あれから数日がた経ち、小鈴ちゃんは体力作りと並行してダンス練習を行う段階に来た。
今は綴理と俺が観客役をして2人のダンスを見て、小鈴ちゃんが踊りながら観客に意識をちゃんと向けられているかを見ていた。
綴理・淳平「「……………」」
さやか「ワン、ツー、スリー、フォー! ワン、ツー、スリー、フォー! その調子! 重心意識! 呼吸のテンポ崩さず!」
小鈴「……!」
さやか「ターンして――決め!」
小鈴「はい!」
ピッタリとタイミングを合せて2人の決めポーズが決まる。
おお………!!
小鈴「お、おお……初めて、初めて転ばずに最後までできました……!!」
さやか「小鈴さんの、たゆまぬ努力の賜物です」
さやかちゃんが小鈴ちゃんに微笑みかけて褒める。すると小鈴ちゃんは嬉しさを爆発させ……、
小鈴「う、うう……さやかせんぱーい!!」
さやか「わっ!」
小鈴ちゃんが感極まってさやかちゃんに抱きつく。いきなりの事でさやかちゃんは驚いてしまう。
小鈴「また……また、湖のときみたいな……胸の奥から、わーって熱いものがこみあげくるような……すっごく、すごい、すごくて……!!」
さやか「この1週間……頑張りましたね、小鈴さん。綴理先輩、淳平先輩、いかがでしたか?」
俺と綴理は2人で拍手を贈る。
淳平「うん。前に比べて、動きがずっとよくなってる。それに、徒町さん、ずっとこっちを見てた!」
小鈴「はい、今見てくれていたのは、大先輩お二人ですから! それを意識して頑張りました!」
綴理「ん。伝わったよ。すずの想い。がんばりました!って気持ち」
さやか「いやその前に大先輩ってなんですか!?」
小鈴「大先輩は大先輩です!三年生なので!」
綴理「ボク、大先輩」
淳平「はは……」
さやか「なる、ほど。と、ともあれ一言は込められたようで良かったです。次は、二言くらい込められるように頑張ってみましょうか」
小鈴「じゃあ、さやか先輩はどんなものを込めているんですか!?」
小鈴ちゃんがさやかちゃんに質問する。さやかちゃんはそれにもちゃんと答えてあげる。
さやか「わたしの場合は……昨日の自分よりも成長できた姿をお見せしたい、とか。皆さんの期待に応えられればと」
小鈴「なるほど、がんばります!」
淳平「頑張ってた徒町さんもそうだけど……さやかちゃんもよくなってたよ」
さやか「え、わたしもですか?」
綴理「わかる。きっと、すずを知ってあげているからだね。いいよね、スクールアイドル」
さやか「ええっと…………。と、ともあれ、しっかり前進していますね、小鈴さん。あとは敦賀に向けて、一度ライブを――って」
さやかちゃんが小鈴ちゃんに目を向ける。
あらら……。まぁ、頑張ってたしな。
小鈴「ぐぅ〜〜〜」
さやか「ね、寝てる……!」
綴理「頑張ってたからね」
さやか「もう、仕方ないですね」
淳平「仕方ないな。さやかちゃん、端っこに運んであげて?タオルケット持ってくるから」
さやか「あ、ありがとうございます! ふふっ……。本当に、頑張りましたね……」
すると、小鈴ちゃんがムニャムニャと寝言を言う。
小鈴「さやか先輩……」
さやか「?」
小鈴「になりたい………」
さやか「あはは、そんな良いものじゃないですよー」
綴理「良いものだよ?」
さやか「反応に困ること言わないでください!」
二人がそう言っている所に、俺がタオルケットを持ってきて小鈴ちゃんにかけてあげた。
すると、
さやか「……正直、不安だったんです。わたしの"特訓"で…いいのかどうか」
綴理「すずは、さやの特訓が良いって言ってたよ?」
さやか「それは……はい。でも、求めているものが正しいとは限らないじゃないですか。それこそ去年のわたしが、綴理先輩みたいになりたいと言っていたように。だから、ほっとしました。綴理先輩や、淳平先輩の目から見ても、以前より良くなっているというのなら……きっとわたしの特訓は、間違いではなかったのだと」
綴理「………「さやとボク」と、「さやとすず」は違うからね」
さやか「それは、どういう?」
淳平「混ぜる色が違えば、出てくる色も違う。綺麗な色には違い無いないから、心配しないで」
綴理「うん。…作詞はできそう?」
さやか「実は、小鈴さんに偉そうに指導しておいて、わたしの方はまだはっきり掴めていなくて。あと一歩だとは思うんですけど……」
淳平「分かるといいな」
さやか「…………そうですね。あれからもう1週間経ちましたから、時間の流れは早いですね」
綴理「楽しいと早いよね」
さやか「敦賀で行うライブフェスタは、お昼前開始じゃないですか」
淳平「そうだな」
さやか「花帆さんや瑠璃乃さんと相談して、学校からも許可を取って……………実は、福井で前泊することにしました。出発は綴理先輩たちと一緒です」
綴理「やった」
淳平「そうなんだ」
さやか「なので……敦賀での本番前日に、福井でライブをします。そこを、小鈴さんの"特訓"の総仕上げ……見てくれている皆さんに想いを伝える。最後の予行演習を」
俺と綴理は顔を見合わせて笑う。
綴理「そっか…………うん、さやはやっぱりすごい。ちゃんと、指導ができてるよ。ボクなんかよりずっと」
さやか「ここまでわたしが頑張って来られたのは、綴理先輩のおかげですから」
綴理「ありがと。ふふふ」
さやか「ふふ。じゃあ、小鈴さんを起こしていったん着替えて戻りましょう。わたしも新曲の作詞も今までの考えをまとめたいですし………明日のお弁当や綴理先輩の修学旅行の支度もしなくてはなりません」
綴理「えっ」
さやか「え、じゃあありません。3泊4日の修学旅行だというのに、綴理先輩が手ぶらで新幹線に乗ったりしたらと思うと……」
綴理「ボクなんなの」
淳平「プッ……」
綴理が心外そうに言うのを、俺は「有り得そうだからなぁ」と笑ってしまった。
その後、綴理に睨まれた。
出発当日
◇
◆
◇
◆
◇
金沢駅の新幹線のホームに蓮ノ空の3年生とスクールアイドルクラブはいた。
慈「それじゃあ、楽しんでおいでね〜。私たちもたっくさん東京で遊んでくるから!」
瑠璃乃「うん! おみやげ楽しみにしてるね!」
姫芽「東京のめぐちゃんせんぱい……いっぱい写真ください!」
慈「とーぜん! そっちもどんどん写真送ってね!」
梢「修学旅行というのは、遊びに行くわけじゃないのだけれど……」
慈「はいはい、梢ちゃんのお小言なら新幹線の中で聞いてあげるから」
淳平「めぐ……。さやかちゃんたちも、良い思い出になることを祈ってるよ」
花帆「うん! いってきまーす!」
吟子「はい、いってきます。先輩方もお気を付けて。……金沢からの下り新幹線って、なんか不思議な感じ」
綴理「獲れたての新幹線、楽しんでね」
さやか「なんだか新幹線が三枚おろしにでもされそうな感じですけど……はい、楽しんできます。綴理先輩もどうかお気を付けて」
小鈴「綴理先輩、淳平先輩!徒町、やってやります!」
綴理「ん。きっと良いフェスになるんだろうな。いいなあ」
さやか「しっかり、この旅行中に作詞も完成させます」
淳平「それも楽しみにしてるよ。さやかちゃんなら、絶対できるよ」
さやか「はい!」
そしてここで、東京行きの新幹線の発車時間が迫るアナウンスが鳴る。
梢「時間ね。私たちはもう行くわ」
慈「また来週〜!」
綴理「ばいばい」
淳平「それじゃあ」
そして、3年生は新幹線に乗り込み、新幹線は東京へと発進した。
残された花帆たちは……、
花帆「うわあ。ほんとに二年生と一年生だけだ」
瑠璃乃「にわかに実感がこみ上げてきます…」
さやか「それでは――今回はこの6人で。蓮ノ空学院スクールアイドルクラブとして、張り切っていきましょう!」
花帆・さやか・瑠璃乃・吟子・小鈴・姫芽「「「「「「おー!!」」」」」」
ー つづく ー
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