さやかちゃんは湖で出会った新入生、徒町さんに協力して一緒に湖を筏で横断しようとしていた。
さやか・小鈴「「ちぇすとおおおおおおおお!!」」
しかし重心を崩してしまい、
さやか&小鈴「「あっ」」
ドボーーんっ!!
さやか・小鈴「「おぼぼぼぼぼぼぼ……」」
二人して湖にダイブしてしまう。
小鈴「ぶはっ」
先に徒町さんが水面に顔を出した。
小鈴「だ、大丈夫ですか〜〜!?」
すると、さやかちゃんも水面に顔を出す。
さやか「はい。オール、枝ではなくべつのものにしましょう。確か部室に長柄のもののひとつやふたつあったはずです」
小鈴「あ、あの! えっと、先輩!」
さやか「はい?」
徒町さんは、さっきから気になっていた事をさやかに聞く。
小鈴「いまさらなんですけど! どうして徒町に付き合って、一緒に沈んでまでくれるんですか!」
さやか「そう。ですね。何かを欲しがる気持ちは、分かる気がするからです」
小鈴「何かを欲しがる、気持ち?」
徒町さんは首を傾げる。
さやか「何か、すごいことをひとつ。それが徒町さんの目的でしょう?」
小鈴「あ……は、はい。そう、そうです!徒町は、何かが欲しいんです!」
さやか「ふふ……それに、何かを成し遂げたいと思っているなら、その成し遂げるべき何かが近づいてくるのは、けっこう楽しいものじゃないですか?」
小鈴「成し遂げるべき何かが近づいてくるのが、楽しい……たの、しい?」
さやか「気づいてませんか? 距離、伸びてきましたよ」
小鈴「距離。……あ」
さやか「さあ、次はもっと――徒町さん?」
小鈴「…………あの!!先輩!!」
さやか「どうしました?」
小鈴「あの、本当に……本当に、感謝してます。徒町の、はたから見たらばかみたいなことを、がんばってるって言ってくれたのも先輩が初めてで。そのうえ手伝ってくれるなんて、そんなありがたいことがあっていいのかなって思いました。それでいま、先輩のおかげで、はじめて目指したものに手が届きそうで」
さやか「それなら良かった、と思いますが……………」
すると徒町さんは「でも!」と言葉を続ける。
小鈴「ごめんなさい! それじゃあだめだったんです! 愚かな徒町は今更気づきました! このままだと、『湖横断できました、先輩にやってもらったからです!』としか、今の徒町は言えないから……………」
さやか「あ、いえ、徒町さん、わたしの方こそ。……そうなんですね。自分の力でやらないと、意味がないんですね」
小鈴「ごめんなさい!……こんなに優しい先輩の厚意を徒町は。土下座してお詫びしておぼぼぼぼぼ」
さやか「どこで頭下げてるんですかそうなりますよ!!」
そう。二人はまだ転覆した場所から上がっていない。まだ湖の中にいた。
小鈴「ぶはっ」
さやか「……わたしの方こそ、ごめんなさい。何かを成して欲しい一心で、あなた自身の頑張りをないがしろにしていました」
さやかちゃんがそう言うと、徒町さんは慌てる。
小鈴「いえっ、そんなっ。全部が全部徒町のわがままで!」
さやか「じゃあ、徒町さん。隣から応援するくらいは、許してもらえますか?」
小鈴「あ…………。はい!!」
そしてさやかは岸に上がり見ていた綴理のところへ行く。
さやか「ぐいぐいいきすぎてしまいました」
綴理「ボクは好きだよ。あの子に笑ってほしい、それだけだよね?」
さやか「はい。ただ……自分で成し遂げなければ、意味がない。わたし自身もそう思っているはずのことを、どうしてか………」
綴理「そういうものだよ。いきすぎるくらい相手を思いやること……よくある。頑張ってほしいと思う相手なら、なおさら。ボクも一緒に沈みたかった」
さやか「だめですって、綴理先輩にそんな!」
綴理「ね?」
さやか「〜〜〜っ」
綴理「相手を思いやればこそ、相手の気持ちを抑え込むこともある。それが分かっていれば、さやは大丈夫だよ。ボクはぐいぐいいくさや、好きだから」
さやか「うぅ……応援すると約束したので、行ってきます!」
綴理「ん、頑張って」
小鈴「ちぇすとーー!!」
徒町さんは再び湖横断を開始していた。
さやか「徒町さん、腕を回す方向を意識するんですー!!」
そんな徒町さんとさやかちゃんの様子を綴理は微笑みながら見ていた。
綴理「色が混ざって、きらめいてる」
ー 小鈴 side ー
小鈴「距離が伸びたのに、素直に喜べなかったっ……。先輩に全部やってもらってたから……自分じゃ何もできなかったから……!」
小鈴「あんなに親身になってくれる人を相手に。徒町は、なんて恩知らずなんでしょう」
さやか「徒町さん、脇です、脇!しっかり閉めて一!」
小鈴「でも、そんな徒町を、先輩はまだ応援してくれる。徒町の頑張りが、報われることを望んでくれてる。これまで何度も失敗してきた。その度に次を探してた。でも!」
小鈴「今回だけは、どうしても……どんなにかかっても。これをやり遂げたい……!必ず、初めての成功は、ここで…………!! ちぇすとーー!!!」
そして、チャレンジの結果は……
小鈴「はあ、はあ………。はあ、はあっ……」
綴理「ご〜る〜」
さやか「やりきりましたね、徒町さん!」
小鈴「あっ。渡り、切ったんだ。すごいことが……できたんだ。はじめて……」
徒町さんの目から、喜びの涙がボロボロとこぼれてくる。
小鈴「うっ、く…………あの!! ありがとう、ございました!!」
小鈴「最初、助けてくれたことも! 徒町のやってることを笑わないでくれたことも!頑張りたいと思ったことを、初めて成し遂げられたことも!」
徒町さんは、何度も何度も頭を下げる。
綴理「振り子みたいだけどだいじょぶ?」
さやか「まあ、ここならもう溺れないで済みますから。何かが出来たときの気持ちは、抑えられないものですし」
小鈴「っ…………それと、徒町は今日、大事なことを教えて貰えたような気がします。自分で成し遂げるから意味があること……そして。支えてくれる人に報いたい気持ちは、すごく強い力になるってこと」
綴理「おぉ」
さやか「その一助に、なれましたなら」
小鈴「はい!!」
さやか「っと」
さやかちゃんは今の時間に気づき、
さやか「すみません、今日は部活会議に出るんでした」
綴理「こずの仕事?」
さやか「はい。来年のことを考えて、今年度からたまにご一緒させてもらうことになりまして。なのでわたしは先に戻りますから、綴理先輩、徒町さんをお願いしますね?」
綴理「ぎゃくぎゃく。ボクをお願い」
さやか「逆でたまりますか」
小鈴「あの!ありがとうございました!!!!」
するとさやかちゃんは振り向いてふふっと微笑み、
さやか「わたしも、良い気分で行けそうです」
小鈴「あの、人は………あぁ!! 名前も聞いてない!! 徒町はおろか!!」
綴理「スクールアイドルの、村野さやか。だよ」
小鈴「スクール……アイドル…。先輩、凄くカッコよかった………」
ー つづく ー
名前
蓮ノ空学院スクールアイドルクラブ3年
所属ユニット:みらくらぱーく!
主人公である淳平の、同い年の幼馴染。同じ日に、同じ病院で産まれ、そして家も隣という産まれたときからのお隣さん。
ひとつ下の幼馴染に瑠璃乃がおり、ちいさい頃は淳平と3人でよく一緒に遊んでいた。
高校に入学すると、淳平と一緒に楽しいことがやりたいとスクールアイドルクラブに2人で入部。色々あったが、結果的にはふたりとも入部できたので慈的には万々歳。
1年生の秋頃に怪我をしてスクールアイドルクラブを長期間休部。しかし瑠璃乃が、入ってきたのがきっかけでイップスに打ち勝ちスクールアイドルクラブに復帰する。
可愛くあることに日々熱意を燃やし、魅せ方の研究は怠らない。心優しく努力家で仲間思いの女の子。
だが勉強は壊滅的でテスト前には淳平にお世話になるなっている。
小さい頃から淳平LOVEな、淳平ガチ勢。
ヒロイン候補、最後の6人目。
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