バスで一緒に街へと出た花帆と百生さんは、百生さんの行く場所に一緒に向かっていた。
行く道中、花帆は百生さんに凄く話しかけていた。
花帆「ねえねえ、その着物って着付けも自分でやってるのー?」
吟子「花帆先輩、休日でもほんっとによく喋りますね……」
花帆「? 休日『でも』ってなに?」
吟子「いや……部活中は、先輩としての義務で私と話してるのかな、的な……」
百生さんは自分の思っていたことを花帆に聞いてみた。
花帆「そんなの考えたこともなかったよー!」
だが、百生さんもこの数日花帆と関わって薄々感づいていた様で、
吟子「でしょうね。たぶんあなたはそういう裏も表も無い人です。……というか、着付けのことなら、別にすごくないですよ。これは
花帆「へえー、すごいすごーい」
花帆がそう言うと、百生さんは少し驚き。
吟子「…………ヘンだ、って言わないんですね」
花帆「なにが?」
吟子「私が、着物を普段着にしてること。浮いてるー、とか。座敷童みたい……とか」
百生さんがそう言うと、花帆はクスッと笑い、
花帆「あたしもね、スクールアイドルになってから何度か着物みたいな衣装を着たことあるんだ。すっごく華やかで、かっこよくて。身に着けると、なんかパワーをもらえる気がするの!」
花帆「だから、そうして吟子ちゃんが普段から着物着てるのって、むしろちょっと羨ましいかも。その手があったかー!みたいな」
花帆がそう言うと
百生さんは顔型カアッ//と赤くなり、
吟子「……ヘン」
花帆「ええっ!? それ吟子ちゃんが言うの!?」
吟子「言う!ヘンです花帆先輩は!ヘンな人」
花帆「あれ? 吟子ちゃん顔赤いけど、大丈夫? ひょっとして着物って、寒いんじゃ……!?」
吟子「いいからもう! ほらほら、つきましたよ!」
話しながら歩いていたら、いつの間にか目的地に着いていた。
花帆「おおー? なんか、雰囲気ある一!」
その目的地は、昔ながらの雰囲気が残る染工房だった。
吟子「ここは、百生の家が昔から付き合いのある染工房なんです。今回は生地や糸などの材料。それに、刺繍道具を受け取りにきたんですよ」
花帆「へえ〜〜〜」
吟子「私は久しぶりに来たから、先生方に挨拶してきますけど……先輩は暇だったら、どこか適当なお店で時間を潰しててもらっても」
花帆「えっ?あたし一緒に行っちゃ、だめ?」
花帆が少し悲しそうな顔で言うと、
吟子「……………あんまり、はしゃがないでくださいね」
百生さんは勝てずにあっさりと折れた。
花帆「大丈夫大丈夫。だってあたし、二年生だもん!」
吟子「まったくもう」
そして道具を受け取った百生さんと花帆は蓮ノ空に帰ってきて、部室には誰もいなかったが開いていたので花帆は百生さんに刺繍をやってるところを見せてもらっていた。
吟子「…………………」
花帆「刺繍、きれい………まるで魔法みたい…………」
吟子「…………ふふっ、なんですかそれ」
花帆「あっ、ごめん。作業のために着替えて部室に帰ってきたのに。ちゃんと大人しく見学してるね」
吟子「いいですよ別に。これぐらいならかわいいものです。………………」
百生さんは少し無言になると、
吟子「おばあちゃんが、芸楽部だったんです」
百生さんは、少し自分のことを話し始めた。
花帆「え?」
吟子「私のおばあちゃん。もう50年ぐらい前なんですけど、蓮ノ空が女学院だった頃芸楽部に入って、アイドルしてたんです。おばあちゃん、今もきれいで。だから、昔もきっときれいで……」
吟子「芸楽部の話をするときには、決まって私に歌を歌ってくれて。その歌が、すごく好きでした。歌うおばあちゃんが、好きでした。…………ふふっ、だから私もいつかぜったい蓮ノ空に入って、その歌を歌うんだーって。それで……………?」
花帆が静かな事に気づいて百生さんは花帆の方を見る。
吟子「って、せ、先輩!なに笑ってるの!?」
花帆「えっ?ご、ごめんね!でも、なんだか嬉しくて」
吟子「……………嬉しい?」
花帆の言った意味が分からなかった百生さんは質問する。
花帆「うん。吟子ちゃんのことを知れたこと。それに、吟子ちゃんがあたしの好きなスクールアイドルを、すっごく好きなんだってわかったこと!」
吟子「す、好きって!別に、そんな話は!」
花帆「えー?してたよー?」
吟子「…………あのですね、これは角が立つから、今まで"あえて!"言わなかったことなんですけど! 私が好きなのは、ほんとは芸楽部で、スクールアイドルなんて名前じゃないんです!」
花帆「……………一緒じゃないの?」
吟子「一緒じゃ!一緒じゃ……そ、それは、まだわかんない、ですけど。でも、少なくともおばあちゃんの時代には、3ユニットなんてありませんでしたし」
花帆「そうなんだ!なんか昔の話聞くの、楽しいね!」
吟子「またこの人は………………ああもう! いいから、次は山吹色の糸を取ってください! その、黄色いやつ!」
花帆「はーい。あ、覚えててね、あたしの好きな色だよ!」
吟子「はいはい」
すると、時間になり下校のチャイムが鳴った。
花帆「あ、下校のチャイム。これ、ちょっと音が外れてるんだよねー」
吟子「…………音の外れた、チャイム。あ」
百生さんは、おばあちゃんから聞いた話を思い出した。
吟子「おばあちゃんから聞いた、蓮ノ空の思い出。音の外れたチャイムが鳴って、夕暮れ空の下、みんなで寮に帰ってゆく。このまま時間が止まればいいのにって、願うほどに。その日々は、宝物だった――って。 あれ?」
見ると、百生さんの目からボロボロと涙がこぼれていた。
花帆「吟子ちゃん……………?」
吟子「あ、あれ。なんでだろ。急に……」
すると、花帆は後ろから優しくて肩に手を回して百生さんを抱きしめて、
花帆「蓮ノ空に来てくれて、ありがとうね、吟子ちゃん。あたし、吟子ちゃんに会えて、よかった」
吟子「うん…………。ありがとう、先輩……」
そして下校のチャイムが鳴ったということは帰る時間と言う事。刺繍道具を鞄に入れた百生さんと、花帆は一緒に寮に戻っていた。
その途中、
花帆「ねえねえ、吟子ちゃん。どうしてスリーズブーケじゃだめなのー?」
吟子「……またその話? これから3年間も活動するんだから慎重になりなさいって、梢先輩も言ってくれてたでしょ。……………って、な、なに?」
花帆「吟子ちゃん、今あたしたち友達みたいだったね!」
吟子「へ……?なんの話?」
花帆「ほら、口調!」
吟子「あ……」
百生さんはそこで自分が先輩にタメ口を使っていたことを思い出した。
吟子「これは……花帆先輩がどうしてもって言うから!」
花帆「その調子で、ほら。『花帆ちゃん』って!さんはい!」
吟子「だから、それはムリって言ってるでしょ!」
花帆「あはは」
吟子「まったく、もう……………いい? 私もまだどんな歌があるのかわかんないんだから、そう簡単にユニット選べないからね!」
吟子「そりゃ、誘ってもらってることは、素直に嬉しいけど……」
花帆「そっかぁ!でも、うん! 最後にはきっと選んでくれるって、信じてるから!」
そして花帆は走って先に帰っていった。
吟子「花帆先輩は……ほんとに変わっとるわ………」
ー つづく ー
名前
蓮ノ空学院スクールアイドルクラブ3年
所属ユニット:DOLLCHESTRA
スクールアイドルクラブの3年生。独特の自分の世界観を持つ不思議ちゃんかと思いきや、意外と話を聞いており的を得た発言をすることも多い。
できないことはできない。好きなことはその全てで天才的な才能を発揮するというタイプ。
淳平のことは大好き。好意いるがアタックは控えめ?しかしちゃんと嫉妬はする。
ヒロイン候補4人目
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