翌日早朝、俺と綴理、梢、慈の4人は学校のレッスン室で沙知先輩に贈る曲を合わせていた。
なのだが……、
綴理「〜♪ ふぅ」
綴理が試しに曲を歌い、踊り終えると、
淳平「これは……」
慈「えっ……とりあえず合わせてみただけだよね」
梢「そうね、そのはずよ。みんなで集めたものを、合わせただけ。もちろんある程度、歌詞に合わせてテンポを取ったけれど……」
綴理「みんなすごい」
そう、歌詞、曲、振り付け、全てがとてつもなくマッチしていて、最高の曲に一発で仕上がっていたのだ。
慈「すっごい! 私たち最強じゃん!できすぎ!!」
綴理「できすぎじゃないよ。みんなすごい」
慈「あ、綴理が全肯定マシーンに……」
淳平「でも、それぞれの持ち寄ったものの完成度が高かったからこそ、できた物だし。綴理の言う通り、誇っていいのかもしれないな。……成長の証として、披露できるものだと思うぞ」
慈「やっぱり、私たち成長したよね!」
梢「そうね。ただ…………」
綴理「ただ?」
梢「いえ…………。私は、花帆に手伝ってもらったから。私ひとりの全力と言うには」
綴理「? それが全力でしょ。ボクもさやにお願いしたよ。めぐは?」
慈「私も当然るりちゃんを巻き込みました! それも私の力!」
自信満々に胸を張る2人。
梢「…………そうね。あなたたちが正しいわね。私も、全力を尽くしたのよ」
綴理「今のボクたちの全力が詰まった曲になった。きっと、さちもすごく喜ぶはずだ。今日はぐっすり寝られる。昨日ちょっと寝付けなかった」
梢「ぜひ寝不足は回避してほしいところではあるのだけれど。うーん……」
淳平「まだ、なんか足したいとことかある感じか?」
綴理「ボク、今日も寝れない……………?」
梢「なんというか……。いえ、言うだけ言うわね。少し冷静になって、思ったのだけれど。この曲、少し沙知先輩に寄りすぎていないかしら……」
綴理・慈・淳平「「「…………」」」
確かに。
綴理「?」
慈「言われて、みると……先輩に貰った気持ち、優しさ……先輩に与えられたものに、嬉しかったって伝えたい……………大好きだった……。もしかして、これラブレターみたいになってない!?」
梢「そう! そうなのよ!」
慈「うわー、なんか恥ずかしくなってきた!」
二人が悶絶し恥ずかしがり始める。しかし綴理は、
綴理「…………えっと、ごめん。何がダメなの? すごくいいよ、これ」
慈「え〜〜っとねえ? 確かに私たちは120点……いや、沙知先輩に対して言えば、150点のものを作れたと思う! それはとてもいいことなの!」
綴理「うん」
梢「でも私たちが作るべきは、蓮華祭で発表する曲なの。沙知先輩への感謝の気持ちは、もちろんそうなのだけれど……」
淳平「沙知先輩にしか届かなくて、周り全員ぽかーんとしてたら、それはそれで先輩が安心して卒業できないよな?ってこと」
綴理「そう、なんだ。ごめん、よく分からなくて。じゃあ、どうすればいいの?」
慈「分からん!」
梢「……………少し、手立てを考えましょうか」
綴理「さちにしか届かない曲、か」
そして朝のホームルームの時間が近づき、合わせを切り上げて教室に向かう俺達。
蓮華祭の準備を各クラスや各部活で進め、クラスの出し物の準備は終わったので俺達は部室にいた。
◇◆◇◆◇◆
梢「蓮華祭の準備は、これで大丈夫かしらね」
花帆「はい!準備万端ですね! あとは、その。先輩たちが作っていた曲なんですけど」
梢「そうね……もういっそ、あれとは別に蓮華祭用の新しい曲を作ろうかしら」
花帆「何度だってお手伝いしますよ!」
花帆と梢が話している脇で、綴理とさやかは振り付けの打ち合わせをしていた。
綴理「これだと、どうかな?さちのことは、それなりに好き……みたいな」
さやか「た、たぶん、変えない方が良いと思います。せっかく完璧に作れた振り付けですし……」
綴理……、それなりに好きは無いだろ……………。
慈「るりちゃん、こっちきて」
瑠璃乃「またー? はいはい、どーぞ」
するとめぐはルリちゃんに抱きついた。
慈「ぎゅー。もう1個絞り出さなきゃー」
瑠璃乃「がんばれー」
すると、
コンコン!
扉がノックされて扉が開いた。
沙知「やー諸君、元気に…………」
花帆「あ、沙知センパイ。こんにちは」
沙知「あ、ああああ。こんちゃー」
淳平「どうしたんですか?」
沙知「いや、なんでもない。一年生も、だいぶ部室に馴染んだなーって思ってさ」
慈「あ一分かった。卒業前でセンチになってるんだ、沙知先輩はカワイイなー」
綴理「そうなの、さち?」
沙知「こほん……去年あれだけ自慢してた大好きな幼馴染に、ぴったりくっついてる慈後輩もなかなか可愛いぞ」
慈「ま・ね♡ おかげさまで、一緒だよ」
瑠璃乃「へいめぐ、ルリなんも知らね一話出てきた」
慈「知らなくていいよ☆」
すると、さやかちゃんがおずおずと手を上げて質問した。
さやか「あの、沙知先輩はお仕事で来たんじゃ……………」
沙知「あはは。いやすまない。お仕事じゃないんだ。というか、もう生徒会長としての業務は全て終えている。卒業式の前に、部室を見納めに来たんだ」
花帆・さやか・瑠璃乃・梢・綴理・慈・淳平「「「「「「「……………………」」」」」」」
黙りこくる俺達。すると、
綴理「留年すれば?」
慈「確かに」
サラッととんでもない事をいう2人。
沙知「さらっととんでもないこと言うんじゃないよ!」
綴理「でもさち、寂しそう」
沙知「…………やれやれ。綴理というやつは相変わらず」
梢「沙知先輩。蓮華祭は出席されますよね?」
沙知「ああもちろん。蓮ノ空の卒業は、卒業式よりも蓮華祭みたいな所あるからね。キミたちのパフォーマンスにも、心から期待しているよ」
梢「ええ、任せてください。スクールアイドルクラブとして、これまでの先輩方に恥じないライブをお届けします。私たちが沙知先輩以外の先輩を知らない以上、あなたに判断していただく他ありませんから」
沙知「……そうだね。キミたちは、あたし以外の先輩を知らない。……………思えば、蓮華祭も未経験だったよねい」
淳平「沙知先輩?」
沙知「…………………」
沙知先輩は少し沈黙すると、「よし!」と意を決したような声を上げ、
沙知「生徒会長としての仕事は終わったとはいえ、蓮華祭でもあたしのやりたいことはあるんだ! あたしも一曲一緒に踊るとはいえ、キミたちには最高のステージを用意するよ!」
瑠璃乃「最高の、ステージ……!?」
さやか「最高とは……期待させていただきますね、沙知先輩!」
花帆「じゃあ、あたしたちも最っ高のライブでお返ししますね!」
沙知「ふっ…………ああ、頼んだよ、キミたち! いよし! それじゃあ、また明日とか!」
さやか「もう、見納めは良いんですか? よろしければ部室の鍵をお渡しするので、いつでも――」
沙知「見納めは、キミたちスクールアイドルがいることが大事だったからね。べつに、まだ3月中は校舎中どこにでも生息してるから、また会う時もあるさ!」
瑠璃乃「生息」
沙知「それじゃ」
そして、沙知先輩は部屋を出ていった。
梢・綴理・慈・淳平「「「「……………」」」」
ー つづく ー
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