蓮ノ空スクールアイドル録   作:松兄

172 / 339
第15話:蓮ノ空の歴史

翌日の部活動時間、花帆と梢は一緒に部室にいた。ちなみに淳平も一緒にいる。

 

梢「………最近、部活に来ていないわね。あの子」

 

淳平「言われてみればそうだな」

 

花帆「あ……梢センパイ」

 

花帆「あたし、吟子ちゃんと話してみたんです。そうしたら、ここはもう、憧れてた芸楽部じゃない。って…… 自分がスクールアイドルを続ける意味は、ないって……」

 

淳平「……そっか」

 

花帆「でも、あたし、諦めたくなくて。 一年生の教室にもいってみたんです。吟子ちゃんがいたのに………声をかけられなくて………………。

 

花帆「怖かったんです。あたし、勇気が出なくて……。ちゃんと先輩がんばろうって思ったのに……」

 

花帆は、悔しさと悲しさから悲痛な顔になる。俺がそっと花帆の背中を擦ってやり、梢は花帆に言葉をかける。

 

梢「……それはね、花帆。あなたが弱くなったわけじゃないわ。あなたに、上級生としての自覚が芽生えたからよ」

 

花帆「え………」

 

梢「これが本当に正しいことなのかわからなくて……自分の選択が、もしかしたら相手の未来を奪うかもしれない。だから、臆病になってしまっているのだわ。……去年の私や淳と、同じように」

 

淳平「だな。俺も内心では本当にこれが正しいのかわからないことあったしなぁ……」

 

花帆「淳兄ぃ…、梢センパイ………」

 

梢「私や淳だけじゃないわ。沙知先輩も、さらにその上の先輩も、歴代の先輩たちもみんな、みんな。同じように、繰り返してきたの」

 

梢の言葉を聞いた花帆は、俯いて…胸の内を話し始める。

 

花帆「これは、あたしのわがままかもしれません……でも、あたし! 吟子ちゃんにスクールアイドルをやってほしいんです!」

 

花帆「吟子ちゃんは、同じなんです! 去年のあたしと! がんばりたいのに、でも、どこにもいけなくて、息苦しい毎日を過ごして……そんなのつらいです!」

 

花帆「あたしは、スクールアイドルクラブに入って、変われました。梢センパイと淳兄ぃが、あたしの壁を壊してくれたんです……………」

 

花帆は大粒の涙をボロボロとこぼしながら、俺達に訴えかけてくる。

 

花帆「だから、お願いします、淳兄ぃ、梢センパイ……。あたしじゃ、だめなんです……。2人が言ってくれたら、きっと、吟子ちゃんだって!」

 

淳平「…………俺達に任せるなら、もちろん、 花帆と百生さんのために言葉を尽くすよ」

 

花帆「淳兄ぃ」

 

淳平「けど、花帆。お前は本当に、それでいいのか?」

 

花帆「でも!」

 

花帆「あたしは、うまくできないの! 梢センパイみたいにやってもだめで! だったらあたしなりにやろうと思っても、また失敗して!」

 

花帆「肝心なときだけ、2人を頼って! そんなんじゃ、また梢センパイの後ろをついていくだけのあたしになっちゃうって、わかってるの! 梢センパイと、ラブライブ!を優勝するって誓ったのに……!」

 

梢「花帆……」

 

花帆「あたしの言葉じゃ、吟子ちゃんに、届かない…。届かないよ…………」

 

すると、梢も花帆の隣に来て一緒に花帆の背を擦りながら話しかける。

 

梢「ねえ、花帆、覚えている? 私とあなたが、初めてスリーズブーケになった日のことを」

 

花帆「梢センパイ………」

 

梢「私たちも、最初からうまくいっていたわけじゃないわ。すれ違って、想いをぶつけあって、手を取り合って。ようやく、一緒のユニットになれたわね。もしあのとき。私か、あなたのどちらかが諦めていたら、今のようにはなれなかった。綴理とさやかさんもそう。慈と瑠璃乃さんもそう。きっとね、スクールアイドルクラブは、ずっと、ずっと、そうしてきたの」

 

梢「大丈夫よ、花帆。あなたの言葉は、吟子さんの心に届くわ。私は先輩から受け取ったものを精一杯、あなたに伝えてきた」

 

淳平「ああ。花帆がしっかりと向き合って、声をかけ続ければ、届かない相手なんかいない。お前には、それだけの力がある」

 

花帆の涙は、段々と止まってきた。

 

花帆「梢センパイ、淳兄ぃ、あたし…………。諦めなければ、あたしの声は、届きますか……?」

 

梢「ええ、必ず。ふふ、それとも、どうする? やっぱり、私が代わったほうがいいかしら?」

 

そう言って花帆をいい意味で挑発する梢。花帆の気持ちは、もう決まった。

 

花帆「…………わがままで、ごめんなさい。うまくできなくて、また、梢センパイにお話を聞いてもらうかもしれません。でも………あたしが吟子ちゃんと、スクールアイドルをやりたいんです」

 

花帆「……吟子ちゃんを、笑顔にしたいんです!」

 

淳平「…………それでいい。何度だって、手を差し伸べる。二年生になっても変わらない。 花帆は俺達の、かわいい後輩なんだからさ」

 

梢「淳の言う通りよ花帆」

 

この時にはもう、花帆の涙は止まっていた。

 

花帆「えへへ……。2人にそう言ってもらえると、あたしも、何度でもがんばれる気がしてきます」

 

梢「自分ひとりじゃできないことだって、繋がれば、それが力になる。だから私は、歴史ある蓮ノ空が好きなの」

 

花帆「はい……。あたしも、蓮ノ空が好きです。……あれ?蓮ノ空の、歴史………………?」

 

ここで、花帆がなにかに気づいた。

 

梢「花帆?」

 

花帆「もしかしたら………! あたしの声を届ける方法が、わかったかもです! センパイ!芸楽部時代からのスクールアイドルノートって、今どこにありますか!?」

 

淳平「それなら、大倉庫にあるはずだけど……一緒に行こうか?」

 

花帆「うん、お願い! たぶん力仕事になるから!」

 

そして俺と花帆は大倉庫に向かった。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

花帆「芸楽部ができてから、約60年。これが、60年分のスクールアイドルノート………。すごい、ダンボール何個あるんだろ……」

 

淳平「1年でノート4冊使うとしても、それが60年分で240冊。実際はもうちょいあるだろうな……」

 

花帆「240冊!? すっごいなあ………。じゃあ、あたしの部屋に運んでくれる?」

 

淳平「よし、任せろ!!」

 

 

ー つづく ー




感想・評価よろしくお願いします!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。