これから新一年生の3人が先輩たちとどんな物語を描いていくのか、非常に楽しみにしております。
では、始まります!!
改変記録を見つけた日の放課後、花帆は百生さんを部室に呼び出した。
花帆「………………」
花帆が部室で1人待っていると、部屋のドアがノックされて百生さんが入って来た。
花帆「吟子ちゃん! 来てくれたんだ」
吟子「………もう一度だけ話したいと、言われたら。私も、いろいろと迷惑をかけたし」
花帆「迷惑なんて、そんなことないよ。でも、ありがとうね」
花帆がそう言うと、百生さんが「それで、何の話?」と本題を切り出す。
吟子「スクールアイドルクラブのことなら、もうきっぱり言ったはずだけど」
花帆「あのね、見つかったんだ。吟子ちゃんのおばあちゃんが……吟子ちゃんが、大好きだった曲が」
吟子「………え?」
百生さんの目に戸惑いが写る。一瞬思考が追いつかなくなっていた。
花帆「『逆さまの歌』、今に伝わってる名前は、こう。あたしが、スリーズブーケになれた後、初めて歌った曲。あたしの大好きな歌」
花帆「50年の月日の中で、歌詞やメロディ、タイトルを少しずつ変えながら、でも、たしかに今に続いてた。そのタイトルは――『
そして、花帆はキーボードでまだ、なれないながらもイントロを演奏し歌い始める。
百生さんの顔は暗かったがそれでも歌を聞いていた。
そして、歌が終わり……。
吟子「そんな………、そんなの……ぜんぜん違う!」
吟子「歌詞も違う、メロディも違う、タイトルも違う。おばあちゃんの愛した曲じゃない! 別物だよ!」
花帆「……そうかもね」
百生さんが言うと、花帆は苦笑しながら「かもしれない」という。百生さんは逆に戸惑う
吟子「そうかも、って」
花帆「『さかさまの歌』が、長い年月をかけて、少しずつ変わっていって、今じゃタイトルも違う。残ってる部分のほうが少ないかも。あたしは同じ曲だと思うけど……吟子ちゃんにとっては、違うかもしれない」
吟子「だったら……」
しかし、花帆は笑顔を浮かべて「でも、」と言葉を続ける。
花帆「思うんだ。それでもこの曲が今も伝わってるのは、みんな、この曲が大好きだったからだ、って」
吟子「…………!!」
花帆「最初に逆さまの歌を変えた子は、この曲をもっと素敵な歌にしようと。がんばったんだよ。頭を悩ませて、一生懸命。次の子も、その次の子も、ずっとずっと」
花帆「この曲は、ただ変わったんじゃない。スクールアイドルの、積み重なった想いで、姿と形を変えていったんだ!」
花帆は真っ直ぐに百生さんの瞳を見つめて想いを話す。
花帆「吟子ちゃんのおばあちゃんが愛した曲は、誰も忘れてなんかいない。こんなにもたくさんの人に愛されて、今に繋がってるんだよ」
吟子「おばあちゃん……」
百生さんは、おばあちゃんのアイドル時代の話を思いだす。
花帆「スクールアイドルだって、おんなじ。あたしはそう思う。時代が変わっても、人が変わってもね。蓮ノ空で過ごすみんなの気持ちは、一緒だよ。あたしがセンパイから教わって、センパイがそのまたセンパイから教わって………。泣いたり笑ったりを繰り返して、みんな、今を駆け抜けてきたんだ!」
花帆「それが、芸楽部の魂ってことじゃないかな!」
花帆がそう伝えると、百生さんは瞳からポロポロと涙をこぼし、花帆に訴えかける。
吟子「…………なんで。なんでですか、先輩…………どうして私に、ここまでしてくれるんですか…? ただの、知り合ったばかりの後輩のために、こんなに……」
しかし、花帆は明るい笑みを浮かべて、
花帆「あたし、先輩だもん!」
普通の人には、それだけでは理由にはならないだろう。しかし、花帆にはそれだけで十分な理由だったのだ。
花帆「それに、吟子ちゃんみたいな子を笑顔にしたくて、あたしはスクールアイドルをしてるんだよ。それがあたしにとっての。花咲くってことだから。……ね、吟子ちゃん。ここは、ちゃんと吟子ちゃんの知ってる芸楽部だよ。だからもう、大丈夫。心配いらないよ。なんだって、できるんだよ!」
花帆「だから……その上で、もし吟子ちゃんがスクールアイドルをしたいんだったら、一緒にやろうよ! スリーズブーケ!ぜったい、楽しませてみせるから!」
そして、花帆は百生さんに手を差し伸べる。
花帆「一緒に、想いを未来に届けよう! 吟子ちゃん!」
百生さんの手は、恐る恐る、けど、たしかに花帆の手に伸び、そして、しっかりと掴んだ。
吟子「はい。よろしくお願いします…………私の、先輩」
百生さんは感極まって花帆に抱きつき、花帆はそれを優しく受け止めていた。
◇◆◇◆◇◆
翌日、スリーズブーケの3人は今度のライブで披露することが決まった『Reflection in the mirror』の伝統衣装の衣装合わせをしていた。
花帆「お、おお………!」
吟子「…………これで、どうでしょう」
梢「うん、とても素敵ね。吟子さんにアレンジをお願いして、よかったわ。せっかく『Reflection in the mirror』を披露するのなら、この衣装じゃなくっちゃ」
すると、百生さんが思い出話をする。
吟子「おばあちゃんの昔の写真で、見たことがあります。たしかにこれもどこか、おばあちゃんの着てた衣装の面影があります」
梢「きっと、衣装が古くなるたびに、新しいものを作り遺していったのよ。私も大好きな曲だもの」
梢がそう言うと、百生さんは嬉しそうな顔を浮かべる。
吟子「そう、なんですね。…………なんだか、嬉しいです」
すると、花帆が梢に小声で耳打ちする。
花帆「…………でも、こんなにアレンジしちゃって、いいんですか? この伝統衣装は、梢センパイの夢だった……」
そこまで言った所で、梢は花帆の口に指を「しっ」と立てて塞ぐ。
梢「いいのよ。私の想いは、あくまでも私の想い。積み重ねてきたスクールアイドルの、そのうちのひとりになれるのなら、嬉しいわ。それに、吟子さんの想いが加わって、ほら、こんなにも綺麗になった」
花帆「…………そうですね!すごく素敵な衣装です!」
すると、梢は百生さんに向き直り、
梢「……吟子さん」
吟子「はっ、はい!」
梢「ようこそ、スリーズブーケへ」
吟子「先輩…………! あ、あの!私は、この蓮ノ空学院に入学することが、夢でした!この学校で、立派なスクールアイドルになりたいです! 若輩者ですが、目標はラブライブ!優勝、です! おばあちゃんの愛した蓮ノ空の伝統を、世界に伝えるために! 全身全霊でスクールアイドルをがんばります!」
梢「ふふ、そんなに固くならないで? まずは次のライブに向けて、これから一緒にがんばりましょう」
吟子「はい、梢先輩! よろしくご指導お願いいたします!」
すると、花帆が少しムッとした顔になり、
花帆「……………なんかあたし相手とちょっと態度が違くないかな? 吟子ちゃん」
吟子「そんなことないけど?」
花帆「ぜんぜん違うよね!?」
吟子「友達のノリでいいって言ったのは、花帆先輩でしょ? 今さら変えられないし!」
花帆「たまには梢センパイみたいに敬われたいときもあるの!」
言いあう二人を見て、梢はクスッと笑い……
梢「……こういうの、まるで孫ができた気分って言うのかしら。そうね、だったら……………。吟子さん。好きなお茶の銘柄はある?」
吟子「すみません、紅茶はあんまり知らなくて。梢先輩にお任せします!」
梢「なら、最初は飲みやすいものをいれてあげる」
梢がそう言うと、百生さんが、
吟子「あ、手伝います! 食器具の位置とか、勉強させてください!」
梢「じゃあ、軽く説明するわね」
花帆「あっ、大丈夫です、梢センパイ!それぐらいあたしが!」
梢「いいのよ。私がしてあげたいの」
吟子「そうそう。花帆先輩は座って待ってて」
花中の良さそうな2人に、不貞腐れる花帆。
梢「あら、吟子さんはコーヒーに詳しいのね」
吟子「はい。おばあちゃんがコーヒー党なんです。私もその影響で。今度、私の好きな豆を持ってきますね!」
ここで、花帆が二人の間に割り込む。
花帆「吟子ちゃん!だめだよ!? あんまりあたしの梢センパイを取らないでね!?」
吟子「さっきから、なにいっとらん!? 梢先輩は、スリーズブーケのものでしょ!」
花帆「そうだけど! でもちゃんと手続きであたしを通してもらわないと!」
梢「ふふっ。もう、ケンカしないの」
梢は2人を優しい眼差しで見つめ、
梢「…………これが、新しいスリーズブーケ。今年もずいぶん、楽しくなりそうだわ」
ー つづく ー
ー 幕間 ー
吟子「そういえば、淳平先輩が花帆先輩の部屋に一晩中いたって噂になってましたけど、どういうことなんですか?」
梢「ああ、その噂ね……」
花帆「たしかに、淳兄ぃは私の部屋にいたよ? けどね、あたしや瑠璃乃ちゃん、さやかちゃんと一緒に、『さかさまの歌』の記録を探してくれてたんだよ?」
吟子「っ!? そうだったんですか?」
梢「ええ。だから吟子さんは、淳のことを変な目で見ないであげて欲しいわ……」
吟子「分かりました。そういう事情なら……。今度私もお礼を言っておきますね」
花帆「うん! きっと喜ぶよ!」
―――スリーズブーケの一幕でした。
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