第12話:過去と
学校終わりの放課後、部活が始まる前に花帆は百生さんの事を教室に迎えに行っていた。
花帆「〜〜♪」
花帆が1年生の教室を覗くと、百生さんはクラスメイト数人と話していた。
花帆「(フフッ)吟子ちゃんー、部活いこー!」
花帆は嬉しそうに微笑むと、教室の中に入って百生さんに声を掛ける。
吟子「あ、花帆先輩。みんな、それじゃ私、部活いってくるね」
百生さんのクラスメイトの子たちは、「頑張ってね〜」と百生さんに声を掛ける。
吟子「すみません、わざわざ迎えに来てもらって」
花帆「ううん、ぜんぜん…………。それより! 吟子ちゃんお友達できたの!?」
花帆が興奮した様に百生さんに聞くと、百生さんは少し後ずさって答える。
吟子「えっ、ええと…………友達……というか、話に付き合ってくれる人は、何人か、できたけど……」
花帆「それ友達だよね!? やったー!」
百生さんに友達ができたことを我が事のように喜ぶ花帆に、百生さんは理由のわからなそうにジト目を向ける。
吟子「…………なんで、花帆先輩が喜ぶの?」
花帆「えー、だって嬉しいよ! あたしちょっと戻って、吟子ちゃんと仲良くしてねって言ってこようかな」
吟子「本気でやめて!? そんな事されたら恥ずかしいから!」
すると、百生さんは俯くが、顔は真っ赤になっていた。
吟子「……スクールアイドルクラブに入ったから、って」
花帆「え?」
吟子「あの子たち、スクールアイドルが好きみたいで……」
すると、花帆はパァアアッ!と花咲いたような笑顔になり、
花帆「それじゃあ、素敵なところを見せてあげなくっちゃ! 世界でいちばんの初ライブにしようね! 吟子ちゃん!」
吟子「ああもう、言わなきゃよかったー!」
そして2人は一緒に部室に向かった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
その日は新入生歓迎会でのライブに向けて、昨年度に卒業した沙知先輩がスクールアイドルクラブに遺してくれた第二音楽堂でのステージ造りをする事になった。
そして、スリーズブーケ、DOLLCHESTRA、みらくらぱーく!のメンバーたちと淳平が協力しながら装飾を造り、飾り付けていた。
梢「ジュン、もう少し右にお願い」
淳平「了解! え〜っと…このくらいか?」
梢「オッケーよ!」
淳平「よし、止めちまうか」
俺はレースのカーテンを言われた場所で止めて梢に確認を取る。
淳平「大丈夫か〜?」
梢「えっと……ええ!大丈夫よ!」
淳平「よし……」
俺はステージの上の照明を釣る所にある足場から降りてくる。
綴理「ジュン、怖くなかった?」
淳平「少し怖かった(笑)」
慈「他の飾りつけも終わったよ〜」
梢「そう。じゃあ、今日はここまでにしましょうか。お疲れ様」
花帆・さやか・瑠璃乃・梢・綴理・慈・吟子・小鈴・姫芽・淳平「「「「「「「「「「お疲れ様(でした)〜〜」」」」」」」」」」
そして、花帆と吟子ちゃんは部室に戻ってきた。
花帆「ふいー、おつかれさま〜〜〜」
吟子「お疲れ様です。きょうでステージ制作も、終わったんですね」
花帆「うん! 吟子ちゃんも楽しそうだったね。ペンキ塗りながら、鼻歌歌ってたよ?」
吟子「え、歌ってないと思いますけど」
花帆「えー? 歌ってたよー。物作りって、楽しいよね!」
吟子「それはたしかに楽しいですね。歌ってませんけど」
言い張る百生さん。
花帆「あたしもね、スクールアイドルクラブに入って初めてのことばっかりだったけど、ひとつひとつ丁寧に梢センパイや淳兄ぃたちが教えてくれたから! なんとかやってこれたんだ!」
吟子「そうですか」
花帆「だからね、吟子ちゃんも、なんでもあたしに頼ってくれていいからね!」
吟子「…………確かに、梢先輩は、すごく雰囲気ありますよね。二年生の頃から、あんなに雅やかな方だったんですか?」
花帆「みやびやか?」
百生さんの言葉の意味が分からず、頭の上に?が浮かび聞き返す花帆。
吟子「……………上品で優雅、という意味です」
花帆「それはもう! すごいんだよ梢センパイは! なんでもできちゃうし、なにやっても大人っぽくて美しいの! あたしが去年の梢センパイと同い年だなんて、信じらんないぐらい!」
吟子「へぇ〜……。それと、淳平先輩も……」
花帆「ん? 淳兄ぃがどうかした?」
吟子「いえ、スクールアイドルクラブにマネージャーとはいえ男の人がいるのが違和感あるって前に言ったじゃないですか」
花帆「ああ、うん」
吟子「私も、この数日間淳平先輩の人となりを見ていたんですが……」
花帆「う、うん。それで……?」
吟子「凄く気配りや配慮のできる方だなぁ……と。先輩方が惚れたというのもわかる気がしました」
花帆「そ、そうなんだ……」
花帆は不安そうに百生さんを見る。
吟子「? 私は惚れてませんよ? 良い方だとは思いますけど、少し理想とは違うので」
花帆「そ、そうなんだ……」ホッ
花帆は一安心した
吟子「もう。先輩たちの話になると、すぐ熱が入るんだから………」
花帆「えへへ。吟子ちゃんにも、センパイのすごさをわかってほしくて。あたしとはほんとに、ぜーんぜん違うんだから」
花帆が自慢げにそう言うと、
吟子「……………花帆先輩も私から見たら、ちゃんとしてるけど」ボソッ
花帆「え? なになに?」
吟子「…………なんでもない」
花帆「? ……あーそうだった! 忘れてた! そろそろライブの曲決めなきゃ、練習時間なくなっちゃう! 昨日、梢センパイに言われてたのにー!」
花帆は急いで曲のリストを棚から持ってくる。
吟子「…………やっぱり、ちゃんとしてない」
ボソリと毒を吐く百生さん。すると、
花帆「ねえねえ、吟子ちゃんはどんな歌がいい?」
吟子「えっ…………?花帆先輩、作曲もできるの?」
花帆「ええっ!? で、できないよぉ! お、お手伝いしたことは、あるんだけど……。梢センパイに、キーボードをね、少しずつ教わってて……………」
そう話す花帆に百生さんはキラキラとした尊敬の眼差しを向ける。
吟子「楽器弾けるんだ……。花帆先輩、すごい………」
花帆「ぜんぜん! まだ、ぜんぜんへたっぴだから! あ、だからね! 今回は、今ある曲の中から選ぼうね!」
吟子「今ある、蓮ノ空の曲……! あ、あの! リストを見せてもらっても、いい!?」
花帆「え?うん。大丈夫だよ。そんなに焦らなくても、曲は逃げないから――」
花帆はリストを百生さんに渡す。百生さんはリストに目を通していく。
吟子「今ある曲…………今ある曲。あれ……………?」
花帆「吟子ちゃん?」
吟子「あの、これって、スリーズブーケのリストだよね? DOLLCHESTRAと、みらくらぱーく!のも、見せてもらってもいい? いいですか?」
花帆「う、うん」
花帆は他の2ユニットの曲のリストも渡す。
吟子「………ない。あの歌も、あの歌もどこにも……」
百生さんは、呆然とした顔になり、俯いてしまう。
花帆「吟子ちゃん? えと、タイトルで気になる物があったら、曲を流すこともできるけど……」
吟子「………………」
花帆「え、えっと……?」
吟子「あ。ごめんなさい、花帆先輩。きょうは、帰ります……。お疲れさまでした………」
花帆「う、うん……。えと、また明日ね!」
吟子「………………」
花帆「吟子ちゃん………………?」
ー つづく ー
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