蓮ノ空スクールアイドル録   作:松兄

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第141話:1年生の慈(映像)

翌日、午前中に蓮華祭ライブの練習をした沙知先輩を含めたスクールアイドルクラブ。

午後からはめぐとルリちゃん、そして俺は2年生から沙知先輩に贈る曲を作るため寮で私服に着替えてすぐに金沢の街へとやって来た。

 

俺達がやって来たのは……

 

慈「というわけで本日は、金沢市内の映画館に来ています!」

 

瑠璃乃「来ていまーす! スクールアイドルの映画とかやってるの?」

 

慈「……………。普段ならそれでじゅうぶんパワーをもらえるんだけどね。今回は、限界を超えなきゃいけないんだ、るりちゃん。つまり……!」

 

瑠璃乃「つ、つまり!?」

 

慈「葬り去った黒歴史………………。藤島慈の、第1回配信を見る……よ!!」

 

瑠璃乃「んぇ?」

 

淳平「はぁ?」

 

ならなんで映画館?

 

瑠璃乃「どゆこと?」

 

慈「一年の頃の藤島慈の配信アーカイブは、今やほとんどがネットに残ってないんだよ。怪我をしたときに、ほとんど非公開にしたんだけど。もう1個理由があって。なぜかわかる?」

 

淳平「あ~……確かにあれはな……」

 

俺は去年のめぐを知ってるので心当たりがあった。

 

瑠璃乃「いや、そうじゃなくて…………」

 

慈「そう。あまりにも出来が悪くて、藤島慈、自らが封印したんだよ!」

 

確かに。配信舐め腐ってたもんな……。

 

瑠璃乃「映画館まで来なくても、家のパソコンで見ればよくね!?」

 

淳平「ああ、そうそう。なんで映画館来たんだ?」

 

慈「パソコン叩き割っちゃうかもしれないじゃん! だから、覚悟を決めるためにスクリーンを貸し切ったんだよ!」

 

瑠璃乃「お金の使い方あ……。めぐちゃん、ルリがめぐちゃんのお財布管理しよっか?」

 

慈「その話は後々、ね。さ、始まるよ!」

 

そして、俺達は3人並んで席に座り、めぐが頼んで上映してもらっためぐの1年生の頃の初期の配信を見る。

 

慈・配信『あ、えっとお…………どーも(笑)』

 

淳平(スゲェへらへらしてる……今のめぐとは悪い意味で大違いだな……)

 

それすなわちめぐはこの2年間で確かに成長したということだ。

 

だって今の配信のほうがずっと見てる人の心に響くし、こんな配信見てても何も心にぐっとくるものは無い。

 

慈「うっ」

 

めぐも過去の自分をみてキツそうだ。

 

慈・配信『これでぇ、映ってますかねぇ〜?私、機械のこと、あんまりわからなくてぇ』

 

慈「へらへらしてんじゃないよ! 1日6時間スマホ触ってるだろお前!」

 

過去のめぐの配信態度に隣に座るめぐがブチギレる。

 

瑠璃乃「落ち着いてめぐちゃん!」

 

慈・配信『いや〜個人配信とか、したことないんですよねぇ〜。今回はぁ、たまたま暇だったから、なんとなくぅ? みたいな〜(笑)』

 

慈「ハキハキ喋れ! 配信ナメんなよ!」

 

瑠璃乃「めぐちゃん! 落ち着いてめぐちゃん!」

 

過去の自分に苛立ちを隠せないめぐをルリちゃんが必死に宥める。

 

慈「っ、これは……想像以上に、きつい。なにより『私、ほんとはタレ ントですから☆』って態度を表に出して予防線張りまくっているのが、いちばんきつい!」

 

瑠璃乃「なぜ見たし!」

 

淳平「まぁ、それが分かるようになっただけ成長したんじゃねぇの?」

 

俺達のそんなやり取りも構わずに映像は流れ、過去のめぐは配信を続ける。

 

慈・配信『あ〜。なんで今回配信やろうかって思ったかっていうとお。先輩に、向いてるんじゃない〜?って、何度も何度も言われて〜………。スクコネのアプリを入れてみたわけなんですけど〜。意味あるんですかね? こんなの(笑)』

 

慈「テメェいい加減にしろお!!」

 

あまりにも配信をバカにした発言に怒髪天を突きそうになるめぐ。

 

慈・配信『私、大きなカメラに囲まれるのに慣れてて〜。こんなちっちゃなカメラじゃ、撮られてる気にならないかも〜』

 

瑠璃乃「さっきからホントすっげーこと言ってる……。こりゃ非公開にするわけだ……」

 

慈・配信『ま、そりゃ、私に向いてるとは思いますけどね。喋りも上手で、なにより顔面がいいですから、ね〜!』

 

それを聞いためぐはシンと静かになると顔を伏せ、静かに、

 

慈「……違うよ」

 

そう、呟いた。

 

瑠璃乃「めぐちゃん」

 

慈「沙知先輩が、私に向いてるって言ってくれたのは、そういうことじゃない」

 

慈「私は確かに、みんなを夢中にさせたくて、タレントにもなった。なったからには、とにかくかわいさを振りまけばいいと思ってたけど……。でも、配信をやって初めてわかった。私はみんなの「楽しい」って声を近くで浴びたかったんだ、って。スクールアイドルも同じだよ」

 

めぐは画面の中の過去の自分に言葉を続ける。

 

慈「スクールアイドルは、みんなが楽しいって声をあげてくれる。コールして、私たちの名前を呼んでくれる。レスポンスをリアルタイムでくれる。相思相愛なんだって、ちゃんとわかる。それが本当に楽しかったから。スクールアイドルは新しい、私の“夢”になったんだ」

 

それは、めぐが自身の手で気付いたこと。めぐのスクールアイドルをやる理由だった。

 

慈・配信『それでね〜、こないだ初めてライブをしたんだけど〜』

 

慈「今は配信ナメてるかもしんないけど。あんただって、すぐに気づくからね。沙知先輩が教えてくれたんだよ。私に、新しい夢を」

 

淳平「ああ。そうだな……」

 

瑠璃乃「うん。……めぐちゃんの手、あっついね。パワー、たまってきた?」

 

慈「うん、かなり!私をこんな風にした責任を、取ってもらわないとね! ズタボロに泣かせてやるからな!覚悟しておけよ!大賀美沙知!

 

すると、めぐは席を立ち、

 

慈「よっしゃ! 帰るよ、るりちゃん!ジュン!もうその雑魚に用はない!」

 

瑠璃乃「せっかく2時間も貸し切ったのに!?」

 

慈「今なら書けそうな気がするー!おうりゃりゃー!」

 

そして、めぐは走っていってしまった。

 

淳平「やれやれ、ルリちゃん、俺達も行こうか?」

 

瑠璃乃「うん。でもほんとは、ルリの知ってるめぐちゃんは、ずっと今のめぐちゃんだったんだけどなあ。あ」

 

すると、まだ流れてる映像に沙知先輩が乱入してきた。

 

慈・配信『げ、沙知先輩!?』

 

沙知・配信『やー、後輩の初めての配信だからねー? 心配で見に来ちゃった』

 

慈・配信『ちょっとちょっと、私を誰だと思ってるんですかー?』

 

それを見たルリちゃんは、

 

瑠璃乃「知ってるよ。置いてかれちゃいそうなほどに、全速力で走り続けてる、ルリの大好きで憧れの、藤島慈だよ」

 

瑠璃乃「沙知先輩。これからは、ルリがめぐちゃんとジュン兄ぃの夢を支えますから、だから……、ふたりのことをますますかっこよくしてくれて、ありがとうございました!」

 

淳平(ルリちゃん……)

 

慈「るりちゃん!ジュン!早く!待ってるんだからね!」

 

瑠璃乃「うん!最強の歌詞、作ろうね!」

 

慈「当たり前!!」

 

淳平「………………おう」

 

ー つづく ー




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