めぐを立ち直らせたあと、俺と梢、花帆はさやかちゃんの部屋に行ったのだが居らず、俺達は蓮ノ空の校門の前に来ていた……。
花帆「さやかちゃん、部屋にいませんでしたね……」
梢「そうね。綴理もいなかったわ。どこにいったのかしら、DOLLCHESTRAのふたりは」
淳平「心配だな……」
すると、
さやか「お疲れ様でーす」タッタッタッ
花帆「あ、お疲れ様一!」
梢「……………」
淳平「あれ?」
今走ってたのって……
花帆「はあ、さやかちゃん、心配だなあ……ひとりでメソメソしちゃってたりしたら……」
淳平「いや、今……」
梢「居たわよね……?」
花帆「え? あっ! さやかちゃんだー!?」
さやか「へ? どうかしましたか?」
花帆「どうしたもこうしたも……なんで落ち込んでないの!?」
さやか「あ、きょうは、その、確かに部活動はないという話でしたが、わたしはこれからフィギュアの練習があるので、少し体を温めてからいこうかと……」
花帆「そうなの!? えっ、すごいね!」
さやか「昨日は大会だけでしたので、オーバーワークにはなっていないと思うんですが………。 そういうことではなく……?」
梢「い、いえ……。ごめんなさい、少し驚いてしまって。さっきね、瑠璃乃さんと慈に会ってきたの。ふたりとも、ラブライブ!の敗退が堪えていたみたいだったから。あなたのことも心配していたのよ」
さやか「ああ、そういうことでしたか」
さやかちゃんはちょっと考えるような素振りをすると、
さやか「もちろん、負けたことは堪えましたよ。ましてや今回は、みなさんと共に、1年に一度しかない大会に挑んだのですしね。でも、試合というのは、やってきたことの積み重ねの結果。 やり直せるわけでもありません。だから、また粛々と練習の日々に戻るのです」
花帆「今まであたし、さやかちゃんのこと、誤解してたみたい…………。こんなのもう、村野さんだよ……」
淳平「凄いな……高校1年生でこんな成熟した心を持ってる女の子初めてみた。俺なんかよりもよっぽど大人だ……」
さやか「あれ!? どうしてお二人共心の距離が開いているんですか!?」
梢「きっと、あなたの言葉がとても前向きで、立派に聞こえたからじゃないかしら……。すごいのね、さやかさん」
さやか「立派ですか……? ああ、ああ、なるほど。ようやく今、ちゃんとわかりました!」
花帆「そうなの? 村野さん」
淳平「そうなんですかさやか先輩!」
さやか「やめてください! 特に淳平先輩は!!」
すると、さやかちゃんは苦笑して、
さやか「あのですね。わたしは前向きでも立派でもありません。わたし、お姉ちゃんに憧れて、小さい頃からフィギュアをやっているんです。でも、お姉ちゃんと違って……あんまり、才能はなくて……」
さやか「初めての大会は、3位でした。お姉ちゃんは、ずっと1位だったのに。それが悔しくて、たくさん練習したんです。負けたのは、練習が足りなかったせいだからって思って。初めて自分でも『努力』と思えることをしました。その次の大会は、どうなったと思いますか?」
花帆「……どうなったの?」
さやか「残念ながら、表彰台には上れませんでした。それ以降、勝ったり負けたり……って言うのは、ちょっと見栄を張りすぎですね。ほとんど、負けてばっかりなんです」
花帆「さやかちゃん……! ごめん、あたし、からかうつもりとかじゃなくて……!」
淳平「ゴメン……」
さやか「ふっ……いいんですよ。だからすっかり、慣れてしまいました」
梢「……それでもあなたは、努力することを諦めなかったのね」
さやか「はい。試合で結果を残せないことは、つらいし苦しいです。心が弱っているときは、それなりにちゃんと傷つきます。きょうは休んじゃおうかなって思う日も、あります」
さやかちゃんは「それでも」と、言葉を繋ぐ。
さやか「努力を怠って試合に臨めば、たとえ結果を得られたとしても、きっとわたしは満足できません。わたしが見てもらいたいのは、いつだって最前線に立つわたしなんです。部でいちばん努力をしている梢先輩と、ずっとわたしたちを見てた淳平先輩になら、わたしの気持ちが、わかってもらえると思いますが……どうでしょう?」
梢「そうね。さやかさんはやっぱり、立派だわ」
淳平「立派すぎるよ……」
さやか「えっ、そうですか?」
花帆「すごい、すごいよさやかちゃん! かっこいい! あたし、さやかちゃんのこともっと好きになっちゃった!」
さやか「そ、そうですか!? でも負け方が上手だと褒められるのは、なんだかとても複雑ですね!?」
ふふっ、さやかちゃんは…大丈夫そうだな。
梢「それじゃあさやかさん、練習の途中で呼び止めてごめんなさいね。私たちは、次は綴理の様子を見に行ってくるわ」
梢がそう言うと、さやかちゃんは梢を呼び止める。
さやか「あの、梢先輩、淳平先輩。ひとつ、お願いしてもいいでしょうか。 綴理先輩のことなんですけど……。綴理先輩は、わたしなんかよりずっとショックを受けているみたいなんです」
梢「綴理が?」
淳平「確かに、アイツはダメージデカそうだな……」
さやか「はい。けど、なにも話してくれなくて……。どうしようかと、考えがまとまらなかったのですが。この学校で、いちばん長い時間を共有した先輩方に……綴理先輩のことを、お願いしたいです」
梢「あらら、なんだか大げさな言い方ね」
淳平「わかった。ちゃんと綴理を元気な状態に戻して、さやかちゃんに返品できるよう、頑張るよ」
さやか「よろしくお願いします!」
そして、さやかちゃんはランニングを再開して走っていってしまった。
花帆「さやかちゃん、体を動かしていないと落ち着かなかったのかな…………」
淳平「そうかも…しれないな……」
花帆「そのきもち、なんだかわかるな……。だって、あたしも…………あれ? あたしも……?」
花帆の脳裏に、決勝のステージ前の円陣の時の光景がフラッシュバックした。
梢「さ、それじゃあ次は、綴理を探しに行きましょう」
花帆「あ、はい! 行きましょう!!」
淳平「さてと、綴理だったら見晴らしの良い場所で空でも見上げてる気がするな……」
梢「それには同感ね。屋上、行ってみましょうか?」
そして、俺達3人は屋上に向かった。
ー つづく ー
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