スリーズブーケの二人が作曲を終えて乙宗邸から帰って来た。
そして二人が作った曲を貰った綴理とさやかの二人。
その翌日、表向きの全体練習時間。
梢「ワン・ツー・スリー・フォー! はい今日はおしまいよ!」
花帆「だはー……つ、疲れたぁ……」
慈「こ、梢すこし張り切りすぎじゃない?」
瑠璃乃「る、ルリもづがれだぁ……」
梢の声で床に座り込む3人。
梢「だらしないわよ3人とも! 花帆さんはもう少しペースを落としても良いのよ?」
慈「なんで花帆ちゃんにばっかり甘いんだこらぁっ!!」
あまりの扱いの差にめぐが声を荒げる。
梢「そ、そうかしら……」
慈「ぐぬぬぬぬぬ!」
めぐが不服そうに声を上げる。
梢「まったくもう。でも沙知先輩、やっぱり鈍ってはいませんね」
淳平「ホントですよ」
俺と梢がそう言うと、照れながら笑う沙知先輩。
沙知「いやいや、さすがにあたしもキツかったよ……。でも、楽しみでもあるからね。頑張れるよ」
淳平「沙知先輩…!!」
俺と梢が顔を見合わせて笑う。すると、
さやか「あっ、失礼ですがお先です」
綴理「おつかれー」
淳平「おう。お疲れ様」
DOLLCHESTRAの二人が先に練習室を出る。
沙知「あの2人どうしたんだい?」
淳平「さぁ?」
俺が肩をすくめてそう返答する。
沙知(ん~~?)
◇◆◇◆
部屋を出た二人は、今練習していた場所とは別のトレーニングルームに移動して沙知先輩に贈る曲の振り付けを考えていた。
綴理「こうやってこうなって、こうなって。で、こうなって」
さやか「なるほど。それで
綴理の考える振り付けを見て思案するさやか。だが、少しばかり微妙な顔だ。
綴理「から、こうやってこう」
さやか「えーっと!」
綴理「感想募集中」
決して振りは悪くはないのだ。むしろ沙知先輩への気持ちがつまっているのは感じられる。だが、
さやか「沙知先輩に贈る曲の振り、なんですよね」
綴理「そう」
さやか「そう、ですね。ひとつひとつの振りに想いが感じられて、積み重ねたものが表現されているような気がします」
綴理「うん。きっとこずもめぐも、伝えたいことはいっぱいあるからね」
綴理も頷く。
さやか「とはいえ……んー…………正直に言うと、あまり纏まりがないような…………」
そう。さやかが感じた違和感。伝えたいことがたくさんあるのは分かるのだが、それがあれもこれもと詰め込まれているせいで振り付けにまとまりや一体感というものが無くなってしまっているのだ。
綴理「やっぱり? ボクもそう思う。でも、どれも外せないんだー。どうしたらいい?」
さやか「っ、どうしたらいい!? ええ〜っと、それは………あの。これってでも、二年生から沙知先輩に贈る曲、っておっしゃってましたよね?」
綴理「うん」
さやか「わたしに話して良かったんですか?」
綴理「うん、だってボクの全力を出さないといけないから」
さやか「そ、そうですか。ではわたしも、助けになれるよう粉骨砕身努力しなければいけませんね! んー……僭越ながら、やっぱり振りが多すぎるのと、どれもばらばらなのが気になります」
綴理「でも、多いのは、1個も落としたくないんだ。全部、思い出だから」
綴理がこだわるのは、この振りには沙知先輩と紡いだ思い出すべてが詰まっているから。そのうち1つでも外すのは、綴理にはできないことだった。
さやか「それは」
綴理「でも、そうだね。さやの言う通り、ばらばらなのをどうにかできればいいね。1本のリボンがほしい」
さやか「……それはつまり、この振りをまとめるための軸のようなものでしょうか」
綴理「うん。気持ちを詰め込んだプレゼントの……1番大事な見た目の部分」
さやか「……………分かりました。お手伝いできることがあるなら、なんでも言ってください」
綴理「ありがと、さや。じゃあ、行こう」
そう言うと、綴理は練習部屋を出ていってしまう。
さやか「はい。…、え? どこにですか?」
そして二人が出てきたのは金沢の町中。綴理はずっと上の方を見上げながら移動する。
綴理「向こうの方だ」
綴理は信号に気づかず飛び出し掛けてしまう。
さやか「綴理先輩、赤信号です、危ないですって」
綴理「あ、ごめん。止まるべき」
さやか「はい、止まるべきです。学校出てからずっと空見上げて……どこ行こうとしてるんですか?」
綴理「雨降ってるとこ」
その言葉でさやかも気づいた。
さやか「雲…追いかけてたのかあ……雨降ってるとこ。そっか、そういうことですか」
さやかはすぐにスマホを取り出して金沢の今日の天気を調べる。
さやか「ちょっと待ってくださいね。今、金沢全体の天気を………! 見つけました! 雨の降っている場所。小雨ですが……きっと、行く価値はあります」
綴理「ほんと? よし、行こう」
さやか「でも……ふふ。綴理先輩が、沙知先輩と楽しくお話しするようになって、本当に良かったです」
綴理「そうだね、さやのおかげ……本当に」
さやか「…………元通りになったのなら、それが一番素晴らしいことかと思います」
綴理「元通りじゃあ、ないんだ。昔のボクは、ろくにお礼も言えない子だったから…………」
◇◆◇◆
綴理「ねえ、さち」
沙知「ん、どうしたんだい?」
綴理「言われた通り、スクールアイドルクラブに入ったよ。あとはどうやったら、ボクはスクールアイドルになれるの?」
綴理の質問に頭をかく沙知先輩
沙知「スクールアイドルっていうのは、自分がスクールアイドルだと思えれば、みんなスクールアイドルなんだけども……」
綴理「?」
沙知「そもそもキミ有名人だろ? 外部のダンスクラブ含め、引く手あまただろうに、どうしてスクールアイドルクラブを選んでくれたんだい?」
綴理「……みんなでやりたいし」
沙知「みんなで……。なるほど。……孤高の存在として持ち上げられていた裏側……なんて、仰々しいことを言うつもりはないけども……」
綴理「?」
沙知「キミはもう、いつでもスクールアイドルで良いんだぜ?」
綴理「んー…………だとボク、たぶん今「ス」だから」
沙知「スクールアイドルの「ス」ってこと!? み、道は険しいねぇ!?」
綴理「スクールアイドル見習いのスだよ」
沙知「道は果てしないねえ……でも、そうだねい。こういうのは、ぱっと出来るものでもないか。あるいは……ひとつひとつ、積み重ねていく他ないのかも……
綴理「さち?」
沙知「安心したまえ、綴理。キミはこの3年の間に、必ずスクールアイドルになれる」
綴理「ほんと?」
沙知「ああ。まず、その一歩目は……あたしと――DOLLCHESTRAをやろう」
◇◆◇◆
歩きながら綴理が去年のことを思い出していると、ポツリポツリと雨が降ってきた。
綴理「あ、降ってきた」
さやか「今日この辺りは、少しだけばらつくみたいです。とはいえ、傘がないので、入りましょうか」
綴理「入る……? あっ、ここって」
さやか「はい。近江町市場です」
ー つづく ー
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