第136話:別れの季節
淳平が帰って来てから最初の金曜日、淳平は女子寮の沙知先輩の部屋にいた。
その
ガサゴソ ヨイショッ!
淳平「沙知先輩、小物類はこの段ボールに詰めておきますね?」
沙知「ああ、頼むよ。悪いねジュンペイ……手伝わせてしまって」
淳平「いえいえ、沙知先輩の卒業ですからね。寮の部屋を引き払うのに荷物整理するから手伝ってくれって言われたら手伝いますよ。散々お世話になったし迷惑もかけてしまったんですから……」
沙知「あたし、ジュンペイから迷惑かけられた覚えが無いんだが……あったかな…えっと……」
沙知先輩は考えるが思い浮かばない様子。
淳平「いえ、迷惑かけなくて済んでたんだったらそれに越したことは無いので……」
そう言いつつ、沙知先輩に指示を仰ぎながらおれは荷物を整理していく。
すると、
淳平「あれ? ベッドの下に何か落ちてますよ?」
沙知「え、本当かい?拾ってくれると助かるよ」
淳平「分かりました。」ヨイショ
淳平がベットの下のそれを掴む。
淳平「何か布っぽいですね……」
そして俺が手を引き抜いてそれを広げると、
淳平「なぁっ!?////」
女性物のピンク色の下着(下の)だった。
沙知「なぁっ?!////// み、見るな!渡せ!!」
淳平「は、はい!!////」
おれは急いで目をそらして沙知先輩に投げる。沙知先輩は顔を真っ赤にしてプルプルと震えている。
淳平「す、スミマセン……///」
沙知「い、いや……あたしのミスだ。前に無くしたと思ってたんだが……//// ジュンペイ、誰にも言うなよ?」
淳平「言いませんよ……////」
その後、気まずい空気の中荷物を仕分けて行った。
その頃〜、
部室では梢と綴理、慈の2年生の3人が集まっており、梢は目の前に紙を広げていた。
梢「ん〜〜……ふう、綴理、慈、ちょっといいかしら?」
慈「どしたー?」
めぐと綴理が梢の方を見る。
梢「ちょっとふたりに話しておきたいことがあって。3月末の……蓮華祭のことなのだけれど」
慈「2年だけってこと? ジュンは良いの?」
綴理「1年生に、サプライズ?」
梢「それはまた別の機会にね? そうじゃなくて……」
梢は一旦話を仕切り直す。
梢「沙知先輩が、卒業するでしょう?」
綴理「………………」
慈「おっけー、理解した。そうだね。三年生にとっては蓮華祭が、うちの生徒で居られる最後の日だもんね」
梢「…………だから、蓮華祭で、沙知先輩に何かを返したい。とはいえ、具体的な案があるわけではないのだけれど」
梢がそう言うと、ふたりとも「そうだね」と、賛成の意を示す。
慈「まぁこればっかりは、私たち二年生が考えるべき問題だよね。んー……なんかプレゼントでも作る?」
綴理「ふたりのこと見てたら、ちょっと思いついたよ」
慈・梢「「!」」
慈「なんだよもー、やるじゃんつづりー」
梢「聞かせてもらえる?」
綴理「ん。…………曲をね、作るんだ。新しい曲」
慈「新曲……私たちを見て思いついたってなに?」
慈が綴理に聞くと、綴理は思ったことを話す。
綴理「去年の部室はいつも、こずがそこに居て、めぐが転がってて、それからさちとジュンが入ってきてたなーって、思ったらさ。いつだったっけ……入ってきたさちが言ってたことを思い出したんだ」
綴理「歌は、こず。ダンスは、ボク。言葉は、めぐ。教える力はジュン。だって。そして……さちが知ってるボクたちより、今のボクたちはすごいことができるはずだと思う。どうかな?」
綴理の意見を聞いたふたりは、
慈「ふっ……やってやろうじゃん!」
梢「それぞれ責任があって、それだけにやりがいもある……ええ、それでいきましょう」
2年生たちの意思は一つに固まった。
慈「私たちから、沙知先輩に贈る曲……あの余裕たっぷりなちっちゃいのを、感動でズタボロに泣かしてやるんだから!」
その日の夕方、梢、綴理、慈は淳平にその事を伝えた。淳平は快くオーケーし、4人で頑張って曲を作ろうということになった。ただし、蓮華祭での沙知先輩との最後のライブと同時進行で行うためバレないように気をつけないといけない。
そのために……
梢「あー……この荷物は、ちょっと大げさかしらね?」
寮の自室で、梢が自分の荷物を旅行カバンに詰めていた。
すると、
コンコン!
梢「あら? このノックは……花帆? どうしたのーー」
梢は扉を開けて廊下に出る。すると血相を変えた花帆が詰め寄ってきた。
花帆「梢センパイ!どういうことですかー!?『実家に帰ります』って! なにがあったんですか!?」
花帆はひとしきり言うと泣きそうな顔になり、
花帆「センパイ、蓮ノ空を辞めちゃうんですか……?」
梢「ええと……」
困ってしまう梢。
梢「それは、お休みに実家に帰ろうと思っただけ、なのだけれど……」
花帆「えっ……? はぁ…なーんだぁ……そうだったんですかぁ…………」
梢「ご、ごめんなさい。文面だとつい言葉足らずになってしまうのは、私の悪い癖ね」
花帆「こちらこそ、誤解しちゃってごめんなさい。あと一歩で、危うく梢センパイの実家まで押し掛けるところでした……。ほら、見てください! あたしの旅行鞄!」
梢が目線を花帆の横にやると、そこには旅行鞄が鎮座していた。
梢「ふふっ…………ごめんなさい。そうね、それはびっくりさせちゃったわね。別に隠すつもりはなかったの。 沙知先輩のために、曲を作ろうと思って」
花帆「あ……そうですよね。もう卒業ですもんね」
梢「せっかくだから、実家で集中的に作曲をするつもりだったの。ただ、それだけよ?」
花帆「梢センパイのご実家……! 兼六園ぐらいありそうですね!」
花帆が少しばかり目を輝かせていると、
梢「ねえ、花帆。よかったら一緒に来る?」
花帆「え?」
梢「ぜったいに、いい曲に仕上げたいの。力を貸してくれると、嬉しいわ。もちろん、あなたに予定がなければ、だけれど」
そんな物、花帆の答えは決まっていた。
花帆「はい! あたしのできることでしたら、ぜひ!! あたしだって、短い間でしたけど、生徒会長にはお世話になったので!!」
梢「ありがとう花帆さん! きっと、沙知先輩も喜ぶわ!」
そして翌日、電車とバスを乗り継ぎ、ふたりは梢の実家に向かった。
ここで一泊二日、作曲作業だ
ー つづく ー
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