綴理と別れ、部室に戻ってきた淳平、梢、花帆の3人。淳平と花帆が席に座ると、梢が紅茶を淹れてくれた。
梢「どうぞ」
淳平「ありがとう。いただきます……」
花帆「いただきます………。……ん、甘くて、おいしいです」
梢「今度の紅茶は、メイプルシュガーよ。外を回ってきたから、甘い方が落ち着くでしょう?」
さすが梢……こんなときでも気配りは忘れないんだな。………。
淳平(本当は、自分が一番つらいだろうに………)
花帆「あの、でも、あたし……。他のみんなみたいに、落ち込んだりとかは……」
梢「そうね、だったら……少し、聞いていってくれるかしら?」
そして、梢は部室に置いてあった自身のアコースティックギターを持ってくる。
花帆「え? あ、ギター………」
梢「ええ」
そして、梢はギターを弾き始めた。
梢「〜♪ 〜♪ 〜♪ 〜♪」
梢が引いている曲は、新入生歓迎会で花帆と梢が初めて歌った歌。〈水彩世界〉。梢の奏でる音色と、口ずさむメロディーが、夕暮れの部室の雰囲気と相まって物悲しくもなんとも言えない様子を醸し出していた。
そして、梢はギターを弾き終わり、
花帆「なんだか、懐かしいです。あたしがまだマネージャーって言ってた頃にも、センパイがギターを弾いてくれて……」
花帆は入学したばかりの頃、スクールアイドルという物を知ったばかりの頃を思い出す。
花帆「センパイのギターに合わせて、軽く踊ってみたりして……。それで、もしかしたらあたしにもスクールアイドルができちゃうのかも、って……」
淳平「花帆がスクールアイドルに興味をもってくれたらいいなって、俺と梢でいろいろ考えたんだよ」
花帆「淳兄ぃ、梢センパイ、どうして……。どうしてあたしだったんですか? 梢センパイだったら、他にもっといい人が……」
梢「この子となら、きっと、ラブライブ!を目指せると思ったの。……あるいは……この子と一緒に、ラブライブ!を目指したいと思ったのよ」
淳平「俺も、直感だけど……花帆といっしょにやれたら楽しそうだなって、思った……」
花帆「でも、あたし……。あたし、初めてのステージで舞い上がって、ずっと梢センパイに頼り切っちゃって。応援してくれる人の顔も、ぜんぜん見えなくって……」
花帆は、自身の過去を振り返り、自分の駄目なところばかりが脳裏をよぎってしまっていた。
花帆「あたし、梢センパイの足、引っ張っちゃってました………。あんなにいっぱい、練習したのに……。負けちゃった…………」
花帆の瞳から、ボロボロと涙があふれる。今になって敗北を実感したのか、感情が一気に押し寄せる。
淳平「花帆、お前は俺たちの期待以上に、がんばってくれたよ。最初はずっと、朝練も嫌がってたのにな……」
梢「ええ。楽しそうにライブをするあなたの笑顔が、好きよ。一緒だから、私もこんなに毎日がんばれているの」
淳平・梢「「花帆(あなた)がいてくれて、よかった」」
花帆「梢センパイ……、淳兄ぃ……」
感情が限界を迎えた花帆。俺と梢で、花帆を抱きしめる。
花帆「ごめんなさい、梢センパイ……。淳兄ぃ……。ごめんなさい……」
謝る必要なんか、無いのにな……。
そしてしばらく泣いてから泣き止んだ花帆。
花帆「……うう、すみません。あたし、こんなつもりでは……」
梢「いいのよ。ただ、花帆さんがずっとモヤモヤを抱えているように見えたから。そういうのはぜんぶ、吐き出してしまったほうがスッキリするでしょう? 慈みたいにやれとは、言わないけれどね」
花帆「はい。少し、スッキリしました……えへへ」
すると、花帆は少し困ったような顔をして、
花帆「ラブライブ!の本戦が、なにがなんだかわからないうちに終わったのって、もったいなかったなあって……今は、思います。せっかく、あたしが花咲けるチャンスだったのになー、って」
淳平「そうだな。みんなで東京に行ったのに、観光する暇もなかったもんな」
花帆「ハッ! そ、そうだよ! あたし、なんにも覚えてない!」
梢「ふふっ。また来年、ね? 明日からの練習は、がんばれそう?」
花帆「はい。もう、大丈夫です。本当に、ぜんぶ、梢センパイのおかげです!!」
梢「それは、よかったわ。きょうは、部屋でゆっくりするのよ?」
花帆「はい、せっかくなので、ずっとゴロゴロします! あっ、でもさやかちゃんみたいに少しは練習をした方が……?」
淳平「それは任せるよ。いい加減花帆だって、自己管理できるようにならないとな」
花帆「そ、それはあんまり自信ないですけど! 2人は、寮には戻らないんですか?」
淳平「俺と梢は少しの間だけやることがあるから。それじゃあな」
梢「気を付けて戻ってね?」
花帆「はい、おつかれさまです!」
そして花帆は、部室から出て行った。
◇◆
淳平「……梢、もう我慢しなくていいぞ」
梢「……ッ!!」
◇◆
花帆「きょうは、どうしよう。練習しようかな。でも、配信もしたいな。応援してくれた人に、ありがとうって、ちゃんと言わなくっちゃ。……あっ!」
すると花帆はあることを思い出す。
花帆「紅茶のカップ、そのままにしてきちゃった! 梢センパイに片付けさせちゃう!」
花帆は、部室に戻っていった。
ー つづく ー
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