の瑠璃乃の部屋に向かうが居なかった。

外出届が出ているかを確認しに事務所へも行ったが、外出届も出されてはいなかった。

 

梢「さて……まずは瑠璃乃さん、と思ったのだけれど。寮にもいないし、外出届も提出されていないみたい。どこに行ったのかしら……」

 

花帆「…………っ、こ、梢センパイ〜!」

 

花帆が寮から血相を変えて走ってきた。

 

花帆「はぁっ、友達が見たって言ってて……! 瑠璃乃ちゃん、ひとりで湖の方に向かった、って!」

 

梢「ひとりで湖に…………?」

 

花帆「はい。なんだか、すっごく落ち込んでたみたいで……」

 

梢「そう…………心配ね。急ぎましょう、花帆さん」

 

そして、花帆と梢の二人は学院の敷地内に湖畔が面している湖に向かった。

 

 

 

◇◆

 

 

湖には……

 

瑠璃乃「…………みず。みずだあ。わあい」

 

瑠璃乃は、一歩ずつ桟橋から湖の方に歩を進める。

 

そこへ、

 

花帆「瑠璃乃ちゃん!? 危ないっ!」

 

瑠璃乃「え? ――ヴぇっ!?」

 

花帆が瑠璃乃にしがみついて止めようとすると、その反動で二人して落ちそうになってしまう。

 

花帆「へ?」

 

瑠璃乃「え……?」

 

二人が冬の湖にダイブしそうになると、

 

ガシッ!!

 

梢「せ、セーフね……」

 

瑠璃乃「あ〜怖かった……。花帆ちゃんに突き落とされるかと思った……」

 

花帆「ご、ごめん、瑠璃乃ちゃん! 落ち込んで湖に向かったって聞いたから、あたし、つい焦っちゃって………」

 

瑠璃乃「いや〜…………。そっか、心配かけちゃったのかあ。ごめんね〜。……取り敢えず自殺の意思は無いから花帆ちゃん離して?」

 

花帆「あっ、ゴメン!!」

 

花帆が瑠璃乃を離す。

 

梢「でも、どうして湖に?」

 

瑠璃乃「ひとりになりたいなーって……。静かな場所を探してフラフラしてたら、いつの間にか、ここに〜〜……的な。なんかね〜、やっぱりね〜… ショックだったんだ〜………」

 

花帆「やっぱり、大会で負けちゃったから………?」

 

瑠璃乃「あ〜……。ごめん、花帆ちゃん。たぶんルリね、みんなとは違うと思うんだ」

 

花帆「違うって?」

 

そして、瑠璃乃は自身の思っていることを話し始める。

 

瑠璃乃「ラブライブ!本戦、すごかった。出場するスクールアイドルのみんなの熱。っていうのかな。それがね、もう熱くて仕方なかったんだ。みんなここに本気なんだなーっていうのがすっごく。すっごく伝わってきて………。ここが本当に、みんなの旅の目的地なんだなって思えたんだ」

 

梢「すべてのスクールアイドルの、憧れの場所、だものね」

 

瑠璃乃「うん、みんなきっと、めちゃめちゃ『スクールアイドル』してたんだと……ルリ思う」

 

瑠璃乃は「でも、」と言葉を繋ぐ。

 

瑠璃乃「ルリは、そんなことに気付ける余裕があったんだよね。ルリ、だけがさ。ルリだけが…………ここに居るだけ、だったんだから。それが、申し訳なくて、消えちゃいたくなってる……。イマココ……」

 

花帆「瑠璃乃ちゃん……そ、そんなことないよ! あんなに練習いっぱい、がんばってたのに……!」

 

瑠璃乃「うん…………。でもそれは、ただ練習してたってだけで…………。そもそも、ルリひとりだったら、あの場に立つことだってできなかったし……」

 

瑠璃乃の言葉を聞いた梢は少し考え……、

 

梢「確かに、そうかもしれないわね。瑠璃乃さんは、夏から入部をした一年生。歴だって、他の子に比べても短いわ。でもね、スクールアイドルであるかどうかを決めるのは、憧れた日数や、積み重ねた年月だけなのかしら?」

 

瑠璃乃「え……?」

 

梢「私はあなたのことも、素敵なスクールアイドルだって、ちゃんと思っている」

 

瑠璃乃「………………梢、先輩」

 

梢「その上で、今あなたにとって必要なことは、あのステージに立って、いったいなにを望んでいたのか。自分の小さな心の声に、耳を澄ませてあげることじゃないかしら」

 

瑠璃乃「心の声……。ルリに、そんなの、あるのかな……」

 

梢「願いも夢も、人によって様々だもの。瑠璃乃さんにもきっと、大切な想いがあった。ステージのあまりの眩しさに、少し、見えなくなってしまっているだけなんだわ。そうじゃないと、あんなに一生懸命練習をがんばれるはずがない。ただやっていただけなんて嘘よ。私にはわかるの」

 

瑠璃乃「どうして……?」

 

瑠璃乃が「分からない」という顔をして問いかけると梢は苦笑し、

 

梢「私もね、スクールアイドルを見る目には、少し自信があるんだから」

 

瑠璃乃「ルリ、そんなこと初めて言ってもらっちゃった……」

 

梢「そ、そう? 慈がいつも言ってそうだけれど」

 

瑠璃乃「めぐちゃんも、似たようなことは言ってくれるし、それは嬉しいけども! めぐちゃんはルリが大好きだから、その発言には補正が乗っかる」

 

花帆「あ、アタシも! うちの瑠璃乃ちゃんは世界のどこに出しても恥ずかしくない、立派なスクールアイドルだって思ってるからね!」

 

すると、瑠璃乃は申し訳無さそうに……

 

瑠璃乃「花帆ちゃんも、実は少し補正が……」

 

花帆「乗っかるの!? 補正ってなに!?」

 

瑠璃乃「でも、うん……! ふたりとも、ありがとうございます。落ち込んでても、こうやって来てくれる人がいるんだって、こんなミジンコのルリにも、石コロぐらいの価値があるような気がしてきました……!」

 

花帆「あんなに梢センパイがいいこと言ったのに、まだそこ!?」

 

梢「ふふっ。でも、普段の瑠璃乃さんって感じよ」

 

瑠璃乃「きっと……今まで『めぐちゃんやジュン兄ぃと楽しむためにやってること』っていうのを、言い訳にしてた部分があったんだと、ルリ思う。だからハッキリと自分で、スクールアイドルだぞー、って胸を張れなかったのかも」

 

瑠璃乃はラブライブ!を振り返って感じたことを言っていく。

 

瑠璃乃「勝ち負けとかも、ほんとはあんまり好きじゃなくて………。でも、終わってみたら、やっぱり勝ちたかった。負けて悔しいっていうより、たぶん勝ったらもっと楽しかったんだって、そう思うから! ……だってルリは、楽しいことがしたくてスクールアイドルになったんだ!」

 

そして、瑠璃乃は前を向く。

 

瑠璃乃「今教えてもらったこの気持ち……この声を、もっとちゃんと言葉にできるように、がんばりたいです!」

 

その言葉を聞いた二人は、

 

花帆「うん、すごくいいと思う!」

 

梢「そうね、素敵だわ。でもその言葉、慈と淳がいちばん聞きたかったでしょうね」

 

花帆「そういえば、淳兄ぃと慈センパイは?」

 

瑠璃乃「めぐちゃんとジュン兄ぃは……あ」

 

梢「?」

 

瑠璃乃「めぐちゃんとジュン兄ぃ、……超絶メンタルヤバヤバかも!」

 

花帆・梢「「え?」」

 

ー つづく ー

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