病室に入った花帆が目にしたのは、足に包帯を巻かれた梢の姿だった。
花帆「こ、梢センパイ!!」
梢「そんなに慌てなくても大丈夫よ?少し大袈裟に包帯巻かれただけだから」
花帆「あたしのせいだ…あたしが、言いつけを守らなかったから……」
梢「花帆さん、ごめんなさいね?あなたのステージを台無しにしてしまって……」
花帆「そんな、どうして梢センパイが謝るんですか!?梢センパイは、私を庇ってくれて……私のせいなのに……」
梢「私が、もっと上手くあなたを助けられたら良かったのだけれど……」
花帆「違います……あたしが、梢センパイと淳兄ぃの言ってたことを守らなかったのが悪いんです……」
それを聞いた梢は、
梢「花帆さん、その足、どうしたの?」
花帆「あたし、あの後、私はまだまだなんだから、練習しなきゃって、夜中に寮を抜け出して練習してたんです。淳兄ぃが気づいて止めに来てくれたんですけど、あたし、淳兄ぃに酷いこと言って……朝起きたら、足に違和感があって、でも、そんなの練習が足りないからだ!と思って。今日も、ライブに向けて集中してれば気にならないだろうと思ってたんです」
梢は、黙って花帆の言葉を聞く
花帆「梢センパイに迷惑かけたくなかったんです。そのはずなのに、結果こうして迷惑かけて、淳兄ぃとも喧嘩して、全部、全部あたしが悪いんです!私のためを思って言ってくれてたのに、あたしが無視したから。挙句の果てに、淳兄ぃに大嫌いなんて!!」
花帆は泣きじゃくり、涙が止めどなく溢れてくる。
花帆「あたしなんか、叩かれてもしかたなかったんです!なのに、逆ギレして……」
梢「そう……、あなたを叩いたことは、明らかに淳が悪いわ。けど、なんで叩かれたか、その意味は、もう分かったわよね?」
花帆「はい」
梢「今回は幸い、あなたも無事だったし、私も怪我はしたけど大事には至らなかった。でもね?一歩間違えば、あなたが大怪我をするかもしれなかったの。その事を忘れないで」
花帆「はい……」
梢「それから、ちゃんと淳に謝ること」
花帆「はい……」
そして、医務室を出た花帆はさやかと遭遇した。さやかと綴理のユニットは、今回のイベントにエントリーしていない。なので応援に来ていたのだ。
さやか「花帆さん?ライブの準備はいいんですか?こんなところで何を……」
花帆「うん。実はね………」
花帆は、さやかに全て説明した。
さやか「それは、災難でしたね」
花帆「うん。私のせいで、全部台無しになっちゃった」
さやか「……花帆さんは、今まで運動の類はやってこなかったんですよね?」
花帆「え?うん……」
さやか「でしたら、自分の力量を見誤ってしまったのは、仕方のない部分もあるかと……」
花帆「そんな!一歩間違えば大事故になってもおかしくなかったんだよ!?」
さやか「そうですね。でも、今回はならなかったんです。次から気をつければいいのでは?」
花帆「そんなのって……」
花帆は自分の招いたことにショックを受けてしまい、どんな言葉を言われても自分を責めるのを止めない。
さやか「花帆さん、あんなに朝練を嫌がっていたのに、なんで、そんなに頑張ったんですか?」
花帆「それは……、梢センパイに迷惑かけたくなかったから。2人で一緒に、最高のライブをしたかったから、梢センパイに、喜んでほしかったんだよ……」
さやか「……花帆さんは、優しいですね。だって、自分が楽しむよりも、乙宗先輩のために、そこまで頑張ったんでしょう?それは、誰にでもできることではありません」
花帆「そんな事……それに、淳兄ぃにも酷いこと言った。あたしのために、こうならないために休めって言ってくれてたのに……」
さやか「そうですね。だから今度ちゃんと、淳平先輩と乙宗先輩と話をしましょう。そこでちゃんと謝りましょう」
花帆「ッ……うん!」
さやか「1人で戻れますか?」
花帆「うん。先帰ってる」
さやか「分かりました」
そして、花帆は蓮ノ空に戻ってきた。
花帆「あっ、部室に鞄忘れてた……」
花帆は部室に向かい、扉を開ける。
花帆「あった…ガッ! うわっ、とと!!」
花帆はなにかに躓いた。何に躓いたのかを見ると、
花帆「ダンボール? ……中に入ってるのは、スクールアイドルノート?」
花帆はそのノートを開いた。それはいまの先輩たちの先輩、そのずっとまえの先輩たちが残してきた、蓮ノ空スクールアイドルクラブの歴史とも言える内容が綴られていた。
その中には、いまの花帆と同じ様に、先輩に迷惑をかけたくなくて必要以上に練習し、その結果疲れからパフォーマンスを発揮できず、予選で敗退してしまった先輩もいた。
花帆「この人、あたしと一緒だ……。?、もしかして、このノート、いまも続いてるんじゃ!梢センパイの書き込みもあるかもしれない!!」
そして、花帆はノートの山を漁る。すると、最新のスクールアイドルノート、
梢が部長になった、今年のノートを見つけた。
花帆「あった、これだ!えーと……あっ、梢センパイ、あたしのために練習メニューを書いてくれてる。こんなに細かく……なのに私は、勝手に……。これ…」
梢『後輩の指導は思うようにいかないことばかり。だけど、やりがいがあって、とても楽しい一日一日と成長していく彼女を見るのは、自分のことのように嬉しい。』
花帆「梢センパイの…」
花帆はページをめくる。
梢『できればずっと、スクールアイドルを続けてほしい。つらいことや、傷つくこともいっぱいあるだろう。だけど、それを乗り越えた先には、きっと今まで以上に楽しいことが待っているハズだから。ひたむきにがんばっているあの子を見ると、胸が熱くなる。こんな気持ちは初めてだ。後輩がこんなに可愛いってことも、知らなかった。あの子のためなら、私は何でもしてあげたいって思う』
そして次のページをめくると、淳平の筆跡で書かれていた。
淳平『花帆はきょうも、厳しい練習を積み重ねている。毎日毎日、へとへとになりながらも頑張る姿を見てると、自分も頑張らなければと思う。病弱で、我慢を強いられる幼少期を過ごしたアイツが、やっと見つけた夢中になれるもの。せめて、俺がいる間は、安心してやらせてやりたい……』
そこで、花帆はノートを閉じた。
花帆「淳兄ぃも…、梢センパイも、こんなに、あたしのために……。だめだ、あたし、ここで逃げてたら、本当にダメダメになっちゃう!!そんなの…嫌だ!伝えなきゃ。淳兄ぃと梢センパイに。そして、ちゃんと謝らなきゃ!!」
そして翌日の放課後、授業が終わってすぐに、花帆は2年生の教室に突撃した。
ー つづく ー
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