蓮ノ空スクールアイドル録   作:松兄

129 / 339
第十七章 ルリ思う。
第125話:亀裂


それは、2月のテストが終わった日の夜。るりの動画配信中だった。

 

瑠璃乃「きょうは、充電切れ耐久配信。まんが、よむ……」

 

瑠璃乃「………………」

 

ルリちゃんは充電切れの状態でカメラを回しながら積み重なった読みかけの漫画を読んで消化していく。

 

そうしていると、気がついたら2時間近く経っていた。

 

瑠璃乃「はああああ……積んだ漫画消化したあああ……! ? って、2時間も経ってる!!」

 

すると、ルリちゃんは椅子に座ったまま天を仰ぎ、

 

瑠璃乃「みんなでいるけど、ひとりでもある。なんて理想的な環境なんだ。ほんと、付き合ってくれてありがと。やー………お構いもできませんで、ごめんねぇ」

 

そう言ったルリちゃんは配信中の動画の流れてくるコメント欄を見る。

 

瑠璃乃「えっ。この配信が1番好き? あはは、お世辞でもありがとー!」

 

そして再びコメント欄に目をやると、その他にも多くの人が同じ様なコメントをしていた。

 

瑠璃乃「…………。そっか。マジでそーなんだ。ルリとのんびりしてるだけで良いの? それが1番……そーゆー子も、いるんだなあ」

 

すると、

 

瑠璃乃「……ルリも分かるよ、疲れた時に沁みる楽しさってあるよね。ハイテンションについてけなくて、なんか置いてかれてるなーって思ったり。盛り上がるだけの充電なくて、ノり合わせらんなくて申し訳なくなったり。そーゆー時でも、寛げる楽しさってか、居心地の良さ?ってか。うん、あるんだと、ルリ思う。ゆえにルリあり」

 

ルリちゃんが三度コメント欄に目をやると、「分かる!」とか、「そういう時あるよね……」など、共感を呼ぶコメントも多かった。

 

瑠璃乃「そだよね。みんなもあるよね。……好きだって言ってくれて、ありがとね。ふへへ。……そろそろ充電本気でヤバいから。終わりにしょーと思うんだけど。その前に1個だけ」

 

ルリちゃんは姿勢を正してカメラに向き直る。

 

瑠璃乃「あのさ! みんなにこんな風にたくさん応援して貰えて、本当に幸せだなってルリ思う。ラブライブ!も経験して、もっともっとスクールアイドル活動頑張りたいって思えた。だから、色々考えて頑張るね。ルリが、みんなにできることをさ! それじゃあ――」

 

瑠璃乃「…………おっかれしたー」

 

ここでルリちゃんの充電は完全に0%になった。

 

配信終了後、ルリちゃんは事実で1人ベッドに横になって考えていた。

 

瑠璃乃「ルリのこと、めぐちゃんのこと、みんなが好きでいてくれる。……がんばらないとな。がんばりたいなー……」

 

瑠璃乃「もうすぐバレンタインだし……めぐちゃんと一緒に、みんなになにか返したい……。あんまり思いつかないけど……寝る前に、アイディア出しだけでも頑張ってみようかな……」

 

 

そして翌日早朝、スクールアイドルクラブの部室。今日は朝練は無いが、慈と瑠璃乃。みらくらぱーく!の2人で話していた。

 

慈「というわけで、るりちゃん。今日も今日とて、スクールアイドル活動をやっていくよ!」

 

瑠璃乃「お一!」

 

慈「ラブライブ!も終わって、みんな一息吐くこのタイミングこそ、勝負どころ。私たちが一歩抜け出すチャンスなのだ!」

 

慈はみんなが休んでいる間に一歩差をつけようと気合い充分。ルリちゃんも気合が入っていた。

 

瑠璃乃「おー! いいねいいね、ルリも今ちょーぜつモチべたけーから! 張り切ってこーぜ、めぐちゃん!」

 

慈「うむ、良い気合だねえ。いくつか叩き台作ってきたから見てくれる?」

 

慈は自分のスマホをルリちゃんに渡す。

 

瑠璃乃「いっぱい作ったねえ……めぐちゃんはすごいや」

 

慈「えへへ〜もっと褒めて♡ でもまあ、形になるかわからないものを並べるだけなら。大した手間はないけどねー」

 

瑠璃乃「んで、めぐちゃんめぐちゃんイチオシは?」

 

慈「いいでしょうるりちゃん、お答えしよう」

 

そして慈は片手の指を一本だけ立てる。

 

慈「ひとつめ! 仮タイトルは『もしかして、みらくらぱーく!ですか!?』私たちが適当にランドマーク前とか立ってて、声かけてきた子と遊ぶ。夢のような1日をお届けするよ!」

 

瑠璃乃「おー! みらくらぱーく!1日レンタル!」

 

次に慈は手の指を2本立てる。

 

慈「ふたつめ! 仮タイトルは『集まれ、ここがみらくらぱーく!』公園の広場を借りて、みんなで一緒に大騒ぎっ。私たちとステージで並んで踊ったら、きっととっても楽しいよね!」

 

瑠璃乃「おー! 1日所長ならぬ1日メンバー!」

 

慈「みっつ目! 仮タイトルは『かちこみゲリラ!』私たちが、みんなの学校で突然ライブ! アウェーでも頑張る私たちのところに、応援駆けつけてね!」

 

瑠璃乃「おー! 1日スクールアイドル!!」

 

慈「べつにその学校のスクールアイドルになるわけじゃないからね!? っとまあ、こんな感じだけどどうかな?」

 

ルリちゃんは「う〜ん……」と、考え込む。

 

瑠璃乃「そだなー。どれやっても楽しそーだとは思うけど、うーむ……」

 

慈「存分に悩んでくれていいよ!」

 

瑠璃乃「あーいや、えっとさ、めぐちゃん。ラブライブ!の決勝に出てから……ルリも色々スクールアイドルのこと考えるようになってさ。スクールアイドルのことというか、応援してくれるみんなのことというか」

 

慈「えっ。嬉しい。どっちも一緒だよ大丈夫!」

 

瑠璃乃「そっか。それでさ。色んな子が居るなーって思って。だから、なんていうんだろ。ルリも幾つか考えてみたんだ。やりたいこと」

 

慈「え、そうなの? 見せて見せて。えー、ちょっと一。嬉しーなー」

 

瑠璃乃「な、なにその食いつき。これだけだけど……」

 

ルリちゃんは自身のスマホを慈に見せる。

 

慈「ふむふむ。うん? うーん……ううううん……!」

 

ルリちゃんの案を見て笑顔が怪訝な顔になり、微妙な顔になる。

 

瑠璃乃「めぐちゃん?」

 

慈「これじゃあ、フルーツもクリームも乗ってないパンケーキと一緒だよ! きらきら感が足りないよ! 青空昼寝大会! ライブ会場漫画喫茶! 釣り堀ぶらんぶらんプラン!」

 

瑠璃乃「よくね?」

 

慈「よくねー!! るりちゃん…あのね、私たちは世界中を夢中にするんだよ! 夢中っていうのは楽しい時間が一瞬で過ぎていくことなの! 気がつけば目の前のお皿が空っぽ♡ おなかいっぱいで幸せってね。これじゃあスイーツじゃなくて酢昆布だよ! 酢昆布もまあおいしいけどね!?」

 

瑠璃乃「そっかぁ……。じゃあどうしようか」

 

慈「どうしたらもなにも。酢昆布からケーキは作れないからねえ……」

 

瑠璃乃「ルリがあんまりちゃんと企画作れてないから、 そう思われちゃうのかもしれないけど。でも、ルリの考えてることも間違ってないと思うんだけどなあ……。毎日頑張ってると、うおーって盛り上がるほどの元気もなくなっちゃう人もいるんだ。そういう人たちにも、楽しんでほしい。楽しめるものが、やりたい」

 

慈「ん〜? ま、るりちゃんもいろいろとがんばりたい時期なんだってのは、わかったよ。私もるりちゃんをアッと言わせるような企画を、ちゃんと考えるからさ!」

 

瑠璃乃「あ、いや、べつにめぐちゃんの出したものがビミョかったとかじゃないよ?」

 

慈「わかってるわかってる。でもみらくらぱーく!が本気で楽しい場所なら、元気ない人たちにもきっと届くよ。ゲートをくぐればそこは夢色の遊園地、みらくらぱーく! 私たちと一緒に最高のパレードを作ろうよ!ってね」

 

すると、ルリちゃんは少し暗い顔になり、

 

瑠璃乃「うーん、それじゃあなんだけど…、遊ぶ元気がなくてゲートをくぐれないような子は?」

 

慈「そういう子にこそ、元気をあげなくちゃって思うよね! 盛り上がってる声を聞かせてあげよう!」

 

瑠璃乃「だからそれじゃついてこれない子の話で……ええっと。もう少しちゃんと考えてみるから、待ってて」

 

慈「るりちゃん。まあまあ、うん。るりちゃんはスクールアイドル始めてまだ半年だからね。ほら、いったんはめぐちゃんに任せておきんしゃい」

 

瑠璃乃「経験が浅いとかの問題じゃなくてさ。ルリが言ってるのは――」

 

慈「私はとうに通り過ぎた場所なのだよ、るりちゃん。どーんと、私の背中を見て育つがいい!」

 

イラッ!

 

瑠璃乃「めぐちゃん、今ルリは真面目な話をしてるつもりなんだけど」

 

慈「私もちゃんとマジメだよ。楽しめない人がいるなら、それは私たちの努力が足りないってこと。世界中を夢中にするためには、るりちゃんの力が必要なんだから。大丈夫! アイディアは私が考えるからさ。だから一緒に、みんなをどかんと盛りあげるために、がんばろ?」

 

瑠璃乃「……それ、本当に一緒に頑張ろってなってる?」

 

慈「るりちゃん?」

 

瑠璃乃「確かにルリはまだスクールアイドルのこと、 めぐちゃんほど知らないけどさ。めぐちゃんに全部任せるつもり、ないよ」

 

慈「なに言ってるの? るりちゃん。ぜんぶ任せてくれていいんだよ。私はこういうの考えるの好きだし、それに――。るりちゃんがスクールアイドルに付き合ってくれてるだけで、じゅうぶん意味はあるんだからさ」

 

瑠璃乃「!!」

 

めぐちゃん……っ!ルリのことそんなふうに思ってたんだ!!

 

瑠璃乃「めぐちゃんは、ルリがめぐちゃんに付き合ってスクールアイドルをやってるだけだと思ってたんだ!」

 

慈「え? そこまでは言ってないけど……」

 

瑠璃乃「言ったみたいなもんじゃん! 文字にしたらほぼ同じだったよ!」

 

ここまで言われるとさすがに慈の方もカチンときた。

 

慈「…………てか、るりちゃんこそさ! だいじょうぶだって言ってるじゃん! さっきから、私の話聞いてる!?」

 

瑠璃乃「だから大丈夫じゃないの! ルリの言ってる話、ちゃんと考えてもくれないから、そんな風に言うんでしょ!!」

 

慈「はあ!? るりちゃんのことは真剣に考えてますけど!? でもそっちがなんにも聞かないんだったら、どうしようもないね!」

 

慈・瑠璃乃「「がるるるるるるる!!」」

 

慈・瑠璃乃「「ふんっ! もう知らない!!」

 

仲の良かった幼馴染に、暗い影が差す

 

 

ー つづく ー




感想・評価よろしくお願いします!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。