蓮ノ空スクールアイドル録   作:松兄

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第113話:夢を信じる物語

花帆は自分の飲んだ紅茶のカップを片付け忘れたことに気づき、部室に戻る。

 

すると……、

 

花帆「すみません、梢センパイ――」

 

梢「――ッ!!」

 

淳平「花帆?!」

 

花帆「…………梢、センパイ? 今、泣いて……」

 

見られたか……。梢は急いで涙を拭い、気丈に振る舞う。

 

梢「ごめんなさい、なんでもないの」

 

花帆「でも…………」

 

梢「大丈夫だから。心配、しないで」

 

無言の花帆。すると、花帆の目に力強い意思が宿る。

 

花帆「梢センパイ……。あたしじゃ、だめですか?」

 

梢「違うの。これは、人に話しても、仕方のないことで……」

 

花帆「でもあたし。聞きたいです。センパイがどうして泣いているのか。あたしじゃ、だめですか………?」

 

花帆…………。本当に、お前は……。

 

淳平「梢……。話してやれよ」

 

梢「淳……、でも」

 

花帆「お願いします。梢センパイ」

 

花帆の言葉に、梢は俯くと、

 

梢「悔しいの……」

 

今まで見た誰よりも大粒の涙をボロボロとこぼす梢。声は震え、深い悔しさが伝わって来る。

 

梢「あと、もう少しだったのに……。ラブライブ!優勝に、手が届いたのに!」

 

梢の感情が爆発する。それを抑えるように、梢は俺に縋り付いてくる。

 

それを俺は、黙って受け止める。

 

花帆「梢センパイ……」

 

梢「幼い頃から、ずっと目指していたの! 夢だった! ようやく叶えられるって、思ったのに! 私はまた、ダメだった……!」

 

淳平・花帆「「…………………」」

 

梢「ダメだったの………私は、いつもそう……! 本当に欲しいものだけ、手に入らないっ………!」

 

梢は、両手で顔を覆い、泣きじゃくる。

 

梢「みんな、スクールアイドルで「なにか」を見つけて、輝いてる…それなのに、私だけ。私にはなにもない………優勝できなければ、私には、なにも……!」

 

花帆「そんな、なにもないなんて、どうして……。センパイは、なんでもできるじゃないですか!「それだけじゃダメなの…!!」…ッ!」

 

梢「だって、夢を叶えるために、なにもかも賭けて、ここにいるんだから……!」

 

花帆「なにもかも…………」

 

 

それは、梢の幼き頃、初めてラブライブ!の映像を見て、スクールアイドルを知り、梢がスクールアイドルを志した時のことだった。

 

梢「ねえ、お母様! 私、スクールアイドルになるわ! ほら、素敵でしょう? ラブライブ!っていうのよ。あの子たちみたいに――私も、ぜったいに、優勝してみせるんだから!」

 

 

 

――――――――――――――――――

 

梢「憧れたスクールアイドルに、私もなりたかった……そのために、がむしゃらに走り続けて……でも、なれないの……。私には、もう、なにも………」

 

梢の涙は収まる気配が無い。だが、そんな状況を、花帆は放っておかない。

 

花帆「梢、センパイ………。――優勝、しましょう!」

 

梢「…………え?」

 

花帆「だったら、優勝しましょう! 来年こそぜったい、梢センパイの夢を叶えましょう!」

 

梢「花帆さん……?」

 

すると一瞬、梢の涙が止まった。花帆はたたみ掛けるように話し始める。

 

花帆「センパイがどんな決意でラブライブ!に臨んでいるのか。あたし、ぜんぜんわかりませんでした。わかった気になってただけだったんです。ずっとセンパイのそばにいたのに。センパイが、何度も夢を話してくれたのに……」

 

花帆の瞳には、決意の炎が宿っていた。

 

花帆「ユニット失格です。だから――。今度こそ、あたしたちでセンパイの夢を叶えましょう!」

 

梢「どうして…………」

 

花帆「そんなの、決まってます。あたしをスクールアイドルに誘ってくれたのは、梢センパイです。この学校を辞めようかって悩んでたあたしを救ってくれたのは、梢センパイなんですよ? 花咲きたいっていうあたしの夢を、最初に助けてくれたのは、梢センパイなんです!!」

 

花帆は入学当初、この学校の方針に絶望し、入学早々退学しようかと悩んでいた。そんな時、花帆に希望を与えたのは、紛れもない梢だった。

 

花帆「あたしはこれからもずっと、梢センパイに笑っていてほしいんです。スクールアイドルとして過ごした日々が、悲しい思い出になっちゃうなんて、そんなの、ぜったいにだめです!」

 

花帆の言葉に、梢の瞳にも段々と光が戻って来る。

 

花帆「あたしも、もっともっとがんばります。朝練だって、サボらず毎日来ます。文句も…………たまには、言うかもしれませんけど……! でも、いっぱい努力して、きっと、花咲いたスクールアイドルになりますから! 梢センパイのことだって、あたしが、花咲かせてみせます!」

 

梢「花帆さん……」

 

花帆「ひとりでがんばるのが大変だったら、すぐそばに、あたしと淳兄ぃがいますから。くじけそうなときでも、今度はあたしも支えますから! だから………。なにもないなんて、言わないでください……」

 

そして花帆は今自分が梢に一番伝えたい言葉を叩きつける。

 

花帆「センパイには、日野下淳平だけじゃない……。日野下花帆もいるんだって! そう信じてもらえるように……がんばりますから!!」

 

花帆は、落ちていたガーベラの花を拾い、梢に差し出す。

 

梢「一緒に、夢を信じてくれる……?」

 

その時には、梢の涙は止まっていた。

 

花帆「もちろんです! あたしたちで――夢を叶えましょう!」

 

梢は差し出されたガーベラを受け取り、

 

梢「ありがとう。花帆さん……」

 

 

◇◆

 

翌日、俺達は新年の誓いを宣誓するために、日の出を見に来ていた。

 

瑠璃乃「すっげー! この季節に、雲ひとつないじゃん!」

 

慈「私たちの日頃の行いがいいから、だよ!」

 

さやか「朝日が町並みを照らして……とてもいい眺めですね」

 

綴理「みんなが見えるね」

 

淳平「あらたなスタートに、相応しいな!!」

 

梢「みんな、観光に来たわけじゃないのよ」

 

花帆「わかってます!来年の…もう今年か。誓いですよね!」

 

瑠璃乃「ルリは! スクールアイドルでもっともっと 『楽しい』を見つける!」

 

慈「私はもちろん、無敵のスクールアイドルになって、世界を夢中にさせてやること!」

 

さやか「ではわたしは…………心堅石穿(しんけんせきせん)。これからも今の自分に甘んじることなく、たゆまぬ努力を続けたいと思います」

 

綴理「蓮ノ空さいきょー!」

 

淳平「俺は、今よりも成長して、スクールアイドルクラブのみんなを守る!! 絶対に、誰一人欠けさせない!!」

 

花帆「あたしは、花咲く自分になれるようにがんばる! それと、たくさんの人の笑顔を花咲かせる! それと、100万人でライブをする! 基礎練もしっかりやる! 夜のお菓子はなるべくガマン!」

 

慈「いや多いなキミ!」

 

花帆「あとはね、あとはね!」

 

花帆は、決意を胸にその言葉を口にする。

 

花帆「ラブライブ!優勝!!

 

瑠璃乃 ・慈・さやか・綴理「「「「おおーー」」」」

 

梢「ふふっ。みんな。来年こそは必ず、全員で願いを叶えましょう」

 

瑠璃乃「はい!」

 

慈「はい!」

 

さやか「はい!」

 

綴理「はい!」

 

花帆「はい!」

 

淳平「おう!!」

 

梢「蓮ノ空学院スクールアイドルクラブ、今この瞬間を大切に――。Bloom the smile!」

 

花帆・さやか・瑠璃乃・綴理・慈・淳平「「「「「「Bloom the dream!」」」」」」

 

梢「頼りにしているわね、花帆(・・)

 

花帆「――はい!」

 

その瞬間、梢の中で花帆の存在が、可愛い部活の後輩から、共にラブライブ!優勝を夢見る相棒へと、変わった――。

 

 

ー つづく ー




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