第17話:さやかと綴理
花帆と梢の淳平とのデートが終わり今日からまた一週間が始まる。
だが、蓮ノ空はいまだにスリーズブーケのライブの余韻が冷めておらず、スクールアイドルクラブの話題一色だった。
綴理とさやかも例外ではなく、2人もそれぞれの練習をしながら梢と花帆の話題を話していた。
さやか「あのライブ、つい声が出てしまいましたね。胸がいっぱいで、吐き出さずにはいられないというか……。でも、本当にライブって凄い。私も、もっともっと頑張らないと……」
綴理「こず、きみは…なれたんだね。スクールアイドルに……」
さやか「夕霧先輩?」
『あなたのダンスは本当にキレイ。でもあなたは夕霧綴理であって、スクールアイドルじゃない』
綴理「………」
さやか「…………?私も早く、もっと上手くなりたい!頑張らないと!」
綴理「さやは、自信無くした?」
さやか「自信なんて、もともとあってないようなものですけど、負けるつもりは無いです!」
綴理「そっか……」
さやか「あっ、夕霧先輩、明日のお弁当は何がいいですか?」
綴理「…そうだなあ、さやはどう料理しても美味しいけど……」
さやか「まるで私が食材みたいに……」
綴理「でもさやは、ボクがなんでもいいって言うと……」
さやか「じゃあ明日は草です!」
綴理「草はやだなあ…、苦いし……じゃあ、おでん」
さやか「草食べたことあるみたいな言い方も気になりますが、し、汁物かぁ…材料が足りないので、それはまた今度に」
綴理「……なんか、いつもごめん」
さやか「いえいえ、なんでも良いと言ったのは私ですから」
綴理「じゃなくて、お弁当作ってくれて」
さやか「なんですか急に?初めて言われましたけど」
綴理「え、そっか、ボク、ありがとうも言えない子だったんだね……」
さやか「ゆ、夕霧先輩はちゃんと、お弁当を受け取るときにありがとうと言えるいい子ですよ!というか、だって、作ってるのも私の勝手ですし。だからまさか謝られるとは思わなかっただけで」
綴理「さやがいないと、ボクはお昼ごはん食べるの忘れがちだから……」
さやか「まあ、はい。だから作るようにしたんですけれども」
綴理「さやがいないと、ボクは起きるのも忘れがちだから」
さやか「まあ、はい。それは別名、お寝坊というんですけれども」
綴理「……さやがいないとき、どうしてたっけ?」
さやか「さあ、いないので分からないですけど……」
綴理「ボク、明日から頑張って自分で起きる!」
そしてその日の練習終わり、綴理は張り切って寮に戻っていったのだが、話を聞いた俺たちは……
淳平「無理だな」
梢「ムリね……」
さやか「そんなバッサリ?!」
梢「こんないきなり起きれるようになるくらいなら、去年私達は苦労してないから……」
淳平「そうそう」
さやか「はあ、夕霧先輩……いったい去年どうやって生活してたんですか……?」
そして翌日早朝、女子寮では
さやか「夕霧先輩!起きてください!」
梢「村野さん大変ね……」
さやか「あ、乙宗先輩、おはようございます。夕霧先輩、なんであんなに起きないんですか?」
梢「昨日あんなに張り切ってたはずなのにねえ……」
さやか「気持ちだけは、嬉しく思っておきます」
梢「綴理がごめんなさいね?やっぱりあの子の相手は大変?」
さやか「いえ、そんな……。私はただ、夕霧先輩の演技をもっとも見ていたくて、もっと勉強させてもらいたくて、そのためならやれることは何でもやろうって、そう思っているだけで。学ばせてもらってる立場ですから」
梢「そうねぇ。綴理の演技は魔性だわ……。努力だけでは到達できないと思わせる、見るもの全てを魅了するような………」
さやか「乙宗先輩……?」
梢「ああ、ごめんなさい。村野さん、頑張ってね。綴理が同じ舞台に招待したあなたのことを、私も心から応援しているから。もちろん、困ったことがあったらいつでも聞いて?」
さやか「は、はい。ありがとうございます……」
梢「これからも大変でしょうけど、私はあなたの苦労がわかると思うから」
さやか「あはは…大丈夫ですよ!好きでやってることですから」
梢「くじけないでね?村野さん」
そしてその日の授業が始まりあっという間に放課後。俺たちは部室で練習の準備をしていたのだが、綴理が一向にこなかった。
さやか「あ〜っもう!私、呼んで来ます!!」
そう言ってさやかちゃんは勢いよく部室を飛び出していった。
さやか「まったくもう。今度は教室でずっと寝てるんですか。補習で先生に捕まってるんですか。お弁当渡したのに食べるの忘れて倒れてるんですか。カワウソがお腹に乗っちゃって動けないんですか。2年生の廊下も慣れちゃいました!もう珍しいとも思われません!逆に恥ずかしい………ん?なんでしょう。……あ」
綴理「〜〜♪〜〜♪」
見ると、夕霧先輩が生徒たちに囲まれており、ゲリラライブをしていた。
綴理「……ふう。ありがとう。えっと、ボクはそろそろ……。……じゃあ、もう一回だけだよ。時間が……」
するとそこへ、
沙知「はいはい、通行の邪魔になってるよー。ゲリラライブは終わり終わり」
綴理「あ……」
沙知「ほら、行くとこあるんでしょー?行った行った」
綴理「あ、うん。ありがとう……」
沙知「良いってことよ。そらお前ら、悪者はあたし1人だ、かかってこーい!」
綴理「……あ、さや」
さやか「えっと、夕霧先輩、ステキなライブ?でした」
綴理「ありがとう。嬉しい。……ん?あれ?さや怒ってないな……?」
さやか「先輩のダンスは、本当にすごいですね。私もすっかり見入ってしまいました。ですが、練習時間が無くなるので、早く部室に行きますよ?」
綴理「うん。わかった……」
そして2人は部室に向かった。
さやか「戻りました」
淳平「おう、おかえり…」
花帆「おかえり〜」
さやか「あれ?お二人だけですか?乙宗先輩は?」
淳平「梢なら先生に呼ばれて行ってる。だから綴理、悪いんだけどさ…今日花帆も見てやってくれないか?」
綴理「ボクが?かほの?」
花帆「やっぱり、ダメですか?」
さやか「私からもお願いします。夕霧先輩。花帆さんを1人にするのは忍びないので……」
花帆「さやかちゃん!!」
すると、
綴理「ううん、寧ろこっちからお願いしたいかな?じゃあ、かほ、今日は一緒にやろう……」
花帆「はい!よろしくお願いします!綴理センパイ!」
そして、3人はレッスン室に向かっていった。
ー つづく ー
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