第6話:新入生
花帆と梢が百生さんと初めての練習をしていた頃、さやかちゃんと綴理は
さやか・綴理「「……………」」
綴理「のどか」
さやか「のどかですねぇ」
綴理「村野のどか」
さやか「それは、どちらさまでしょうかね。うちはさやかのほかには、つかさしかお取り扱いがありませんけども」
さやか・綴理「「………………………」」
二人が湖の湖畔でのんびりしていると、
さやか「校舎の方は賑わっていますから、なおのこと静かに感じますね」
綴理「部活動誘の時期だから」
さやか「ですね。1年前のことを……すでに懐かしく思う自分がいます」
そしてさやかちゃんが綴理の方を向くと、
綴理「……どしたの。横顔キレイ?」
さやか「うぇ!?それは否定のしようもありませんが!」
綴理「隣から見てるから、見えるね」
さやか「ん〜!そうですね!じゃなくて。わたしたちは、あの賑わいの方に行かなくていいんですか? 新入生勧誘について、綴理先輩がどう思っているのか知りたいです」
綴理「行ってもいいし、行かなくてもいい。すごいスクールアイドルになれる子がいるなら、きらめきを見てみたいとは思うけど………、DOLLCHESTRAで合ってるのかってなると、分からないしね」
さやか「なるほど……去年と違って、ユニットごとの色がもう決まっているという」
綴理「そう。みずいろ」
さやか「それわたしだけじゃないですか」
さやかちゃんは呆れたように綴理を見る。
綴理「じゃあボクなに色?」
さやか「また答えにくい質問を。じゃあ金色のきらめきで」
綴理「無敵になった気分だ………………。じゃあさやは、何色を混ぜてみたい? この、みずいろと金色に。………? ほんとにボク金色かなあ………?」
さやか「わたしにそういうセンスを期待しないでください………。確かに金色はちょっと違うかなとも思ってますけど。メンバーカラーでもないですしね。」
さやかちゃんは「でも、」と言葉を続ける。
さやか「そうですね。新しく足す色……………。わたしは、頑張っている色なら、いいなと思います。足すなら、ですが」
綴理「頑張ってる色。明るい黄色だね」
さやか「そうなんですか? じゃあその色です。ほしいものがあって、そこに向かって頑張るそのための舞台。そのための居場所。…………それがDOLLCHESTRAだと、教えて買いましたから」
綴理「そうだね」
さやか「まあ、とはいえ……スクールアイドルクラブに入りたいという本人の意志が大事だと思いますので、やっぱりこちらから勧誘というのは――」
綴理「ねえ、さや」
さやか「はい?」
綴理「頑張ってる色、っぽい?」
綴理は、湖の真ん中らへんを見てさやかにそう言う。
さやか「えっ?」
さやかちゃんも綴理の視線の先に目をやると、
小鈴「ちぇすとおおおおおおおおおおお!!」
お手製の
さやか「……ええ?」
小鈴「おおおおっ!!」
しかし、その女の子はバランスを崩してしまい、
小鈴「あああっ」
ドボーーーん!!
小鈴「おぼぼぼぼぼぼぼぼ……………」
湖にダイブしてしまい沈んでいった。
綴理「あ、沈んだ」
さやか「はあああっ!? うわああああああああああああ!!!」
ショックから立ち直ったさやかちゃんは、制服を着たまま湖に飛び込み泳いでその子を助けに向った。
◇◆◇◆◇◆◇◆
小鈴「あれ、こ、こは……?」
さやか・綴理「「!」」
湖を渡ろうとしていた1年生の子が目を覚ました。
綴理「生きてた」
さやか「つ……………生きてなきゃ困ります! 意識ははっきりしてますか? 直前のことは覚えていますか?」
小鈴「は、はっきりです。覚えてます! 徒町は確かおうちでお母さんに大人しくしてろって言われて……ん?」
さやか「おうちはたぶん、だいぶ前の記憶ですね……」
綴理「あと、大人しくはなかった」
小鈴「はい、大人しくはないかもです! よく言われます! 徒町は何者にもなれないで終わるのは嫌で、家を飛び出して。蓮ノ空を受験して」
さやか「だいぶ前の記憶でしたね! あの、今は入学式も終わって、ここは蓮ノ湖のほとりです」
綴理「きみは頑張ってたよ」
小鈴「はい、徒町頑張ってま…………あっ」
ここで徒町さんは気がついた。
小鈴「そうですさっき徒町は湖を――ってぇ! おふたりともめっちゃ濡れてるじゃないですか! もしかして無謀なことした徒町を助けるためにこんなことに!?」
綴理「助けたのはさやだけ」
小鈴「え、じゃああなたがずぶぬれなのは?」
綴理「さやについて泳いでいって、戻ってきた」
小鈴「ええ……?」
さやか「まあ、その。気にしないで大丈夫です」
小鈴「あ、はい…………。とはいえその、お助けいただいてありがとうございました。徒町にできることならなんでもして返しますので。宿題の代行から就寝点呼の代返、外出届の捏造まで、なんでも」
綴理「おお」
さやか「ダメですからね!? 入学そうそうグレーゾーン攻めすぎです!」
小鈴「しまった、まじめな先輩だった!」
さやか「まったく………聞かなかったことにしてあげますから、やらないように。………それにしても、湖の向こうに何かあるんですか? 随分頑張ってましたけど」
小鈴「それはその………湖を渡ることそのものが目的と言いますか、目的はないと言いますか。お恥ずかしい話ですが」
さやか「えっと?」
綴理「でも、目的がないにしては、頑張ってなかった?」
小鈴「それは……その」
徒町さんは少し言いにくそうにするが、
小鈴「ひとつすごいことぶち上げたくて!!」
さやか「えぇっと!? 湖を渡ることが、すごいこと……と?」
小鈴「湖じゃなきゃいけないってこともないんですけどね。生まれてこのかた、徒町ってば、すごいこと1回もできたことないんで」
綴理「そっか」
さやか「…………じゃあ、湖を渡りたい理由があるというよりは、湖を渡ったという実績がほしいんですね」
小鈴「あっ………あ、はい、そんな感じです! 徒町は今、笑われなくてびっくりしてます!」
するとさやかちゃんはクスッと笑い、
さやか「笑いませんよ。ひとが頑張っていることは」
小鈴「おおおう……。この前の男子の先輩といい、いい人しかいない」
さやか「男子の先輩?」
小鈴「はい。3年生で、日野下先輩って言ってました」
さやか・綴理「「!!」」
さやか「……へぇ?」
小鈴「あれ? なんか急に背筋が……」
さやか「それで? その日野下先輩と何があったんですか?」
小鈴「えっと、恥ずかしながら寮に戻るときに左右どちらが女子寮か分からなくなってオロオロしてた所を声をかけてくれて親切に教えてもらいました!」
さやか「それだけですか?」
小鈴「はい。それだけですけど……なにか?」
さやか「いえ、こちらの話です」
話を聞いたさやかちゃんと綴理はならお仕置きは無しにしてあげようと決めると、本題にもどり
綴理「まだやるの?」
小鈴「はい! 心配かけないようには気を付けますので、どうか気にしないでください!」
綴理「気にしない、かあ。できる?」
さやか「…………徒町、さん」
小鈴「はい?」
さやか「何度びしょ濡れになってもやるくらい、頑張りたいんですよね」
小鈴「そりゃあ、お見苦しいところを見せたかと思いますし、渡れる見込みはまだ全然ないけど……。それで折れられるほどプライドも育ってないんで! ほら、恥は人生のかき捨てとも言いますし!」
綴理「それは良い言葉だ」
さやか「そんな言葉はありませんが! 言うなら『旅の恥はかき捨て』です! 知らない人しかいないところでならしょせん一時の恥という意味で! "人生"は吹っ切れすぎです!」
さやか「ではなく! 徒町さん!」
小鈴「は、はい!」
さやか「良かったら、手伝いますよ?」
小鈴「えっ…………助けてもらったあげく、わざわざそんな。こんなことで先輩の手を煩わせるのは流石にと思うんですが……」
綴理「……………」
小鈴「こ、こんなことが許されて良いんでしょうか。恥は人生のかき捨て、プライドゼロの徒町とて、申し訳なさというものはあり。しかし初対面の先輩がたの温かきことこのうえなく、善意をふいにするのも果たして……」
すると、さやかちゃんは笑うと自分のことを語る。
さやか「わたし自身、何を頑張れば良いのかも分からなかった時期がありました。その時、すごく苦しかったことをよく覚えています。ちょうど、去年の今頃まで……」
小鈴「先輩。あの」
さやか「だから、手伝わせてください」
小鈴「………ここで断る理由、徒町にはないはずで。えと………よろしくお願いします!!」
さやか「………。はい、やりましょう」
ー つづく ー
名前
蓮ノ空学院スクールアイドルクラブ2年
所属ユニット:みらくらぱーく!
慈と淳平の1つ下の幼馴染。小学校の頃に引っ越し、一時期離れ離れになったが、ちゃんと連絡は取り合っていた。
1年生の夏休み前に日本に戻ってきて、蓮ノ空に編入。スクールアイドルクラブのメンバーとなり淳平と再会する。
慈とは小さい頃から淳平を巡って恋のライバル。
だが、今ではライバルが5人いるためどうアピールしようかと日々頭を悩ませている。
だが、メンバー間の空気を悪くすることは望まない。淳平ガチ勢。
ヒロイン候補5人目。
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