次の金沢市が開催するライブに向けての花帆と梢の練習の合間、花帆は梢に自身の過去を語る。
花帆「あたしのおうち、けっこう過保護なんですけど……それって、元はというとあたしの責任だったりして」
梢「あなたの?」
花帆「梢センパイはもう淳兄ぃから聞いてるかもですけど、私、小さい頃病弱で、よく入院してたんです」
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花帆『ねぇ、お母さん。今日はお外に遊びに行ってもいい……?』
花帆母『ダメよ!まだ熱下がりきってないでしょ!!』
花帆『うん……。ケホッ、ケホッ!』
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花帆「でも、中学校に上がったくらいからは、ぜんぜん大丈夫にはなったんですけど。大丈夫になったんですけど……お父さんとお母さんにとっては、あたしは小さな頃のまんまみたいで。あたしは、あれもやりたい、これもやりたいって思ってても、結局できなくって。無茶してまた熱出したりしたら、両親が心配しちゃうからって」
梢「そうだったの……」
花帆は自虐気味た口調で話す。けど、花帆は親に心配をかけたくなかったから、自身の気持ちを必死に抑えて、今まで我慢してきたんだよな。
花帆「うち、お花を作ってるんです。"ラナンキュラス"っていうんですけど、すっごく綺麗なんですよ。春になると、パステルカラーみたいな淡い色が、ばーっと咲き誇って!あたしの花帆って名前も、そのお花からイメージしてつけてくれたんです。窓から眺めるお花がとってもきれいで……。だけど、昔のあたしはその景色があんまりすきじゃなくって。」
梢「……それは、どうして?」
花帆「育てられたお花って規則正しく咲いているじゃないですか。でも、あたしって病気がちだったから、学校でも遊びに入れてもらえないことがあって……。自分は、あんな風にキレイには咲けないような気がしていたんです。自分の名前も……なんか、ちゃんと正しく育つように、って期待されているみたいで。ちょっと苦手でした」
梢「そんなあなたが、変わったきっかけがあったのね」
花帆は「はい!」と頷く。
そして時は、中学の入学から1年後の春にまで遡る。
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みのり『ねえねえ、お姉ちゃんお姉ちゃん!ちょっとお散歩しようよ!』
花帆『えー。どうしたの、急に』
ふたば『ね、ちょっとそこまでだから、お姉ちゃん』
そして、花帆は二人に連れられて近くの山の中に入っていった。
花帆『もう、ふたばまで。勝手に山に入ったーって怒られても知らないんだからね?』
ふたば『あとちょっと!』
みのり『ねぇねぇ、はやくはやく!』
花帆『なに、もー』
そして、その先で花帆が見たのは、あたり一面に絨毯のように咲き誇る花畑だった。
花帆『お花畑だ……』
ふたば『お姉ちゃん、見て見て』
みのり『ほら!』
花帆『これって……ラナンキュラス?でも、どうして。ふたりが育てたの?』
ふたば『ううん!』
みのり『きっと種から育ったんだよ!この1輪だけ!』
花帆『こんなことってあるんだ……。すごい……きれい……』
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花帆「ラナンキュラスって、普通は温室で育てるから、自生してることなんて滅多に無いんですよ。なのに、咲き誇っていたんです。まるで『あたしはここだよ』って言うみたいに。ただ自分のために、あんなにきれいに……。それを見てあたし、思ったんです。大事なのは、ちゃんと『花咲くこと』なんだって。右に習えで咲くことでもなく、みんなと同じように咲くことでもなくて。ちゃんと花咲くことが、いちばんすごかったんだ。だから、山で育ったあの一輪の花だって、温室で育てられた花だって、みんなみんな、すごいんです」
そして花帆は、自身の思いを口にする。
花帆「あたしも、花咲きたい。トクベツじゃなくたって、あたしだけの色で、あたしだけのお花を。す、すみません!なんか、たっぷり喋っちゃって!」
話を終えた花帆は喋りすぎたかな?と梢に謝るが、まったくそんなことはない。むしろ、花帆のことをよく知れて喜んでるだろう。
梢「ううん。よかったわ。あなたの想いが知れて、嬉しかった。ありがとうね、花帆さん」
花帆「え、エヘヘ……。あたしも、梢センパイに聞いてもらえて、嬉しかったです。明日のライブ、楽しいライブにしましょうね!そのために、こんなに朝練も頑張ったんですから!!」
梢「ふふっ、そうね。じゃあ、今日の練習はこれで終わりにしましょうか?」
花帆「えっ!? だってまだメニューは残って……」
淳平「花帆、イベントは明日なんだぞ?お前は特に運動とかしてたわけじゃないから、慣れないことやって体も疲れてるハズだから、今日一日はゆっくり休んで疲れを少しでも取ること!」
花帆「でも!」
梢「花帆さん、淳平の言うとおりよ?分かって」
花帆「……分かりました。でもその前に、少し走ってきます!!」
そして、花帆は走っていってしまった。
淳平「お、おい花帆!! ったく」
梢「まったく……本当に夢中になると止まらないんだから。でも、後輩って手がかかるけど、かわいいのね」
そしてその日の夜、女子寮の花帆の部屋では、花帆がさやかからマッサージを受けていた。
花帆「っはぁ〜♡ 極楽極楽〜」
さやか「花帆さん、けっこう、
花帆「気持ちいいよ〜さやかちゃん」
さやか「それは、よかったです! では、ここからは私のスペシャル足つぼマッサージを……」
花帆「え"!? それ痛いやつじゃないよね?」
さやか「効果は保証しますから、大丈夫です。行きますよ?」
花帆「お、お手柔らかにに…ピギャアァアァあああっ!!!!!」
花帆の悲鳴が夜の寮に木霊した。
花帆「うう、痛かった……でも、疲れが消えた気がする!」
さやか「そんなわけないじゃないですか!いまのツボが痛いってことは、相当無理してますよ?今日一晩は、ゆっくり休んでください」
花帆「でも、少しくらいは練習しても……」
さやか「ダメです!」
花帆「ヒィッ!!」
さやか「もう消灯時間が近いので、わたしは部屋に戻りますが、大人しく寝てくださいね?おやすみなさい」
花帆「お、おやすみ……」
そしてさやかは部屋から出ていった。
花帆「でも、梢センパイに、迷惑かけたくない。あんなに頑張ったんだもん、失敗なんかしたくない。よし!」
その頃、さやかは、
さやか「? 今外に出たの、花帆さん? いや、まさかこんな時間に……考えすぎ……ですよね?念のために淳平先輩に連絡しておきますか。勘違いならいいんですけど……」
さやかちゃんから連絡を受けた俺は、寮の管理人さんに事情を説明して花帆が行きそうな場所に向かっていた。
淳平「あんのバカ!!」
校庭に着いた。すると、明らかにダンスを踊っている人影が。
花帆「ここで、ターン!」
淳平「花帆!!」
花帆「!、淳平兄ぃ!?何でここに……」
淳平「何でじゃない今すぐ戻れ!!」
花帆「だって!失敗したくないんだよ!」
淳平「お前のために休めって言ってるんだ!!」
花帆「……なにさ、踊らない淳兄ぃに、私の気持ちなんか分かる訳ない!ほっといて!!」
淳平「ッ!!」
パアンっ!!
乾いた音が、夜のグラウンドに響いた。殴ってしまった。花帆を……
淳平「勝手にしろ!!」
そして、俺は寮に戻っていった。その背に向かって、
花帆「淳兄ぃなんか大っ嫌い!!」
花帆の叫びが聞こえた。
翌日、イベント当日になり、会場には梢と花帆が来ていた。俺は学校にいた。アイツが謝るまでもう俺は部活には顔を出す気はない。
花帆「うわぁ~!ライブステージですよ!!他の学校のスクールアイドルもいっぱい!!」
梢「そうね。でも、あなただってその内の1人なのよ?」
花帆「うっ」
梢「練習の成果を出せれば大丈夫よ」
花帆「はいっ! ズキィッ ッ!!」
花帆は足に走った痛みに一瞬顔を顰めた。
梢「花帆さん?その足どうしたの?」
花帆「ちょっと寮のタンスに足の小指ぶつけちゃって……いたいんですけど。たぶんすぐに痛みは引くと思います」
梢「そう……、ならいいのだけれど」
花帆「えへへ、最高のライブにしましょうね!梢センパイ!」
梢「ええ!」
花帆(ライブを成功させて、淳兄ぃに間違いを見せつけてやるんだ!!)
そしてライブの準備中、花帆は実際に体を動かしてダンスの動きの確認をしていた。
花帆「ここをこうして……」
梢「花帆さん?」
梢が、花帆の動きの違和感に気付いた。
花帆「ここで、ターン! ッ!?」
梢「っ! 花帆さん!!」
グシャァっ!!
梢は、倒れた花帆を庇うように自ら下敷きになり、梢は足が腫れ上がる怪我を負ってしまった。
花帆「こ、梢センパイ……、梢センパイ!!」
すぐに梢は医務室に運ばれ、花帆は病室の外で立ちすくんでいた。これでは、ライブどころではない。
花帆「ッ!」
すると、病室の扉が開き、花帆の見たことのない蓮ノ空の生徒が出てきた。
花帆(梢センパイの友達?)
慈「あなたが今梢とユニットを組んでる子だね?」
花帆「は、はい……」
慈「梢が呼んでるよ?」
花帆「はい……」
慈「(そうとう落ち込んでるね……ま、これでジュンの言ってた意味が身に沁みたでしょ。自分が叩かれても仕方のないことをしてたってこと)頑張ってね?スクールアイドル。応援してるから」
花帆「はい……」
そして、入れ替わるように花帆は病室に入った。
ー つづく ー
淳平、花帆ちゃんを引っ叩いてしまいましたね。ですが、リンクラストーリーで慈が怪我を負った結果どうなってしまったのかを思い返せば私は理解できます。ましてやこの小説では慈と淳平は幼馴染で親友。
スクールアイドルができなくなる絶望は、本人である慈を除けば、1番良く分かってるでしょうしね。
ましてや今回は相手が従兄弟の花帆ちゃん。今まで彼女が病弱で我慢を強いられる幼少期を過ごしてきた事を知っていて、スクールアイドルはその彼女が高校生になってやっと見つけられた夢中になれるもの。
それを、確実に守ってあげたかったんでしょうね。
(なのに"私の気持ちなんか分かる訳ない"だの"大嫌い"だの言われる始末)
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